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胆のうがんは、肝臓の下にある「胆のう」に発生するがんです。胆のうは、肝臓でつくられた胆汁を一時的にためて濃縮し、食事の際に胆管を通して十二指腸へ送り出す働きをしています。

胆のうがんは、早い段階では症状が出ないことが多く、胆石や胆のう炎、胆のうポリープなどを調べている途中や、別の理由で胆のうを摘出した後の病理検査で初めて見つかることがあります。一方、進行すると、みぞおちや右上腹部の痛み、食欲低下、体重減少、黄疸などが現れることがあります。

胆のうがんの治療を理解するうえで特に重要なのが、「がんが胆のう壁のどこまで入り込んでいるか」と「手術で完全に取り切れるか」です。胆のうは肝臓に接し、近くに胆管、十二指腸、膵臓、大腸などがあるため、がんが壁を越えると必要な手術範囲が大きく変わります。胆道がんでは、まず外科切除が可能かを判断することが治療方針の大きな分岐になります。

胆のうがんでは、胆石や胆のうポリープとの関係、胆のう摘出後に偶然がんが見つかった場合の対応など、胆のう特有の判断が必要になる場面があります。

この記事では、胆のうがんの原因や症状、検査、ステージ、手術、胆のう摘出後に偶然がんが見つかった場合の対応、薬物療法、バイオマーカー、生存率、再発後の治療まで順番に解説します。

参考:国立がん研究センター|胆道がんについて

  • 胆のうがんは早期には症状が出にくく、胆石や胆のう炎の手術後に偶然見つかることもある
  • 胆石や胆のうポリープがあるからといって、すべてが胆のうがんになるわけではない
  • 胆のう壁への深達度、周囲への広がり、リンパ節・遠隔転移から「手術で取り切れるか」を判断する

胆のうがんとは何か

胆のうは、肝臓の下面にある袋状の臓器です。

肝臓では、脂肪の消化を助ける胆汁が絶えずつくられています。胆汁は胆管を流れ、一部が胆のう管を通って胆のうへ入ります。胆のうでは胆汁が一時的に蓄えられて濃縮され、食べ物が十二指腸へ入ると胆のうが収縮し、胆汁を胆管から十二指腸へ送り出します。

胆のうがんは、この胆のうを構成する細胞から発生する悪性腫瘍です。胆のうの内側を覆う上皮から生じるものが中心で、病理組織型では腺がんが大部分を占めます。腺がん以外にも扁平上皮がん、腺扁平上皮がん、神経内分泌癌などがありますが、頻度は低いため、本記事では一般的な「胆のう腺がん」を中心に説明します。

胆のうは胆汁を一時的にためて濃縮する臓器

胆汁は肝臓でつくられます。胆のうは、その胆汁を食事まで一時的に保存し、必要なときに送り出す役割を持っています。

そのため、後述する胆のう摘出術で胆のうを取り除いた後も、肝臓では胆汁がつくられ続けます。胆汁をためて一度に送り出す仕組みはなくなりますが、肝臓から胆管を通って十二指腸へ流れる経路は残ります。

胆のう摘出後の食事や生活については、後の「胆のうがん治療後の生活と治療の副作用」で詳しく説明します。

胆のう壁は薄く、すぐ近くに肝臓や胆管がある

胆のうがんを理解するうえでは、胆のうが肝臓に直接接していることが重要です。

胆のうの周囲には肝臓だけでなく、胆管、十二指腸、膵臓、大腸などがあります。胆のうがんが深くなると、胆のう壁を越えてこれらの周囲組織へ広がることがあります。日本肝胆膵外科学会も、胆のうがんでは周囲に重要臓器が多いことが、進行例の治療を難しくする一因だと説明しています。

この解剖学的な特徴は、後で説明するT1・T2・T3などの深達度と手術範囲に直結します。

浅い段階で胆のう内にとどまっていれば胆のう摘出だけで治療できる場合がありますが、肝臓側へ深く広がれば肝切除、胆管へ広がれば胆管切除などを追加することがあります。

参考:日本肝胆膵外科学会|胆のうがん

胆のうがんは胆道がんの一つ

胆のうがんは、胆道がんの一つです。胆道がんは胆汁が流れる胆道に発生するがんの総称で、胆管がん、胆のうがん、十二指腸乳頭部がんなどが含まれます。

同じ胆道がんでも、胆管がんと胆のうがんでは、症状の出方やステージの考え方、手術方法が異なります。胆のうがんでは特に、胆のう壁への深達度と周囲臓器への広がりが治療を理解するうえで大きな鍵になります。

参考:国立がん研究センター|胆道がんについて

胆のうがんの原因とリスク

胆のうがんの原因を一つに特定することはできませんが、胆石、胆のうポリープ、膵・胆管合流異常など、発症との関連が知られている病気や所見があります。2025年版『胆道癌診療ガイドライン 改訂第4版』でも、胆道がんの危険因子に加えて、無症状胆石に胆のう摘出を行うか、どのような胆のうポリープでがんを疑うかが独立した項目になっています。

ただし、胆石や胆のうポリープがある人すべてが胆のうがんを発症するわけではありません。

参考:胆道癌診療ガイドライン 第4版

胆石と胆のうがんの関係性

胆石症と胆のうがんには関連が知られています。

胆石が長期間存在すると、胆のう粘膜への慢性的な刺激や炎症が起こり、胆のうがんの発生と関連する可能性が考えられています。日本肝胆膵外科学会の患者向け解説でも、胆のうがん患者では胆石を合併する例が多いことが紹介されています。

しかし、胆石があっても、胆のうがんを発症する人は一部です。

NCIも、胆石は胆のうがんの代表的なリスク因子ではあるものの、胆石を持つ人全体からみた胆のうがんの発症リスクは低く、大多数は胆のうがんにならないと説明しています。

胆石を指摘された場合は「がんになる前に必ず胆のうを取る」と考えるのではなく、症状、胆のう壁の状態、ポリープや腫瘤の有無などから治療の必要性を判断します。

参考:日本癌治療学会|胆道癌診療ガイドライン 公開本文

無症状の胆石を胆のうがん予防で手術するべきか

腹痛や胆のう炎などを起こしている胆石では、症状そのものを治療する目的で胆のう摘出術を行うことがあります。

一方、症状がなく偶然見つかった無症状胆石については、胆のうがん予防だけを目的として、すべての人に胆のう摘出術を行う考え方にはなっていません。公開されている国内ガイドライン解説や日本肝胆膵外科学会の患者向け情報でも、胆のう壁を画像で評価できる無症状胆石では、がん予防目的の一律な手術ではなく経過観察を考える方向が示されています。

ただし、胆のう壁を十分に観察できない、胆のうに別の異常がある、胆石以外の病気が疑われるなどの場合には判断が変わります。

胆のうポリープの多くはがんではない

胆のうポリープとは、胆のうの内側へ盛り上がるようにできる病変の総称です。

胆のうポリープには腫瘍性と非腫瘍性のものがあり、多くは直ちにがんを意味する所見ではありません。画像上の特徴から、腫瘍性ポリープや胆のうがんを疑う所見があるかを評価します。

どのような胆のうポリープでがんを疑うのか

国内で公開されている胆道癌診療ガイドラインでは、胆のうポリープについて、10mm以上であること、広基性であること、画像上で増大傾向があることなどを、胆のうがんを疑う所見として挙げています。2025年版第4版でも「どのような胆嚢ポリープに対して癌を疑うのか」がBQ(基本項目)として継続されています。

ただし、10mmは重要な目安の一つですが、良性・悪性を分ける絶対的な境界ではありません。大きさに加えて、形、茎の有無、内部の超音波所見、胆のう壁の変化、増大傾向などを合わせて評価します。

膵・胆管合流異常は胆のうがんの重要なリスク

膵・胆管合流異常とは、膵液が流れる膵管と胆汁が流れる胆管が、通常とは異なる位置で合流する先天的な異常です。

通常は、胆管と膵管の合流部分にある括約筋の働きによって、膵液が胆道へ逆流しにくくなっています。膵・胆管合流異常では、この調節が働かない位置で両者が合流するため、膵液が胆管や胆のうへ逆流しやすくなります。膵液が胆のう粘膜へ長期間接触すると、粘膜への慢性的な刺激が続き、胆道がんの発生リスクが高くなると考えられています。

このため、膵・胆管合流異常では、がんが見つかってから治療するだけでなく、病型に応じて予防的な手術を検討します。2025年版胆道癌診療ガイドラインでも「膵・胆管合流異常には予防的手術を行うか?」が独立したBQ(バックグラウンドクエスチョン:対応の基本方針)として設定されています。

参考:日本胆道学会|膵・胆管合流異常と先天性胆道拡張症

胆のうの慢性炎症など

胆のうがんの発生には、胆石に伴う慢性胆のう炎など、胆のう粘膜へ長期間炎症が加わる状態が関係すると考えられています。ただし「胆のう炎になったことがあるから将来がんになる」という意味ではありません。

胆石や慢性炎症はあくまでリスクに関係する要素であり、明らかなリスク因子がなくても胆のうがんが発生することがあります。反対に、リスク因子があっても生涯胆のうがんにならない人もいます。

胆のうがんの予防・検診と受診の目安

現在、胆のうがんには、胃がんや大腸がんのような国の指針に基づく対策型がん検診はありません。国立がん研究センターは、胆のうがんを含む胆道がんについて、現在の国の指針で定められた検診はないとしています。

したがって、症状のない一般の人が「毎年胆のうがん検診を受ければ早期発見できる」という確立した方法はありません。

参考:国立がん研究センター|胆道がん 予防・検診

胆のうがんを確実に防ぐ方法は確立していない

胆のうがんには膵・胆管合流異常や胆石などのリスク因子がありますが、発症する人すべてに共通する原因が分かっているわけではありません。そのため、特定の食品、健康食品、サプリメントなどによって胆のうがんを確実に予防できる方法は確立していません。

国立がん研究センターは胆道がんに限らない一般的ながん予防として、禁煙、飲酒を控える、バランスのよい食事、身体活動、適正体重の維持、感染予防などを案内していますが、これらはがん予防に推奨される生活習慣であり、胆のうがんに特化した予防法ではありません。

