”新しい未来をともに”最先端のがん治療を追求するがん治療専門クリニック ”新しい未来をともに”最先端のがん治療を追求するがん治療専門クリニック

遠位胆管がんdistal-cholangiocarcinoma

胆道がんは、肝臓でつくられた胆汁が流れる「胆道」に発生するがんの総称です。

一つのがんの名前ではなく、発生する場所によって、肝内胆管がん、肝門部領域胆管がん、遠位胆管がん、胆のうがん、十二指腸乳頭部がんなどに分けられます。国立がん研究センターも、これらをそれぞれ異なる病型として分類しています。

同じ「胆道がん」であっても、病変ができた場所が違えば、症状の出方も大きく変わります。肝門部領域胆管がんや遠位胆管がん、十二指腸乳頭部がんでは、胆汁の流れが妨げられて黄疸が発見のきっかけになることがあります。一方、肝内胆管がんや胆のうがんは、早い段階では自覚症状がないことも少なくありません。

さらに、発生場所によってステージ分類も手術方法も異なります。肝内胆管がんなら肝切除、遠位胆管がんや十二指腸乳頭部がんなら膵頭十二指腸切除、胆のうがんなら胆のう摘出を基本として必要に応じて肝切除などを組み合わせるというように、同じ胆道がんでも治療内容には大きな違いがあります。

一方、切除不能・再発例の薬物療法や術後補助化学療法など、複数の病型に共通して考えられる治療もあります。また近年は、がんが持つ遺伝子異常やタンパク質などのバイオマーカーも治療選択に関係するようになっています。

この記事では、胆道がんの種類と胆管がん・胆のうがんとの違いから、原因、症状、検査、ステージ、手術、胆道ドレナージ、薬物療法、バイオマーカー、生存率、再発後の治療まで順番に解説します。

参考:国立がん研究センター「胆道がんについて」

  • 胆道がんは一つのがんではなく、胆管・胆のう・十二指腸乳頭部などに発生するがんの総称
  • 発生場所によって症状、ステージ分類、手術方法が大きく異なる
  • 治療では病名やステージだけでなく「手術で完全に取り切れるか」を確認する

胆道がんとは何か

胆道とは、肝臓でつくられた胆汁を十二指腸まで運び、必要に応じて胆汁をためておくための経路や臓器をまとめた言葉です。

国立がん研究センターでは、胆道を大きく胆管、胆のう、十二指腸乳頭の3つに分けています。

胆汁は胆管を通って十二指腸へ流れる

肝臓の中には細い胆管が木の枝のように広がっています。これらが徐々に合流して太くなり、肝臓の出口で左右の肝管から総肝管へつながります。

その先で、胆のうとつながる胆のう管が合流すると総胆管となり、総胆管は膵臓の中を通って十二指腸へ向かいます。胆管と膵管が十二指腸へ開く部分が十二指腸乳頭です。

流れを簡単にすると、次のようになります。

肝臓の中の胆管
↓
左右の肝管・総肝管
↓
総胆管
↓
十二指腸乳頭
↓
十二指腸

胆のうは胆汁が必ず通る臓器ではなく、胆のう管を介して胆管につながり、胆汁を一時的にためて濃縮する袋状の臓器です。

食事をすると胆のうが収縮し、ためられていた胆汁が胆のう管から総胆管へ流れ、十二指腸へ送られます。胆汁は脂肪の消化や吸収を助けます。

胆道がんは一つの病気の名前ではない

胆道がんとは、この胆道を構成する胆管、胆のう、十二指腸乳頭などに発生するがんをまとめた総称です。

さらに胆管がんも、発生する位置によって分けられます。

胆道がん
├ 胆管がん
│ ├ 肝内胆管がん
│ └ 肝外胆管がん
│   ├ 肝門部領域胆管がん
│   └ 遠位胆管がん
├ 胆のうがん
└ 十二指腸乳頭部がん

したがって、「胆道がん」と「胆管がん」は同じ意味ではありません。

胆管がんは胆道がんの一部であり、胆のうがんや十二指腸乳頭部がんも胆道がんに含まれます。

胆管がんと胆のうがんでは見るべきポイントが違う

胆管がんでは、胆管のどこにがんがあるかによって、周囲にある血管や臓器との関係が変わります。そのため、肝内胆管がん、肝門部領域胆管がん、遠位胆管がんで、ステージ分類や手術方法も別々に考えます。

胆管がんについては、以下の記事で詳しく解説しています。

一方、胆のうがんでは、胆管のように「どこにできたか」だけでなく、がんが胆のう壁のどの層まで入り込んでいるのかが手術範囲を考える大きな判断材料になります。

胆のうがんについては、以下の記事で詳しく解説しています。

胆道がんの5つの病型

「胆道がん」という診断名だけでは、具体的な病状や治療方法まで判断することはできません。

国立がん研究センターは、胆道がんの病期について、肝内胆管がん、肝門部領域胆管がん、遠位胆管がん、胆のうがん、十二指腸乳頭部がんの5つに分けた病期表を掲載しています。

まず、それぞれの違いを整理します。

病型 発生する場所 症状の特徴 代表的な手術
肝内胆管がん 肝臓の中の胆管 早期には症状が出ないことも多い 肝切除
肝門部領域胆管がん 左右の肝管が合流する肝門部周辺 胆汁が流れにくくなり黄疸が出ることがある 肝切除+胆管切除など
遠位胆管がん 膵臓に近い側の胆管 閉塞性黄疸が発見のきっかけになることがある 膵頭十二指腸切除
胆のうがん 胆のう 早期には無症状のことが多い 胆のう摘出+必要に応じ肝切除・リンパ節郭清など
十二指腸乳頭部がん 胆管と膵管が十二指腸へ開く部分 黄疸や膵炎、それに伴う腹痛が起こることがある 膵頭十二指腸切除

症状と手術がこれだけ異なるのは、それぞれの病変の周囲にある臓器や血管が異なるためです。

肝内胆管がん|肝臓の中の胆管にできる

肝内胆管がんは、肝臓の中に張り巡らされた胆管から発生します。

肝臓から発生するため原発性肝がんの一つに分類され、「胆管細胞がん」と呼ばれることもあります。しかし肝細胞から発生する肝細胞がんとは別の病気であり、検査や治療法も異なります。

小さい段階では太い胆管を塞がないこともあり、黄疸などの症状が出ないまま、超音波やCTで肝臓の腫瘤として見つかる場合があります。

根治を目指せる場合には、がんがある部分を含めて肝臓を切除する肝切除が治療の中心になります。

肝門部領域胆管がん|胆管と重要な血管が集まる場所にできる

肝門部領域胆管がんは、左右の肝管が合流する肝門部付近に発生する胆管がんです。

この場所には胆管だけでなく、肝臓へ血液を運ぶ門脈や肝動脈などの重要な血管が集まっています。そのため、がんがどの胆管や血管へ広がっているかによって、手術可能性や切除する肝臓の範囲が変わります。

また、左右の肝臓から流れてきた胆汁が集まる場所に近いため、がんによって胆管が狭くなると黄疸が現れることがあります。

遠位胆管がん|膵臓に近い胆管にできる

遠位胆管がんは、肝門部より十二指腸側、特に膵臓に近い部分の胆管に発生します。

この部分の胆管は膵臓の中を通って十二指腸へ向かうため、根治手術では胆管だけを短く切除するのではなく、膵頭部や十二指腸などをまとめて切除する膵頭十二指腸切除が必要になることがあります。

また、細い胆管が塞がれることで閉塞性黄疸が起こり、皮膚や白目が黄色くなることが診断のきっかけになる場合があります。

胆のうがん|胆汁をためる胆のうにできる

胆のうがんは、肝臓の下にある袋状の臓器である胆のうから発生します。

早期には症状が出ないことが多く、胆石や胆のう炎、胆のうポリープを調べている際や、胆のう摘出後の病理検査で偶然見つかることもあります。

治療では、がんが胆のう壁のどこまで入り込んでいるかによって手術範囲が変わります。浅いがんなら胆のう摘出だけで治療できる場合がありますが、深く広がれば肝臓や胆管、リンパ節などの切除が必要になることがあります。

十二指腸乳頭部がん|胆管と膵管の出口にできる

十二指腸乳頭部は、胆汁を流す胆管と膵液を流す膵管が十二指腸へ開く部分です。ここにできるがんを十二指腸乳頭部がんと呼び、「乳頭部がん」「Vater乳頭部がん」と表記されることもあります。

乳頭部は胆汁と膵液の出口にあたるため、腫瘍によって流れが塞がれると黄疸だけでなく、膵液の流れが悪くなることで膵炎や腹痛が起こることがあります。

また、十二指腸の内側から観察できる場所にあるため、後述する内視鏡検査では腫瘍を直接観察し、組織を採取できる点も胆管がんや胆のうがんとの違いです。

根治手術では、膵頭部、十二指腸、下部胆管などを切除する膵頭十二指腸切除が標準的な手術となります。

自分がどの胆道がんなのかを確認する

「胆道がんです」と説明された場合、まず確認したいのは「具体的にどこから発生した胆道がんなのか」です。

「肝内胆管がん」なのか
「肝門部領域胆管がん」なのか
「遠位胆管がん」なのか
「胆のうがん」なのか
「十二指腸乳頭部がん」なのか

こうした違いによって、同じ「ステージⅡ」「ステージⅢ」という言葉でも意味する病状が違い、根治手術の方法も変わります。国立がん研究センターが病期表を5病型に分けているのも、このためです。

診断書などでは、肝内胆管がんが胆管細胞がん、肝門部領域胆管がんと遠位胆管がんがまとめて肝外胆管がんと書かれている場合もあります。

病名を確認することは単なる名称の確認ではありません。「どのステージ分類を見ればよいのか」「どの手術を考えるのか」「どの分子異常が比較的見つかりやすいのか」を理解する出発点になります。

胆道がんの原因・リスク・検診

胆道がんには、すべての患者さんに共通する一つの原因があるわけではありません。

胆管に慢性的な炎症が続く病気、胆道の生まれつきの構造異常、胆石など、発症リスクとの関連が知られている病気はいくつかありますが、明らかなリスク因子がない人にも胆道がんは発生します。

また、胆管がん、胆のうがん、十二指腸乳頭部がんでは、関連が知られている病気も同じではありません。

胆管がん|PSC・肝内結石など

胆管がんでは、原発性硬化性胆管炎(PSC)や肝内結石症など、胆管へ慢性的な炎症や胆汁うっ滞が起こる病気との関連が知られています。

また、膵管と胆管が通常とは異なる位置で合流する膵・胆管合流異常などの先天的な異常も胆道がんのリスクと関係します。

肝内胆管がんでは、肝硬変やB型・C型肝炎などの慢性肝疾患との関連も報告されています。

胆のうがん|胆石・胆のうポリープ・膵胆管合流異常など

胆のうがんでは、胆石症との関連が知られています。ただし、胆石がある人の大部分が胆のうがんになるわけではありません。

また胆のうポリープも、そのすべてががんではありません。大きさ、形、増大傾向、胆のう壁の変化などから、悪性の可能性を評価します。

膵・胆管合流異常では膵液が胆道へ逆流しやすくなり、胆のう粘膜が長期間刺激されるため、胆のうがんの発生リスクが高くなることが知られています。

十二指腸乳頭部がん|FAPとの関連が確認されている

十二指腸乳頭部がんの多くは散発的に発生し、一般の患者さんについて明確な原因を特定できるわけではありません。

一方、遺伝性疾患である家族性大腸腺腫症(FAP)では、十二指腸や十二指腸乳頭部に腺腫・がんを発症するリスクが一般人口より高いことが知られています。NCIの遺伝性大腸がんに関する解説でも、FAPに関連する大腸以外のがんとして十二指腸がんや乳頭部がんが挙げられています。

また、乳頭部にできる腺腫は、がんへ進展する可能性がある病変として扱われます。ただし、FAPがない人にも十二指腸乳頭部がんは発生します。「乳頭部がんになった=遺伝性の病気がある」という意味ではありません。

参考:NCI「Genetics of Colorectal Cancer(PDQ)」

リスク因子があっても胆道がんになるとは限らない

胆石、PSC、肝内結石、膵・胆管合流異常、FAPなどがあるからといって、必ず胆道がんになるわけではありません。反対に、こうした病気が一つもなくても胆道がんを発症することがあります。

したがって、リスク因子は「将来がんになるかどうかを決めるもの」ではなく、一般の人とは異なる経過観察や検査が必要かを考える材料として捉える必要があります。

一般人口を対象とした胆道がん検診はない

現在、胆道がんには、胃がん・大腸がん・肺がんなどのような国の指針に基づく対策型がん検診はありません。そのため、症状のない一般の人が毎年特定の検査を受ければ胆道がんを早期発見できる、という確立した方法はありません。

一方、PSCや膵・胆管合流異常、FAPなどの基礎疾患がある人は、その病気に応じた定期的な検査や診療を受けることがあります。これは一般人口を対象とした「胆道がん検診」とは別の考え方です。

症状がある場合は検診を探すのではなく受診する

皮膚や白目が黄色くなった、尿が濃くなった、便が白っぽくなった、右上腹部やみぞおちの痛みが続く、原因の分からない体重減少があるなどの症状がある場合には、胆道がん検診を探すのではなく医療機関を受診します。

特に黄疸に高熱や悪寒、強い腹痛を伴う場合には、胆汁がうっ滞して急性胆管炎を起こしている可能性もあります。胆管炎は重症化することがあるため、通常の定期受診まで待たず相談する必要があります。

参考:国立がん研究センター「胆道がん 予防・検診」

胆道がんの初期症状と進行時の症状

胆道がんの症状を理解するときには、「胆道がんならこの症状が出る」と一括りにしないことが必要です。

がんが胆汁の流れる太い胆管や十二指腸乳頭に発生すると、比較的小さな病変でも胆汁の通り道を塞ぐことがあります。一方、肝臓の中や胆のうに小さながんがある段階では、胆汁の本流が保たれ、特徴的な症状が現れない場合があります。

黄疸は胆汁の流れが塞がると起こる

胆道がんで代表的な症状の一つが黄疸です。

胆汁にはビリルビンという黄色い色素が含まれています。本来は胆汁と一緒に胆管を通り、十二指腸へ排出されます。

ところが、がんによって胆管が狭くなったり塞がったりすると、胆汁が正常に流れず、ビリルビンが血液中に増えます。その結果、以下のような変化が現れることがあります。

皮膚や白目が黄色くなる
尿が茶色っぽく濃くなる
便が白・灰色っぽくなる
皮膚がかゆくなる

ただし、黄疸は胆道がんだけで起こるものではありません。胆管結石、膵臓の病気、肝臓の病気などでも起こります。

また、「黄疸がある=末期」「黄疸がない=早期」と判断することもできません。腫瘍の位置によっては、小さくても胆管を塞いで黄疸が出るためです。

肝門部領域・遠位胆管がんでは黄疸が出やすい

肝門部領域胆管がんや遠位胆管がんは、胆汁が流れる胆管そのものから発生します。

特に胆汁が集中して流れる場所が狭くなると、上流側に胆汁がたまり、閉塞性黄疸が起こりやすくなります。国立がん研究センターも、肝外胆管がんでは黄疸がよくみられると説明しています。

十二指腸乳頭部がんでは黄疸や膵炎が現れることがある

十二指腸乳頭部は、胆汁だけでなく膵液も十二指腸へ流れ込む出口です。

この部分に腫瘍ができると、胆管が塞がれて黄疸が起こるだけでなく、膵管の流れが妨げられて膵炎を起こすことがあります。膵炎では、みぞおちや背中の強い痛み、吐き気などが現れる場合があります。

「胆道がんで膵炎」というと不思議に感じるかもしれませんが、胆管と膵管が同じ乳頭部付近から十二指腸へ開いているためです。

参考:胆道がんについて|国立がん研究センター

肝内胆管がん・胆のうがんは早期には症状がないことが多い

肝内胆管がんは、肝臓内部の胆管から発生します。小さい段階では太い胆管を塞がないため、黄疸などが現れないことがあります。

胆のうがんも、胆汁の本流である胆管そのものから発生するわけではないため、早期には自覚症状がないことが多いがんです。胆石や胆のう炎を調べるために受けた超音波検査や、胆のう摘出後の病理検査から胆のうがんが偶然見つかることもあります。

腹痛・食欲低下・体重減少・倦怠感などが現れる場合もある

胆道がんでは、進行に伴ってみぞおちや右上腹部の痛み、食欲不振、体重減少、全身のだるさなどが現れることがあります。しかし、これらは胆道がんだけに起こる症状ではありません。

「腹痛があるから胆道がん」「体重が減ったからがん」と判断することはできませんが、食事量や運動量を変えていないのに体重が減り続ける、腹部症状と黄疸が重なるなど、これまでになかった変化が続く場合には原因を調べる必要があります。

黄疸に発熱・悪寒が加わった場合は胆管炎にも注意

胆管が塞がって胆汁の流れが悪くなると、そこへ細菌感染が加わり急性胆管炎を起こすことがあります。胆管炎では、発熱、悪寒、黄疸、右上腹部痛などが現れ、重症になると血圧低下や意識障害につながることもあります。

胆道がんと診断されている患者さんや胆管ステントが入っている患者さんで、高熱、強い悪寒、黄疸の急な悪化などがみられた場合には、次の予約日まで待たず治療を受けている医療機関へ連絡します。

参考:胆道がんについて|国立がん研究センター

胆道がんの検査

胆道がんの診断では、最初からすべての患者さんへ同じ検査を行うわけではありません。

一般的には、血液検査や腹部超音波で異常を確認し、CTやMRIで病変の場所と広がりを評価します。その後、疑われる病型や治療方針に応じてEUS、ERCP、内視鏡検査、病理検査などを追加します。

ここでは検査名を一つずつ詳しく覚えるよりも、「どの病型で、何を確認するためにその検査を行っているのか」を理解すると、検査結果と治療方針を結び付けやすくなります。

参考:国立がん研究センター|胆道がん 検査

最初は血液検査・超音波・CT・MRIなどで病変と広がりを調べる

血液検査では、胆汁の流れが悪くなっていないかをみるために、ビリルビン、ALP、γ-GTPなどを調べます。また、CA19-9やCEAなどの腫瘍マーカーを測定することがあります。ただし、腫瘍マーカーだけで胆道がんを診断することはできません。胆管炎や胆汁うっ滞などでも上昇し、反対にがんがあっても上昇しない場合があります。

腹部超音波では胆管の拡張、胆のう壁や胆石、肝臓の腫瘤などを確認します。異常が疑われた場合は造影CTで、がんの大きさや周囲臓器・血管への広がり、リンパ節転移、遠隔転移などを評価します。

MRIやMRCPでは、胆管や膵管の形を詳しく確認できます。CTとMRIは一方だけで完結するとは限らず、それぞれの情報を組み合わせて診断と切除可能性を評価します。

胆管がんではERCPなどで狭窄や広がりを詳しく調べる

胆管がんでは、CTやMRIだけでなく、胆管そのものへアクセスして詳しく調べる検査が必要になることがあります。

ERCP(内視鏡的逆行性胆管膵管造影)では、口から内視鏡を十二指腸まで進め、十二指腸乳頭からカテーテルを胆管へ入れます。胆管へ造影剤を注入して狭窄の形や広がりを調べるほか、胆汁の細胞診や胆管生検を行うことができます。黄疸がある場合には、そのまま胆汁を流す胆道ドレナージにつなげることもあります。

さらに必要に応じて、胆管内へ細い超音波プローブを入れるIDUSや、胆管内を直接観察するPOCSなどを使用します。

ただし、これらはすべての胆道がん患者さんに必要な検査ではありません。詳しい胆管がんの検査については「胆管がんとは?」の記事で解説しています。

胆のうがんではEUSで胆のう壁や病変を詳しく見ることがある

胆のうがんでは、腹部超音波やCT、MRIに加えてEUS(超音波内視鏡検査)を行うことがあります。

EUSは先端に超音波装置が付いた内視鏡を胃や十二指腸まで進め、体の内側から胆のうを観察する検査です。病変へ近づいて観察できるため、胆のうポリープや壁肥厚の性質、胆のう壁への深達度などを評価する際に役立ちます。

一方、胆のうがんでは、病変の位置や切除可能性などによっては手術前に組織検査を行わないこともあります。胆道がんは「がんが疑われたら全員同じ方法で生検する」病気ではありません。

さらに詳しい胆のうがんの検査については「胆のうがんとは?」の記事で解説しています。

十二指腸乳頭部がんでは内視鏡で病変を直接観察できる

十二指腸乳頭部がんは、胆管や胆のうのがんとは検査上の特徴が異なります。乳頭部は十二指腸の内側に露出しているため、内視鏡を十二指腸まで進めることで、腫瘍そのものを直接観察できます。さらに、疑わしい部分から組織を採取して病理検査を行うことも可能です。

EUSを使えば、十二指腸の壁や膵臓、胆管へどの程度広がっているかをより詳しく評価できます。ERCPでは胆管や膵管内への広がりを確認したり、黄疸に対してドレナージを行ったりすることがあります。

