がん中央クリニックグループでは、核酸医薬による個別化医療をさらに充実させるため、RNA干渉核酸医薬、アプタマー核酸医薬、miRNA mimicなど、新たな核酸医薬を治療メニューに追加しました。
これにより、患者様一人ひとりのがんの性質や遺伝子の特徴に合わせた、より幅広い治療の提案が可能になりました。
がん治療は”場所”から”性質”の時代へ
近年、がん治療は世界的に「場所(部位)」から「性質(遺伝子)」へと変化しています。
当グループでも、がん細胞がどのように増殖し、生き延びているのかを分析し、その性質に合わせて最適な核酸医薬を選択する個別化医療を実践しています。
今回の新たな核酸医薬の追加により、がん細胞の増殖・生存・転移に関わる複数の経路にアプローチできるようになり、多くの患者様に治療の選択肢を提供できるようになりました。

今回新たに加わった核酸医薬について
今回新たに追加した核酸医薬は、作用の仕組みが大きく異なる3つのカテゴリーに分かれております。それぞれの核酸医薬についてご紹介します。
アプタマー核酸医薬

がん細胞の表面にある異常なタンパク質に直接結びつき、その働きを妨げます。DNAを用いているため安全性が高く、細胞分裂経路の最上流を標的とするため効果的です。また、抗がん剤や放射線の効果を高める働きもあります。
アプタマー(Aptamer)核酸医薬は、特定のがん抗原だけに結びつくDNAを利用した次世代医薬です。鍵と鍵穴のようにがん細胞や病気の原因となるタンパク質にピタッと結合し、その働きを阻害することで、ががん細胞の増殖を抑えたり、死滅させたりします。このアプタマーは2009 年のノーベル医学生理学賞受賞者であるJack W. Szostakが1990年にネイチャー誌に掲載した次世代医薬品の開発技術で多くの治療に応用が可能な優れた技術です。アプタマー核酸医薬の詳細はこちら
RNA干渉 核酸医薬

がん細胞が出す異常な指令を抑え、タンパク質が作られる前にがんの増殖を止めます。狙った標的に高い精度で働きかけ、正常な細胞への影響が少ないのが特徴です。
ノーベル賞を受賞した技術から生まれた、がんに根本から働きかける次世代医薬。RNA干渉は、2006年にノーベル賞を受賞した世界的な発見を応用した技術です。がん細胞内で異常に働く遺伝子の指令を止め、悪性たんぱく質が作られないようにすることで、がんの成長や増殖を根本から抑えることを目的とした治療です。従来の低分子医薬や抗体医薬では狙えなかったRNAの分子を標的とすることが可能であり、画期的な次世代医薬として期待されています。RNA干渉 核酸医薬の詳細はこちら
miRNA mimic 核酸医薬
がんになることで失われた「体に本来備わる抑制の仕組み」を補います。増殖、生存、シグナル伝達など複数の経路に同時に働きかけるため、がん細胞の複雑な異常をまとめて抑える効果が期待されています。
がんになって失われた体に本来備わる「がんを抑える力」を取り戻す新しい核酸医薬。miR-34a mimic(ミミック)は、体の中にもともと存在する「がんの増殖を抑える小さなRNA(miRNA)」の働きを人工的に再現する治療です。がん細胞で弱くなってしまった抑制の仕組みを補い、がんの成長や増殖を止め、自然な細胞死(アポトーシス)を促します。世界中で研究が進む分野であり、従来の医薬では難しかった遺伝子レベルの制御を可能にする次世代医薬として注目されています。miRNA mimic 核酸医薬の詳細はこちら
あなたの体に合った、オーダーメイドの治療へ
あなたの体に合った治療を行うためには、がん細胞が持つ異常な指令や性質に合わせて、どこを狙うかを選ぶことが重要です。核酸医薬は、遺伝子やたんぱく質など、がん細胞の働きに応じて標的を選ぶことができるため、個別化した治療と相性の良い技術です。
また、正常な細胞への影響が比較的少なく、副作用が軽い傾向があるため、治療の負担を抑えやすい点も特徴です。従来の治療だけでは十分な効果が得られなかった場合や、治療の選択肢が限られている状況でも、がん細胞の性質に合わせて別の角度からアプローチすることができ、新たな選択肢のひとつとしてご検討いただけます。
ご不明な点やご相談がございましたら、どうぞお気軽にお問い合わせください。