胆石や胆のうポリープを指摘された場合

胆石や胆のうポリープがある人は、「胆のうがん検診」を別に探すというより、現在見つかっている胆のうの病変を適切に評価することが重要です。

無症状胆石であれば、症状の有無や胆のう壁を十分観察できるかなどを確認します。胆のうポリープであれば、大きさ、形、増大傾向などから、経過観察を続けるか、より詳しい検査や胆のう摘出を検討するかを判断します。

膵・胆管合流異常など明らかに胆道がんリスクが高い病気がある場合には、一般人口とは異なる管理が必要になることがあります。

参考:胆道癌診療ガイドライン 第4版

症状がある場合は検診ではなく医療機関を受診

みぞおちや右上腹部の痛みが続く、皮膚や白目が黄色くなる、原因の分からない体重減少や食欲不振が続くといった症状がある場合には、検診を待つのではなく医療機関を受診します。

胆のうがんは早期には症状が出ないことが多い一方、進行すると右上腹部痛や黄疸などが現れる場合があります。これらの症状は胆石症や胆のう炎などでも起こるため、症状だけから胆のうがんと判断することはできません。

特に強い腹痛に発熱や悪寒を伴う場合は、急性胆のう炎や胆管炎など、がん以外でも早い治療が必要な病気の可能性があります。

胆のうがんの初期症状・進行した場合の症状

胆のうがんは早期には自覚症状に乏しく、進行すると右上腹部痛、食欲低下、体重減少、黄疸などがみられることがあります。

胆のうがんは早期には症状がないことが多い

胆のうは腹部の奥にあり、早い段階のがんが胆のう内にとどまっている間は、胆汁の流れを大きく妨げないことがあります。

そのため、早期胆のうがんには「これが出たら疑う」という特徴的な初期症状がありません。日本肝胆膵外科学会も、胆のうがんは初期症状や自覚症状に乏しいと説明しています。

「症状がないから胆のうに異常はない」とは限りませんが、症状のない一般の人へ胆のうがん検診を行う方法も確立していません。実際には、胆石やポリープなど別の胆のう疾患を調べた際に見つかることがあります。

参考:日本肝胆膵外科学会|胆のうがん

右上腹部・みぞおちの痛み

胆のうがんが進行すると、右上腹部やみぞおちの痛みが出ることがあります。

ただし、右上腹部痛は胆石症や胆のう炎でも起こるため、痛みだけから胆のうがんかどうかを判断することはできません。痛みが繰り返す、長引く、発熱や黄疸を伴う場合には原因を調べます。

食欲低下・体重減少・倦怠感

胆のうがんが進行すると、食欲が落ちたり、体重が減少したり、全身のだるさを感じたりすることがありますが、これらも胆のうがんだけに起こる症状ではなく、感染症、胃腸の病気、肝臓や膵臓の病気などさまざまな原因があります。

食事量や生活習慣を変えていないのに体重が減り続ける、腹部の違和感と食欲不振が長く続くなど、これまでになかった変化が重なる場合には原因を調べることが必要です。

進行すると黄疸が出ることがある

胆のうがんは胆管がんと異なり、胆汁の通り道である胆管そのものから発生するがんではありません。

そのため、胆管がんほど黄疸が早期の中心症状にはなりません。一方、胆のうがんが進行して胆管へ広がったり、周囲のリンパ節などが胆管を圧迫したりすると、胆汁が流れにくくなり「閉塞性黄疸」が起こることがあります。黄疸では、皮膚や白目が黄色くなるだけでなく、尿が茶色っぽく濃くなる、便が白っぽくなる、皮膚がかゆくなるなどの変化がみられることがあります。

黄疸の有無だけではステージは決まりません。胆管がどの場所で、なぜ塞がっているのか、がんが周囲へどこまで広がっているのかを画像検査で確認して判断します。

発熱や強い腹痛では胆のう炎・胆管炎なども考える

発熱や強い右上腹部痛がある場合には、胆のうがんだけではなく急性胆のう炎なども考える必要があります。胆石などで胆のう管が詰まると胆のうに炎症が起こり、腹痛や発熱が生じることがあります。また、胆汁の流れが胆管で妨げられれば胆管炎を起こすこともあります。

特に高熱、悪寒、強い腹痛、黄疸などが急に現れた場合は、通常の外来予約まで様子を見るのではなく医療機関へ相談します。

参考:国立がん研究センター|胆道がんについて

胆のうがんの検査と診断

胆のうがんの診断では、病変の有無に加えて、良性・悪性の可能性、胆のう壁への深達度、周囲臓器やリンパ節・遠隔臓器への広がりを順に評価します。

国立がん研究センターは、胆道がんでは血液検査と腹部超音波を行い、必要に応じてCT、MRI、内視鏡検査、PET/PET-CT、生検・細胞診などを組み合わせると説明しています。

胆のうがんではさらに、画像でどの程度深く胆のう壁へ入り込んでいるか、肝臓や胆管へ広がっているかを評価することが、手術方法の決定にも直結します。

参考:国立がん研究センター|胆道がん 検査

血液検査・CA19-9・CEA

胆のうがんが疑われた場合には、肝臓や胆道の状態を確認するために血液検査を行います。

胆汁の流れが悪くなっていれば、ビリルビン、ALP、γ-GTPなどの値が変化することがあります。また、炎症の有無、肝機能や腎機能、血球数なども確認し、手術や薬物療法を安全に行える状態かを評価します。

胆道がんではCA19-9やCEAなどの腫瘍マーカーを測定することもあります。ただし、これらの数値だけで胆のうがんを診断することはできません。がんがあっても高くならない場合があり、逆に胆道の炎症や閉塞など、がん以外の状態で上昇する場合もあります。

そのため、腫瘍マーカーは画像所見や病理結果などと合わせて判断する補助的な情報です。

腹部超音波|胆のう壁やポリープを観察

腹部超音波検査は、胆のうの異常を見つけるために広く用いられる画像検査です。

体の表面から超音波を当てて、胆のう壁が厚くなっていないか、ポリープ状の病変や腫瘤がないか、胆石がないかなどを観察します。胆のうがんは、胆のう内へ盛り上がる腫瘤として見える場合もあれば、胆のう壁の一部が厚くなる形で見つかることもあります。国立がん研究センターは、腹部超音波を胆道がんの初期画像検査として位置づけています。

胆のうポリープの経過観察でも腹部超音波は重要です。以前の画像と比較し、大きさや形が変化していないかを確認します。腹部超音波だけで判断が難しい場合には、CT、MRI、EUSなどを追加します。

造影CT|肝臓や周囲臓器への広がりを見る

造影CTは、胆のうがんの進展度と切除可能性を評価するうえで重要な検査です。

胆のうの腫瘤や壁肥厚に加えて、胆のうに接している肝臓へがんが広がっていないか、胆管や十二指腸、膵臓、大腸などへ浸潤していないか、リンパ節や肝臓の別の部位、肺などへ転移していないかを調べます。国立がん研究センターも、CTをがんの広がりやリンパ節・他臓器転移を評価する検査として説明しています。

胆のうがんでは、手術で「胆のうだけを取るのか」「肝臓や胆管などをどこまで一緒に切除する必要があるのか」を考えるため、診断と進展度評価を同時に進めていきます。

MRI・MRCP|胆のうと胆管の関係を詳しく調べる

MRIは磁気を利用して体内を画像化する検査で、胆のうがんの存在や周囲への広がりを評価する際に使用します。

胆道領域では、MRIを利用したMRCP(磁気共鳴胆管膵管造影)によって、胆のうや胆管、膵管の形を非侵襲的に描き出すことができます。胆のうがんが胆のう管や胆管側へ広がっていないか、胆汁の通り道に異常がないかを評価する際にも役立ちます。

CTとMRIは、どちらか一方だけで診断するというより、それぞれの画像情報を組み合わせて病変の広がりを判断します。

参考:胆道癌診療ガイドライン 第4版

EUS|胆のう壁や腫瘤を近くから詳しく見る

EUS(超音波内視鏡検査)は、先端に超音波装置が付いた内視鏡を胃や十二指腸まで入れ、体の内側から胆のうを観察する検査です。

病変のすぐ近くから高い解像度で観察できるため、胆のうポリープや胆のう壁肥厚の性質、がんが胆のう壁のどの程度まで広がっている可能性があるかを評価する際に役立ちます。国立がん研究センターも、EUSは腫瘍の位置、良悪性、広がりを診断する検査と説明しています。

EUSでも、炎症による壁肥厚などがあると深達度の評価が難しい場合があります。

PET・PET-CT|リンパ節転移や遠隔転移を追加で調べることがある

PET・PET-CTは、FDGという放射性物質を含む薬剤を使い、糖を多く取り込む組織を画像化する検査です。

胆のうがんでは、CTやMRIなどで評価したうえで、リンパ節転移や遠隔転移などを追加で確認する目的で行うことがあります。国立がん研究センターは、PET/PET-CTを、進行がんの他臓器転移を確認したり、CTやMRIなどで診断がはっきりしない場合に追加したりする検査と説明しています。

すべての胆のうがん患者さんに必ず行う検査ではなく、CTやMRIの所見、手術可能性などを踏まえて必要性を判断します。

胆のう腺筋腫症・黄色肉芽腫性胆のう炎など良性疾患との鑑別

胆のう壁の肥厚や腫瘤状の所見は、胆のうがんだけでなく、胆のう腺筋腫症や黄色肉芽腫性胆のう炎などでもみられます。画像所見が似ることがあるため、超音波、CT、MRI、EUSなどを組み合わせて鑑別します。

参考:日本癌治療学会|胆道癌診療ガイドライン 公開本文

胆のうがんでは手術前に組織検査を行わない場合がある

一般にがんの診断では、生検によって組織を採取し、顕微鏡でがん細胞を確認することをイメージするかもしれません。

胆のうがんでは、手術前に組織や細胞を採取するかどうかは、疑われるがんの深さや予定している治療によって異なります。

比較的浅いT1胆のうがんが疑われる場合には、胆のう摘出そのものが診断を兼ねることがあり、手術前の生検や細胞診を必ずしも必要としない場合があります。一方、T2以深が疑われ、肝切除やリンパ節郭清などを含む大きな手術が予定される場合には、術前に生検または細胞診による診断を得ることが望ましいとされています。