このように、胆道がんでも「内視鏡で腫瘍を直接見られる病型」と「胆管の中から間接的に調べる必要がある病型」があります。

PET・PET-CTはリンパ節・遠隔転移を追加評価するために行うことがある

PET・PET-CTは、FDGという放射性物質を含む薬剤を使って、糖を多く取り込む組織を画像化する検査です。

胆道がんでは、CTやMRIなどで評価したうえで、リンパ節転移や遠隔転移などを追加で確認する目的で行うことがあります。すべての患者さんに必須の検査ではなく、CT・MRIの所見や手術可能性などを踏まえて必要性を判断します。

病理診断の取り方も病型によって異なる

がんの確定診断では、採取した細胞や組織を顕微鏡で調べる病理診断が基本になります。ただし、検体の採り方は病型によって異なります。

十二指腸乳頭部がんでは、内視鏡で病変を直接見ながら生検できます。胆管がんではERCPで胆汁細胞診や胆管生検を行うことがありますが、十分な組織が取れず、がんがあっても検査で確認できない場合があります。胆のうがんでは、病変の深さや手術方針によっては、胆のう摘出後の病理検査で確定診断となる場合があります。

したがって「病理診断がまだついていない」「生検をしていない」という事実だけから、診断や治療が不十分だと判断することはできません。疑われている病型と、治療方針を決めるためにどの検査結果が必要なのかを合わせて確認します。

参考:胆道がん 治療|国立がん研究センター

胆道がんのステージ分類

胆道がんのステージを調べるときに最も気をつけたいのが、「胆道がん全体に一つのステージ表があるわけではない」という点です。

国立がん研究センターでは、胆道がんを以下の5つに分け、それぞれ別の病期表を掲載しています。

肝内胆管がん
肝門部領域胆管がん
遠位胆管がん
胆のうがん
十二指腸乳頭部がん

これは単なる分類上の違いではありません。発生する場所によって周囲の臓器や血管が違い、「どこまで広がると治療上大きな意味を持つのか」も異なるためです。

参考:国立がん研究センター|胆道がん 治療

原発巣・リンパ節・遠隔転移を組み合わせて病期を評価する

胆道がんでは、基本的に次のような情報から病気の広がりを評価します。

分類 何を評価するか
T 原発巣の大きさ・深さ・数・周囲臓器や血管への広がりなど。何を基準にするかは病型で異なる
N 領域リンパ節へ転移しているか、または転移リンパ節の数など
M 離れた臓器や遠隔リンパ節への転移があるか

ただし、Tで何を評価するかは5病型で大きく違います。

T分類で見るポイントが病型によって大きく違う

2026年8月時点で、国立がん研究センターが患者向けに掲載している病期表では、各病型で次のような違いがあります。

病型 T分類を理解するうえで主に見るポイント
肝内胆管がん 腫瘍の数や大きさ、血管・主要胆管への浸潤など
肝門部領域胆管がん 胆管壁を越えた広がり、門脈・肝動脈などへの浸潤
遠位胆管がん 胆管壁へ入り込んだ深さ、主要動脈などへの浸潤
胆のうがん 胆のう壁への深達度、肝臓側・腹腔側、周囲臓器や血管への浸潤
十二指腸乳頭部がん 乳頭部から十二指腸や膵臓などへどこまで広がっているか

したがって「T2だから、どの胆道がんでも同じくらい進んでいる」という読み方はできません。

たとえば、胆のうがんでは胆のう壁の深さが大きな意味を持ちますが、肝門部領域胆管がんでは門脈や肝動脈との位置関係が手術に直結します。

同じ「ステージⅡ・Ⅲ・Ⅳ」でも病型が違えば意味が異なる

同じステージ番号でも、含まれる病状は病型によって違います。

一部の胆道がんでは、ステージⅣであっても必ずしも遠隔転移を意味しません。多数の領域リンパ節転移や高度な局所進行がステージⅣに含まれる分類もあります。

そのため「ステージ4と書いてあったから、必ず肺や骨へ転移している」と数字だけから判断することはできません。反対に、同じステージでも、どの血管へ浸潤しているか、どの臓器へ広がっているかによって手術可能性が大きく異なる場合があります。

詳しい病期については、胆管がんと胆のうがんの記事でそれぞれ解説しています。

国立がん研究センターの現行ページでも病型によって分類が異なる

2026年8月改訂の国立がん研究センター患者向けページでは、肝内胆管がんには2025年版の国内病期分類、肝門部領域胆管がん、遠位胆管がん、胆のうがん、十二指腸乳頭部がんには2021年版の国内病期分類に基づく表が掲載されています。過去のUICC分類や旧版の表と同じステージ番号でも、病状が一致するとは限りません。

一方、UICCはTNM第9版を2025年に刊行し、2026年1月1日からの使用を推奨しています。

病期表を見るときの注意
インターネットや冊子に掲載されているステージ表と、現在の診療で使われる分類・版が一致しているとは限りません。実際の診断書や病理報告書については、「どの病型に対して、どの分類・何版を使ったステージなのか」を確認してください。

治療前のcStageと手術後のpStageで変わることもある

治療前にはCT、MRI、EUS、内視鏡検査などを使って、がんの広がりやリンパ節・遠隔転移を推定します。

この治療前の情報から判断する病期を臨床病期(cStage)と呼びます。

一方、手術で摘出したがんやリンパ節を顕微鏡で詳しく調べると、画像では分からなかった小さな浸潤やリンパ節転移が見つかることがあります。この病理結果から決めるものが病理病期(pStage)です。

そのため、手術前に説明されたステージと、手術後の最終的なステージが変わることがあります。

特に胆のうがんでは、胆石や胆のう炎などで胆のうを摘出した後、病理検査によって初めてがんと深達度が分かることもあります。

ステージの数字だけを見るのではなく「どの胆道がんなのか」「cStageなのかpStageなのか」「どの分類を使っているのか」まで確認すると、自分の病状をより正確に理解できます。

参考:国立がん研究センター「胆道がん 治療」、UICC「TNM Classification of Malignant Tumours」

胆道がん治療の全体像

胆道がんの治療には、手術、薬物療法、放射線治療などがあります。その中で、根治を目指せる場合に中心となるのが手術による完全切除です。

そのため胆道がんでは、ステージを確認したうえで、「手術によってがんを完全に取り切れる可能性があるか」を検討することが治療方針の大きな分岐になります。国立がん研究センターも、胆道がんではまず手術ができるかを検討し、手術できない場合には薬物療法を中心に治療すると説明しています。

病状 治療の基本的な考え方
切除可能 病型に応じた手術で完全切除を目指す。手術後は病理結果などから術後補助化学療法を検討する
局所進行で切除困難 薬物療法が中心。遠隔転移がない場合には放射線治療などを検討することがある
遠隔転移・再発 全身薬物療法が中心。治療歴やバイオマーカーも次の治療選択に関係する
黄疸・胆管炎を伴う 必要に応じて胆道ドレナージや感染治療を行い、手術・薬物療法を安全に進められる状態へ整える

ただし、「切除可能か」はステージ番号だけで自動的に決まるものではありません。

遠隔転移がなくても手術できない場合がある

胆道がんでは、肺や腹膜などへの遠隔転移がなければ必ず手術できるわけではありません。

たとえば肝門部領域胆管がんでは、がんが左右の胆管や門脈・肝動脈へどこまで広がっているか、がんを取り切った後に十分な肝臓を残せるかが手術可能性に関係します。

胆のうがんでは、肝臓、胆管、膵臓、十二指腸などへ広く浸潤している場合、すべてを切除しても完全切除できない、あるいは手術の負担が大きすぎると判断されることがあります。

国立がん研究センターも、胆道がんでは遠隔転移がなくても、原発巣や周囲への広がりによって技術的に切除が難しいことがあると説明しています。

したがって「手術できない」と説明された場合には、遠隔転移があるためなのか、重要な血管への広がりが問題なのか、必要な臓器を切除すると安全性を保てないためなのかまで確認すると、その後の治療方針を理解しやすくなります。

切除可能性の判断が難しい場合は専門施設への相談も選択肢

胆道がんの手術には、肝切除、胆管切除、膵頭十二指腸切除、血管を含む複雑な切除・再建など、高度な肝胆膵外科手術が必要になることがあります。

特に局所進行例では、同じ画像を見ても切除可能性の判断が施設や医師によって異なる場合があります。国立がん研究センターも、胆道がんでは手術できるかどうかの判断が施設・医師によって異なることがあり、必要に応じてセカンドオピニオンを検討できると案内しています。

そのため、大きな肝切除や複雑な血管処理を伴う手術を提案された場合や、「切除できない」と説明されたものの理由を十分理解できていない場合には、肝胆膵外科を専門とする施設で別の意見を聞くことも治療選択の一つです。

セカンドオピニオンは「現在の担当医を信用しない」という意味ではなく、切除可能性や治療選択について情報を増やすために利用できます。

参考:国立がん研究センター「胆道がん 治療」、胆道がん 治療|国立がん研究センター

黄疸がある場合の胆道ドレナージ

胆道がんでは、がんそのものへの手術や薬物療法だけでなく、胆汁を正常に流すための胆道ドレナージが治療計画の一部になる場合があります。

胆管ががんによって狭くなったり塞がったりすると、胆汁が十二指腸へ流れなくなり、黄疸やかゆみ、胆管炎などを起こします。さらに肝機能が悪化すると、手術や薬物療法を安全に行うことが難しくなる場合があります。

胆道ドレナージはがんそのものを治す処置ではない

胆道ドレナージの目的は、がんを小さくしたり消したりすることではありません。

詰まった胆道から胆汁を流し、黄疸や感染を改善して、その後のがん治療を安全に進められる状態へ整えるために行います。

そのため「抗がん剤を始める前にステントを入れる」「手術の前にドレナージをする」と説明された場合でも、がん治療が止まっているわけではありません。胆道ドレナージ自体が、その後の治療へ進むための準備になることがあります。

内ろうと外ろうがある

胆道ドレナージは、大きく内ろう(内瘻:ないろう)と外ろう(外瘻:がいろう)に分けられます。

方法 胆汁の流れ
内ろう 胆管内にステントを留置し、胆汁を本来の流れに近い形で腸へ流す
外ろう 鼻や腹部から出したチューブを通して胆汁を体外へ排出する

どちらを選ぶかは、胆管が詰まっている位置、手術を予定しているか、胆管炎の有無などによって変わります。

肝門部領域胆管がんのように複数の胆管が分かれる場所では、どの胆管をドレナージするかも治療計画に関係します。こうした細かな方法については「胆管がんとは?」の記事で詳しく説明しています。

発熱・悪寒・黄疸の再悪化は胆管炎や閉塞の可能性がある

胆管ステントやドレナージチューブを留置した後も、ステントが詰まったり、細菌感染による胆管炎を起こしたりする場合があります。

高熱、悪寒、右上腹部痛、黄疸の再悪化などがみられた場合には、予定された外来まで様子を見るのではなく、治療を受けている医療機関へ相談します。

参考:国立がん研究センター「胆道がん 治療」

胆道がんの手術

「胆道がんの手術」という一つの決まった手術があるわけではありません。

どこから発生したがんかによって、切除する臓器が大きく異なるのが胆道がん手術の特徴です。国立がん研究センターも、5病型それぞれについて別の手術方法を説明しています。

病型 代表的な手術 手術を理解するポイント
肝内胆管がん 肝切除 腫瘍の位置や数に応じ、がんを含む肝臓を切除する
肝門部領域胆管がん 肝切除+肝外胆管切除など 胆管だけでなく肝臓を大きく切除し、残った胆管と腸を再建することがある
遠位胆管がん 膵頭十二指腸切除 胆管が膵頭部を通るため、膵頭部や十二指腸などをまとめて切除する
胆のうがん 胆のう摘出+必要に応じ肝切除・リンパ節郭清など 胆のう壁への深達度と周囲への広がりで切除範囲が変わる
十二指腸乳頭部がん 膵頭十二指腸切除 十二指腸、膵頭部、肝外胆管、胆のうなどを切除して再建する

参考:国立がん研究センター|胆道がん 治療

肝内胆管がんでは肝切除が中心

肝内胆管がんは肝臓内部に発生するため、切除可能であればがんとその周囲の肝臓を含めて切除します。

腫瘍の場所によって部分的な肝切除から、右葉・左葉などを大きく切除する手術まで範囲が変わります。肝門部に近い病変では、肝外胆管や胆のう、周囲リンパ節の切除を追加することもあります。

肝門部領域胆管がんでは肝臓と胆管を一緒に切除することが多い

肝門部領域には、左右の胆管だけでなく門脈や肝動脈が複雑に集まっています。

そのため、肝門部領域胆管がんでは、がんが広がっている胆管だけを切り取るのではなく、左右どちらかの肝臓、肝外胆管、胆のう、周囲のリンパ節などをまとめて切除する手術が一般的です。切除した後には、残した胆管と小腸をつなぎ、胆汁が腸へ流れるよう再建します。

大きな肝切除が必要な場合には、「がんを取り切れるか」だけでなく、手術後に残る肝臓の大きさと機能が十分かも評価します。必要に応じて、手術前に門脈塞栓術を行い、残す側の肝臓を大きくしてから手術へ進む場合があります。

遠位胆管がんと十二指腸乳頭部がんでは膵頭十二指腸切除を行う

遠位胆管と十二指腸乳頭部は、いずれも膵頭部や十二指腸に近接しています。

そのため、根治手術では膵頭十二指腸切除が中心になります。

膵頭十二指腸切除では、膵頭部、十二指腸、胆管、胆のうなどを切除した後、残った膵臓や胆管、消化管を小腸などへつなぎ直します。十二指腸乳頭部がんでも、この手術が根治を目指す代表的な方法です。

同じ手術名でも、がんの広がりや患者さんの状態によって細かな切除・再建方法は異なります。

胆のうがんは深達度によって手術範囲が変わる

胆のうがんでは、浅い早期がんであれば胆のう摘出だけで根治できる場合があります。一方、胆のう壁を越えて広がると、肝切除やリンパ節郭清を追加し、胆管などへ浸潤していればさらに切除範囲が広がる場合があります。

胆のうがんのT1a・T1b・T2a・T2bや、胆のう摘出後に偶然がんが判明した場合の追加切除については、以下の記事で詳しく説明しています。

手術の説明を受けるときには、手術名だけでなく「どの臓器を、なぜそこまで切る必要があるのか」を確認すると、治療の目的を理解しやすくなります。

切除可能胆道がんの術前・術後薬物療法

手術によって目に見える胆道がんを完全に取り切れても、その後に再発する場合があります。これは、画像や手術では確認できないごく少量のがん細胞が、手術の時点ですでに体内に存在している可能性があるためです。そのため根治切除後には、病理結果や全身状態などをもとに術後補助化学療法を検討します。

日本ではS-1が術後補助化学療法の標準治療

日本で根治切除後胆道がんの術後治療を大きく変えたのが、JCOG1202/ASCOT試験です。

この第III相試験には、肝外胆管がん、胆のうがん、十二指腸乳頭部がん、肝内胆管がんの患者さんが含まれ、手術後に経過観察を行う群とS-1を投与する群が比較されました。440人を対象とした解析では、3年全生存割合は経過観察群67.6%、S-1群77.1%で、S-1による生存期間の改善が示されました。

この結果から、JCOGはS-1が胆道がん根治手術後の標準的な術後補助療法になったとしています。

S-1を使うのは「手術でがんを取り残したから」とは限りません。完全切除できていても、目に見えない微小ながん細胞を治療し、再発リスクを下げることが術後補助療法の目的です。

参考:国立がん研究センター「S-1補助療法が胆道がん根治手術後の標準治療となることを証明」

手術をした患者さん全員に機械的にS-1を使うわけではない

JCOG1202の結果があるからといって、胆道がんの手術を受けた患者さん全員が同じようにS-1を必要とするわけではありません。試験には一定の病期・病理条件を満たした患者さんが登録されているため、ごく浅い早期がんなどまで試験結果をそのまま当てはめることはできません。

実際には、がんの深達度、リンパ節転移、切除断端、病理組織型、手術後の回復状況、肝機能・腎機能、体力などを確認して術後治療を判断します。

術前化学療法はすべての切除可能胆道がんで確立した治療ではない

「抗がん剤でがんを小さくしてから手術した方がよいのでは」と考えるかもしれません。しかし2026年8月時点では、切除可能な胆道がんすべてに術前化学療法を行うことが標準治療として確立しているわけではありません。

JCOG1920では、切除可能胆道がんを対象に、手術を先に行う治療と、GCS療法を術前に行ってから手術する治療を比較する第III相試験が行われています。なお、2026年8月時点で患者募集は終了しており、結果の公表が待たれます。

したがって、手術可能と判断された患者さんが最初に手術を受けることは「必要な抗がん剤を省略している」という意味ではありません。

参考:厚生労働省jRCT「JCOG1920/NABICAT試験 登録情報」

切除不能・再発胆道がんの薬物療法

手術で完全に取り切ることが難しい胆道がんや、手術後に再発した胆道がんでは、全身へ作用する薬物療法が治療の中心になります。ただし、ここでも「胆道がん」という総称だけで一括りにしない方がよい部分があります。特に2026年現在の免疫療法については、胆管がん・胆のうがんと、十二指腸乳頭部がんで主要臨床試験の対象が異なる点を理解しておく必要があります。

胆管がん・胆のうがんでは化学療法+免疫療法が一次治療の重要な選択肢

切除不能・再発の胆管がん・胆のうがんでは、長くゲムシタビン+シスプラチンを組み合わせるGC療法が治療の基本となってきました。

現在は、これに免疫チェックポイント阻害薬を加える「ゲムシタビン+シスプラチン+デュルバルマブ(GCD療法)」または「ゲムシタビン+シスプラチン+ペムブロリズマブ(GCP療法)」が一次治療の重要な選択肢になっています。PMDAではデュルバルマブとペムブロリズマブについて胆道がんの最適使用推進ガイドラインが公開され、デュルバルマブ版は2026年6月にも改訂されています。

デュルバルマブを検証したTOPAZ-1試験、ペムブロリズマブを検証したKEYNOTE-966試験はいずれも、進行胆道がんに対するGC療法へ免疫療法を加えることで全生存期間を改善することを示しました。

参考:PMDA「最適使用推進ガイドライン一覧」、NCI「Bile Duct Cancer Treatment(PDQ)」、FDA「胆道がんに対するペムブロリズマブ併用療法の承認情報」

十二指腸乳頭部がんでは免疫療法の根拠をそのまま当てはめない

TOPAZ-1では乳頭部がんが除外されており、KEYNOTE-966も対象を肝内胆管がん、肝外胆管がん、胆のうがんとして、ampullary cancer(乳頭部がん)を除外基準にしています。

したがって「胆道がんだから、十二指腸乳頭部がんにもTOPAZ-1やKEYNOTE-966とまったく同じエビデンスがある」と説明するのは正確ではありません。

参考:TOPAZ-1|ClinicalTrials.gov、KEYNOTE-966|ClinicalTrials.gov

一方、十二指腸乳頭部がんでも、病状によって全身薬物療法を検討することがあります。ただし、胆管がんや胆のうがんを中心とした臨床試験の結果を、十二指腸乳頭部がんにそのまま当てはめることはできません。

重要なのは、治療法ごとに「自分の病型が臨床試験に含まれていたか」「国内でどのような適応条件があるか」を確認することです。

実際の治療では、病理組織型、がんの広がり、これまでの治療、全身状態、国内の電子添文などを踏まえて個別に判断します。

参考:国立がん研究センター「胆道がん 治療」、NCI「Bile Duct Cancer Treatment(PDQ)」

GS療法やGCS療法も選択肢になる

日本では、患者さんの状態や治療方針によって、ゲムシタビン+S-1(GS療法)や、ゲムシタビン+シスプラチン+S-1(GCS療法)も検討されます。

GS療法はシスプラチンを含まないため、シスプラチンによる腎機能への負担や補液の必要性などが治療選択の問題となる場合に、候補となることがあります。一方、GCS療法は3剤を組み合わせる治療であり、薬剤ごとの副作用にも注意が必要です。

ただし現在は免疫チェックポイント阻害薬を含む治療も導入されているため、「どの患者さんにもGS療法やGCS療法が第一選択になる」という意味ではありません。腎機能、肝機能、全身状態、既往歴、治療歴などを踏まえて選択します。

参考:国立がん研究センター「胆道がん 治療」

黄疸や胆管炎がある場合は薬物療法より先に状態を整えることがある

胆管が詰まり、強い黄疸や胆管炎がある状態では、そのまま薬物療法を開始することが難しい場合があります。

必要に応じて胆道ドレナージや抗菌薬治療を行い、胆汁の流れ、感染、肝機能などを改善してから薬物療法へ進みます。薬物療法を安全に開始できる状態かどうかが重要です。

二次治療以降ではバイオマーカーも次の治療選択に関係する

一次治療でがんが進行した場合には、これまで使った薬、全身状態、臓器機能などから次の治療を考えます。

現在はそれだけでなく、がんが治療につながる分子異常を持っているかも確認する必要があります。

胆道がんにはFGFR2融合、IDH1変異、HER2異常、BRAF V600E、MSI-High/dMMR、TMB-High、NTRK融合、RET融合、ALK融合など、治療選択に関連する複数のバイオマーカーがあります。検査で異常が見つかっても、対応する薬の適応条件を別途確認する必要があります。

そのため、進行・再発胆道がんでは「今使っている抗がん剤」の次に何を使うかだけでなく「バイオマーカー検査がどこまで済んでいるか」も治療計画の一部になります。

胆道がんのバイオマーカー・遺伝子検査

胆道がんは、同じ病名・同じステージでも、がん細胞が持っている遺伝子異常などが患者さんごとに異なります。現在は、こうした特徴をバイオマーカーとして調べ、条件が合えば分子標的薬や免疫療法へつなげられる場合があります。

胆道がんは、肝内胆管がん、肝外胆管がん、胆のうがん、十二指腸乳頭部がんなどを含む多様な疾患群です。治療につながる分子異常は病型ごとに偏りがあり、複数の検査法と国内で承認された薬剤の情報を合わせて判断します。

参考:タスフィゴ(タスルグラチニブ)|PMDA、ティブソボ(イボシデニブ)|PMDA、エンハーツ(T-DXd)|PMDA、アレセンサ(アレクチニブ)|PMDA、胆道がん 治療|国立がん研究センター

同じ胆道がんでも見つかりやすい分子異常には偏りがある

胆道がんのバイオマーカー検査で理解しておきたいのは、「すべての胆道がんで同じ遺伝子異常が同じ頻度で見つかるわけではない」という点です。

大まかな特徴を整理すると、次のようになります。

病型 比較的注目されるバイオマーカー
肝内胆管がん FGFR2融合遺伝子、IDH1変異など
肝外胆管がん HER2異常などがみられる場合がある
胆のうがん HER2異常が胆道がんの中では比較的みられやすい
病型をまたいで検討 BRAF V600E、MSI-High/dMMR、TMB-High、NTRK融合、RET融合、ALK融合など

これは「肝内胆管がんなら必ずFGFR2がある」「胆のうがんならHER2がある」という意味ではありません。あくまで病型によって分子異常の分布に偏りがあるため、実際には患者さんごとに検査します。

肝内胆管がんではFGFR2融合・IDH1変異が重要

肝内胆管がんでは、FGFR2融合遺伝子とIDH1遺伝子変異が特に重要な治療標的になっています。

FGFR2融合に対するペミガチニブ、フチバチニブ、タスルグラチニブ、IDH1変異に対するイボシデニブなど、国内で使用できる分子標的薬があります。使用可能な病状、前治療、検査法などを電子添文で確認する必要があります。

これらの検査方法や薬剤の適応条件は、胆管がんの記事で詳しく説明しています。

胆のうがん・肝外胆管がんではHER2が治療につながる場合がある

胆のうがんや肝外胆管がんでは、HER2異常が治療選択につながる場合があります。特に胆のうがんでは、HER2タンパク質の過剰発現やHER2遺伝子増幅が胆道がんの中で比較的多く報告されています。

ただし、HER2陽性、HER2タンパク過剰発現、HER2遺伝子増幅は、検査方法まで含めれば完全に同じ意味ではありません。薬剤を使用できるかは、承認された適応条件と検査結果を確認して判断します。

胆のうがんのHER2については以下の記事で詳しく説明しています。

BRAF・MSI・TMB・NTRK・RETなどは病型をまたいで治療につながる場合がある

胆道がんでは、FGFR2・IDH1・HER2以外にも、以下の遺伝子変異などが条件を満たした場合に治療選択へつながることがあります。

  • BRAF V600E
  • MSI-High/dMMR
  • TMB-High
  • NTRK融合遺伝子
  • RET融合遺伝子
  • ALK融合遺伝子

これらの異常は頻度が高いとは限りませんが、見つかった患者さんでは治療選択を大きく変える可能性があります。

「遺伝子異常が見つかった=必ずその薬を使える」ではない

検査で分子異常が見つかっても、自動的に対応する薬を使用できるわけではありません。

治療薬ごとに、どの検査法で確認する必要があるか、どの治療歴で使用できるか、現在の病状・全身状態で治療できるかなどを確認します。

また、一つの検査で検出された情報が、そのまま薬剤の適応判定に使えるとは限りません。同じ分子異常でも、薬剤ごとに承認された検査法が異なる場合があります。

バイオマーカー検査とCGPは治療に間に合う時期を考える

進行胆道がんでは、標準治療がすべて終わった後に初めて遺伝子検査を考えると、検査結果が次の治療へ間に合わない場合があります。

胆道がんでは、病状や体力によって二次治療まで進めない場合があります。検査結果が次の薬剤選択に間に合うよう、一次治療中から適切な検査時期について相談することが大切です。

ただし、保険診療でCGPを目的としたがん遺伝子パネル検査を行う場合には、原則として標準治療が終了した、または終了が見込まれることなどの実施条件があります。早くから検査について相談することと、直ちに保険診療でCGPを受けられることは同じではありません。

特定の薬を使えるか判断するコンパニオン診断と、治療候補を幅広く探索するCGPでは、検査の目的や保険診療上の実施条件が異なります。

そのため進行・再発胆道がんでは「遺伝子検査をしたか」だけでなく「何を調べた検査なのか」「次の治療判断に使える結果なのか」まで確認するとよいでしょう。

参考:胆道がんの薬物療法・遺伝子検査|国立がん研究センター

胆道がんの放射線治療・コンバージョン手術・緩和ケア

胆道がんでは、切除可能なら手術、切除不能・再発では薬物療法が治療の大きな柱になります。放射線治療も使われることがありますが、すべての胆道がん患者さんに一律に行う治療ではありません。

切除不能胆道がんで放射線治療や化学放射線療法を検討する場合がありますが、すべての患者さんに共通する延命効果が確立した治療ではありません。目的は局所の病状制御や痛みの軽減など、患者さんの状態によって異なります。

参考:胆道がん 治療|国立がん研究センター

遠隔転移のない局所進行例で放射線治療を検討することがある

手術できない理由が遠隔転移ではなく、がんが周囲の血管や臓器へ局所的に広がっているためという場合には、薬物療法に加えて放射線治療や化学放射線療法を検討することがあります。

目的は、局所の腫瘍を抑えることや症状を軽減することなどです。国立がん研究センターも、遠隔転移のない切除不能胆道がんで放射線治療を検討する場合があるとしています。

ただし、現時点ではすべての局所進行胆道がんへ行う標準治療とは位置づけられていません。

参考:国立がん研究センター|胆道がん 治療

コンバージョン手術は「抗がん剤が効けば必ず手術する」という治療ではない

最初は切除不能と判断された胆道がんでも、薬物療法によって腫瘍が縮小し、遠隔転移が出現せず、改めて評価した結果、完全切除できる可能性が生じる場合があります。

このように、薬物療法などの後に手術を再検討する考え方をコンバージョン手術と呼びます。

ただし、切除不能胆道がんで「薬が効いたら必ず手術する」という一律の標準治療ではありません。腫瘍が小さくなっただけではなく、血管や周囲臓器との関係、遠隔転移、患者さんの全身状態などを再評価して、完全切除が期待できる場合に慎重に検討します。

緩和ケア・支持療法はがん治療と並行して行う

胆道がんでは、痛み、黄疸、かゆみ、食欲不振、体重減少、倦怠感など、がんそのものによる症状が生活に影響することがあります。

また、手術や抗がん薬による副作用を軽減し、治療を続けられる身体の状態を保つための支持療法も治療の一部です。

緩和ケアは「もう抗がん治療をしない人だけが受ける治療」ではありません。痛みや不安、食事の問題などがあれば、手術・薬物療法などと並行して利用します。

参考:国立がん研究センター|緩和ケア

胆道がん治療後の生活

胆道がん治療後の生活を「胆道がんの手術後」と一つにまとめることはできません。肝臓を大きく切除した人、膵頭十二指腸切除を受けた人、胆のうだけを摘出した人では、残った臓器と身体の変化が大きく異なるためです。国立がん研究センターも、胆道がん治療後の日常生活上の注意は症状や治療内容によって異なると説明しています。

参考:国立がん研究センター|胆道がん 療養

肝切除後|残った肝臓が回復するまで状態を確認する

肝内胆管がんや肝門部領域胆管がんでは、大きな肝切除を行う場合があります。

肝臓には再生する力がありますが、大きく切除した直後は残った肝臓へ負担がかかります。術後には肝機能、黄疸、腹水などを確認し、まれに起こる肝不全にも注意します。

退院後の運動量や飲酒、食生活などは、残った肝臓の機能や手術範囲によって異なるため、個別に確認します。

膵頭十二指腸切除後|消化・栄養状態の変化に注意する

遠位胆管がんや十二指腸乳頭部がんでは、膵頭十二指腸切除を行うことがあります。

この手術では膵臓の一部、十二指腸、胆管、胆のうなどを切除し、残った臓器をつなぎ直すため、単純な胆のう摘出より身体への負担が大きくなります。

膵液には食べ物を消化する酵素が含まれているため、手術後に消化吸収が低下し、下痢や体重減少などが問題になる場合があります。膵臓手術後には必要に応じて栄養状態を評価し、食事方法や消化を助ける薬などを調整します。

胆のう摘出後|多くの場合は胆のうがなくても生活できる

胆のうは胆汁をつくる臓器ではなく、肝臓でつくられた胆汁を一時的にためる臓器です。

そのため胆のうを摘出しても、肝臓では胆汁がつくられ続け、胆管を通って十二指腸へ流れます。

胆のう摘出だけであれば、長期的に極端な食事制限を必要としない人も多くいます。一方、胆のうがんでは肝切除や胆管切除などを同時に受けている場合があるため、「胆のう摘出後」と「胆のうがんの拡大手術後」を同じものとして考えないことが必要です。

胆道ドレナージ中|外ろうと内ろうで生活上の注意が異なる

外ろうの場合には、鼻や腹部からチューブが体外へ出ているため、抜けたり曲がったりしないよう管理が必要です。

内ろうでは体外にチューブは出ませんが、ステントが閉塞すると再び黄疸や胆管炎が起こる場合があります。

国立がん研究センターも、胆道ドレナージ後は外ろうと内ろうそれぞれで生活上の注意点が異なるため、医療者へ確認するよう案内しています。

薬物療法中は副作用だけでなく「治療を続けられる状態か」をみる

胆道がんの薬物療法では、血球減少、食欲低下、吐き気、倦怠感、下痢などが生活に影響する場合があります。

シスプラチンでは腎機能、聴力、手足のしびれなどにも注意します。免疫チェックポイント阻害薬では、通常の抗がん薬とは異なり、免疫反応によって肺、肝臓、腸、甲状腺などに炎症や機能障害が起こる場合があります。PMDAでは胆道がんに対する免疫療法について現在も最適使用推進ガイドラインを公開しています。

副作用は単に「我慢する症状」ではありません。食事が取れず体重が落ちる、脱水する、感染症を起こすなどすると、予定していた薬物療法を続けにくくなることがあります。

治療を予定どおり続けることだけを目標にするのではなく、副作用を早く伝えて、休薬・減量・支持療法などで身体の状態を保つことも治療の一部です。

食べられない・体重が減る場合は食事量だけを責めない

胆道がんでは、手術による消化機能の変化、黄疸、感染、抗がん薬の副作用、がんそのものなど、さまざまな理由で食欲や体重が低下することがあります。

国立がん研究センターでは胆道がん治療後の一般的な食事として、一度に多く食べず回数を分けることや、症状に合わせて食べ方を調整することを案内しています。また、必要に応じて管理栄養士へ相談することもできます。

「食べなければ体力が落ちる」と無理に一度に多く食べるより、なぜ食べられないのかを確認し、その原因に合わせて食事量・回数・薬などを調整する方が治療を続けやすくなります。

胆道がんの生存率・予後

胆道がんの予後を調べるときに、最初に確認したいのは「どの胆道がんの生存率を見ているのか」です。

これまで説明したように、胆道がんには肝内胆管がん、肝門部領域胆管がん、遠位胆管がん、胆のうがん、十二指腸乳頭部がんがあり、病期分類そのものが同じではありません。国立がん研究センターも5病型を別々の病期表で示しています。

「胆道がんステージⅠの5年生存率は○%」という一つの表を、すべての胆道がんへ共通して当てはめることは適切ではありません。

胆道がん全体に一つのステージ別生存率を当てはめない理由

たとえば、同じ「ステージⅡ」であっても、肝内胆管がんと胆のうがんでは、そのステージに含まれるT・N・Mの組み合わせが異なります。

さらに、肝内胆管がんでは肝臓内の腫瘍の数や血管への広がりなどが病期評価に関係する一方、胆のうがんでは胆のう壁への深達度や肝臓側・腹腔側への広がりなどが大きな意味を持ちます。肝門部領域胆管がんや遠位胆管がんにも、それぞれ異なるT分類があります。

生存率を調べる際には「胆道がん」→「どの病型か」→「その病型のどの病期か」という順番で確認する必要があります。

国立がん研究センターの現在の統計も病型を分けて掲載

国立がん研究センターの現在の胆道がん統計ページでは、最新の病期別5年生存率へのリンクとして、肝内胆管がんと胆のうがんが個別に掲載されています。肝外胆管がんや十二指腸乳頭部がんについて、同じ形式で5病型を横並びに比較できる最新の病期別生存率表が掲載されているわけではありません。

そのため本記事では、異なる分類・集計方法の数字を無理に組み合わせて「胆道がんステージ別生存率表」を作成しません。

胆管がんについては、公開されている統計の範囲と病型の違いを含めて以下の記事で詳しく解説しています。

胆のうがんでは、国立がん研究センターの院内がん登録によるステージ別5年生存率を以下の記事で詳しく紹介しています。

十二指腸乳頭部がんの生存率を確認する際の注意点

十二指腸乳頭部がんは、肝内胆管がん、肝門部領域胆管がん、遠位胆管がん、胆のうがんとは異なる病期分類を持っています。そのため、ほかの胆道がんのステージ別生存率を、そのまま十二指腸乳頭部がんに当てはめることはできません。

また、生存率を確認するときには、診断された年代、使用された病期分類、治療の内容、手術による完全切除が可能だったかなどを合わせて考える必要があります。

現在、国立がん研究センターの胆道がん患者向け統計ページでは、肝内胆管がんと胆のうがんについて個別の病期別5年生存率を確認できます。一方、十二指腸乳頭部がんについては、同じ形式の最新の病期別生存率が案内されているわけではありません。

過去の研究で示された生存率は、現在の治療を受ける患者さんの予後をそのまま表すものではありません。十二指腸乳頭部がんの見通しを考える際には、病期だけでなく、手術の可否、リンパ節転移、病理結果、全身状態、治療への反応などを踏まえて主治医に確認することが大切です。

参考:国立がん研究センター「胆道がん 患者数(がん統計)」、国立がん研究センター「胆道がん 治療」

予後を左右するのはステージだけではない

ステージは予後を考えるうえで大きな情報ですが、それだけで今後の経過が決まるわけではありません。

胆道がんでは、発生部位、手術で完全切除できるか、リンパ節や遠隔臓器への転移、手術後の病理所見、全身状態、肝機能・腎機能、薬物療法への反応などによって経過が異なります。胆道がんの治療でも、病期だけでなく体の状態や切除可能性などを合わせて治療法が決められます。

進行・再発例では、利用できる薬物療法や、治療につながるバイオマーカーの有無が治療選択に関係します。国内で承認されている薬剤の条件を照合して検査内容を相談します。

5年生存率は「あと何年生きられるか」を示す数字ではない

5年生存率は、ある時期に診断された多くの患者さんを追跡して算出した集団の統計です。国立がん研究センターも、生存率のデータは平均的かつ確率として推測されるものであり、すべての患者さんにそのまま当てはまるものではないと説明しています。

そのため「5年生存率が20%だから、自分が5年生きられる確率も20%」と個人の余命へ直接置き換えることはできません。同じ病型・同じステージであっても、病変の広がり方や治療への反応などは一人ひとり異なります。

過去の生存率には現在の治療が十分反映されていない場合がある

生存率を見る際には、何年に診断された患者さんのデータなのかも確認します。

現在の胆道がん治療では、根治切除後のS-1による術後補助化学療法、切除不能・再発例に対する免疫療法、分子異常に応じた治療など、以前には標準的に行われていなかった治療が加わっています。それでも過去の生存率から現在の個人の予後をそのまま推定することはできません。

古い統計を見るときは「現在治療を受ける自分の将来そのもの」と考えるのではなく、治療成績を理解するための一つの参考資料として受け取ることが適切です。

参考:胆道がんの患者数・生存率|国立がん研究センター、胆道がんの治療・薬物療法|国立がん研究センター

胆道がんの再発・経過観察

胆道がんを手術で完全に切除した後も、身体の回復や再発の有無を確認するために定期的な経過観察を行います。

国立がん研究センターでは、胆道がん治療後の検査頻度はがんの進行度や治療法によって異なるとし、問診、血液検査、腫瘍マーカー検査を行い、必要に応じて腹部超音波やCTなどを組み合わせるとしています。

術後の再発リスクと合併症の程度は病型や切除範囲によって異なるため、すべての患者さんに共通する最適な検査間隔や検査方法が一つに定まっているわけではありません。受けた手術とその病理結果をもとに、経過観察の方針を決めます。

参考:国立がん研究センター「胆道がん 療養」、胆道がん 治療|国立がん研究センター

胆道がんは肝臓・リンパ節・肺・腹膜などに再発することがある

胆道がんは、周囲のリンパ節、肝臓、肺などへ転移することがあります。

手術後には、切除した場所やその周囲へ再びがんが現れる局所再発や、腹膜へがん細胞が広がる腹膜播種として見つかる場合もあります。再発した場所や数、これまでに受けた治療によって次の治療は異なります。再発胆道がんでは、多くの場合、全身へ作用する薬物療法を検討します。

腹膜播種についての治療法や完治の可能性については、以下の記事で解説しています。

問診・血液検査・腫瘍マーカー・画像検査を組み合わせる

経過観察では、単にCTだけを定期的に撮影するわけではありません。

問診では、黄疸、腹部痛、食欲の変化などを確認します。血液検査ではビリルビンなど胆道・肝臓の状態に関係する数値を調べ、CA19-9やCEAなどの腫瘍マーカーを測定することがあります。必要に応じて腹部超音波やCTなどを追加します。

検査間隔は、最初の病型やステージ、手術内容、病理結果、術後治療の有無などで異なります。そのため、他の胆道がん患者さんとCTの間隔が違うことだけで、経過観察が不足しているとは判断できません。

CA19-9だけで「再発した」と判断しない

CA19-9やCEAは胆道がんで使用される腫瘍マーカーですが、数値だけでがんの有無や再発を確定する検査ではありません。

国立がん研究センターは、胆道がんではがんがあっても腫瘍マーカーが上昇しない場合があり、反対にがんがなくても上昇することがあると説明しています。また、がんの進行や転移についても、腫瘍マーカーだけでなく画像検査などを組み合わせて判断します。

CA19-9が上昇した場合には、以前からの推移、胆汁の流れや炎症の状態、症状、CTなどの画像所見を合わせて原因を評価します。

再発した場合は「現在の病状」を評価する

手術時にステージⅡだった患者さんが数年後に再発した場合、「ステージⅡの治療をもう一度行う」と考えるわけではありません。

再発時には、現在どこに病変があるのか、いくつあるのか、遠隔転移があるのか、どの薬をすでに使用したのか、現在の肝機能・腎機能・体力はどうかを改めて評価します。胆道がんの再発では薬物療法が中心となる場合が多いとされています。

再発後の治療を考えるときは、「最初は何期だったか」より「今どのような病状なのか」が治療選択の中心になります。

再発時にはバイオマーカー検査の状況も確認する

進行・再発胆道がんでは、再発した場所だけでなく、がん細胞が持つ分子異常が治療選択に関係する場合があります。

過去に遺伝子検査を受けていても、どの遺伝子まで調べたか、コンパニオン診断として行ったのか、CGPを行ったのかによって得られている情報は異なります。

FGFR2、IDH1、HER2などを含む複数のバイオマーカーが治療選択に関係する場合があります。どの異常をどの検査法で調べ、どの治療時期に結果が必要かを主治医と確認します。

そのため、再発時には「以前どのバイオマーカーを調べたのか」「保存されている手術標本などを追加検査に利用できるのか」も確認すると、その後の選択肢を整理しやすくなります。

参考:胆道がんの薬物療法・遺伝子検査|国立がん研究センター

新しい症状が出たら次の定期検査まで待たない

定期的な経過観察を受けていても、予定されたCTの日まで必ず待つ必要はありません。国立がん研究センターも、経過観察では黄疸、腹部痛、食欲の変化などを確認し、気になる症状があれば担当医へ伝えるよう案内しています。