ただし、胆のうから検体を採取する方法には技術的な制約があり、検査方法によっては胆汁性腹膜炎や播種などを考慮する必要もあります。そのため「がんが疑われるから全員に針生検を行う」というわけではなく、どの方法で病理診断を得るかを専門施設で判断します。

手術で切除することが難しく、薬物療法を行う場合には、治療を選択するために治療前の病理診断が重要になります。

胆のうがんのステージ分類|TNM分類・cStage/pStage

胆のうがんのステージは、原発巣の広がりを示すT、領域リンパ節への転移を示すN、遠隔転移を示すMを組み合わせたTNM分類によって決まります。国立がん研究センターの現行患者向け情報では、胆のうがんの病期分類にUICC TNM第8版を使用しています。

胆のうがんで特に理解しておきたいのがT分類です。胃がんなどでは腫瘍の大きさを気にする人も多いですが、胆のうがんでは「がんが胆のう壁のどの層まで入り込んでいるのか」「肝臓側か腹腔側か」「壁を越えて周囲臓器まで広がっているか」がT分類に大きく関係します。

※UICCはTNM第9版を2025年に刊行し、2026年1月からの使用を推奨しています。一方、国立がん研究センターの現行患者向け胆のうがん病期表と2026年の院内がん登録実務資料では第8版が使われています。本記事では患者向け公的情報と対応させるため第8版を示しますが、実際の診断書・病理報告書では、使用された分類と版を確認してください。
参考:国立がん研究センター|胆道がん 治療UICC|第9版発行・2026年1月からの使用推奨

胆のう壁の構造とT分類

胆のうの内側には粘膜があり、その外側に固有筋層、さらに筋層の外側の結合組織が続いています。がんが内側から外側へ深く入り込むにつれて、T分類も高くなっていきます。

UICC TNM第8版では、胆のうがんのT分類は次のように整理されています。

T分類 がんの広がり
Tis 上皮内がんで、浸潤がんになっていない状態
T1a 粘膜固有層まで浸潤している
T1b 固有筋層まで浸潤している
T2a 腹腔側の筋層周囲結合組織まで浸潤しているが、漿膜表面には達していない
T2b 肝臓側の筋層周囲結合組織まで浸潤しているが、肝実質には直接入り込んでいない
T3 漿膜を越える、肝臓へ直接浸潤する、または胃・十二指腸・大腸・膵臓・大網・肝外胆管など1つの周囲臓器・組織へ直接広がっている
T4 門脈本幹や肝動脈へ浸潤している、または肝臓以外の2つ以上の周囲臓器・組織へ広がっている

T1aとT1bでは、がんが粘膜にとどまるのか、固有筋層まで入り込んでいるのかが違います。T2になると筋層の外側まで進んでいますが、さらにT2aの「腹腔側」とT2bの「肝臓側」を分けて評価するのが胆のうがんの特徴です。

胆のうの肝臓側は肝臓と接しているため、同じ「筋層を越えたがん」でも、どちら側に広がっているかを区別して病期を評価します。したがって、診断書に「T2」と書かれている場合には、T2aなのかT2bなのかまで確認すると病状をより具体的に理解できます。

病理結果に書かれる「m・mp・ss」とは?

胆のう摘出後の病理結果では、がんの深さをm(粘膜)、mp(固有筋層)、ss(漿膜下層)などと表記することがあります。国内の胆道癌診療ガイドラインでも、偶発胆のうがんについて「m・mp」「ss以上」という表現が使われてきました。

m・mp・ssは主に胆のう壁への深達度を表すのに対し、T分類では肝臓側・腹腔側の違いや周囲臓器への浸潤も評価します。

参考:NCI|Gallbladder Cancer Treatment PDQ

胆のうがんのステージ0~Ⅳ

T分類だけでステージが決まるわけではありません。領域リンパ節転移のN分類と、遠隔転移のM分類を組み合わせます。

UICC TNM第8版では、領域リンパ節転移が1~3個ならN1、4個以上ならN2です。遠隔転移がなければM0、あればM1となります。

一般の人が病状を把握しやすいよう、ステージごとの意味を整理すると次のようになります。

ステージ 一般的な病状のイメージ
0期 上皮内がんで、リンパ節転移・遠隔転移がない状態
Ⅰ期 がんが粘膜または固有筋層までにとどまり、リンパ節・遠隔転移がない状態(T1N0M0)
ⅡA期 腹腔側で筋層の外側まで広がっているが、リンパ節・遠隔転移がない状態(T2aN0M0)
ⅡB期 肝臓側で筋層の外側まで広がっているが、肝臓そのものへの直接浸潤やリンパ節・遠隔転移はない状態(T2bN0M0)
ⅢA期 漿膜を越える、肝臓や1つの周囲臓器へ直接広がっているが、領域リンパ節転移・遠隔転移はない状態(T3N0M0)
ⅢB期 T1~T3のがんで1~3個の領域リンパ節転移があるが、遠隔転移はない状態
ⅣA期 門脈本幹・肝動脈への浸潤や2つ以上の周囲臓器への浸潤がある高度な局所進行だが、遠隔転移はない状態
ⅣB期 4個以上の領域リンパ節転移がある状態、または肝臓の離れた部位、肺、腹膜などへの遠隔転移がある状態

※上表は国立がん研究センターの現行患者向け情報と対応するUICC TNM第8版を一般向けに整理したものです。

胆のうがんのステージ4はどのような状態か

UICC TNM第8版の胆のうがんでは、ⅣA期とⅣB期で病状が異なります。ⅣA期は高度な局所進行で、遠隔転移はありません。ⅣB期には、4個以上の領域リンパ節へ転移しているものの遠隔転移がない状態と、肺・腹膜などへ遠隔転移している状態の両方が含まれます。

さらに、ステージ番号だけから手術できるかを機械的に決めることもできません。胆道がんでは、遠隔転移の有無だけでなく、周囲の血管や臓器への広がり、完全切除できる可能性、手術に耐えられる全身状態などを合わせて切除可能性を判断します。

治療前のcStageと手術後のpStageは異なることがある

手術前には、CTやMRI、EUS、必要に応じてPET・PET-CTなどから病変の深さ、リンパ節転移、遠隔転移を推定します。このような治療前の情報に基づくステージを臨床病期(cStage)と呼びます。

一方、手術後には摘出した胆のうや肝臓、リンパ節などを顕微鏡で詳しく調べられます。この結果から決める病期が病理病期(pStage)です。

胆のうがんでは、胆石や胆のう炎などのために胆のうを摘出し、術後の病理検査で初めてがんが判明することもあります。その場合には、病理検査によって「実際にはどこまで深く入り込んでいたか」が初めて分かることがあります。偶然見つかった胆のうがんについては「偶発胆のうがん」の章で詳しく説明します。

胆のうがん治療の全体像

胆のうがんの治療では、ステージに加えて、手術で完全切除できるかどうかが大きな判断材料になります。

国立がん研究センターは胆道がんについて、まず手術が可能かを検討し、手術できない場合には薬物療法を中心に治療すると説明しています。2025年版『胆道癌診療ガイドライン 改訂第4版』の診療アルゴリズムも「外科切除の可否」を最初の大きな分岐としています。

病状 主な治療の考え方
胆のう壁の浅い範囲に限局 胆のう摘出を中心に根治切除を目指す。深達度によっては胆のう摘出のみで治療が完結する場合がある
筋層を越えて広がっている 肝切除やリンパ節郭清などを含め、完全切除に必要な手術範囲を検討する
肝臓・胆管・周囲臓器へ広がる 浸潤範囲に応じて肝臓、胆管、十二指腸などの合併切除を検討する。完全切除できるかを慎重に評価する
局所進行で切除できない 薬物療法が中心。遠隔転移がない場合などには放射線治療を検討することがある
遠隔転移・再発 全身薬物療法が中心。治療歴やバイオマーカーも次の治療選択に関係する

国立がん研究センターでは、胆のうがんが胆のう内にとどまる場合には胆のう摘出を行い、周囲へ広がっている場合には、広がりに応じて肝臓、胆管、膵臓、大腸、十二指腸、リンパ節などの切除が必要になると説明しています。

切除不能と説明された場合には、遠隔転移、重要血管への浸潤、周囲臓器への広がり、全身状態など、手術が難しい理由を確認します。

参考:胆道癌診療ガイドライン 第4版

胆のうがんの手術|深達度によって切除範囲が変わる

胆のうがんの手術では、がんを残さず完全に切除することを目指します。

必要な手術範囲は、胆のう壁への深達度によって大きく異なります。早期で胆のう内に限局していれば胆のう摘出だけで治療できる場合がありますが、より深くなると肝切除やリンパ節郭清、さらに周囲臓器の合併切除が必要になることがあります。

参考:国立がん研究センター|胆道がん 治療

早期胆のうがんの摘出手術について

がんが粘膜などの浅い範囲に限られている早期胆のうがんでは、胆のうを摘出することで根治を目指せる場合があります。

特にT1aは粘膜固有層までのがんであり、リンパ節転移や遠隔転移がなければⅠ期です。胆のう摘出後の病理検査で浅いがんが偶然見つかり、追加治療を必要とせず経過観察となる場合もあります。

一方、T1bは固有筋層まで入り込んだがんです。

T1bでは、胆のう摘出後に追加切除を行う意義について一定の議論が残っています。NCI PDQでも、偶発T1b胆のうがんに対する再切除の必要性は議論のある領域とされています。2025年版国内ガイドラインで追加切除を独立したBQ(基本項目)として明示しているのは「胆のう摘出後に深達度ss以上と判明した場合」です。