特に、黄疸が新しく出た・悪化した、発熱や悪寒がある、腹痛が続く、食欲や体重が急に落ちたなどの場合には、再発だけでなく胆管炎、胆道ドレナージの閉塞、治療の副作用など別の原因も考えられます。

症状だけから再発と判断することはできませんが、急な変化があれば治療を受けている医療機関へ相談します。

胆道がんの治療を選ぶときに確認したいこと

胆道がんでは、「ステージはいくつですか」と確認するだけでは、提案された治療の理由を十分に理解できないことがあります。

これは、胆道がんという一つの名前の中に複数の病型があり、発生部位によってステージ、手術、薬物療法の根拠、バイオマーカーの特徴まで異なるためです。国立がん研究センターも5病型を別々の病期分類として扱い、手術可能性を病状と全身状態から評価しています。

治療説明を受ける際には、次のように整理すると、自分の治療計画を理解しやすくなります。

確認したいこと なぜ確認するのか
正確な病名・発生部位はどこか 肝内胆管、肝門部領域胆管、遠位胆管、胆のう、十二指腸乳頭部では、ステージや手術が異なるため
どの分類・何版でステージを評価しているか 病型によって使用される病期分類が異なり、分類の版によって表記が変わる場合もあるため
手術で完全切除できる可能性があるか 根治を目指す手術が可能かどうかが治療方針の大きな分岐になるため
「手術できない」と判断された理由は何か 遠隔転移、血管や周囲臓器への広がり、残せる肝臓の量など、理由によって病状と次の治療が異なるため
黄疸・胆管炎への処置が必要か 胆道ドレナージや感染治療を、手術・薬物療法より先に行う場合があるため
どの臓器を、なぜ切除するのか 同じ胆道がんでも、肝切除、膵頭十二指腸切除、胆のう摘出など手術内容が大きく異なるため
術後S-1を行うか、その理由は何か 手術後の再発リスクと身体の回復状況から術後補助化学療法を判断するため
十二指腸乳頭部がんなら、提案された薬物療法の根拠は何か TOPAZ-1など乳頭部がんを含まない試験もあり、治療ごとにエビデンスとなる対象病型が異なるため
バイオマーカー検査では何を調べたか 病型によってFGFR2、IDH1、HER2などの分子異常に偏りがあり、次の治療候補につながる場合があるため
現在の治療が効かなくなった場合の次の候補は何か バイオマーカー検査や次の薬物療法を含め、先を見通した治療計画を考えるため

胆道がんで手術可能性の判断が難しい場合には、胆道手術を専門とする外科医への相談やセカンドオピニオンも選択肢になります。国立がん研究センターも、遠隔転移がなくても技術的に切除が難しい場合があり、切除可能性の判断が施設・医師によって異なることがあると説明しています。

胆管がんでは、さらに「どの胆管がんなのか」「血管への広がり」「残せる肝臓の量」などが大きな判断材料になります。

胆のうがんでは、「胆のう壁への深達度」「胆のう摘出後に偶然見つかった場合の追加切除」など、別の確認事項があります。

「胆道がん」という大きな病名だけで治療を理解しようとせず、自分の病型と、その治療が選ばれた理由まで確認することが、治療方針を整理する出発点になります。

参考:国立がん研究センター「胆道がん 治療」、胆道がんの薬物療法・遺伝子検査|国立がん研究センター

まとめ|「胆道がん」だけでなく発生部位を確認する

胆道がんは、肝内胆管がん、肝門部領域胆管がん、遠位胆管がん、胆のうがん、十二指腸乳頭部がんを含む総称です。発生部位によって黄疸などの症状の出方、病期分類、根治を目指す手術が異なります。

治療を考える際には、ステージ番号だけでなく、どこに発生したがんか、手術で完全切除を目指せるかを確認することが重要です。切除不能・再発例では薬物療法が中心となり、病型によってはFGFR2、IDH1、HER2などのバイオマーカーが治療選択につながります。

「胆道がん」という総称から、自分の正確な病型まで一段深く理解することが、症状・ステージ・手術・薬物療法を正しく理解するための出発点です。

胆管がんについて詳しく知りたい場合はこちらをご覧ください。

胆のうがんについて詳しく知りたい場合はこちらをご覧ください。

胆管がんは、肝臓でつくられた胆汁を十二指腸へ運ぶ「胆管」に発生するがんです。胆管は肝臓の中から十二指腸まで続いているため、がんができた場所によって肝内胆管がん、肝門部領域胆管がん、遠位胆管がんに分けられます。同じ「胆管がん」という名前でも、症状の出方、ステージ分類、手術方法が大きく異なります。

特に肝門部領域胆管がんや遠位胆管がんでは、がんによって胆汁の流れが妨げられ、皮膚や白目が黄色くなる黄疸が発見のきっかけになることがあります。一方、肝臓の中に発生する肝内胆管がんは、早い段階では胆汁の流れを妨げないこともあり、症状がないまま見つかる場合があります。

胆管がんの治療を考えるうえでは、ステージだけを見るのでは不十分です。「胆管のどこにがんがあるのか」「血管や周囲の臓器へどこまで広がっているのか」「手術で完全に取り切れる可能性があるのか」を確認する必要があります。胆道がんでは、まず外科切除が可能かを判断することが治療方針の大きな分岐となっています。

また、胆管がんでは黄疸や胆管炎に対する胆道ドレナージ、手術後の補助化学療法、切除不能・再発時の免疫療法や遺伝子・バイオマーカー検査など、病状に応じて複数の治療を組み合わせます。

この記事では、胆管がんの3つの種類から、症状、検査、ステージ、手術、薬物療法、バイオマーカー検査、生存率、再発後の治療まで順番に解説します。

参考:胆道がんについて|国立がん研究センター

  • 胆管がんは「肝内胆管がん」「肝門部領域胆管がん」「遠位胆管がん」でステージや手術方法が異なる
  • 肝外胆管がんでは黄疸がよくみられるが、肝内胆管がんは早期に症状が出ないことも多い
  • がんの場所、血管への広がり、遠隔転移、残せる肝臓の量などから「手術で取り切れるか」を判断する

胆管がんとは何か

胆管は、肝臓でつくられた胆汁を十二指腸へ運ぶための管です。

肝臓の中には細い胆管が木の枝のように張り巡らされており、枝が合流しながら徐々に太くなります。肝臓から出る部分を肝門部といい、その先で胆のうから伸びる胆のう管と合流します。さらに胆管は膵臓の中を通り、最終的に十二指腸へつながります。

胆汁は肝臓でつくられる消化液で、脂肪の消化や吸収を助けます。また胆汁には黄色い色素であるビリルビンが含まれており、胆管がふさがれると、このビリルビンが血液中に増えて黄疸が起こります。

胆管がんは、この胆管を構成する細胞から発生するがんです。ただし胆管は肝臓の中から十二指腸付近まで長く続いているため、どこに発生したかによって同じ胆管がんでも病気の性質や治療が異なります。

参考:胆道がんについて|国立がん研究センター

胆管がんはできた場所によって3つに分かれる

胆管がんは、大きく肝内胆管がん、肝門部領域胆管がん、遠位胆管がんの3つに分けて考えます。国立がん研究センターでも、肝内胆管がんと肝外胆管がんを区別し、さらに肝外胆管がんを肝門部領域胆管がんと遠位胆管がんに分けています。

種類 発生する場所 治療を考えるうえでの特徴
肝内胆管がん 肝臓の中を走る胆管 肝臓の一部を切除する肝切除が中心。肝細胞がんとは別の病気として治療を考える
肝門部領域胆管がん 左右の肝管が合流する肝門部周辺 胆管だけでなく肝臓を大きく切除する手術が必要になることがある
遠位胆管がん 膵臓に近い側の胆管 胆管が膵臓の中を通るため、膵頭十二指腸切除が必要になることが多い

この違いは単なる病名の細分化ではありません。

たとえば肝内胆管がんなら「肝臓のどの部分をどれだけ切除するか」が手術の中心になります。一方、肝門部領域胆管がんでは胆管と肝臓、遠位胆管がんでは膵頭部や十二指腸を含めた手術が必要になることがあります。つまり「胆管がんです」と言われた後に、最初に確認したいのが「3つのうちどの胆管がんなのか」です。国立がん研究センターも、胆道がんの病期を発生部位ごとに分けて評価しています。

参考:胆道がんについて|国立がん研究センター

肝内胆管がんと肝細胞がんは同じ肝臓にできても別のがん

肝内胆管がんは肝臓の中に発生するため、医学的には原発性肝がんの一つに分類されます。「胆管細胞がん」と呼ばれることもあります。

しかし、一般に「肝臓がん」と呼ばれることが多い肝細胞がんとは別の病気です。

肝細胞がんは肝臓の中心となる肝細胞から発生しますが、肝内胆管がんは胆汁を運ぶ胆管の細胞から発生します。そのため、同じ肝臓の中にできた腫瘍でも、ステージ分類、手術以外の治療、使用する薬物療法などが異なります。国立がん研究センターも、肝内胆管がんについて肝細胞がんとは治療法が異なるため区別しています。

「肝臓にがんがある」と説明された場合には、肝細胞がんなのか肝内胆管がんなのかを病理診断などで確認することが、その後の治療を理解する出発点になります。

肝細胞がんの治療法やステージ、症状や生存率などについては以下の記事で詳しく解説しています。

胆管がんと胆道がんは同じ意味ではない

「胆管がん」と「胆道がん」は似た言葉ですが、意味する範囲が異なります。

胆道がんは、胆汁が流れる胆道に発生するがんをまとめた総称です。国立がん研究センターでは、胆道を胆管、胆のう、十二指腸乳頭の3つに分け、そこに発生する胆管がん、胆のうがん、十二指腸乳頭部がんを胆道がんとして扱っています。

したがって関係を整理すると、胆管がんは胆道がんの一部です。

本記事では胆道がん全体ではなく、肝内胆管がん、肝門部領域胆管がん、遠位胆管がんの3つを「胆管がん」として詳しく説明します。

参考:胆道がんについて|国立がん研究センター

胆管がんの原因とリスク

胆管がんは、原因を一つに特定できる病気ではありません。実際には、明らかな危険因子が見つからないまま発症する患者さんもいます。

一方で、胆管に長期間炎症や胆汁うっ滞が起こる病気、胆管の先天的な構造異常、一部の化学物質への高濃度曝露などは、胆管がんの発生リスクと関連することが分かっています。

参考:胆道がん 予防・検診|国立がん研究センター

原発性硬化性胆管炎など胆管の慢性炎症

原発性硬化性胆管炎(PSC)とは、肝臓の内外にある胆管に慢性的な炎症と線維化が起こり、胆管が狭くなったり拡張したりする病気です。

胆管に慢性的な炎症が続くことから、原発性硬化性胆管炎(PSC)は胆管がんの代表的な危険因子として知られています。

ただし、PSCと診断されたから必ず胆管がんになるわけではありません。また、胆管がん患者さんの大多数にPSCがあるという意味でもありません。

PSCがある人では、もともとの病気による胆管狭窄と胆管がんによる狭窄を区別することが難しい場合があります。そのため、黄疸の悪化や胆管の形の変化などがみられたときには、画像検査や内視鏡検査などを組み合わせて詳しく評価します。

参考:胆道がん 検査|国立がん研究センター

肝内結石と肝内胆管がん

肝臓の中の胆管に結石ができる肝内結石症も、肝内胆管がんとの関連が知られています。

結石があることで胆汁の流れが滞ったり、胆管炎を繰り返したりすると、胆管の粘膜に慢性的な刺激や炎症が加わります。肝内結石症は肝内胆管がんのリスク因子の一つとして知られています。

ただし、肝内結石が見つかった人すべてが将来胆管がんになるという意味ではありません。結石そのものの治療や胆管炎の有無などを含め、個々の状態に応じた経過観察が必要になります。

膵・胆管合流異常など胆道の先天的な異常

膵・胆管合流異常とは、胆管と膵管が十二指腸の壁の外側で合流する先天的な構造異常です。

通常とは異なる場所で胆管と膵管がつながるため、膵液が胆管側へ逆流しやすくなり、胆道の粘膜へ慢性的な障害を与えると考えられています。胆管が拡張するタイプの膵・胆管合流異常は、胆管がんの危険因子の一つです。

膵・胆管合流異常では胆のうがんとの関連も強いため、胆管だけの問題として考えるのではなく、胆道全体を評価します。

職業性胆管がんと化学物質

胆管がんの中には、特定の化学物質への職業上の曝露との関連が明らかになったものがあります。

国内では、印刷事業所などで使用されていた1,2-ジクロロプロパンやジクロロメタンへの高濃度曝露が、胆管がんの発生リスクを高めると考えられています。国立がん研究センターも、これらの化学物質を胆管がんの発生要因として掲載しています。

これは通常の生活環境で少量接することと同じ意味ではなく、主に職業上の高濃度曝露が問題となったものです。

参考:胆道がん 予防・検診|国立がん研究センター

肝内胆管がんでは慢性肝疾患などとの関連も報告されている

肝内胆管がんは、胆管そのものの病気だけでなく、肝硬変、B型・C型肝炎などの慢性肝疾患との関連も報告されています。

肝内胆管がんでは、肝硬変、B型・C型肝炎などの慢性肝疾患、肥満、糖尿病などとの関連が疫学研究で報告されています。これらは発症を必ず引き起こす原因という意味ではありません。

ここでも、リスク因子があることと発症することは同じではありません。胆管がんは、特定の生活習慣や病気がある人だけに起こるがんではなく、明らかな背景疾患がない人にも発生します。

参考:胆道がんの発生要因・予防|国立がん研究センター

胆管がんの予防・検診と受診の目安

現在、胆管がんについては、胃がんや大腸がんのように国の指針で定められた対策型がん検診はありません。国立がん研究センターも、胆道がんには現在、国の指針として定められている検診はないとしています。

そのため「○歳から毎年胆管がん検診を受ければ早期発見できる」という一般人口向けの方法は確立していません。

参考:胆道がん 予防・検診|国立がん研究センター

胆管がんを確実に防ぐ方法は確立していない

胆管がんにはPSCや膵・胆管合流異常などのリスク因子がありますが、すべての患者さんに共通する原因が分かっているわけではありません。そのため、特定の食品やサプリメントなどで胆管がんを予防できるという医学的根拠はありません。

国立がん研究センターでは、胆道がんに限った方法ではなく、がん全般の予防として禁煙、飲酒を控える、バランスのよい食事、身体活動、適正体重の維持、感染予防などを案内しています。

これらは健康維持のためには有用ですが、実践すれば胆管がんを確実に防げるという意味ではありません。

リスクとなる病気がある場合の経過観察は「一般のがん検診」とは違う

PSCや膵・胆管合流異常、肝内結石などの病気がある場合には、その基礎疾患自体の診療として定期的な画像検査や血液検査などを受けることがあります。これは症状のない一般の人を対象とする「胆管がん検診」とは意味が異なります。

特にPSCでは胆管そのものが狭くなるため、胆管の変化が基礎疾患によるものなのか、がんが加わったものなのかを慎重に見分ける必要があります。

すでに胆道や肝臓の病気で通院している人は、「胆管がんが心配なので別の検診を探す」というよりも、現在の病気にどのような経過観察が必要かを担当医に確認する方が適切です。

参考:胆道がん 検査|国立がん研究センター

黄疸などの症状がある場合は検診ではなく医療機関を受診

皮膚や白目が黄色くなった、尿が急に濃くなった、便が白っぽくなった、原因の分からない体重減少が続く、といった症状がある場合には、検診を待つのではなく医療機関を受診します。

がん検診は基本的に症状のない人を対象とするものです。国立がん研究センターも、胆道がんについて気になる症状がある場合には早めに医療機関を受診するよう案内しています。

特に黄疸に発熱や悪寒、腹痛を伴う場合には、後述する急性胆管炎が起きている可能性があります。胆管炎は重症化することがあるため、通常の定期受診を待たず医療機関へ相談する必要があります。

胆管がんの初期症状・進行した場合の症状

胆管がんの症状は、肝内胆管がんと肝外胆管がんで出方が異なります。

肝門部領域胆管がんや遠位胆管がんは、胆汁が流れる太い胆管を狭くするため、比較的早い段階から黄疸が現れることがあります。一方、肝内胆管がんは肝臓の中に腫瘤をつくるため、早期には自覚症状がないことがあります。

そのため、「黄疸がないから胆管がんではない」「黄疸が出たから末期である」と症状だけから判断することはできません。

肝内胆管がんは早期には症状が出にくい

肝内胆管がんは肝臓の内部にある細い胆管から発生します。

腫瘍が小さいうちは太い胆管の流れを直接妨げないことがあるため、早い段階では黄疸などの特徴的な症状が現れない場合があります。国立がん研究センターも、肝内胆管がんは早期には症状が出ないことが多いと説明しています。

健康診断などの血液検査で肝機能異常を指摘されたり、別の目的で受けた腹部超音波やCTで肝臓の腫瘤が偶然見つかったりすることもあります。

進行すると、右上腹部の痛みや違和感、食欲低下、体重減少、倦怠感などが現れることがあります。

参考:胆道がんについて|国立がん研究センター

肝門部領域・遠位胆管がんでは黄疸が発見のきっかけになることがある

肝門部領域胆管がんと遠位胆管がんでは、がんが胆管の内腔を狭くし、胆汁が十二指腸へ流れにくくなることがあります。この状態を閉塞性黄疸(へいそくせいおうだん)といいます。

国立がん研究センターでは、肝外胆管がんでは黄疸がよくみられる症状として挙げられています。

ただし、黄疸が出るタイミングは腫瘍の位置や胆管の狭窄の程度によって変わります。小さな腫瘍でも胆管の重要な場所を塞げば黄疸が出ることがあるため、黄疸の有無だけでステージを判断することはできません。

黄疸はなぜ起こるのか

胆汁には、赤血球が分解された後にできるビリルビンという黄色い色素が含まれています。

通常、ビリルビンは胆汁とともに胆管を通って十二指腸へ排出されます。しかし胆管ががんで塞がれると胆汁が流れなくなり、ビリルビンが血液中へ増えていきます。その結果、皮膚や白目が黄色く見えるようになります。

黄疸は胆管がんだけで起こる症状ではありません。胆管結石、膵臓の病気、肝臓の病気などでも起こるため、原因を画像検査や血液検査で確認する必要があります。

尿が濃い・便が白っぽい・皮膚がかゆい

閉塞性黄疸では、皮膚や目が黄色くなる前後に、尿や便の色が変わることがあります。血液中に増えたビリルビンが尿へ排出されるため、尿が濃い茶色のようになることがあります。

反対に、胆汁が腸へ流れなくなると便へ届く胆汁色素が減るため、便が灰色や白っぽくなることがあります。また胆汁うっ滞に伴って皮膚の強いかゆみが生じる場合もあります。

単なる尿の濃さは脱水でも起こりますが、白目の黄ばみや白っぽい便などを伴う場合には胆汁の流れが悪くなっている可能性を考えます。

腹痛・食欲低下・体重減少・倦怠感

胆管がんでは、みぞおちや右上腹部の痛み、全身のだるさ、食欲不振、体重減少などが起こることがあります。これらは胆管がんだけに特有の症状ではありません。そのため「体重が減ったから胆管がん」と判断することはできません。

一方、特に食事や運動量を変えていないのに体重が減り続ける、腹部の違和感と肝機能異常が続くなど、これまでになかった変化が重なる場合には原因を調べることが必要です。

黄疸に発熱・悪寒を伴う場合は胆管炎にも注意する

胆管が狭くなって胆汁が流れにくくなると、胆管内で細菌感染が起こり、急性胆管炎を発症することがあります。胆管がんも胆汁うっ滞を起こす原因の一つです。

胆管炎では、発熱、悪寒、黄疸、右上腹部痛などがみられます。重症になると血圧低下や意識障害を起こすこともあり、抗菌薬だけでなく、詰まった胆管から胆汁を流す胆道ドレナージが必要になる場合があります。

胆管がんの治療中や胆管ステント留置中に、高熱、強い悪寒、黄疸の急な悪化などがみられた場合には、次の予約日まで待たず治療を受けている医療機関へ連絡します。

参考:胆道がん 検査|国立がん研究センター

胆管がんの検査と診断

胆管がんの診断は、一つの検査だけで完結するとは限りません。

大きく分けると、以下のような流れで進みます。

血液検査や超音波で異常を見つける
→ CT・MRIで胆管のどこに病変があり、どこまで広がっているかを見る
→ 必要に応じてPET・PET-CTでリンパ節転移や遠隔転移などを追加で評価する
→ EUSやERCPなどで胆管や周囲をさらに詳しく調べる
→ 細胞や組織を採取して病理診断を行う

すべての患者さんがこれらの検査を順番に受けるわけではなく、病変の場所やCT・MRIの所見、手術を検討しているかなどによって必要な検査を組み合わせます。国立がん研究センターでも、胆道がんではまず血液検査と腹部超音波検査を行い、胆管狭窄や拡張などがあればCTやMRI、さらに必要に応じて内視鏡検査、生検、細胞診へ進む流れを示しています。