したがって、実際には術前画像、病理結果、切除断端、リンパ節転移の可能性、患者さんの全身状態などを踏まえて手術範囲を判断します。

参考:NCI|Gallbladder Cancer Treatment PDQ胆道癌診療ガイドライン 第4版

筋層を越えた胆のうがんの切除範囲

がんが固有筋層を越えて筋層周囲結合組織まで入り込むT2以降では、胆のう周囲への微小な進展やリンパ節転移の可能性を考慮する必要が高まります。根治切除を目指す場合には、病変の位置や広がりに応じて、胆のうに接する肝臓の一部の切除や周囲リンパ節の郭清などを検討します。切除範囲はT2a・T2bの別、肝浸潤、胆のう管・胆管への広がりなどをもとに決めます。

なぜ胆のうがんで肝臓まで切除するのか

胆のうは肝臓の下面に接しています。

特に肝臓側へ向かって深く広がった胆のうがんでは、胆のうだけを取り外しても、胆のうと接していた肝臓側にがんが残る可能性があります。そのため、がんから十分な切除距離を確保して完全切除する目的で、胆のう床周囲の肝臓を一緒に切除することがあります。

国内で公開されている胆道癌診療ガイドラインでは、肝浸潤が疑われる胆のうがんについて、胆のう床切除とより系統的な肝切除を比較した研究を踏まえ、R0切除、すなわち顕微鏡的にもがんを残さず切除できることが重要だと説明しています。

胆のう床切除とより大きな肝切除はどう使い分けるのか

胆のうに接していた肝臓の部分を楔状に切除する方法は、一般に胆のう床切除などと呼ばれます。

一方、がんの位置や肝臓への広がりによっては、肝臓のS4a・S5と呼ばれる区域を含めた切除や、さらに大きな肝切除が必要になる場合があります。

肝切除の範囲は、肝浸潤の位置・範囲、確保できる切除断端、術後に残る肝機能などから計画します。国内ガイドラインでも、胆のう床切除か系統的肝切除かという術式そのものより、十分な切除断端を確保する考え方が重視されてきました。

胆管を一緒に切除するかはがんの広がりで判断する

胆のうがんの拡大手術では肝外胆管を切除する場合がありますが、肝外胆管切除は、胆管への直接浸潤や十分な切除断端の確保が必要な場合などに検討します。一方、国内で公開されているガイドラインでは、肝外胆管へ直接浸潤がない胆のうがんについて、リンパ節郭清などを目的とした予防的な肝外胆管切除を原則として行わない考え方が示されています。

胆管まで切除した場合には、残った胆管と小腸をつなぎ、胆汁が再び腸へ流れる経路をつくる再建が必要になることがあります。

参考:胆道癌診療ガイドライン 第4版

十二指腸・膵臓・大腸などの合併切除が必要になる場合

胆のうの周囲には、十二指腸、大腸、膵臓などがあります。

進行した胆のうがんがこれらへ直接入り込んでいる場合、完全切除を目指すために浸潤した臓器の一部を一緒に切除することがあります。

ただし、切除する臓器が増えるほど手術の負担や合併症リスクも大きくなります。そのため、画像上「隣の臓器へ接している」ことだけではなく、すべてを一緒に切除することで本当にがんを取り切れるのか、その大きな手術に耐えられるかまで含めて手術適応を判断します。2025年版ガイドラインでも、複雑な肝胆膵手術や胆道がん手術を経験の多い施設で行う意義が個別の臨床課題として扱われています。

腹腔鏡・ロボット手術は「手術範囲」とは別の問題

腹腔鏡手術やロボット支援手術は、手術を行う「アプローチ」の違いです。低侵襲手術を選択しても、胆のうがんの根治に必要な切除範囲が小さくなるとは限りません。

T2胆のうがんで低侵襲手術を検討する場合にも、病変の広がりに応じて肝切除やリンパ節郭清などを行います。2025年版胆道癌診療ガイドラインでは、深達度T2までの胆のうがんに対する腹腔鏡・ロボット支援下手術がCQ(クリニカルクエスチョン:臨床的課題項目)として検討されています。

手術の説明では、開腹・腹腔鏡・ロボットの別とあわせて、胆のう以外にどの臓器やリンパ節を切除する予定なのかを確認するとよいでしょう。

参考:胆道癌診療ガイドライン 第4版

胆のう摘出後にがんが見つかった場合|偶発胆のうがんとは

胆のうがんには、診断の時点から「胆のうがん」と分かって治療を始める患者さんだけでなく、胆石、胆のう炎、胆のうポリープなど別の病気のために胆のう摘出術を受け、摘出した胆のうを病理検査した結果、初めてがんが見つかる患者さんがいます。

このように手術前には胆のうがんと診断されておらず、胆のう摘出後に偶然判明したものを偶発胆のうがんと呼びます。国内ガイドラインでも、良性胆のう疾患として胆のう摘出を受けた後に病理組織学的に判明する偶発胆のうがんが独立した臨床課題として扱われています。

がんが見つかったからといって、すべての患者さんが直ちにもう一度手術を受けるわけではありません。病理結果からがんの深さや切除断端などを確認し、画像で現在の病状を再評価したうえで、追加治療が必要かを判断します。

まず病理結果で「がんの深さ」を確認する

胆のう摘出後にがんが見つかった場合、最初に確認したい情報の一つが深達度です。

病理報告書には「m」「mp」「ss」や「pT1a」「pT1b」「pT2」などと書かれている場合があります。

浅い粘膜内の病変なのか、固有筋層までなのか、それとも筋層を越えた漿膜下層まで入り込んでいるのかによって、最初の胆のう摘出だけで十分な可能性と、周囲へ目に見えないがんが残っている可能性が変わります。

胆のう摘出だけで治療が完結する場合

胆のう壁のごく浅い範囲にとどまるがんでは、最初の胆のう摘出によって病変が完全に取り切れており、追加手術を必要としない場合があります。

特に粘膜固有層までのT1aは早期の病変です。NCIも、胆のう摘出後に偶然見つかった表在性の胆のうがんでは、追加治療なしで治癒する患者さんが多いと説明しています。

一方、固有筋層まで達するT1bについては、追加切除の必要性を一律に決められるほど単純ではありません。NCIは偶発T1b胆のうがんに対する再切除について議論が残るとしています。国内の旧版ガイドラインでもmp症例について異なる報告があることが示され、2025年第4版で明確に追加切除のBQ(基本項目)として取り上げられているのはss以上です。

そのため「T1bと書いてあるから必ず再手術」「ステージⅠだから絶対に追加手術は不要」と患者さん自身で判断するのではなく、病理結果全体を確認します。

参考:NCI|Gallbladder Cancer Treatment PDQ

ss以上では追加手術を検討する

筋層を越えて漿膜下層までがんが入り込んでいると、最初の胆のう摘出だけでは、胆のう床側の肝臓や周囲のリンパ節などに目に見えない病変が残っている可能性を考える必要があります。国内の公開ガイドラインでも、ss以上では必要に応じて肝切除やリンパ節郭清を伴う追加根治手術を検討する考え方が示されています。

ここで行う追加手術は、「最初の手術が失敗だったからもう一度胆のうを取る」ものではありません。

すでに胆のうは摘出されています。追加手術では、がんが残っている可能性がある肝臓側やリンパ節などを切除し、最初から胆のうがんと分かっていれば行っていた根治手術の範囲へ近づけることが目的になります。

参考:胆道癌診療ガイドライン 第4版

追加手術を決めるときは深達度だけを見ない

追加手術の判断では、深達度は非常に重要ですが、それだけを見るわけではありません。

たとえば、胆のう管断端などの切除断端にがんが残っていないか、リンパ管・血管への侵襲があるか、病理学的な悪性度はどうかなどを確認します。また、CTなどで肝臓、リンパ節、腹膜、肺などに明らかな転移がないかを改めて評価します。リンパ節転移や切除断端は、胆道がん根治切除後の再発リスクとも関連する重要な病理情報です。

これらの病理所見と画像検査をもとに、追加手術によって完全切除を目指せるかを判断します。

追加手術は完全切除を目指せる場合に検討する

追加根治手術は、再発リスクを減らし、完全切除を目指せる可能性がある患者さんに検討する治療です。

しかし、術後の再評価ですでに遠隔転移が見つかった場合や、周囲へ広く浸潤して完全切除が難しい場合、全身状態から大きな手術の負担が高すぎる場合などには、追加手術以外の治療を考えます。胆道がんの切除可否は、遠隔転移、局所進展、全身状態などを総合して判断されます。

そのため、胆のう摘出後にがんが判明した場合には、「がんだった」という事実だけでなく、病理結果のどの所見が追加手術を勧める理由になっているのかを担当医に確認すると、その治療の目的を理解しやすくなります。

切除可能胆のうがんの術前・術後薬物療法

胆のうがんを手術で完全に切除できても、その後に再発することがあります。

画像や手術で確認できる病変を取り切っていても、検査では見えないごく少量のがん細胞がすでに身体の中に存在している場合があるためです。そのため、一定の再発リスクがある胆道がんでは、手術後に術後補助化学療法を行います。

術後補助化学療法ではS-1が標準治療

日本で胆道がん根治切除後の標準治療を大きく変えたのが、JCOG1202/ASCOT試験です。

この第III相試験には、肝内・肝外胆管がんだけでなく胆のうがんも含まれており、手術後に経過観察する群とS-1による補助化学療法を行う群が比較されました。440人を対象とした主解析では、3年全生存割合は経過観察群67.6%、S-1群77.1%で、S-1による生存期間の改善が示されました。JCOGはこの結果をもとに、S-1補助療法が胆道がん根治手術後の標準治療になったとしています。

S-1は、手術で目に見えるがんを取り残したから使用する薬ではありません。

画像には映らない微小ながん細胞を治療し、再発する可能性を下げることが術後補助療法の目的です。

参考:JCOG|JCOG1202/ASCOT 患者向け試験結果JCOG1202/ASCOT 原著論文|PubMed

ごく早期の胆のうがんではS-1の必要性を個別に判断する

「胆のうがんを手術したら全員S-1を飲む」と理解するのは正確ではありません。

JCOG1202で対象となった胆のうがんは、当時使用されたUICC第7版でT2~T4かつリンパ節転移なし、またはT1~T4でリンパ節転移ありなどの患者さんでした。pT1N0の胆のうがんは試験対象ではありませんでした。

したがって、T1aなどごく早期の胆のうがんまで、JCOG1202の結果をそのまま当てはめて「必ずS-1が必要」と考えるべきではありません。

実際の術後治療では、病理学的な深達度、リンパ節転移、切除断端、脈管侵襲などの再発リスクと、手術からの回復状況、年齢、臓器機能などを確認して治療方針を決めます。リンパ節転移や切除断端などは、JCOG1202の2026年副次解析でも術後早期再発と関連する因子として報告されています。

S-1を安全に続けられる状態かも確認する

標準治療として推奨される薬であっても、すべての患者さんが同じ状態で治療を開始できるわけではありません。

胆のうがんで胆のう摘出だけを受けた患者さんと、肝切除や胆管切除、周囲臓器の合併切除まで受けた患者さんでは、術後の身体への負担が大きく異なります。

術後補助化学療法を開始する際には、食事が取れているか、体重や体力が回復しているか、肝機能・腎機能・血球数に問題がないかなどを確認します。S-1では好中球減少などの血液毒性を含む副作用があり、JCOG1202でも治療中の有害事象が評価されています。

そのため主治医からS-1を勧められた場合には「病理結果のどの点から再発リスクがあると考えているのか」「自分の場合はS-1によるメリットをどう考えているのか」まで確認すると、術後治療の目的を理解しやすくなります。

切除可能胆のうがんの術前化学療法は臨床試験で検証が続いている

切除不能胆道がんでは複数の有効な薬物療法があります。しかし2026年現在、切除可能な胆のうがんすべてに術前化学療法を行う治療は標準として確立していません。

2025年版胆道癌診療ガイドラインでも「切除可能胆道がんに対する術前化学療法は推奨されるか」が独立CQ(臨床的課題項目)として扱われています。JCOGでは、切除可能胆道がんを対象に、ゲムシタビン+シスプラチン+S-1(GCS)による術前補助化学療法を検証する第III相試験JCOG1920が進められています。2026年8月時点では患者登録は終了しており、追跡・解析が続いています。

したがって、手術可能と判断された胆のうがんで最初に手術を行うことは、術前治療を省略しているという意味ではありません。

一方、非常に局所進行した病変などでは、個々の状況や臨床試験などに応じて術前治療が検討される場合があります。「手術前に薬を使うか」は、標準治療として確立している術後S-1とは分けて理解する必要があります。

参考:JCOG1920|術前GCS療法 第III相試験JCOG肝胆膵グループ

切除不能・再発胆のうがんの薬物療法

胆のうがんが肝臓や重要な血管、複数の周囲臓器へ広がっていて手術で完全に取り切ることが難しい場合や、肺・腹膜などへの遠隔転移がある場合、手術後に再発した場合には、全身に作用する薬物療法が治療の中心になります。

2025年版『胆道癌診療ガイドライン 改訂第4版』では、切除不能胆道がんについて一次治療と二次治療がそれぞれ独立したCQ(臨床的課題項目)として扱われています。胆のうがんだけ別の薬物療法体系があるわけではなく、胆管がんなどとともに「胆道がん」として治療法が検討されます。

参考:胆道癌診療ガイドライン 第4版

一次治療では化学療法+免疫療法が重要な選択肢

進行・再発胆道がんでは、長くゲムシタビン+シスプラチン(GC療法)が薬物療法の基本となってきました。

現在は、GC療法に免疫チェックポイント阻害薬を加える治療が重要な一次治療の選択肢となっています。代表的なのが、「ゲムシタビン+シスプラチン+デュルバルマブ」と、「ゲムシタビン+シスプラチン+ペムブロリズマブ」です。

デュルバルマブについては、2026年6月改訂のPMDA最適使用推進ガイドラインで、治癒切除不能な胆道がんに対してゲムシタビン・シスプラチンとの併用が示されています。ペムブロリズマブにも胆道がんの最適使用推進ガイドラインがあります。

デュルバルマブを検証したTOPAZ-1試験では、治癒切除不能胆道がんに対してGC療法のみの場合と比べ、デュルバルマブを加えた群で全生存期間が延長しました。さらに長期追跡でも生存効果が確認されています。

ペムブロリズマブを検証したKEYNOTE-966試験でも、進行胆道がんに対するGC療法へペムブロリズマブを加えることで全生存期間が改善しました。この試験には肝内・肝外胆管がんだけでなく胆のうがんも含まれています。

したがって、「胆のうがんだから特別な抗がん剤を使う」というより、切除不能・再発胆道がんとして病状と全身状態に応じた一次治療を選ぶと考える方が実際の診療に近くなります。

参考:PMDA|最適使用推進ガイドラインTOPAZ-1|デュルバルマブ+GC 3年追跡KEYNOTE-966|ペムブロリズマブ+GC

日本ではGCS療法も治療選択肢になる

日本では、ゲムシタビン+シスプラチン+S-1(GCS療法)も進行胆道がんに対する重要な選択肢です。

国内の第III相MITSUBA試験では、GCS療法とGC療法を比較し、全生存期間中央値はGCS療法13.5カ月、GC療法12.6カ月で、GCS療法による生存期間の改善が示されました。奏効率もGCS療法41.5%、GC療法15.0%でした。

ただし現在は免疫チェックポイント阻害薬を含む治療も標準的な選択肢となっているため、「どの患者さんにもGCSが第一選択」という意味ではありません。腫瘍の広がり、治療の目的、腎機能、体力、併存疾患、免疫療法を使用できるかなどを踏まえて治療を選びます。

参考:MITSUBA試験|GCS vs GC

シスプラチンや免疫療法を使いにくい場合は治療を調整する

薬物療法は、腎機能、体力、併存疾患などに応じて調整します。

シスプラチンでは腎機能への影響や聴力低下、末梢神経障害などに注意する必要があります。腎機能が低下している場合や、大量の補液が身体への負担になる場合には、シスプラチンを含む治療が適さないことがあります。国立がん研究センターも、胆道がん薬物療法におけるシスプラチン特有の副作用として腎臓への負担、難聴、手足のしびれなどを挙げています。

そのような場合には、ゲムシタビン+S-1(GS療法)など別の治療を検討することがあります。

国内のJCOG1113試験では、進行・再発胆道がんに対するGS療法はGC療法に全生存期間で劣らないことが示されました。またGS療法では、シスプラチンのような補液を必要としないという違いがあります。この試験には胆のうがん患者も含まれています。

免疫チェックポイント阻害薬についても、自己免疫疾患の状態などによって慎重な判断が必要になる場合があります。したがって、「標準治療をそのまま使えない=治療そのものができない」ではありません。

参考:JCOG1113/FUGA-BT|GS vs GC

黄疸や胆管炎がある場合は先に状態を整えることがある

胆のうがんが胆管へ広がったり周囲から胆管を圧迫したりすると、胆汁が流れにくくなり、黄疸や胆管炎を起こすことがあります。

強い黄疸や胆管炎がある状態では、そのまま薬物療法を始めることが難しい場合があります。2025年版ガイドラインでも、閉塞性黄疸を伴う切除不能胆道がんで、どの程度まで減黄してから薬物療法を開始するかがCQ(臨床的課題項目)として独立しています。

そのため必要に応じて胆管ステントなどによる胆道ドレナージや感染症治療を行い、胆汁の流れや肝機能、全身状態を整えてから薬物療法へ進みます。国立がん研究センターも、胆道閉塞が手術や薬物療法を妨げる場合に胆道ドレナージを行うと説明しています。

参考:国立がん研究センター|胆道がん 治療

二次治療以降は「前の治療」とバイオマーカーを確認する

一次治療を続けていても、がんが再び大きくなったり、新しい転移が出たりすることがあります。その場合には二次治療以降を検討します。

海外のABC-06試験では、GC療法後に進行した胆道がんに対して、フルオロウラシル、レボホリナート、オキサリプラチンを組み合わせるFOLFOX療法を行うことで、症状への治療だけを行う場合と比べて全生存期間が延長しました。この試験にも胆のうがんが含まれています。なお、ABC-06試験はGC療法後を対象とした試験であり、現在一次治療で用いられるGC療法+免疫チェックポイント阻害薬の治療後を直接検証した試験ではありません。

現在の二次治療では、単に「次の抗がん剤」を選ぶだけではありません。

2026年の3学会合同手引きでは、胆道がんには治療につながる複数のバイオマーカーがあり、切除不能・再発例では分子異常に応じた治療を検討することが重視されています。特に胆のうがんでは、次章で説明するHER2が治療選択につながる可能性があります。

参考:ABC-06|二次治療FOLFOX

胆のうがんのバイオマーカー・遺伝子検査

進行・再発胆のうがんでは、同じ病名であっても、がん細胞が持つ遺伝子異常やタンパク質の特徴が患者さんごとに異なります。こうした特徴をバイオマーカーとして調べることで、特定の分子標的薬や免疫療法が治療候補になる場合があります。

2026年8月に肝癌研究会・日本肝胆膵外科学会・日本胆道学会が合同で公表した『胆道癌患者におけるバイオマーカー検査の手引き Ver.1.0』では、FGFR2、IDH1、HER2、BRAF V600E、MSI-High/dMMR、TMB-High、NTRK、RET、ALKなど、胆道がんで治療につながるバイオマーカーと検査方法が整理されています。

参考:3学会合同|胆道癌患者におけるバイオマーカー検査の手引き(2026年8月 Ver.1.0)

胆のうがんではHER2が重要な治療標的の一つ

HER2は、細胞表面に存在し、細胞増殖に関わるシグナルを伝えるタンパク質です。HER2をつくるERBB2遺伝子が増幅したり、HER2タンパク質が過剰に発現したりすると、がん細胞の増殖に関係する場合があります。

HER2異常の頻度は胆道がんの発生部位によって異なります。

2026年の3学会合同手引きでは、HER2タンパク過剰発現または遺伝子増幅は胆道がん全体でおおむね5~15%程度、胆のうがんでは10~20%程度とする報告があると整理されています。C-CATのデータでも、検査方法によって割合は異なるものの、組織CGP全体では胆のうがんのHER2遺伝子増幅は17.6%でした。