胆管がんでは、診断と同時に「手術で取り切れる範囲なのか」まで評価する必要があります。そのため、単に「がんがあるか」を探す検査ではなく、胆管の長さ方向への広がり、門脈・肝動脈などの血管との位置関係、リンパ節や遠隔臓器への転移まで調べます。

参考:胆道がん 検査|国立がん研究センター

血液検査|ビリルビン・ALP・γ-GTPなどを確認する

胆管が狭くなって胆汁の流れが悪くなると、血液中のビリルビン、ALP、γ-GTPなどが上昇することがあります。

ビリルビンは黄疸の程度を知る手がかりになり、ALPやγ-GTPは胆道系の異常を評価するために使われます。国立がん研究センターも、胆道がんの初期検査としてこれらを確認するとしています。

手術や薬物療法を安全に行えるか判断するために、肝機能、腎機能、血球数、炎症反応なども確認します。

ただし、胆管がんがあっても初期には大きな異常が出ない場合があります。反対に胆石や胆管炎などでも胆道系酵素が上がるため、血液検査だけでは胆管がんを診断できません。

CA19-9・CEAなどの腫瘍マーカー

胆管がんでは、血液中のCA19-9やCEAを測定することがあります。国立がん研究センターでも胆道がんで用いる代表的な腫瘍マーカーとしてCA19-9とCEAを挙げています。

腫瘍マーカーは、診断を補助したり治療前後の変化や経過をみたりするために利用します。しかし、CA19-9が高い=胆管がん、と確定することはできません。

胆管が詰まって胆汁がたまっている場合や胆管炎がある場合でもCA19-9が高くなることがあります。逆に胆管がんがあっても数値が高くならない患者さんもいます。したがって、CA19-9の数字だけを見るのではなく、黄疸や炎症の有無、CT・MRIなどの画像所見と合わせて判断します。

腹部超音波検査|胆管の拡張や肝臓の腫瘤を確認する

腹部超音波検査は、体の表面から超音波を当てて肝臓や胆道を観察する検査です。放射線被ばくがなく、身体への負担も比較的小さいため、胆道の異常を調べる最初の画像検査としてよく使われます。

肝外胆管が狭くなっている場合には、その上流側の胆管が拡張して見えることがあります。肝内胆管がんでは、肝臓の中の腫瘤が見つかることもあります。

ただし、超音波だけでは腫瘍の正確な広がりや血管との関係を十分評価できないため、異常が疑われた場合には造影CTやMRIなどへ進みます。

造影CT|がんの広がりと切除可能性を調べる

胆管がんでは造影CTが非常に重要な検査です。

CTでは、胆管が狭くなっている場所や腫瘍の大きさだけでなく、門脈や肝動脈などの血管へどこまで接しているか、周囲臓器へ広がっていないか、リンパ節転移や肝臓・肺などへの遠隔転移がないかを調べます。

特に肝門部領域胆管がんでは、どの血管へどこまで広がっているかによって、どの範囲の肝臓を切除できるかが変わります。

胆管がんの位置や血管への広がりを評価するうえで造影CTは重要です。患者さんの状態が許せば、胆道ドレナージによる画像の変化が生じる前に必要な進展度評価を行うことがあります。胆管炎などで緊急処置が必要な場合は、感染や胆汁うっ滞への対応を優先します。

参考:胆道がん 治療|国立がん研究センター

MRI・MRCP|胆管がどこで狭くなっているかを調べる

MRIは磁気を利用して体内を詳しく画像化する検査です。

胆管がんでは、MRIを利用したMRCP(磁気共鳴胆管膵管造影)がよく用いられます。

MRCPでは造影剤を胆管へ直接注入しなくても、胆管や膵管を画像として描き出すことができます。胆管がどこで細くなっているのか、その上流側がどの程度拡張しているのか、腫瘍が胆管に沿ってどこまで広がっている可能性があるのかを評価する際に役立ちます。

CTとMRIはそれぞれ異なる情報を補いながら、手術可能性を評価するために組み合わせることがあります。

PET・PET-CT|リンパ節転移や遠隔転移を追加で調べることがある

PET・PET-CTは、放射性物質を含む薬剤を使って、がん細胞の活動性を画像化する検査です。胆管がんでは、CTやMRIなどで評価したうえで、リンパ節転移や遠隔転移などを追加で確認する目的で行うことがあります。

一方、すべての胆管がん患者さんに必ず行う検査ではありません。病変の場所やCT・MRIの所見、手術可能性などを踏まえて必要性を判断します。

EUS|胆管周囲を近くから調べる

EUS(超音波内視鏡検査)は、先端に超音波装置が付いた内視鏡を胃や十二指腸まで挿入し、体の内側から胆管や周囲組織を観察する検査です。

体表からの超音波より病変へ近づいて観察できるため、胆管壁の変化、周囲組織への広がり、リンパ節などを詳しく評価できます。特に遠位胆管は膵臓や十二指腸に近いため、EUSによる評価が役立つ場合があります。

一方、どの患者さんにも必ずEUSを行うわけではなく、CT・MRIなどの結果や病変の場所に応じて必要性を判断します。

ERCP|胆管を詳しく調べ、細胞や組織を採取する

ERCP(内視鏡的逆行性胆管膵管造影)では、口から十二指腸まで内視鏡を入れ、十二指腸乳頭から細いカテーテルを胆管へ挿入します。胆管内へ造影剤を入れてX線撮影することで、胆管狭窄の形やがんの広がりを詳しく調べます。

MRCPが身体の外から胆管の全体像を見る検査であるのに対し、ERCPは胆管へ直接アクセスできる点が特徴です。そのため、胆汁を採取して細胞診を行ったり、狭窄部分から組織を採って生検したりできます。黄疸が強い場合には、そのまま胆道ドレナージを行うこともあります。

ただしERCPは、膵炎や胆管炎などの合併症を起こす可能性もあるため「胆管がんが心配だからとりあえずERCPを行う」という検査ではありません。まずCTやMRIなどで病変を評価し、その後、必要な患者さんに行います。

IDUS・経口胆道鏡(POCS)が必要になる場合

通常のCT、MRI、ERCPだけでは、胆管壁のどこまでがんが入り込んでいるか、胆管の長さ方向へどこまで広がっているかを判断しにくい場合があります。

そのようなときに使われる検査の一つがIDUS(管腔内超音波検査)です。ERCPの際に非常に細い超音波プローブを胆管内へ入れ、胆管壁の深さや周囲の血管との関係などを観察します。

POCS(経口胆道鏡)では、細い内視鏡を胆管の中へ進め、胆管粘膜そのものを直接観察します。疑わしい場所から狙って生検できることも利点です。胆管がんが胆管の表面に沿って広がっている範囲を確認する際にも使われます。

これらはすべての患者さんに必要な検査ではありません。「手術でどこまで胆管を切ればがんを取り切れるのか」をより正確に判断する必要がある場合などに追加します。

参考:胆道がんの内視鏡検査|国立がん研究センター

胆管の狭窄=胆管がんとは限らない

胆管が細く狭くなっている画像を見ると、「胆管がんではないか」と疑いますが、胆管狭窄があるだけではがんと確定できません。

胆管を狭くする病気には、原発性硬化性胆管炎やIgG4関連硬化性胆管炎などがあります。特にIgG4関連硬化性胆管炎では、胆管壁が厚くなったり狭窄したりして閉塞性黄疸を起こすことがあり、画像だけでは胆管がんとの鑑別が難しい場合があります。

硬化性胆管炎は、胆管がんと鑑別を要する良性疾患の一つです。画像所見だけではなく、血液検査、IgG4値、ERCP、胆管生検、ほかの臓器の所見などを組み合わせて診断します。

この区別が重要なのは、治療がまったく異なるためです。がんであれば手術や薬物療法を考えますが、IgG4関連硬化性胆管炎はステロイド治療が有効な病気です。

参考:胆道がん 検査|国立がん研究センター

胆管がんでは治療前に病理診断がつかない場合もある

一般に「がんの診断」と聞くと、組織を採取して顕微鏡でがん細胞を確認してから治療を始めるイメージがあります。

胆管がんでも可能な限り生検や細胞診による病理診断を行います。国立がん研究センターでは、ERCPやPOCS、胆道ドレナージなどの際に胆汁細胞診や胆管生検を行うことがあると説明しています。

しかし胆管は細い管であり、胃や大腸の腫瘍のように大きな組織を簡単に採取できるとは限りません。がんが胆管壁の内部へ入り込むように広がっている場合には、採取できた組織にがん細胞が含まれず、検査結果が陰性になることもあります。

そのため、細胞診や生検でがん細胞が確認できなかったからといって、胆管がんを完全に否定できるとは限りません。

画像所見、胆管狭窄の形、進展の仕方、腫瘍マーカー、複数回の病理検査などを総合して、胆管がんの可能性が高いと判断することがあります。

一方で、前述したIgG4関連硬化性胆管炎など良性疾患との鑑別も必要です。「病理診断がついていないのになぜ手術を検討するのか」と疑問に思った場合には、画像からどの程度胆管がんが疑われているのか、追加でできる検査はあるのか、良性疾患の可能性をどこまで評価したのかを担当医に確認すると、治療判断を理解しやすくなります。

胆管がんのステージ分類|3つの胆管がんで分類が異なる

胆管がんのステージは、がんがどこまで広がっているのかを示すTNM分類をもとに決めます。

ただし、胆管がんでは肝内胆管がん、肝門部領域胆管がん、遠位胆管がんで同じステージ分類を使うわけではありません。同じ「ステージⅡ」でも、発生した場所によって意味する病状が異なります。国立がん研究センターも、この3種類をそれぞれ別の病期表で掲載しています。

そのため、自分のステージを理解するときには、数字だけでなく、「どの種類の胆管がんについて、どの病期分類を使って説明されているのか」を確認することが大切です。

参考:国立がん研究センター|胆道がん 治療

TNM分類とは

TNM分類は、原発巣の広がりを示すT、リンパ節転移を示すN、遠隔転移を示すMを組み合わせて、がんの進行度を表す方法です。

分類 何を見ているか
T 原発巣の大きさや数、胆管壁への深達度、血管や周囲組織への広がりなど。何を基準にするかは胆管がんの発生部位によって異なる
N 周囲の領域リンパ節へ転移しているか、または転移したリンパ節の数
M 肺、骨、腹膜、遠隔リンパ節など、離れた場所への転移があるか

ここで気をつけたいのがT分類です。

遠位胆管がんでは、がんが胆管壁の中へ何mm入り込んでいるかがT分類に関係します。一方、肝門部領域胆管がんでは門脈や肝動脈への広がりが重視されます。肝内胆管がんでは、腫瘍の大きさだけでなく、単発か多発か、血管や主要胆管へ入り込んでいるかなどが評価されます。

つまり「T2だから3種類とも同じ程度の進行度」という読み方はできません。

胆管がんには一つの共通ステージ分類がない

胆管がんを3種類に分けて病期を考えるのは、発生する場所によって周囲の解剖が大きく異なるためです。

肝内胆管がんは肝臓の中で広がるため、腫瘍の数や血管浸潤などが重要になります。肝門部領域には左右の胆管だけでなく、門脈や肝動脈が複雑に集まっています。遠位胆管は膵臓の中を通っているため、胆管壁への浸潤とリンパ節、周囲の主要血管などを別の基準で評価します。

以下では、それぞれのステージがどのような病状を表すのかを、一般向けに整理します。

肝内胆管がんの病期分類と確認項目

国立がん研究センターが2026年8月21日に更新した患者向け解説では、肝内胆管がんの病期表に2025年版の国内病期分類を採用しています。旧版の分類を2025年版と同じものとして扱うことはできません。

肝内胆管がんの病期は、腫瘍の数・広がり、血管や胆管への浸潤、リンパ節や離れた臓器への転移などを組み合わせて判断します。旧版に基づく「2cm以下かどうか」などの3条件のみで、現在の病期を判定することはできません。

確認する項目 病期や治療方針との関係
肝内の腫瘍 腫瘍の数・大きさ、肝臓内の広がりを評価する
血管・胆管への浸潤 主要な血管・胆管との関係を評価し、切除可能性も判断する
領域リンパ節転移 転移の有無を調べ、原発巣の所見と組み合わせて病期を判断する
遠隔転移 肺・骨・腹膜などの転移を調べ、手術や全身治療の必要性を検討する

※ これは病期判定に関係する要素を独自に整理した説明表であり、国内病期分類の公式なステージ対応表を転載したものではありません。Ⅰ~Ⅳ期の正確な組み合わせは、以下の国立がん研究センターの最新病期表と担当医の説明で確認してください。
参考:肝内胆管がん・2025年版の国内病期表|国立がん研究センター

肝門部領域胆管がんのステージⅠ~Ⅳ

肝門部領域胆管がんでは、がんが胆管壁の外へどこまで広がったかに加えて、門脈や肝動脈への浸潤とリンパ節転移がステージを大きく左右します。

なお、国立がん研究センターの現行患者向け病期表は、肝門部領域胆管がんについて国内の胆道がん病期分類(2021年版)に基づいています。以下の表は比較・理解のためにUICC TNM第8版の病期を要約したもので、現行の国内病期表と必ずしも一致しません。

ステージ 一般的な病状のイメージ
0期 異常な細胞が胆管の表面にとどまる上皮内がんの状態
Ⅰ期 がんが胆管内にとどまり、筋層や線維組織までの広がりで、リンパ節・遠隔転移がない状態
Ⅱ期 胆管壁を越えて周囲の脂肪組織や隣接する肝実質へ広がっているが、リンパ節・遠隔転移がない状態
Ⅲ期 門脈・肝動脈などの主要血管へ広がっている、または1~3個の領域リンパ節へ転移している状態。遠隔転移はない
ⅣA期 4個以上の領域リンパ節へ転移しているが、遠隔転移は確認されない状態
ⅣB期 離れた臓器や遠隔リンパ節などへ転移している状態

※ これはUICC TNM第8版の大まかな整理です。国内で用いられる分類とは病期の対応が異なる可能性があります。実際の病期は担当医に確認してください。

Ⅲ期の中でも状態は一様ではありません。ⅢA期では片側の門脈・肝動脈の枝への浸潤、ⅢB期では主門脈や両側の門脈枝、総肝動脈など、より手術に影響する血管への広がりが含まれます。ⅢC期は1~3個の領域リンパ節転移がある状態です。

このため、肝門部領域胆管がんでは「ステージⅢ」という数字だけでは、手術が可能かどうかまで判断できません。どの側の胆管・門脈・肝動脈へ広がっているのか、反対側の肝臓を十分に残せるのかまで確認する必要があります。

遠位胆管がんのステージⅠ~Ⅳ

遠位胆管がんでは、UICC TNM第8版のT分類において、がんが胆管壁へどのくらいの深さまで入り込んでいるかが重要になります。以下の病期表は同分類の概略であり、国立がん研究センターの2026年患者向け病期表は国内分類に基づくことに注意してください。

さらに、リンパ節転移の個数や主要動脈への浸潤、遠隔転移を組み合わせてステージを判定します。

ステージ 一般的な病状のイメージ
0期 がん細胞が胆管の表面にとどまる上皮内がん・高度異形成の状態
Ⅰ期 胆管壁への浸潤が5mm未満で、リンパ節転移・遠隔転移がない状態
Ⅱ期 胆管壁への浸潤がより深くなっている、または1~3個の領域リンパ節へ転移している状態。遠隔転移はない
Ⅲ期 4個以上の領域リンパ節へ転移している、または腹腔動脈・上腸間膜動脈・総肝動脈など重要な血管へ広がっている状態。遠隔転移はない
Ⅳ期 肝臓、肺、腹膜など離れた場所へ遠隔転移している状態

※ 本表はUICC TNM第8版の概略です。国内の胆道がん病期分類(2021年版)に基づく現在の患者向け公的病期表とは、区分が異なる場合があります。

遠位胆管がんでは、Ⅰ期は胆管壁への浸潤が5mm未満、T2は5~12mm、T3は12mmを超える深さが一つの基準です。ただしステージⅡ以降は、深さだけでなくリンパ節転移との組み合わせによって病期が変わります。

胆管がんのステージ4はどのような状態か

「ステージ4」と聞くと、すべての胆管がんで「遠くの臓器へ転移した状態」をイメージするかもしれません。

しかし、胆管がんでは発生部位と病期分類によって、ステージ4の意味が異なります。

たとえば、UICC TNM第8版では遠位胆管がんのⅣ期は遠隔転移がある状態です。一方、肝門部領域胆管がんの同分類には、遠隔転移がなくても領域リンパ節の転移個数によりⅣA期と判定される場合があります。病期の版によって区分が異なるため、診断書に使用された分類を確認することが大切です。

したがって「ステージ4=必ず肺や骨などへ遠隔転移している」とは限りません。

また、ステージだけで手術の可否が自動的に決まるわけでもありません。胆管がんでは、血管への広がり、切除後に残せる肝臓の量と機能、リンパ節転移、遠隔転移、全身状態などを合わせて切除可能性を判断します。国立がん研究センターも、遠隔転移がなくても技術的に切除が難しい場合があり、その判断が施設によって異なる場合もあると説明しています。

切除できないと判断された場合には薬物療法が治療の中心になりますが、現在は免疫療法や、特定の遺伝子異常に応じた治療も使われるようになっています。後の章で、切除不能・再発胆管がんの治療とバイオマーカー検査について詳しく説明します。

参考:胆道がんについて|国立がん研究センター

治療前のcStageと手術後のpStageは異なることがある

治療前には、CTやMRIを中心に、EUSや、必要に応じてPET・PET-CTなどの検査結果を組み合わせて、がんの広がりを評価します。このように治療前の情報から判断する病期を臨床病期(cStage)と呼びます。

手術を行った場合には、切除した胆管、肝臓、膵臓、リンパ節などを病理検査で詳しく調べることができます。この結果から評価される病期が病理病期(pStage)です。

画像では転移がないように見えたリンパ節から、手術後にがん細胞が見つかることもあります。反対に、画像でがんの浸潤が疑われた場所に、病理検査ではがん細胞が確認されないこともあります。

そのため、手術前に説明されたステージと手術後に説明されるステージが変わることがあります。これは必ずしも最初の診断が誤っていたという意味ではなく、手術によってより詳しい情報が得られた結果です。
※ 国立がん研究センターの胆道がん患者向け病期表は2026年8月に更新され、肝内胆管がんでは2025年版、肝門部領域・遠位胆管がん等では2021年版の国内取扱い規約に基づく表を掲載しています。前述の一部の表は比較のためUICC TNM第8版を示したもので、現行の国内病期表と一致するとは限りません。UICCの第9版も刊行されているため、実際の診療では使用された分類と版を必ず確認してください。

胆管がん治療の全体像

胆管がんでは、ステージを決めた後に「ステージ○なら必ずこの治療」という一対一の対応で治療が決まるわけではありません。

治療方針を決める大きな分岐は「がんを手術で完全に取り切れる可能性があるか」です。

胆道がんではまず手術が可能かを検討し、手術できない場合には薬物療法を中心とした治療を行います。判断には病変の広がりだけでなく、手術後に残る肝臓の機能や全身状態なども関係します。

病状 主な治療の考え方
手術で取り切れると判断される 根治切除を目指して手術を行う。根治切除後は、術後の回復や全身状態などを確認し、S-1による術後補助化学療法を検討する
切除できるか慎重な判断が必要 血管への広がり、残せる肝臓の量と機能、胆管の広がりなどを専門施設で詳しく評価する
局所進行で切除できない 薬物療法を中心に行い、遠隔転移がない場合などには放射線治療を検討することがある
遠隔転移・再発 全身に作用する薬物療法が中心。治療歴やバイオマーカーによって使用する薬を選ぶ
黄疸・胆管炎がある 状態に応じて胆道ドレナージや感染治療を行い、胆汁の流れと全身状態を整えてから手術や薬物療法へ進む

手術を行えるかは、腫瘍の大きさだけでは決まりません。国立がん研究センターでは、手術に耐えられる全身状態であること、遠隔転移がないこと、肝切除が必要な場合には手術後に十分な肝機能を保てると予測できることなどを、切除可能性の判断材料として挙げています。

特に肝門部領域胆管がんでは、門脈や肝動脈と胆管が狭い範囲に集まっています。同じ画像所見でも、血管再建を含む手術を行えるか、どのくらい肝臓を残せるかなどによって判断が難しくなることがあります。

胆道がんでは、膵がんのように広く統一された「切除可能境界」の分類がすべての病型で確立しているわけではありません。重要血管への広がりと、完全切除できる見込みを専門施設で検討します。

そのため「手術できない」と説明されたときには、遠隔転移があるためなのか、重要な血管や胆管への広がりのためなのか、残せる肝臓の量・機能が不足するためなのかを確認することが、その後の治療を理解する助けになります。