そのため胆のうがんは、胆道がんの中でもHER2標的治療につながる可能性を比較的検討しやすい病型の一つです。

ただし、この「10~20%」という数字を、「胆のうがん患者の5人に1人が必ずHER2治療を受けられる」と解釈することはできません。検査方法や対象集団によって頻度が異なり、実際の治療にはHER2の判定方法、これまでの治療、薬剤の適応条件なども関係します。

HER2陽性とHER2遺伝子増幅は完全に同じ意味ではない

HER2については、言葉を分けて理解する必要があります。

HER2タンパク過剰発現は、IHC(免疫組織化学染色)を使って、がん細胞表面にHER2タンパク質がどの程度発現しているかを調べます。

一方、HER2遺伝子増幅は、FISHなどによってERBB2遺伝子のコピー数が増えているかを評価したり、CGPなどの遺伝子解析で調べたりします。2026年手引きでは、IHC、FISH、CGPがHER2異常を評価する方法として整理されています。

そのため「HER2陽性」「HER2タンパク過剰発現」「HER2遺伝子増幅」は関連する概念ですが、検査方法まで含めれば完全な同義語ではありません。どの結果を用いて薬を選べるかは、対象となる薬剤の承認条件や承認された検査法を確認する必要があります。

HER2異常が確認された場合の治療候補

HER2異常が確認された場合には、異常の種類や検査方法、これまでに受けた治療などを確認し、HER2を標的とする治療が選択肢になるかを検討します。

2026年3月、日本ではトラスツズマブ デルクステカン(T-DXd)「HER2陽性の進行・再発の固形癌(標準的な治療が困難な場合に限る)」という適応が追加されました。胆のうがんでも、HER2の判定とその他の適応条件を満たす場合には治療候補となります。

ただし、HER2に何らかの異常が見つかれば、すべてT-DXdの適応になるわけではありません。実際に治療へつなげられるかは、HER2の異常の種類、検査法、前治療、病状などを確認して判断します。

参考:PMDA|トラスツズマブ デルクステカン(エンハーツ)

HER2以外にも治療につながるバイオマーカーがある

2026年の3学会合同手引きでは、胆道がんで保険適用薬につながり得るバイオマーカーとして、次のような分子異常が整理されています。

なお、以下には「胆のうがん」という病名そのものを対象として承認されている治療だけでなく、特定の遺伝子異常などを持つ固形がんを横断的に対象とする治療も含まれます。異常が見つかっただけで直ちに薬を使用できるわけではなく、前治療、病状、使用した検査法、コンパニオン診断の条件などを確認する必要があります。

バイオマーカー 胆のうがんでの考え方 条件を満たした場合に検討される治療
HER2遺伝子増幅・HER2陽性 胆道がんの中では胆のうがんで比較的みられやすい 条件を満たせばT-DXdなどHER2を標的とした治療につながる場合がある
BRAF V600E 一部の胆道がんでみられる ダブラフェニブ+トラメチニブが候補になる場合がある
MSI-High/dMMR 頻度は高くないが、免疫療法の選択に関係する 条件を満たせばペムブロリズマブが候補になる
TMB-High 腫瘍の遺伝子変異量を示す指標 条件を満たせばペムブロリズマブが候補になる
NTRK融合遺伝子 まれ TRK阻害薬が候補になる場合がある
RET融合遺伝子 非常にまれ セルペルカチニブが候補になる場合がある
ALK融合遺伝子 非常にまれ アレクチニブが候補になる場合がある

FGFR2・IDH1は胆管がんほど胆のうがんの中心的な標的ではない

胆管がんの記事ではFGFR2融合とIDH1変異を詳しく扱いました。

これは、FGFR2融合やIDH1変異が主に肝内胆管がんで特徴的にみられる分子異常だからです。これに対して胆のうがんでは、HER2異常の方が比較的多く報告されています。3学会合同手引きでも、HER2異常は胆のうがん・肝外胆管がんに比較的多く、肝内胆管がんでは頻度が低いという分布が示されています。

ただし、胆のうがんだからFGFR2やIDH1を絶対に調べる意味がないということではありません。CGPでは多くの遺伝子をまとめて解析するため、個々の患者さんで治療につながる異常が見つかる可能性を広く探索できます。

バイオマーカー検査・がん遺伝子パネル検査・CGPは目的が異なる

「遺伝子検査を受けた」と言われても、何を調べたかは検査によって異なります。

バイオマーカー検査は、薬の効果などに関係する「目印」を調べる広い概念で、遺伝子だけでなくHER2タンパク質の発現なども含まれます。

がん遺伝子パネル検査は、多数の遺伝子を一度に解析する検査方法です。

そのパネル検査を使い、特定の薬だけを前提にせず治療候補や臨床試験につながる異常を幅広く探索することをCGP(包括的がんゲノムプロファイリング)と呼びます。

一方、特定の薬を使えるか判断するための検査はコンパニオン診断です。一部のがん遺伝子パネル検査は、CGPとしてだけでなくコンパニオン診断としても使用できるため、「パネル検査=CGP」と完全に同義ではありません。2026年手引きでも、この違いを踏まえた検査の使い分けが説明されています。

バイオマーカー検査は次の治療に間に合う時期を考える

進行・再発胆道がんでは、標準治療がすべて終了してから初めてバイオマーカー検査について考えればよいとは限りません。次の治療選択に検査結果を生かせるよう、早い段階から「どの検査を、いつ行う可能性があるのか」を主治医と相談し、手術標本など利用できる検体について確認しておくことが役立ちます。

ただし、早い段階からCGPについて相談することと、実際に保険診療でCGPを実施できる時期は同じではありません。2026年8月時点では、保険診療によるがん遺伝子パネル検査には、標準治療がない、または標準治療の終了が見込まれる固形がんであることなどの条件があります。

そのため「今の治療を決めるために必要なバイオマーカー検査」「将来CGPを行う場合に備えた検体や検査計画」「実際に保険診療でCGPを実施できる時期」を分けて考えることが大切です。

参考:3学会合同|胆道癌患者におけるバイオマーカー検査の手引き(2026年8月 Ver.1.0)

胆のうがんの放射線治療・症状を和らげる治療

胆のうがんでは、根治を目指せる場合には手術、切除不能・再発では薬物療法が治療の大きな柱になります。

放射線治療を行う場合もありますが、切除不能胆のうがんの全患者さんに一律に行う標準治療という位置づけではありません。

2025年版胆道癌診療ガイドラインでは「切除不能胆道がんに放射線治療または化学放射線療法は有用か」と「胆道がん切除例に対する術後放射線療法・術後化学放射線療法は有用か」がFRQ(フューチャー・リサーチ・クエスチョン:将来の研究課題)として、今後さらに検証が必要な課題に位置づけられています。

参考:胆道癌診療ガイドライン 第4版

遠隔転移がない局所進行例で放射線治療を検討することがある

手術できない胆のうがんでも、理由が「遠隔転移」ではなく、周囲の血管や臓器へ局所的に広がっているためという場合があります。このような遠隔転移のない局所進行胆道がんでは、薬物療法とともに放射線治療や化学放射線療法を検討することがあります。

国立がん研究センターも、手術できない胆道がんで遠隔転移がない場合には、がんの進行を遅らせることなどを目的として放射線治療を行う場合がある一方、現時点では有効性が十分に証明された標準治療ではないと説明しています。

放射線治療を提案された場合には、根治、局所制御、症状緩和のどの目的で行うのか、薬物療法とどのように組み合わせるのかを確認するとよいでしょう。

痛みなどを和らげるために放射線治療を行うことがある

放射線治療には、がんを完全に消すことだけでなく、症状を軽減する目的もあります。たとえば骨転移によって強い痛みがある場合には、転移した場所へ放射線を照射し、痛みを和らげる治療を行うことがあります。

「緩和目的の放射線治療」と説明されても、それだけで抗がん治療をすべて終了するという意味ではありません。全身薬物療法を続けながら、特定の病変による症状を放射線で軽減する場合もあります。

参考:国立がん研究センター|胆道がん 治療

胆管が塞がって黄疸がある場合は胆道ドレナージを行うことがある

進行した胆のうがんが胆管へ浸潤したり周囲から圧迫したりすると、胆汁の流れが妨げられ、黄疸や胆管炎が生じることがあります。

この場合には、胆管へステントを入れるなどして胆汁を流す胆道ドレナージを行うことがあります。ドレナージはがんを消す治療ではありませんが、黄疸や感染を改善し、薬物療法を安全に続けるために必要になる場合があります。

薬物療法がよく効いた後に手術を再評価する場合がある

最初は切除不能と判断された胆のうがんでも、薬物療法によって腫瘍が縮小し、新しい遠隔転移が現れない状態が続くなどした場合には、手術で完全切除できる可能性を改めて評価することがあります。

このように、当初は切除不能だったがんに対して治療後に手術を検討する考え方をコンバージョン手術と呼びます。

ただし「抗がん剤が効けば手術する」という確立した一律の治療ではありません。2025年版胆道癌診療ガイドラインでも、切除不能胆道がんに対するコンバージョン手術はFRQ(将来の研究課題)として、今後さらに検証が必要な課題です。

薬物療法がよく効いている場合には、腫瘍の大きさだけでなく、肝臓や血管・周囲臓器との関係、リンパ節や遠隔転移、全身状態を改めて評価し、R0切除を目指せるかを検討します。

胆のうがん治療後の生活と治療の副作用

胆のうがんの治療後にどのような生活になるかは、胆のうだけを摘出したのか、肝臓や胆管まで一緒に切除したのか、その後に薬物療法を受けているのかによって大きく異なります。

術後の回復や生活への影響は、胆のう摘出のみか、肝切除・胆管切除などを伴うかによって大きく異なります。国立がん研究センターも、胆道がんでは手術範囲の違いによる術後の合併症として肝不全、胆汁漏、胆管炎などが起こる可能性を説明しています。

参考:国立がん研究センター|胆道がん 療養

胆のうを摘出しても生活できるのはなぜか

胆のうは胆汁をつくる臓器ではなく、肝臓でつくられた胆汁を一時的にためて濃縮する臓器です。

胆のうを摘出した後も肝臓では胆汁がつくられ続け、胆汁は肝臓から胆管を通って直接十二指腸へ流れます。そのため、胆のうがなくても消化そのものができなくなるわけではありません。

単純な胆のう摘出だけであれば、多くの人は長期的に特別な食事制限を必要とせず、通常の健康的な食生活へ戻れます。一方、胆のうがんでは肝切除や胆管切除などを追加していることもあります。その場合は、単純な胆石手術後と同じ回復経過とは限りません。

参考:NHS|Recovering from gallbladder removal

手術直後は少量ずつ食べ、脂肪の取りすぎを避ける

胆のう摘出後は、これまで胆のうにためていた胆汁が持続的に腸へ流れるようになります。術後しばらくは、一度に大量の食事や脂肪分の多い食事を取ると、下痢や腹部不快感などが起こる人もいます。

国立がん研究センターは胆道がん治療後の一般的な食生活として、一度の量を少なめにして回数を分ける、脂肪を取りすぎない、良質なタンパク質を取ることなどを案内しています。ただし、胆のうを取ったから一生脂肪をほとんど食べてはいけないという意味ではありません。単純な胆のう摘出後には特別な低脂肪食を長期間続ける必要がないとする患者向け医療情報もあり、実際には手術範囲や症状に合わせて調整します。

下痢、腹痛、食欲不振、体重減少などが続く場合には、自己判断で食事を大きく制限するより、医師や管理栄養士へ相談します。

参考:Guy’s and St Thomas’ NHS|胆のう摘出後の食生活

肝切除や胆管切除まで行った場合は回復の負担が大きくなる

T2以降などで胆のうに接する肝臓を切除した場合には、胆のう摘出だけの場合より手術侵襲が大きくなります。

大きな肝切除では、一時的に肝機能が低下したり、黄疸や腹水などを伴う肝不全が問題になったりすることがあります。また胆管を切除して腸とつないだ場合には、胆汁漏や術後胆管炎などが起こることがあります。

また、膵臓を含む手術を行った場合には、膵液がつないだ部分などから漏れる膵液漏が起こることもあります。どの合併症に注意する必要があるかは予定している手術によって異なるため、手術前には「自分の術式で特に起こりやすい合併症は何か」まで確認しておくとよいでしょう。

退院後に高熱、黄疸、強い上腹部痛などが出た場合には、単なる手術後の疲れとして様子を見るのではなく、治療を受けた医療機関へ相談します。胆管と腸をつないだ手術後の胆管炎は退院後にも起こる可能性があります。

参考:国立がん研究センター|胆道がん 治療

S-1では食欲・下痢・口内炎などが生活に影響することがある

術後補助化学療法などで使用するS-1では、血球減少に加えて、食欲低下、下痢、口内炎、皮膚症状、涙目などが起こることがあります。

手術後はもともと食事量や体重が落ちていることがあります。その状態に下痢や口内炎が加わると、脱水や栄養低下によって治療を予定どおり続けにくくなる場合があります。

飲み薬だから点滴より副作用が軽いとは限りません。

食事や水分が十分取れない、下痢が続く、口内炎で食べられない、強い倦怠感があるといった場合には、我慢して服用を続けるのではなく治療施設へ相談します。副作用の程度によって休薬や減量などを調整します。

ゲムシタビン・シスプラチンでは血球減少や腎機能に注意する

ゲムシタビンやシスプラチンでは、白血球・好中球・血小板の減少、貧血、食欲低下、吐き気、倦怠感などが起こることがあります。

シスプラチンでは腎機能への影響、難聴、手足のしびれなどにも注意します。ゲムシタビンでは頻度は高くないものの間質性肺炎が起こる可能性があります。

薬物療法中に発熱した場合には、好中球減少に伴う感染症だけでなく、胆管が塞がっている患者さんでは胆管炎も考える必要があります。

患者さん自身で原因を区別するのは難しいため、高熱や悪寒がある場合には「抗がん剤の副作用だろう」と自己判断せず治療施設へ連絡することが必要です。

免疫チェックポイント阻害薬では臓器の炎症に注意する

デュルバルマブやペムブロリズマブは、免疫ががんを攻撃する働きを利用する薬です。

そのため、通常の抗がん薬とは異なり、免疫反応が正常な臓器へ及ぶことで、肺、腸、肝臓、甲状腺、副腎などさまざまな場所に炎症や機能障害が起こることがあります。

2026年6月のデュルバルマブ胆道がん最適使用推進ガイドラインでも、間質性肺疾患、肝機能障害・肝炎、甲状腺機能異常、副腎機能障害などが報告されています。また、免疫反応による副作用が疑われる場合には専門医と連携して対応する必要があるとされています。

新しい咳や息切れ、続く下痢、強い倦怠感、急な体重変化など、これまでと違う症状が出た場合には早めに医療機関へ伝えます。

参考:PMDA|最適使用推進ガイドライン

HER2標的治療では間質性肺疾患に特に注意する

HER2陽性の進行・再発胆のうがんでT-DXdを使用する場合には、間質性肺疾患が特に重要な副作用です。

2026年3月の国内添付文書では、T-DXdによる間質性肺疾患で死亡した症例が報告されていることが警告され、投与開始前の胸部CT、投与中の呼吸困難・咳・発熱などの確認、胸部画像検査などが求められています。

HERB試験でもHER2陽性胆道がんへのT-DXd投与で間質性肺疾患が認められており、3学会合同手引きでも慎重なモニタリングが必要とされています。

したがって、治療中に新しく咳が出る、息切れする、発熱が続くといった変化があれば、風邪だと決めつけず早めに治療施設へ相談します。

参考:PMDA|トラスツズマブ デルクステカン

緩和ケア・支持療法は抗がん治療と並行して行う

胆のうがんでは、痛み、食欲不振、体重減少、黄疸、かゆみ、倦怠感など、がん自体の症状に加えて、手術や薬物療法による負担も生じます。

こうした問題を和らげる緩和ケアや支持療法は、診断時から治療と並行して受けることができます。

支持療法には、がんによる症状や治療の副作用・合併症・後遺症を軽減する治療やケアも含まれます。食べられない、痛みで眠れない、治療を続ける体力が落ちている、不安のため日常生活に支障があるといった問題も相談の対象です。

胆のうがんの治療では、画像上のがんを小さくすることだけでなく、治療を続けられる身体の状態を保ち、日常生活への負担をできるだけ軽くすることも治療の一部として考えます。

参考:国立がん研究センター|緩和ケア
胆のうがんのステージ別5年生存率

胆のうがんの予後を調べると「ステージ1なら何%」「ステージ4ではどのくらい生きられるのか」といった生存率の数字を目にすることがあります。

国立がん研究センターの院内がん登録では、2014~2015年に胆のうがんと診断された患者さんについて、ステージ別の5年生存率が公表されています。ここでは、がん以外の死因の影響を統計学的に調整した5年ネット・サバイバルを中心に示します。

ステージ 5年実測生存率 5年ネット・サバイバル
Ⅰ期 77.9% 87.2%
Ⅱ期 62.8% 71.4%
Ⅲ期 17.8% 19.9%
Ⅳ期 2.0% 2.1%

※国立がん研究センター「院内がん登録2014~2015年5年生存率」の胆のうがんデータ。対象は3,009人、生存状況把握割合は98.6%です。
参考:国立がん研究センター|胆のうがん 2014~2015年5年生存率

ネット・サバイバルは「胆のうがんだけが死亡に影響すると仮定した生存率」

実測生存率は、胆のうがん以外の病気や事故などによる死亡も含めて、実際にどのくらいの患者さんが生存していたかを示します。

一方、ネット・サバイバルは、一般人口の死亡率などを用いて、胆のうがん以外の死亡の影響を統計学的に取り除いた指標です。国立がん研究センターでは、2014~2015年診断例の5年生存率からネット・サバイバルを採用しています。

そのため、この記事ではがんそのものの予後を比較する目的ではネット・サバイバルを中心に見ますが、どちらも個人の寿命を直接予測する数字ではありません。

Ⅰ・Ⅱ期とⅢ期以降で生存率が大きく異なるのはなぜか

上の統計では、Ⅰ期・Ⅱ期とⅢ期以降で5年生存率に大きな差があります。

胆のうがんでは、がんが胆のう壁の浅い範囲にとどまっている段階では完全切除を目指しやすい一方、胆のう壁を越えて肝臓や周囲臓器へ広がったり、リンパ節転移が加わったりすると、手術でがんを完全に取り切ることが難しくなります。

ただし「現在のステージⅢなら5年生存率19.9%」とそのまま置き換えることはできません。

この生存率集計で用いられた2014~2015年診断例の病期はUICC TNM第7版です。一方、本記事のステージ章で説明した現在の国立がん研究センター患者向け病期表はUICC TNM第8版です。第8版ではT2が腹腔側T2aと肝臓側T2bに分けられるなど病期分類が変更されているため、生存率表のⅠ~Ⅳ期と現在の病期を一対一で対応させることはできません。

生存率表を見るときの注意

本記事のステージ解説:UICC TNM第8版
上記の2014~2015年生存率:UICC TNM第7版

病期分類の版が異なるため、現在のT2a・T2bなどを上記の生存率へ直接当てはめることはできません。

参考:国立がん研究センター|胆道がん 治療UICC|TNM Publications and Resources

5年生存率は「あと何年生きられるか」を示す数字ではない

たとえばⅣ期の5年ネット・サバイバルが2.1%だからといって、「ステージ4なら5年生きられる確率は自分の場合も2.1%」と判断することはできません。

生存率は、特定の年代に診断された多数の患者さんを集計した統計です。同じステージでも、局所進行なのか遠隔転移があるのか、どこへ転移しているのか、年齢や体力、肝機能・腎機能、治療への反応、がんが持つ分子異常などによって病状は異なります。さらに胆のうがんでは、ステージ番号だけでなく、手術で完全切除できるかどうかも予後に大きく関係します。