参考:国立がん研究センター|胆道がん 治療
参考:胆道がん 治療|国立がん研究センター

黄疸がある場合の胆道ドレナージ

肝門部領域胆管がんや遠位胆管がんでは、腫瘍によって胆管が狭くなり、胆汁が流れなくなることがあります。

胆汁がたまると黄疸が強くなるだけでなく、胆管炎を起こしたり、肝機能が低下したりすることがあります。また、黄疸が強い状態では予定している手術や薬物療法を安全に行いにくくなることもあります。国立がん研究センターも、胆道閉塞によって手術や薬物療法が妨げられる場合に、胆道ドレナージを行うと説明しています。

胆道ドレナージとは、詰まった胆管から胆汁を流れるようにする処置です。これはがんそのものを取り除く治療ではありません。しかし、次のがん治療へ安全に進むために非常に重要な治療になることがあります。

参考:国立がん研究センター|胆道がん 治療

手術を考える場合は胆道ドレナージ前に造影CTで広がりを確認することがある

黄疸があると「まず胆管へステントを入れればよい」と思うかもしれません。しかし、手術による切除を目指す胆管がんでは、可能であれば胆道ドレナージを行う前に造影CTで腫瘍の広がりを評価することがあります。

胆管がんでは、ドレナージ前の造影CTで胆管・血管・腫瘍の関係を評価することが、手術計画に役立つ場合があります。ただし、胆管炎など緊急の処置が必要な場合には、ドレナージを優先することもあります。

ドレナージ前の画像には、処置による胆管の変化が加わっていません。そのため、腫瘍が胆管のどこまで広がっているか、門脈や肝動脈との位置関係、どの肝臓を残すかといった手術計画を立てるうえで役立ちます。

ただし、高熱や悪寒を伴う胆管炎など、感染への緊急対応が必要な場合には、画像診断より胆汁を流す処置や感染治療を優先することがあります。

参考:胆道がん 治療|国立がん研究センター

胆道ドレナージとは

胆道ドレナージでは、狭くなった部分を越えてチューブやステントを留置し、たまった胆汁を排出します。

大きく分けると、胆汁を体の外へ出す「外ろう(外瘻:がいろう)」と、胆汁を十二指腸など体内へ流す「内ろう(内瘻:ないろう)」があります。国立がん研究センターでは、内視鏡を使う方法と、体表から肝臓を通して胆管へ到達する経皮的な方法などを説明しています。

胆管がんでは「黄疸があれば全員同じ方法」というわけではありません。がんの場所、手術予定、胆管炎の有無、どの胆管が詰まっているのかによって方法を選びます。

ENBDと胆管ステントは胆汁の流し方が異なる

内視鏡を用いた代表的な方法には、内視鏡的経鼻胆管ドレナージ(ENBD)と内視鏡的胆管ステント留置(EBS)があります。

方法 仕組み 特徴
ENBD 胆管に入れたチューブを鼻から体外へ出し、胆汁を外へ排出する 胆汁の量や性状を確認しやすく検査にも利用できる一方、鼻からチューブが出ているため違和感や自己抜去などが問題になる
胆管ステント 狭窄部分にステントを留置し、胆汁を体内から十二指腸へ流す 体外にチューブが出ないため生活上の負担は少ないが、詰まりや感染が起こると交換などが必要になる

肝門部領域胆管がんの術前ドレナージでは、鼻から外へ胆汁を出す方法、胆管内にステントを留置する方法などがあります。感染リスクや手術時期、処置後に胆汁を流したい領域を考慮して方法を選びます。

肝門部領域胆管がんでは「どの胆管を流すか」も重要

肝門部領域胆管がんでは、左右の胆管が分かれる場所に腫瘍があるため、「胆汁を流せればどこでもよい」というわけではありません。

手術で右側の肝臓を切除して左側を残す予定であれば、手術後に残る肝臓から胆汁が流れる状態を整えることが特に重要になります。

大きな肝切除を予定する患者さんでは、術後に残す予定の肝臓側から胆汁を流せるように計画することが重要になります。

このため、肝門部領域胆管がんの胆道ドレナージは、単なる黄疸の処置ではなく、その後に行う肝切除の計画と一体になった治療と考える方が実態に近くなります。

遠位胆管がんでも全員に術前ドレナージを行うわけではない

遠位胆管がんでも、強い黄疸や胆管炎がある場合には胆道ドレナージを行います。

一方、肝切除を伴わず膵頭十二指腸切除へ速やかに進める患者さんなどでは、すべての患者さんに術前ドレナージが必要なわけではありません。黄疸の程度、感染、手術までの期間などによって判断します。

黄疸の程度、胆管炎の有無、手術までの期間、術前薬物療法の予定などを考慮して判断します。

内視鏡で胆汁を流せない場合には別の方法を検討する

通常はERCPを利用して十二指腸側から胆管へ到達する方法が用いられますが、胆管の狭窄や消化管の形などによって内視鏡的ドレナージが難しい場合があります。

その際には、体表から肝臓を通して胆管へチューブを入れる経皮経肝胆道ドレナージなどを検討することがあります。EUSを利用した胆道ドレナージもありますが、将来的な切除の可能性や処置の安全性を含めて専門施設で判断します。

発熱・悪寒・黄疸の再燃は胆管炎やステント閉塞の可能性がある

胆道ドレナージを行えば、その後ずっと胆汁が問題なく流れるとは限りません。

ステントやチューブが詰まったり、位置がずれたりすると再び胆汁が流れにくくなり、胆管炎を起こすことがあります。腹痛、発熱、黄疸などは、胆道ドレナージに問題が起きたときにみられる症状です。

胆管ステント留置後に高熱、悪寒、黄疸の悪化、強い腹痛などが現れた場合は、次回の診察日を待たず治療を受けている医療機関へ連絡します。

胆管がんの手術|発生部位で手術方法が大きく変わる

胆管がんで根治を目指す場合には、がんを残さず切除することが手術の目的になります。

ただし、胆管は肝臓の中から膵臓まで続いています。そのため、同じ胆管がんでも、発生した場所によって一緒に切除する臓器が大きく変わります。国立がん研究センターも、肝内胆管がん、肝門部領域胆管がん、遠位胆管がんで異なる術式を示しています。

種類 主な手術 なぜその手術が必要か
肝内胆管がん 部分肝切除・肝葉切除・拡大肝切除など がんが肝臓内の胆管に発生するため、腫瘍を含む肝臓を切除する
肝門部領域胆管がん 肝切除+肝外胆管切除+胆のう摘出+リンパ節郭清など 胆管が肝臓内へ枝分かれする部分にがんがあるため、片側の肝臓と胆管を一体として切除することが多い
遠位胆管がん 膵頭十二指腸切除+リンパ節郭清 遠位胆管が膵頭部の中を通るため、胆管だけを安全に分離して切除することが難しい

参考:国立がん研究センター|胆道がん 治療

肝内胆管がんでは腫瘍を含む肝臓を切除する

肝内胆管がんでは、がんがある場所と広がりに応じて肝臓を切除します。

腫瘍が一部に限られていれば部分切除を行う場合があります。右葉または左葉にまとまっている場合には、右肝切除・左肝切除などを行い、さらに広い範囲に及ぶ場合には拡大肝切除が必要になることがあります。

また、肝門部に近い肝内胆管がんでは、肝臓だけでなく肝外胆管や胆のうを切除し、周囲のリンパ節を郭清する場合もあります。切除範囲は胆管に沿った広がりや血管の位置関係などを総合して決めます。

「肝内胆管がんなら肝臓の腫瘍だけを小さく取ればよい」とは限らず、がんを残さない切除範囲と、手術後に十分な肝機能を残すことの両方を考えて術式を決めます。

参考:胆道がんについて|国立がん研究センター

肝門部領域胆管がんではなぜ大きな肝切除が必要になるのか

肝門部では、右肝管と左肝管が合流して一本の胆管になります。

がんがこの合流部にできると、胆管の表面に沿って左右どちらかの肝臓側へ広がることがあります。胆管だけを途中で切除しても十分な切除断端を確保できない場合があるため、がんが広がっている側の肝臓と胆管を一体として切除します。

さらに肝門部には門脈と肝動脈も集まっているため、がんとの位置関係によって手術の難しさが大きく変わります。

切除後には、残った肝臓側の胆管と小腸をつないで、胆汁が再び腸へ流れるように再建します。

残す肝臓が小さい場合には門脈塞栓術を行うことがある

肝臓は再生能力のある臓器ですが、あまりに多く切除すると、残った肝臓だけでは身体に必要な働きを維持できず、術後肝不全を起こす危険があります。

そこで大きな肝切除を予定しており、手術後に残る肝臓の量が不足すると予測される場合に「門脈塞栓術(PVE)」を行うことがあります。

門脈塞栓術では、手術で切除する予定の肝臓へ流れる門脈をあらかじめ塞ぎます。すると血流が残す側へ多く流れるようになり、数週間かけて残す予定の肝臓を大きくすることを目指します。国立がん研究センターも、大きな肝切除が必要な場合には手術前に門脈塞栓術を行うことがあると説明しています。

つまり門脈塞栓術は、がんそのものを治療するためではなく、予定した肝切除をより安全に行える状態へ近づけるための術前処置です。

遠位胆管がんではなぜ膵頭十二指腸切除を行うのか

遠位胆管は、十二指腸へ入る直前に膵臓の頭側である膵頭部の中を通っています。そのため、遠位胆管がんだけを胆管からくり抜くように切除すると、十分な切除範囲を確保できないことがあります。

一般的には膵頭十二指腸切除術を行い、遠位胆管と胆のう、膵頭部、十二指腸などを一緒に切除し、周囲のリンパ節も郭清します。切除後は残った膵臓、胆管、胃などを小腸につなぎ直し、食物、胆汁、膵液が再び腸へ流れるように再建します。

「胆管がんなのに、なぜ膵臓や十二指腸まで取るのか」と疑問に感じるかもしれませんが、これは遠位胆管が膵頭部と解剖学的に一体となっているためです。

血管まで広がっていても一律に手術不能とは限らない

肝門部領域胆管がんでは、門脈や肝動脈へがんが接したり入り込んだりすることがあります。血管浸潤は切除を難しくする重要な要素ですが、「血管に広がっている=必ず手術不能」ではありません。

病変の範囲によっては、門脈などをがんと一緒に切除して再建する手術を検討することがあります。ただし、このような手術は通常の胆管切除より難易度が高く、安全に完全切除できる見込みと合併症リスクを慎重に判断する必要があります。

手術不能と説明された場合には「どの血管への広がりが理由なのか」「残す側の血流を保てないためなのか」「ほかの臓器への転移が理由なのか」を確認すると、なぜその治療方針になったのかを理解しやすくなります。

肝門部領域胆管がんの肝移植は研究段階

通常の肝切除ではがんを取り切れない一部の肝門部領域胆管がんに対して、肝臓全体を摘出して生体肝移植を行う治療が研究されています。

日本では「切除不能な肝門部領域胆管癌に対する生体肝移植」が先進医療Bとして実施され、多施設共同の前向き臨床研究で安全性や治療成績の評価が続いています。厚生労働省の2026年の先進医療一覧にも掲載されており、臨床研究登録も募集中となっています。

対象になるのは、通常の肝切除では十分な肝臓を残せない、重要な血管への浸潤で残す肝臓への血流を確保できないなど、厳格な条件を満たす患者さんです。

現時点では、切除不能な肝門部領域胆管がんに対する一般的な標準治療として確立した肝移植ではありません。

「手術できないなら肝移植を受ければよい」という治療ではなく、現在は研究の対象となる一部の患者さんで検討される治療です。

参考:切除不能な肝門部領域胆管がんに対する生体肝移植|jRCT臨床研究登録
参考:厚生労働省|先進医療の各技術の概要

胆管がん手術では施設・術者の経験も確認する

胆管がんの手術には、大きな肝切除、胆管再建、膵頭十二指腸切除、場合によっては血管の合併切除・再建など、高度な肝胆膵外科技術が必要になる場合があります。

胆道がんの手術には肝切除や血管再建などの高度な手技を伴う場合があるため、施設の経験や術後管理体制も考慮して治療先を検討することが重要です。

特に「切除できるかできないか」の境界にある場合には、ステージ番号だけで判断するのではなく、胆道がん手術の経験が多い施設で切除可能性を評価することにも意味があります。

参考:胆道がん 治療|国立がん研究センター

切除可能胆管がんの術前・術後薬物療法

手術で目に見える胆管がんをすべて切除できても、身体の中に画像では確認できない微小ながん細胞が残っている可能性があります。

そのため胆管がんでは、手術だけで治療を終えるのではなく、手術後に再発を減らすための薬物療法を行うことがあります。

一方、食道がんなどとは異なり、切除可能な胆管がんの患者さん全員に手術前の化学療法を行うことは、現在の標準治療として確立していません。術前治療と術後治療では、現時点での位置づけが異なります。

手術で取り切っても再発することがある

画像検査や手術で確認できるがんを完全に切除しても、ごく少量のがん細胞がすでにリンパ管や血液を通って身体の中に広がっていることがあります。

このような微小ながん細胞はCTやMRIでは確認できません。

胆道がんは、手術で目に見えるがんを完全に取り除くことができても、その後に再発する場合があります。国立がん研究センターも、胆道がんでは根治手術後の再発が課題となってきたことを説明しています。そのため、手術後の病理結果や再発リスクに応じて、術後補助化学療法を検討します。

術後補助化学療法は、手術で取り残した大きながんを治療するのではなく、画像には見えない微小ながん細胞を治療し、再発の可能性を下げることを目的としています。

参考:国立がん研究センター「S-1補助療法が胆道がん根治手術後の標準治療となることを証明」

術後補助化学療法ではS-1が標準治療

現在、日本では根治切除後の胆道がんに対する術後補助化学療法として、S-1(エスワン)が標準治療となっています。

その根拠となったのが、日本で行われたJCOG1202/ASCOT試験です。

根治手術を受けた胆道がん患者440人を対象に、手術後に経過観察する群とS-1を使用する群を比較したところ、3年生存割合は経過観察群67.6%に対してS-1群77.1%で、S-1によって生存期間が有意に延長しました。この結果を受け、国立がん研究センターはS-1補助療法が日本における胆道がん根治手術後の標準治療として確立したとしています。

S-1は飲み薬ですが「点滴ではないから負担が小さい」という意味ではありません。骨髄抑制、食欲低下、下痢、口内炎などによって治療継続が難しくなる場合もあるため、副作用については後の「治療の副作用と生活」の章で詳しく説明します。

参考:国立がん研究センター「JCOG1202/ASCOT試験の結果」

S-1をすべての患者さんが同じように受けられるわけではない

JCOG1202の結果から、根治切除後のS-1は標準的な第一選択となっています。

ただし、標準治療であることと、手術を受けたすべての患者さんが同じ条件で安全に治療できることは別です。

胆管がんの手術は、肝切除や膵頭十二指腸切除など身体への負担が大きい手術になることがあります。術後には体重減少や食事量の低下、肝機能・腎機能の変化、感染症などが起こることもあります。

そのため実際にS-1を開始するか、どのように継続するかについては、手術からの回復状態、血液検査、臓器機能、併存疾患、副作用への耐容性などを確認して判断します。

主治医から術後薬物療法を勧められた場合には、「なぜ自分にはS-1が勧められているのか」「いつから始める予定か」「術後の回復が遅れた場合はどうするのか」を確認すると、その目的を理解しやすくなります。

術前化学療法はすべての切除可能胆管がんに行う標準治療ではない

「手術後に抗がん薬を使うのであれば、手術前から使った方がよいのではないか」と考えるかもしれません。

胆管がんでも、手術前に薬物療法を行うことで、画像では見えないがん細胞を早い段階から治療したり、再発を減らしたりできる可能性が研究されています。

しかし、2026年現在、切除可能な胆管がんすべてに術前化学療法を行うことは標準治療として確立していません。

JCOG1920(NABICAT)試験では、切除可能胆道がんを対象に、手術を先行する方法と、ゲムシタビン+シスプラチン+S-1(GCS)を術前投与してから手術する方法を比較しています。2026年10月時点で患者募集は終了しており、試験結果の公表を待つ段階です。

したがって「胆管がんでは手術前の抗がん剤をしないのは治療が足りない」ということではありません。

現在の標準治療と、治療成績をさらに改善するために臨床試験で検証されている治療を区別して理解する必要があります。

参考:厚生労働省jRCT「JCOG1920/NABICAT試験 登録情報」

切除不能・再発胆管がんの薬物療法

遠隔転移がある場合や、重要な血管への広がりなどから手術でがんを取り切ることが難しい場合、手術後に再発した場合には、全身へ作用する薬物療法が治療の中心になります。

薬物療法の目的は、画像で確認できる病変だけでなく、全身に存在する可能性があるがん細胞へ作用し、がんの進行を抑えて生存期間を延ばしたり、がんによる症状を軽減したりすることです。

切除不能・再発胆道がんでは、これまでの治療歴、臓器機能、バイオマーカーなどを考慮し、一次治療・二次治療以降の薬を使い分けます。

参考:胆道がん 治療|国立がん研究センター

一次治療では化学療法+免疫療法が重要な選択肢

長く胆道がんの薬物療法の基本となってきたのが、ゲムシタビン+シスプラチン(GC療法)です。

現在はGC療法に免疫チェックポイント阻害薬を加える治療が加わり、主な選択肢として「ゲムシタビン+シスプラチン+デュルバルマブ」または、「ゲムシタビン+シスプラチン+ペムブロリズマブ」などが用いられています。

デュルバルマブとペムブロリズマブは国内で胆道がんに対して使用される免疫チェックポイント阻害薬です。患者さんの状態や治療歴に応じて、PMDAの最新の電子添文・最適使用推進ガイドラインを確認して適応を判断します。

デュルバルマブを検証したTOPAZ-1試験では、未治療の切除不能局所進行・転移性胆道がんを対象に、GC療法にデュルバルマブを加えた場合と、GC療法にプラセボを加えた場合を比較しました。

その結果、全生存期間中央値はデュルバルマブ併用群12.9カ月、対照群11.3カ月で、デュルバルマブを加えた群の全生存期間が改善しました。これは胆道がん全体を対象とした試験結果であり、肝内胆管がん、肝外胆管がんなど個々の病型の患者さんすべてに同じ治療成績が当てはまるわけではありません。

参考:NCI「Bile Duct Cancer Treatment(PDQ)|TOPAZ-1試験」

ペムブロリズマブについても、1,069人を対象としたKEYNOTE-966試験で、GC療法への追加によって全生存期間が改善したことが示されています。これらの試験は胆道がん全体を対象としており、肝内胆管がん・肝外胆管がんなどが含まれています。

参考:FDA「KEYNOTE-966試験に基づく胆道がんへのペムブロリズマブ併用療法の承認情報」

一方、日本ではゲムシタビン+シスプラチン+S-1(GCS療法)も重要な一次治療の選択肢です。

GCS療法は、ゲムシタビン、シスプラチン、S-1の3剤を組み合わせる治療です。国内では、胆道がんに対する薬物療法の選択肢の一つとして用いられています。

ただし、免疫チェックポイント阻害薬を含む治療との選択は、腎機能、全身状態、併存疾患、副作用のリスクなどを踏まえて個別に判断します。

参考:国立がん研究センター「胆道がん 治療|薬物療法」

そのため現在の胆管がん治療は、「GC療法だけ」が唯一の標準治療という状況ではありません。

どの一次治療を選ぶかは、がんの広がりだけでなく、腎機能、全身状態、胆管炎などの感染状況、これまでの病気、免疫療法を安全に使用できるかなどを合わせて判断します。

参考:PMDA|最適使用推進ガイドライン

免疫療法やシスプラチンを使いにくい場合は治療を調整

「化学療法+免疫療法が標準的」と言っても、すべての患者さんが同じ組み合わせを受けられるわけではありません。

シスプラチンは腎臓への負担があるため、腎機能が低下している患者さんでは使用しにくい場合があります。また、大量の点滴による水分補給が負担になる状態や、以前の治療による副作用が残っている場合なども、治療内容の調整が必要になります。シスプラチンでは腎障害のほか、聴力低下や末梢神経障害などにも注意します。

免疫チェックポイント阻害薬についても、自己免疫疾患などの既往や現在の病状によっては使用を慎重に判断することがあります。使えるかどうかは疾患名だけで一律に決まるのではなく、病気の活動性や治療内容などから個別に評価します。

シスプラチンを含む治療が適さない場合には、腎機能や全身状態などを踏まえて、ゲムシタビン+S-1(GS療法)など別の治療を検討することがあります。

GS療法は、ゲムシタビンとS-1を組み合わせる治療であり、国内では胆道がんに対する標準的な薬物療法の一つに位置づけられています。シスプラチンを含まないため、シスプラチンに伴う腎機能への負担や投与時の補液などが問題となる場合に、治療候補として検討されることがあります。

ただし、GS療法にも骨髄抑制、食欲低下、下痢などの副作用があり、腎機能が低下している患者さんに無条件で使用できるという意味ではありません。臓器機能や全身状態を確認し、使用できる薬と期待される利益を比較して判断します。

参考:国立がん研究センター「胆道がん 治療|薬物療法」

黄疸や胆管炎がある場合は薬物療法より先に状態を整えることがある

胆管がんでは、薬物療法そのものだけでなく、胆汁が十分に流れているかが治療継続に関係します。

胆管が閉塞してビリルビンが高い状態や胆管炎を起こしている状態では、抗がん薬を予定どおり使用できない場合があります。ドレナージや感染治療で安全に薬物療法を開始できる状態へ整えることが必要になる場合があります。

そのため、高度の黄疸や胆管炎があれば、前章で説明した胆道ドレナージや感染治療を行い、肝機能や全身状態を整えてから薬物療法を開始することがあります。

治療中にステントが詰まって胆管炎を起こした場合にも、抗がん薬をそのまま続けるのではなく、一時的に治療を休み、感染や胆道閉塞への対応を優先することがあります。

二次治療以降は「前に何を使ったか」とバイオマーカーを確認する

一次治療を続けていても、がんが再び大きくなったり新しい転移が現れたりすることがあります。その場合には二次治療を検討しますが、「二次治療だから全員この薬」と一つに決まるわけではありません。

これまでにどの抗がん薬・免疫療法を使用したか、どの副作用が残っているか、肝機能や腎機能、体力がどの程度保たれているかによって選択肢が変わります。

海外のABC-06試験では、GC療法後に病状が進行した胆道がんに対して、フルオロウラシル、レボホリナート、オキサリプラチンを組み合わせるFOLFOX療法を行うことで、症状への治療だけを行った群と比べて全生存期間が改善しました。

参考:NCI「Bile Duct Cancer Treatment(PDQ)|ABC-06試験」

一方、日本では治療歴や全身状態に応じて、フルオロピリミジン系薬剤を含む治療などを検討します。二次治療の選択は、一次治療の内容やバイオマーカーの検査結果も踏まえて個別に判断します。

さらに現在は、二次治療以降を考える際にもう一つ確認したい情報があります。

それが、がんが持つ遺伝子異常やバイオマーカーです。

胆管がんでは、一部の患者さんでFGFR2融合遺伝子、IDH1遺伝子変異などに対応した薬を使用できるようになっています。そのため、進行・再発胆管がんでは、「次の抗がん薬は何か」だけでなく、「自分のがんで治療につながるバイオマーカーが調べられているか」も治療選択の一部になっています。

胆管がんの遺伝子検査・バイオマーカー

胆管がんでは、同じ病名・同じステージであっても、がん細胞が持っている遺伝子異常などの特徴は患者さんによって異なります。現在は、その違いをバイオマーカーとして調べることで、特定の分子標的薬や免疫療法を使用できる患者さんを見つけられる場合があります。

特に胆管がんでは、FGFR2融合遺伝子やIDH1変異をはじめ、BRAF V600E、HER2異常、MSI-High/dMMR、TMB-High、NTRK融合遺伝子、RET融合遺伝子、ALK融合遺伝子など、治療選択に関係する複数のバイオマーカーがあります。それぞれ対応する薬剤の国内承認範囲と検査要件は異なります。

ただし、遺伝子異常が見つかったから必ず対応する薬を使用できるわけではありません。これまで受けた治療、病状、承認されている薬の適応条件、使用した検査方法、全身状態などを確認したうえで治療を判断します。

参考:胆道がんの薬物療法・遺伝子検査|国立がん研究センター

バイオマーカー検査・遺伝子パネル検査・CGPは何が違う?

胆管がんの治療について調べると、「バイオマーカー検査」「遺伝子検査」「がん遺伝子パネル検査」「コンパニオン診断」「CGP」など、似た言葉がいくつも出てきます。

これらは同じ意味ではありません。「何を調べる検査なのか」と「何のために行う検査なのか」が混ざって使われているため、分けて考えると理解しやすくなります。

バイオマーカー検査は、がんの性質や治療効果の予測に役立つ「目印」を調べる検査の総称です。バイオマーカーには遺伝子だけでなく、タンパク質なども含まれます。

その中で遺伝子の異常を調べるものが遺伝子検査です。1つまたは少数の遺伝子だけを調べる検査もあれば、数十~数百の遺伝子を一度に調べるがん遺伝子パネル検査もあります。国立がん研究センターは、がん遺伝子パネル検査を数十から数百個の遺伝子異常を一度に調べる検査と説明しています。

一方、コンパニオン診断は検査を行う「目的」を表す言葉で、特定の薬を使用できる患者さんかどうかを判断するために行います。1つの遺伝子を調べる検査が使われる場合もあれば、承認されているがん遺伝子パネル検査をコンパニオン診断として使用する場合もあります。

CGP(包括的がんゲノムプロファイリング)では、がん遺伝子パネル検査を用いて多数の遺伝子を幅広く調べ、特定の薬だけを前提とせず、その患者さんに治療につながる遺伝子異常や臨床試験の候補がないかを探索します。なお、一部のがん遺伝子パネル検査はCGPとして使われるだけでなく、特定の薬に対するコンパニオン診断としても承認されているため、両者は完全に別々の検査というわけではありません。

たとえばIDH1変異では、イボシデニブの適応を判断するコンパニオン診断として、複数遺伝子を同時に調べるオンコマインDx Target Testも使用できます。ただし、この検査で別の遺伝子異常が見つかっても、その結果だけでは対応する薬の適応判定に利用できず、別の承認検査やCGPで確認が必要になる場合があります。

そのため「遺伝子検査を受けた」ということだけでは、現在の治療に必要なバイオマーカーがすべて評価されているとは限りません。すでに遺伝子検査を受けている場合にも、どの検査で、どのバイオマーカーまで調べたのか、その結果を薬の適応判断に使えるのかを確認することが、その後の治療選択につながります。

胆管がんではどのバイオマーカーが治療につながるのか

胆道がんで検討される代表的なバイオマーカーと治療薬の例をまとめます。薬剤ごとに適応となる病状、治療歴、検査法が異なり、下表は処方を保証するものではありません。

バイオマーカー 胆管がんでの特徴 治療との関係
FGFR2融合遺伝子 主に肝内胆管がんでみられる ペミガチニブ、フチバチニブ、タスルグラチニブなどのFGFR阻害薬につながる場合がある
IDH1変異 主に肝内胆管がんでみられる イボシデニブが候補になる場合がある
HER2遺伝子増幅 肝外胆管がんなどでもみられる 条件を満たせばトラスツズマブ デルクステカン(T-DXd)が候補になる場合がある
BRAF V600E 一部の胆管がんでみられる ダブラフェニブ+トラメチニブが候補になる場合がある
MSI-High/dMMR 頻度は高くないが、免疫療法の効果予測に関係する ペムブロリズマブが候補になる場合がある
TMB-High がん細胞に生じている遺伝子変異量を示す指標 条件を満たせばペムブロリズマブが候補になる場合がある
NTRK1/2/3融合遺伝子 胆管がんではまれ ラロトレクチニブ、エヌトレクチニブ、レポトレクチニブなどが候補になる場合がある
RET融合遺伝子 胆管がんではまれ セルペルカチニブが候補になる場合がある
ALK融合遺伝子 胆管がんでは非常にまれ 条件を満たせばアレクチニブが候補になる場合がある

FGFR2やIDH1のように胆道がんに対する治療薬として承認されているものだけでなく、BRAF、HER2、MSI-High、TMB-High、NTRK、RET、ALKなど、がんの発生臓器を越えて特定の分子異常を持つ固形がんを対象とした治療も含まれます。そのため、異常が見つかった場合には、その薬の現在の適応条件を個別に確認します。

参考:タスフィゴ(タスルグラチニブ)|PMDA、ティブソボ(イボシデニブ)|PMDA、エンハーツ(T-DXd)|PMDA、アレセンサ(アレクチニブ)|PMDA、胆道がん 治療|国立がん研究センター

FGFR2融合遺伝子|肝内胆管がんで特に確認したいバイオマーカー

FGFR2は、細胞の増殖などに関係するFGFRというタンパク質を作る遺伝子です。別の遺伝子と融合するとFGFR2の働きが異常に活性化し、がん細胞の増殖を促すことがあります。

FGFR2融合遺伝子・再構成は肝門部領域・肝外胆管がんより肝内胆管がんで多く認められる傾向があります。ただし、頻度は患者集団や検査方法によって異なり、個々の患者さんについて検査を行わなければ有無は分かりません。

現在国内ではFGFR2融合遺伝子陽性胆道がんに対して、ペミガチニブ、フチバチニブ、タスルグラチニブという複数のFGFR阻害薬があります。薬剤ごとに承認されたコンパニオン診断が異なるため、どの検査でFGFR2異常が確認されたのかも治療判断に関係します。

これらのFGFR阻害薬は、FGFR2融合遺伝子が見つかれば診断直後から使用する薬というわけではありません。国内では、がん化学療法後に増悪したFGFR2融合遺伝子陽性の治癒切除不能な胆道がんが主な適応であり、一次治療としての有効性・安全性は確立していません。どの治療ラインで使用するかは、それまでの治療歴と各薬剤の承認条件を確認して判断します。

なお、研究やCGP結果では「FGFR2再構成」と記載されることがありますが、再構成と治療薬の適応となる機能的な融合遺伝子が常に同じ意味とは限りません。実際の薬剤適応は、検査結果と承認条件を照合して判断します。

IDH1変異|肝内胆管がんでみられる治療標的

IDH1は細胞内の代謝に関係する酵素を作る遺伝子です。この遺伝子に特定の変異が起こると、通常とは異なる代謝産物がつくられ、がんの発生や増殖に関係すると考えられています。

IDH1変異も肝門部領域・肝外胆管がんより肝内胆管がんで多くみられます。具体的な検出割合は検査法・対象集団によって変わるため、数字だけでは一人ひとりの結果を予測できません。

2026年現在、国内でのイボシデニブの適応は、がん化学療法後に増悪したIDH1遺伝子変異陽性の治癒切除不能な胆道がんです。IDH1変異が見つかったからといって一次治療からイボシデニブを使用するわけではなく、それまでに受けた治療と病状を踏まえて導入時期を判断します。

IDH1変異についても、治療が必要になってから初めて調べるのではなく、前治療後の薬剤選択に間に合うよう検査の時期を主治医と相談することが重要です。

HER2・BRAF・MSI-Highなども治療選択につながることがある

FGFR2やIDH1以外にも、治療につながるバイオマーカーがあります。

HER2遺伝子増幅やHER2タンパク質の発現に異常がある場合、検査法と治療歴などの条件を確認したうえでトラスツズマブ デルクステカンが候補となることがあります。HER2陽性とHER2遺伝子増幅は同義ではないため、電子添文に沿って確認します。

BRAF V600E変異ではダブラフェニブ+トラメチニブ、MSI-High/dMMRやTMB-Highではペムブロリズマブ、NTRK融合遺伝子、RET融合遺伝子、ALK融合遺伝子でも、それぞれ対応する分子標的薬が治療候補になる場合があります。

これらの異常は頻度が低いものもあります。しかし、頻度が低いことと調べる意味がないことは同じではありません。見つかった場合に治療選択が大きく変わる可能性があるため、進行・再発胆管がんでは複数のバイオマーカーの検査方針も治療計画の一部になります。

遺伝子検査は「標準治療がすべて終わってから」とは限らない

バイオマーカーに対応する薬の多くは、一次治療後などに使用を検討します。

しかし、薬を使う段階になってから初めて検査を始めればよいとは限りません。

進行・再発胆管がんでは、病状や体力の変化によって次の治療に進めない場合もあります。標準治療終了後に初めて検査を計画すると、結果が次の治療選択に間に合わない可能性もあるため、検査時期を早めに相談することが大切です。

一方、日本の保険診療で「CGP目的」のがん遺伝子パネル検査を行う場合には、原則として「標準治療が終了した、または終了が見込まれる」という実施条件があります。そのため、単純に「診断されたら全員すぐCGPを受ける」という仕組みでもありません。

2025年には、がんゲノム医療中核拠点病院等の診療ワーキンググループから、一次治療開始後の適切な時期に標準治療終了の見込みを臨床的に判断し、CGPを実施する必要があるという考え方が示されています。

そのため、進行・再発胆管がんでは、「今すぐ使う薬を決めるための検査」と「将来の治療候補を探すCGP」を区別しながら、次の治療に結果が間に合う時期を考えて検査を計画することが現実的です。

主治医へは「今の段階で調べておいた方がよいバイオマーカーはありますか」「CGPはいつ検討する予定ですか」と確認すると、今後の治療計画を理解しやすくなります。

検体を採取する段階から将来のバイオマーカー検査を考える

胆管がんでは、バイオマーカー検査を行ううえで「検体を十分に確保できるか」が大きな問題になります。

胆管は細い管状の臓器であり、手術を行わない患者さんでは内視鏡下生検や針生検などで得られる小さな組織に頼らざるを得ないことがあります。採取組織が少ない、腫瘍細胞の割合が低いなどの理由で遺伝子解析ができない場合があるため、検体採取の段階から将来の検査に必要な組織量を意識することが重要です。

手術標本など十分な組織が保存されている場合には、過去の検体を使えることがあります。一方、利用できる組織がない、または検査に適さない場合には、病状と組織採取のリスクを考えて追加の生検を検討する場合があります。

このため、「以前に採った組織が検査に使えるか」「現在どのくらい検体が残っているか」「追加で組織を採る必要があるか」も、バイオマーカー検査を考える際の確認事項になります。

組織が十分にない場合はリキッドバイオプシーを検討することがある

がん組織を十分に採取できない場合には、血液中に放出されたctDNA(血中循環腫瘍DNA)を調べるリキッドバイオプシー型のがん遺伝子パネル検査を利用できる場合があります。

組織を新たに採取しなくても調べられる場合があり、患者さんへの身体的負担が比較的小さい点が利点です。ただし、組織を用いたCGPと血液を用いたCGPでは、評価しやすい遺伝子異常や検出限界が異なります。

ただし、血液検査だから組織検査より優れているという意味ではありません。

血液中へ腫瘍DNAが十分に放出されていない場合には、実際には遺伝子異常があっても検出できない偽陰性が起こる可能性があります。また融合遺伝子などは、検査法によって組織検体と検出感度が異なることがあります。陰性結果だけで対象となる遺伝子異常がないと断定しないことが大切です。

したがって、血液の検査で「遺伝子異常なし」となった場合にも、病状や調べたいバイオマーカーによっては、組織を用いた検査が必要かを検討します。

参考:胆道がんの薬物療法・遺伝子検査|国立がん研究センター

胆管がんの放射線治療とコンバージョン手術

胆管がんでは、手術と薬物療法が治療の大きな柱です。

放射線治療も使用されることがありますが、切除不能胆管がんのすべての患者さんに一律に行う標準治療として確立しているわけではありません。

切除不能胆道がんに対して放射線治療や化学放射線療法を行う場合がありますが、すべての患者さんで延命効果が十分確立しているわけではありません。国立がん研究センターも、遠隔転移のない手術不能例などで局所制御や症状緩和を目的に検討する一方、効果は十分に証明されていないとしています。

参考:胆道がん 治療|国立がん研究センター

遠隔転移がない局所進行胆管がんで放射線治療を検討することがある

手術で切除できない理由には、大きく分けて、遠くの臓器へ転移している場合と、遠隔転移はないものの周囲の重要な血管などへ局所的に広がっている場合があります。後者では、病変が一定の範囲に集中しているため、薬物療法に加えて放射線治療や化学放射線療法を検討することがあります。

国立がん研究センターも、手術できない胆道がんで遠隔転移がない場合には、がんの進行を遅らせることや胆道ステントの開存維持などを目的に放射線治療を行う場合があると説明しています。一方、その有効性は十分に確立されておらず、標準治療とはしていません。

したがって、局所進行胆管がんで放射線治療を提案された場合には「根治を目指す治療なのか」「局所の進行を抑えることが目的なのか」「薬物療法とどのように組み合わせるのか」を確認すると、治療の位置づけを理解しやすくなります。

参考:国立がん研究センター|胆道がん 治療

痛みなどの症状を和らげる目的でも放射線治療を行う

放射線治療は、がんを完全に消すことだけを目的にする治療ではありません。たとえば骨へ転移して痛みが生じている場合などには、痛みを軽減して生活しやすくする目的で放射線を照射することがあります。国立がん研究センターも、胆道がんの骨転移で疼痛緩和を目的に放射線治療を行う場合があるとしています。

「緩和目的の放射線治療」と説明されたからといって、ほかのがん治療をすべて終了したという意味ではありません。薬物療法を続けながら、特定の場所の痛みなどを放射線治療で和らげる場合もあります。

薬物療法で縮小した後に手術を再検討する場合がある

最初の診断時には切除不能と判断された胆管がんでも、薬物療法によって腫瘍が縮小したり、一定期間ほかの臓器への新しい転移が現れなかったりすることがあります。

その結果、再度画像を詳しく評価し、手術で完全切除できる可能性が出てきた患者さんに手術を検討する考え方を「コンバージョン手術」と呼びます。

ただし、これは「抗がん薬が効けば手術できる」という単純な治療方針ではありません。切除不能胆道がんに対するコンバージョン手術は、一律の標準治療として有効性が確立しているわけではありません。遠隔転移の有無、切除断端、血管や周囲臓器との関係などを慎重に再評価します。

手術を検討する場合には、腫瘍がどの程度縮小したかだけでなく、遠隔転移の有無、重要な血管との関係、残せる肝臓の量、全身状態、がんを切除断端に残さず取り切るR0切除を目指せるかなどを改めて評価します。

「最初に手術不能だった=その後も永久に手術できない」とは限りませんが、コンバージョン手術はすべての切除不能胆管がんで確立された標準治療でもありません。

薬物療法がよく効いている場合には、「手術の可能性を再評価する場面があるか」を担当医に確認する方法があります。

胆管がん治療の副作用と治療後の生活

胆管がんでは、治療が終わったかどうかだけではなく、食事が取れているか、体重と筋力を保てているか、胆汁が正常に流れているか、予定した薬物療法を続けられる状態かまで確認することが、その後の生活に関係します。

肝内胆管がんで肝切除を受けた患者さんと、遠位胆管がんで膵頭十二指腸切除を受けた患者さんでは、術後に起こりやすい問題も同じではありません。薬物療法でも、S-1、シスプラチン、免疫チェックポイント阻害薬、FGFR阻害薬では注意する副作用が異なります。

参考:国立がん研究センター|胆道がん 療養

肝切除後は肝機能と体力の回復を確認

肝内胆管がんや肝門部領域胆管がんでは、肝臓を大きく切除することがあります。

肝臓には再生する能力がありますが、手術直後から元どおりの機能になるわけではありません。特に大きな肝切除後には、残った肝臓で身体に必要な働きを維持できるかを慎重に確認します。

胆道がん手術の合併症としては肝不全、胆汁漏、腹水、胆管炎などがあり、肝不全では黄疸、腹水、意識状態の変化などが起こることがあります。退院後も食欲や体重、疲れ方が徐々に回復しているかをみていきます。

食べられない状態が続く、黄疸が強くなる、お腹が張る、以前より極端に動けなくなったなどの変化があれば、「大きな手術をしたから仕方がない」と決めつけず医療機関へ相談します。

膵頭十二指腸切除後は食事量・体重・消化の変化を見る

遠位胆管がんでは膵頭十二指腸切除を行うことがあります。

この手術では胆管だけでなく、膵頭部や十二指腸などを切除し、残った膵臓や胆管、消化管をつなぎ直します。そのため、手術前と食べ物や消化液が流れる経路が変わります。

退院後しばらくは一度に十分な量を食べにくく、体重が減ることがあります。

国立がん研究センターは胆道がん治療後の一般的な食生活として、一度に無理に多く食べず、少量ずつ回数を分ける方法などを案内しています。また、食欲不振や下痢などがある場合は個別に医療者や管理栄養士へ相談するよう説明しています。

食事量が少ない状態や下痢、体重減少が長く続く場合には、「手術後だから当然」と考えるのではなく、食事内容や消化の状態を含めて評価します。

胆道ドレナージ・ステント留置中は発熱や黄疸の再燃を見る

胆管ステントを入れている患者さんでは、体の外にチューブが出ていないため、普段は胆汁の流れを直接確認できません。しかし、ステントが詰まれば再び胆汁が流れにくくなり、黄疸や胆管炎を起こす可能性があります。

一方、外ろうではチューブが体外へ出ているため、排液量の変化やチューブの抜け・折れ、挿入部の皮膚トラブルなどにも注意します。国立がん研究センターも、胆道ドレナージ後は内ろう・外ろうそれぞれに生活上の注意点があるとしています。

高熱、強い悪寒、黄疸の再発・悪化、強い腹痛などがあれば、がんそのものの進行だけでなく胆管炎やステント閉塞の可能性もあります。特に薬物療法中は白血球が低下している場合もあるため、次回の診察まで待たず治療中の医療機関へ連絡します。

S-1では食事を続けられるかも治療継続に関係する

術後補助化学療法などで使用するS-1では、食欲低下、下痢、口内炎、皮膚症状、涙目、血球減少などが起こることがあります。術後はもともと食事量や体重が減っている患者さんもいます。その状態に口内炎や下痢、食欲不振が加わると、薬の副作用だけでなく脱水や栄養低下が治療継続を難しくすることがあります。