生存率は「自分の余命」を示すものではなく、同じ病気を持つ患者集団の治療成績を理解するための参考値として見る必要があります。

2014~2015年の統計には現在の治療が十分に反映されていない

もう一つ確認したいのが、診断された年代です。

上記の患者さんが診断されたのは2014~2015年です。その後、根治切除後の胆道がんではJCOG1202/ASCOT試験によってS-1術後補助療法が標準治療となりました。

切除不能胆道がんでも、2022年以降はデュルバルマブを含む免疫療法が国内診療へ導入され、2026年6月にも胆道がんの最適使用推進ガイドラインが改訂されています。

さらに2026年8月の3学会合同手引きでは、HER2、BRAF V600E、MSI-High/dMMR、TMB-High、NTRK、RETなど、胆道がんで治療選択につながる複数のバイオマーカーが整理されています。

したがって、2014~2015年の生存率は、現在使われている術後補助療法、免疫療法、分子標的治療などが十分普及する前の患者集団の成績です。

過去の数字を必要以上に楽観視することも悲観視することもせず「現在自分にどの治療が可能なのか」と合わせて考える必要があります。

胆のうがんの再発・経過観察

胆のうがんを手術で完全に切除した後も、再発がないか、手術から身体が回復しているかを確認するために定期的な経過観察を行います。

国立がん研究センターでは、胆道がん治療後の検査頻度はがんの進行度や治療法によって異なり、問診、血液検査、腫瘍マーカー検査を行い、必要に応じて腹部超音波やCTなどの画像検査を行うとしています。

一方、2025年版『胆道癌診療ガイドライン 改訂第4版』では「胆道癌に対する術後経過観察はどのように行うか」がFRQ(将来の研究課題)として位置づけられています。つまり、すべての患者さんに共通する最適な検査間隔や検査方法が十分なエビデンスによって一つに決まっているわけではありません。

参考:胆道癌診療ガイドライン 第4版

胆のうがんは肝臓・リンパ節・肺・腹膜などに再発することがある

胆道がんは、周囲のリンパ節、肝臓、肺などへ転移することがあり、手術後には切除した場所やその周囲へ再び現れる局所再発や、腹膜へがん細胞が広がる腹膜播種として再発することがあります。

胆のうがんは肝臓に接しているため、肝臓の再発についても画像検査で確認します。ただし「肝臓に影がある=胆のうがんの再発」と決めることはできず、CTやMRIなどから病変の性質を評価します。

再発する場所や数によって治療方針は異なりますが、再発胆道がんでは多くの場合、全身へ作用する薬物療法を検討します。骨転移による痛みなどには、症状を和らげる目的で放射線治療を行う場合もあります。

腹膜播種の治療法や診断については、以下の記事で解説しています。

術後は血液検査・腫瘍マーカー・画像検査などを組み合わせて経過を見る

経過観察では、黄疸、腹痛、食欲、体重、発熱などの変化を確認します。

血液検査では、ビリルビンなど肝臓・胆道に関係する値を確認し、CA19-9やCEAなどの腫瘍マーカーを測定する場合があります。また、必要に応じて腹部超音波やCTなどを行い、再発を疑う病変がないか調べます。

検査の頻度は、手術時のステージ、病理結果、リンパ節転移や切除断端、術後補助化学療法を受けているか、手術からどの程度時間が経過しているかなどによって変わります。

他の胆のうがん患者さんとCTの頻度が違うことだけで「自分は十分な経過観察を受けていない」と判断することはできません。

参考:国立がん研究センター|胆道がん 療養

CA19-9だけで胆のうがんの再発を判断しない

胆のうがんの経過観察ではCA19-9を測定する場合がありますが、CA19-9の値だけで再発を確定することはできません。

CA19-9は胆道がんで利用される腫瘍マーカーですが、胆汁の流れが悪い場合や炎症がある場合などにも変動することがあります。反対に、がんがあっても数値が高くならない患者さんもいます。

そのため、以下を組み合わせて再発の可能性を評価します。

腫瘍マーカーの推移
+症状
+肝胆道系の血液検査
+CTなどの画像所見

CA19-9が以前より上昇した場合には「再発した」と数字だけで結論づけるのではなく、原因を調べるための追加評価が必要です。

再発した場合は手術時のステージではなく「現在の病状」から治療を考える

たとえば最初の手術時に「ステージⅡ」と診断されていた患者さんが、その後に肺や肝臓へ再発した場合、再び「ステージⅡの治療」を行うわけではありません。

再発時には、どこに再発しているのか、病変はいくつあるのか、遠隔転移があるのか、それまでにどの薬を使ったのか、現在どの程度の体力や臓器機能が保たれているのかを改めて評価します。再発胆道がんでは薬物療法が治療の中心になります。

再発が見つかったときには「最初は何期だったか」だけでなく、「今どこに、どの程度の病変があり、現在どの治療を選べる状態なのか」を整理することが治療選択につながります。

再発時にはHER2などのバイオマーカー情報も確認する

現在の胆のうがん治療では、再発した場所だけでなく、がん細胞が持つ分子異常も次の治療に影響する場合があります。

2026年8月の3学会合同手引きでは、胆道がんは治療薬に直結するバイオマーカーが多いがん種の一つとされ、HER2遺伝子増幅、BRAF V600E、MSI-High/dMMR、TMB-High、NTRK融合、RET融合などが治療選択と関係するものとして整理されています。

特に胆のうがんでは、これまで説明したようにHER2異常が比較的多く報告されています。

そのため再発時には、「以前バイオマーカー検査を受けているか」「何を調べたのか」「保存されている手術標本を使って追加検査できるか」を確認する価値があります。

過去に「遺伝子検査済み」と説明されていても、すべてのバイオマーカーを評価したとは限りません。3学会合同手引きでも、検査方法によって評価できる遺伝子や薬の適応判定に利用できる結果が異なることが整理されています。

参考:2026年バイオマーカー検査の手引き

気になる症状があれば次の定期検査まで待たない

経過観察は、予定されたCTの日まで待つことだけではありません。

国立がん研究センターでは、胆道がんの経過観察で黄疸、腹部痛、食欲の変化などを確認し、気になる症状があれば担当医へ伝えるよう案内しています。

たとえば、これまでなかった黄疸、続く腹痛、原因の分からない体重減少、食欲低下、高熱などが現れた場合には、再発のほか、治療の副作用や胆道の感染などさまざまな原因が考えられます。

症状が出たから再発とは限りませんが、定期検査の予約日まで必ず待つ必要もありません。新しい症状や急な変化があれば、治療を受けている医療機関へ相談します。

胆のうがんの治療を選ぶときに確認したいこと

胆のうがんでは、「ステージはいくつか」だけを確認しても、自分に提案された治療の全体像が分からないことがあります。

治療を左右するのは、胆のう壁への深達度、肝臓や胆管への広がり、リンパ節・遠隔転移、手術で完全切除できる可能性、手術後の病理結果、バイオマーカーなど複数の情報だからです。国立がん研究センターも、胆道がんでは病期に加え、手術可能性を評価して治療を決定しています。

特に胆のうがんでは、胆石などの手術後に初めてがんが判明する患者さんもいるため、「これから最初の手術を受ける場合」と「すでに胆のうを摘出した後に追加治療を考える場合」では、確認する内容も少し異なります。

確認したいこと なぜ治療選択に関係するのか
がんは胆のう壁のどこまで入り込んでいるか T1a・T1b・T2などの深達度によって、胆のう摘出だけでよいか、肝切除やリンパ節郭清などを検討するかが変わるため
T2の場合、T2aかT2bか 腹腔側と肝臓側では病変の位置関係が異なり、手術や病期評価を理解する材料になるため
肝臓・胆管・十二指腸などへ広がっているか 胆のう以外の臓器をどこまで一緒に切除する必要があるかに関係するため
リンパ節転移・遠隔転移はあるか 手術で根治を目指せるか、全身薬物療法を中心にするかを判断する材料になるため
手術でR0切除を目指せるか 肉眼だけでなく顕微鏡的にもがんを残さない完全切除を目指せるかが手術適応を考えるうえで重要なため
胆のう摘出後に偶然がんが見つかった場合、深達度はどこまでか 特にss以上では追加切除を検討する臨床課題となるため
胆のう管断端などの切除断端は陰性か 最初の手術でがんが残っている可能性や追加切除の必要性を考える材料になるため
術後S-1が勧められる理由は何か 深達度、リンパ節、切除断端などから再発リスクを考え、術後補助化学療法の利益と負担を判断するため
切除不能の場合、手術できない理由は何か 遠隔転移なのか、局所の血管・臓器浸潤なのかによって病状やその後の治療の考え方が異なるため
HER2などのバイオマーカーを調べているか 進行・再発時に分子標的治療や免疫療法など別の治療候補につながる場合があるため

2025年版胆道癌診療ガイドラインでは、外科切除の可否を治療アルゴリズムの最初の分岐とし、胆のうがんについては、肝外胆管切除、肝切除、胆のう摘出後にss以上と判明した場合の追加切除などが独立した臨床課題として扱われています。

胆のうがんの治療説明を受ける際には、治療名だけでなく「なぜその治療が必要なのか」を確認することが役立ちます。手術では切除する臓器とその理由、切除不能・再発例では現在の治療だけでなく次の治療候補やバイオマーカー検査の状況まで確認すると、今後の治療計画を整理しやすくなります。

参考:胆道癌診療ガイドライン 第4版国立がん研究センター|胆道がん 治療NCI|Gallbladder Cancer Treatment PDQ

胆のうがんでは「壁のどこまで広がったか」が治療を左右する

胆のうがんの治療では、ステージだけでなく、がんが胆のう壁のどこまで入り込んでいるか、肝臓や胆管などへ広がっているか、手術で完全切除を目指せるかが重要な判断材料になります。

胆のう摘出後に偶然がんが見つかった場合には、深達度や切除断端、転移の有無を確認して追加手術の必要性を判断します。切除不能・再発例では、薬物療法に加えてHER2などのバイオマーカー情報が治療選択につながることもあります。

治療法を選ぶ際には、一つの数字や薬の名前だけで判断するのではなく、現在の病状と、その治療が何を目的として行われるのかを主治医と確認しながら治療計画を整理していきましょう。