飲み薬だから副作用が軽いとは限りません。下痢が続く、水分も取りにくい、口内炎で食事ができない、強い倦怠感があるといった場合には、予定日まで我慢するのではなく医療機関へ相談します。副作用の程度によって休薬や減量などを行い、治療を安全に続けることを考えます。

ゲムシタビン・シスプラチンでは血球減少や腎機能などを確認

ゲムシタビンやシスプラチンによる治療では、白血球・好中球・血小板などの減少、貧血、食欲低下、吐き気、倦怠感などが起こることがあります。

シスプラチンでは特に腎機能への影響、聴力低下、手足のしびれなどにも注意します。ゲムシタビンでは頻度は高くありませんが間質性肺炎など重い副作用が起こることがあります。

胆管がんでは、胆管炎による発熱と好中球減少時の感染症による発熱を、患者さん自身で区別することは困難です。そのため、薬物療法中に発熱した場合には「胆管炎だろう」「抗がん剤の副作用だろう」と自己判断せず、治療を受けている医療機関へ連絡することが重要です。

免疫チェックポイント阻害薬では普段と違う症状を早めに伝える

デュルバルマブやペムブロリズマブは、がん細胞を直接攻撃する従来の抗がん薬とは異なり、免疫ががんを攻撃する働きを利用する薬です。そのため副作用も、単なる吐き気や血球減少だけではありません。免疫反応が正常な臓器へ及ぶことで、肺、腸、肝臓、甲状腺などさまざまな臓器に炎症が起こることがあります。

新しい咳や息切れ、長く続く下痢、原因の分からない強い倦怠感など、これまでと違う症状が現れた場合には医療機関へ伝えます。

胆管がんではもともと肝機能やビリルビンが変動する患者さんもいるため、「胆管が詰まった変化なのか」「薬による肝障害なのか」「がんの進行なのか」を血液検査や画像検査から判断する必要があります。

FGFR阻害薬では血清リンと眼の症状にも注意

FGFR2融合陽性胆管がんで使用するFGFR阻害薬には、一般的な抗がん薬とは異なる特徴的な副作用があります。

代表的なのが高リン血症です。FGFR阻害によって体内のリンの調節が変化するため、治療中は血液検査で血清リン濃度を確認します。程度によって食事の調整や高リン血症治療薬、FGFR阻害薬の休薬・減量が必要になることがあります。

また、網膜剥離を含む眼の異常も注意すべき副作用で、定期的な眼科検査が必要になる薬があります。ペミガチニブの国内添付文書でも、視力低下、視野の欠け、光が見えるといった症状があれば眼科的評価を行うよう注意されています。見え方が急に変わった場合には次の診察まで様子を見ず、治療施設へ連絡します。

分子標的薬は「遺伝子に合った薬だから副作用が少ない」という意味ではありません。どこを標的とする薬なのかによって、従来の抗がん薬とは違う副作用が現れます。

なお、HER2陽性固形がんでトラスツズマブ デルクステカンを使用する場合には、間質性肺疾患が特に重要な副作用です。国内添付文書でも死亡例があることを含めた警告があり、新しい咳、息切れ、発熱などの早期把握が求められています。

IDH1阻害薬のイボシデニブではQT間隔延長などにも注意し、治療中に心電図や電解質などを確認する場合があります。

参考:ペマジール(ペミガチニブ)|PMDA、ティブソボ(イボシデニブ)|PMDA、エンハーツ|PMDA

緩和ケア・支持療法はがん治療と並行して行う

胆管がんでは、黄疸によるかゆみ、痛み、食欲低下、倦怠感、胆管炎を繰り返す不安、治療による副作用など、病気そのものと治療の両方が日常生活に影響します。

こうした問題を軽減する緩和ケア・支持療法は、抗がん治療をやめた後だけに行うものではありません。

国立がん研究センターも、緩和ケアはがんと診断されたときから始めることができ、がん治療と並行して受けられると説明しています。支持療法は、がんによる症状だけでなく、治療に伴う副作用や合併症、後遺症を軽減するための治療・ケアを含みます。

たとえば、かゆみで眠れない、食欲が戻らず体重が減り続ける、痛みのために動けない、治療への不安で生活に支障が出ているといった問題も相談の対象です。

胆管がん治療では、画像上の腫瘍を小さくすることだけでなく、予定した治療を受けられる体力を保ち、日常生活の負担を減らすことも治療の一部として考えます。

胆管がんのステージ別生存率

胆管がんの予後について調べると、「5年生存率」や「ステージ4の生存率」といった数字を目にすることがあります。

ただし胆管がんでは、これまで説明してきたように、肝内胆管がん、肝門部領域胆管がん、遠位胆管がんで病期分類そのものが異なります。そのため、「胆管がん全体」の一つの生存率を、自分の病状へそのまま当てはめることはできません。

さらに、生存率を見る際には、どの年代に診断された患者さんのデータなのか、どの病期分類が使われているのか、実測生存率なのかネット・サバイバルなのかまで確認する必要があります。

肝内胆管がんのステージ別5年生存率

国立がん研究センターの院内がん登録では、2014~2015年に診断された肝内胆管がんについて、ステージ別の5年ネット・サバイバルが公表されています。本記事では、他の死因の影響を統計的に調整した「ネット・サバイバル」を主に予後の目安として説明します。実測生存率も参考として併記します。

ステージ 5年実測生存率 5年ネット・サバイバル
Ⅰ期 52.7% 58.2%
Ⅱ期 31.8% 34.9%
Ⅲ期 27.4% 29.8%
Ⅳ期 5.5% 6.0%

※国立がん研究センター「院内がん登録2014~2015年5年生存率」に基づく肝内胆管がんの数値です。全体の5年ネット・サバイバルは21.1%でした。生存状況把握割合は98.8%です。

ネット・サバイバルとは、がん以外の病気や事故などによる死亡の影響を統計学的に取り除き、そのがんだけが死亡へ影響すると仮定した場合の生存状況を推定する指標です。国立がん研究センターでは、2014~2015年の5年生存率からネット・サバイバルを採用しています。

参考:国立がん研究センター|肝内胆管がん 2014~2015年診断例・5年生存率

肝外胆管がんは肝門部領域と遠位を分けた最新の公的生存率が示されていない

肝門部領域胆管がんと遠位胆管がんについても生存率を知りたいところですが、2026年8月現在、国立がん研究センターの最新の院内がん登録生存率閲覧システムでは、肝門部領域胆管がん・遠位胆管がんを個別に分けたステージ別5年生存率は公開されていません。

国立がん研究センターの現在の胆道がん患者向けページから案内されている最新の病期別生存率は「肝内胆管がん」と「胆のうがん」であり、肝外胆管がんへの最新の個別リンクは掲載されていません。

過去には院内がん登録の肝外胆管がんデータが掲載されていたことが、国立がん研究センターの更新履歴から確認できます。しかし、古い集計値を現在の肝門部領域・遠位胆管がんの病期表へそのまま組み合わせると、診断年代やTNM分類が異なる可能性があります。

そのため本記事では、信頼できる同一条件の最新データが確認できない肝門部領域胆管がん・遠位胆管がんについて、無理にステージ別生存率を推定して掲載しません。

これはデータが存在しないから予後を判断できないという意味ではなく、主治医は病変の部位、切除可能性、リンパ節転移、病理結果、全身状態など、より個別の情報から治療後の見通しを判断します。

この生存率表と前章のステージ分類は同じではない

ここで示した院内がん登録2014~2015年診断例の生存率は、UICC TNM分類第7版による総合ステージを用いた集計です。

一方、胆管がんのステージ章では、国立がん研究センターの2026年8月改訂情報に合わせ、肝内胆管がんの2025年版国内病期分類について、判定要素を中心に説明しています。過去の生存率集計に使用された分類とは直接対応しません。

両者は病期分類が異なるため、同じ「Ⅰ期」「Ⅱ期」という表記でも完全に同じ病状を意味するわけではありません。

また、この院内がん登録では、術後病理学的ステージが得られている場合には原則としてその病期を、得られていない場合には治療前ステージを使って総合ステージを集計しています。そのため、現在診断された患者さんのcStageと生存率表を一対一に対応させて考えることはできません。

生存率は個人の余命を示す数字ではない

たとえば肝内胆管がんⅣ期の5年ネット・サバイバルが6.0%だからといって「自分が5年後に生きている確率が6%」とそのまま解釈することはできません。

生存率は、同じ時期に同じがんと診断された多数の患者さんを集計した統計です。国立がん研究センターも、生存率は平均的・確率的に推測されるデータであり、すべての患者さんにそのまま当てはまる値ではないと説明しています。

同じステージでも、肝内・肝門部領域・遠位のどこに発生したのか、手術で完全切除できるのか、リンパ節転移がどの程度あるのか、年齢や全身状態、薬物療法への反応などによって病状は異なります。

特に胆管がんでは、「ステージ番号」だけでは手術可能性まで表せないことにも注意が必要です。

2014~2015年の生存率には現在の治療が十分反映されていない

上記の肝内胆管がん生存率は、2014~2015年に診断された患者さんのデータです。

その後、根治切除後にはJCOG1202/ASCOT試験によってS-1術後補助療法が標準治療となり、切除不能胆道がんでは免疫チェックポイント阻害薬を組み合わせた治療が導入されました。

FGFR2融合、IDH1変異、BRAF V600E、HER2異常、MSI-High/dMMR、TMB-High、NTRK融合、RET融合、ALK融合などのバイオマーカーは、進行・再発時の治療選択に関係する場合があります。ただし、それぞれの薬剤の適応条件・検査法を確認する必要があります。

したがって、過去の生存率を、2026年現在に治療を始める患者さんの将来へそのまま当てはめることはできません。

生存率を見るときには数字の大小だけでなく、「いつ診断された患者さんの統計なのか」「現在、自分にはどの治療選択肢があるのか」を合わせて考えることが必要です。

参考:国立がん研究センター|院内がん登録生存率について

胆管がんの再発・経過観察

胆管がんの治療後は、手術した場所だけを見るのではなく、肝臓、リンパ節、肺、腹膜などに再発していないかを定期的に確認します。

国立がん研究センターでは、胆道がんは周囲のリンパ節、肝臓、肺などへ転移することがあり、治療後には局所再発や腹膜播種として見つかる場合もあると説明しています。

一方、経過観察の方法や検査間隔をすべての胆管がん患者さんに一律に当てはめることはできません。切除範囲や病期、再発リスク、症状に応じて診察・画像検査を計画します。

参考:国立がん研究センター|胆道がん 療養

経過観察では血液検査と画像検査などを組み合わせる

治療後の診察では、黄疸、腹痛、食欲、体重などの変化を確認し、血液検査ではビリルビンや肝胆道系の数値などを調べます。

CA19-9やCEAなどの腫瘍マーカーを経過観察に利用する場合もあり、必要に応じて腹部超音波やCTなどの画像検査を行います。国立がん研究センターも、胆道がん治療後の経過観察として問診、血液検査、腫瘍マーカー、必要に応じた超音波・CTを挙げています。

検査間隔は、肝内胆管がんなのか肝外胆管がんなのか、ステージ、手術後の病理結果、術後補助化学療法の有無などによって変わります。そのため、他の患者さんと検査間隔が違っていても、それだけで経過観察が不十分という意味ではありません。

CA19-9だけで再発を判断しない

胆管がんではCA19-9を経過観察に使用することがありますが、CA19-9が上昇しただけで再発と確定することはできません。

胆管が狭くなって胆汁が流れにくい場合や胆管炎などでも数値が上がることがあり、反対に再発があってもCA19-9が大きく上がらない患者さんもいます。国立がん研究センターも、胆道がんの腫瘍マーカーは単独でがんの有無を確定できる検査ではないと説明しています。

そのため、再発の可能性は以下を合わせて判断します。

腫瘍マーカーの変化
+症状
+肝胆道系の血液検査
+CTなどの画像検査

「CA19-9が上がった=再発した」と数字だけを見て結論づけず、黄疸や胆管炎などほかの原因がないかも確認します。

胆管炎やステント閉塞と再発を区別することも必要

特に胆管ステントを留置している患者さんでは、黄疸や発熱が再び現れたときに、がんの進行だけでなくステント閉塞や胆管炎も考える必要があります。

国立がん研究センターでは、胆道ドレナージを行った患者さんには内ろう・外ろうそれぞれに生活上の注意点があり、経過観察でも黄疸や腹痛などの症状を確認するとしています。

したがって「黄疸が戻ったから再発した」「発熱したから抗がん薬が効かなくなった」と自己判断することはできません。反対に、ステントが入っているから発熱は仕方がないと考えて様子を見ることも避けます。胆管炎は急速に悪化する場合があるため、高熱や悪寒、黄疸の急な悪化などがあれば治療施設へ連絡します。

再発した場合は最初のステージではなく「現在の病状」を評価

手術前にⅠ期やⅡ期だった患者さんでも、治療後に再発すれば、治療方針は最初のステージ番号だけでは決まりません。

再発した場所が一か所なのか複数なのか、肝臓、リンパ節、肺、腹膜などのどこにあるのか、以前どの治療を受けたのか、現在の全身状態はどうかを改めて評価します。胆道がんの再発では、多くの場合、全身薬物療法が中心になります。

したがって、手術後に再発した患者さんが「自分は以前ステージⅡだったからステージⅡの治療を受ける」と考えるのではなく、再発時点の病変の広がりと治療歴から新しく治療計画を立てると理解した方が実際の診療に近くなります。

再発時にはバイオマーカー検査の結果も次の治療に関係する

再発した胆管がんでは、以前の治療歴に加えて、FGFR2融合やIDH1変異など治療につながるバイオマーカーが分かっているかも確認します。

FGFR2、IDH1、HER2、BRAF、MSI-High/dMMR、TMB-High、NTRK、RET、ALKなどの分子異常が、一部の患者さんで薬剤選択に関係します。どの検査をいつ受けるかは、治療の段階によって変わります。

また、胆管がんでは組織検体が十分に得られない場合があり、組織での検査が困難なときは血液を利用するリキッドバイオプシーが選択肢になります。ただし、検出されなかったことが異常の不存在を確定するわけではなく、融合遺伝子の検出感度などにも限界があります。

そのため再発した際には「以前どのバイオマーカーを調べたのか」「今ある検体で追加検査ができるのか」も主治医へ確認しておくと、その後の治療選択を理解しやすくなります。

参考:胆道がんの薬物療法・遺伝子検査|国立がん研究センター

新しい症状があれば次の定期検査まで待たない

定期的にCTや血液検査を受けていても、検査と検査の間に病状が変化することがあります。

黄疸が新しく現れた、腹痛が続く、発熱や悪寒がある、食欲が急に落ちた、原因の分からない体重減少が続くなどの変化がある場合には、次の予約日まで待たず医療機関へ相談します。

こうした症状は再発だけでなく、胆管炎、胆道閉塞、治療の副作用などでも起こります。経過観察は「予定された検査を受けること」だけではなく、定期検査の間に生じた変化を医療者へ伝えることも含めて考えるとよいでしょう。国立がん研究センターも、経過観察では黄疸、腹痛、食欲などの変化を確認し、気になる症状は担当医へ伝えるよう案内しています。

胆管がんの治療を選ぶときに確認したいこと

胆管がんでは、同じ「胆管がん」という診断でも、肝臓の中に発生する肝内胆管がんと、肝門部領域胆管がん、遠位胆管がんでは、ステージの決め方も手術方法も異なります。

さらに、胆管がんの治療では、ステージ番号だけでなく「手術で完全に取り切れるか」が大きな分岐になります。手術後に十分な肝機能を保てるかどうか、重要血管への広がり、遠隔転移なども考慮して治療方針を決めます。

治療方針の説明を受ける際には、次のような点を確認すると、自分に提案されている治療の意味を整理しやすくなります。

確認したいこと 治療選択に関係する理由
肝内・肝門部領域・遠位のどこにあるか ステージの決め方と手術方法が大きく異なるため
どの分類・何版でcStageが評価されているか 胆管がんでは病型ごとに病期分類が異なり、使用する分類の版によっても表記が変わる場合があるため
手術で完全切除できる可能性があるか 根治を目指す手術が可能かどうかが治療方針の大きな分岐になるため
「手術できない」と判断された理由は何か 遠隔転移、血管への広がり、残肝不足など、理由によって意味やその後の治療が異なるため
肝切除後にどのくらい肝臓を残せるか 特に肝門部領域胆管がんでは、がんを取り切るだけでなく手術後の肝機能を保てるかが安全性に関係するため
黄疸・胆管炎への処置が必要か 胆道ドレナージや感染治療を手術・薬物療法より先に行う場合があるため
手術後にS-1が勧められるか 根治切除後の再発リスクを減らす術後補助化学療法を検討するため
バイオマーカー検査をいつ行うか FGFR2、IDH1などの結果が進行・再発時の治療選択につながる場合があり、検体や検査時間も考えて計画する必要があるため
現在の肝機能・腎機能・体力でどの治療が可能か 大きな手術やシスプラチンを含む薬物療法などを安全に行えるかに関係するため
薬物療法後に手術を再評価する可能性があるか 一部の切除不能例では治療効果を見ながらコンバージョン手術を検討する場合があるため

根治手術が可能な患者さんでも、「どの臓器をどの程度切除するのか」によって治療後の生活は変わります。肝門部領域胆管がんでは大きな肝切除、遠位胆管がんでは膵頭十二指腸切除が必要になる場合があり、手術の目的だけでなく、その後の肝機能、食事、体重、回復期間まで聞いておくと治療を具体的にイメージしやすくなります。国立がん研究センターも、胆管がんの部位ごとに異なる手術方法を示しています。

また、手術不能と説明された場合には「ステージが進んでいるから」とだけ理解して終わらせない方がよいでしょう。

遠隔転移があるのか、門脈・肝動脈への広がりが問題なのか、十分な肝臓を残せないのかでは、手術できない理由が異なります。切除の可否が明確でないときや薬物療法後の再評価については、専門施設で相談することが大切です。

そのため、特に大きな肝切除や血管合併切除が必要と言われた場合、あるいは切除できるかどうかの判断が難しい場合には、肝胆膵外科を専門とする施設でセカンドオピニオンを受けることも選択肢になります。

一方、薬物療法では、薬の名前だけを確認するのではなく、なぜこの一次治療が選ばれたのか、病状が進行した場合に次の候補があるのか、バイオマーカー検査はどこまで終わっているのかまで確認することが、現在の胆管がん治療では以前より重要になっています。

参考:胆道がんの薬物療法・遺伝子検査|国立がん研究センター、国立がん研究センター「胆道がん 治療」、胆道がんの薬物療法・遺伝子検査|国立がん研究センター

胆管がんは「どこにあるか」と「手術で取り切れるか」から治療を考える

胆管がんは一つの病気のように呼ばれますが、肝内胆管がん、肝門部領域胆管がん、遠位胆管がんでは、症状の出方からステージ分類、手術方法まで大きく異なります。国立がん研究センターも、胆管がんをこれらの部位に分けて診断・治療を説明しています。

肝内胆管がんでは肝臓の中に腫瘍ができるため、肝切除が治療の中心になります。肝門部領域胆管がんでは、胆管だけでなく肝臓や場合によっては血管まで含めた大きな手術が必要になることがあります。遠位胆管がんでは、胆管が膵頭部を通っているため膵頭十二指腸切除が行われることがあります。

そのため、診断後に最初に確認したいのは「胆管がんのステージはいくつか」だけではありません。

「肝内・肝門部領域・遠位のどこにあるのか」「どこまで広がっているのか」「手術で完全に取り切れる可能性があるのか」を知ることで、自分に提案された治療の理由が見えてきます。

また、黄疸がある患者さんでは、がんそのものへの治療だけでなく、胆汁を流す胆道ドレナージが治療計画の一部になることがあります。手術で取り切れた場合には術後補助化学療法を検討し、切除できない場合や再発した場合には薬物療法が中心になります。

さらに現在は、進行・再発胆管がんで「どの抗がん薬を使うか」だけではなく、がんがどのような分子異常を持っているかも治療選択に関係します。

FGFR2融合、IDH1変異、BRAF V600E、HER2異常、MSI-High/dMMR、TMB-High、NTRK融合、RET融合、ALK融合など、病状と検査条件によって薬剤につながるバイオマーカーがあります。どの検査を受けるか、どの時期に検査結果が必要かを確認しておくことが重要です。

胆管がんでは、一つの数字や一つの治療名だけで病状を理解することは難しい病気です。自分の胆管がんが「どこにあり、なぜその治療が勧められ、次にどのような選択肢が残っているのか」まで確認することで、治療方針をより具体的に理解できます。

治療について迷ったときには、手術の可否、胆道ドレナージ、薬物療法、バイオマーカー検査をそれぞれ別々の問題として考えるのではなく、これらが自分の治療計画の中でどのようにつながっているのかを主治医と一緒に整理してみてください。