悪性黒色腫(メラノーマ)は、皮膚の色素細胞であるメラノサイトががん化した皮膚がんで、悪性度が高いことで知られています。
日本人では足の裏や手のひら、爪など日光の当たりにくい部位にできる末端黒子型が約40%を占め、ほくろと見分けがつきにくいため発見が遅れることがあります。初期にはほくろやしみとよく似た見た目で、進行するとリンパ節や他の臓器へ転移します。
早期に切除できれば治癒が十分に望める一方、日本人に多いタイプでは免疫療法が効きにくいことが課題となります。
本ページでは、悪性黒色腫の特徴や原因、症状、診断(ダーモスコピー・病理検査)、そして治療の選択肢についてわかりやすく解説します。治療を検討されている方やご家族が、いまの状況に合う選択肢を整理し、納得のいく方針を考えるための一助となれば幸いです。
- 日本人では足の裏や手のひらにできる末端黒子型が約40%を占める
- ほくろやしみと見分けがつきにくく、発見が遅れやすい
- 早期切除で治癒が望める一方、日本人に多いタイプは免疫療法が効きにくい
悪性黒色腫(メラノーマ)とは

悪性黒色腫は、皮膚がんのなかでも特に悪性度が高いがんで、メラノーマとも呼ばれます。
皮膚にはメラニン色素をつくる「メラノサイト(色素細胞)」があり、これががん化したものが悪性黒色腫です。ほくろやしみと見た目が似ているため、初期には見分けがつきにくいことが特徴です。
日本人の悪性黒色腫には、欧米と異なる大きな特徴があります。
欧米では日光の当たる部位にできるタイプが多いのに対し、日本人では足の裏や手のひら、爪といった日光が当たりにくい部位にできる「末端黒子型(アクラル型)」が多くを占めます。
日本人の大規模データでは、末端黒子型が約40%を占めると報告されています。そのため、「足の裏のほくろ」として見過ごされ、発見が遅れることも少なくありません。
進行するとリンパ節や他の臓器へ転移しやすく、皮膚がんのなかでも予後が厳しいがんです。一方で、早期に発見して切除できれば治癒が十分に望めます。
悪性黒色腫(メラノーマ)の原因
悪性黒色腫は、メラノサイトに遺伝子の異常が積み重なって発生しますが、根本の引き金は完全には解明されていません。最もよく知られた危険因子は紫外線です。ただし、日本人に多い足の裏や手のひらのタイプは日光が当たらない部位であり、紫外線だけでは説明がつきません。
分子のレベルでは、増殖のアクセルを踏み込む「BRAF」の変異が代表的です。
ただしその頻度には人種差・タイプ差が大きく、欧米では約半数に見られるのに対し、日本人では低いことが分かっています。日本人のデータでは、BRAF変異率は全体で約30%と報告されています。
もうひとつ重要なのが、がん細胞の暴走を食い止める「ブレーキ役」の、がん抑制遺伝子「p53(TP53)」です。p53はDNAに傷がついた細胞を修復させ、修復できないものは自然死(アポトーシス)へと導きます。これが壊れると、傷ついた細胞が排除されずに生き残ってしまいます。悪性黒色腫では、このp53変異が20~30%に認められると報告されています。
つまり増殖のアクセルが踏み込まれるだけでなく、ブレーキまで故障してしまう場合があり、それが治療の難しさにつながっています。
・Melanoma skin cancer statistics derived from 7442 Japanese patients: Japanese melanoma study
・Mutation and Expression of TP53 in Malignant Melanomas
悪性黒色腫(メラノーマ)の診断
「ほくろとの見分け」から「確定診断」まで
悪性黒色腫の初期症状は、ほくろやしみとよく似ています。見分け方として、左右非対称、輪郭がギザギザして不明瞭、色むらがある、直径6mm超、大きさや色が変化してくる、といったサインが知られています。足の裏のほくろでこうした変化が見られる場合は注意が必要です。
疑わしい病変には、まず皮膚に拡大鏡を当てて色素のパターンを観察する「ダーモスコピー」を行います。悪性が疑われれば、病変を切除して顕微鏡で調べる病理検査で確定診断とします。診断後は、リンパ節転移を調べるセンチネルリンパ節生検や、全身を調べるCT・PET-CT・脳MRI検査で広がりを評価します。
ステージ(病期)の確定
ステージは、がんの厚さや潰瘍の有無(T)、リンパ節転移(N)、遠隔転移(M)を組み合わせて0期~Ⅳ期に分類されます。がんの厚さは予後と直結し、薄いうちに見つかるほど治癒が望めます。
悪性黒色腫(メラノーマ)の一般的な治療法
早期でがんが皮膚にとどまっていれば、手術による切除が治療の中心です。周囲を含めて十分な範囲を切除し、必要に応じてリンパ節郭清を行います。早期であれば切除で治癒が望めます。
問題は、進行して転移をきたした場合です。
かつて悪性黒色腫は抗がん剤が効きにくい難治がんの代表でしたが、近年2種類の薬が治療を大きく変えました。免疫の力でがんを攻撃する「免疫チェックポイント阻害薬(ニボルマブ、ペムブロリズマブ、イピリムマブ)」と、BRAF変異がある場合に使える「分子標的薬(BRAF阻害薬+MEK阻害薬)」です。現在の進行期治療は、この二本柱で組み立てられます。
悪性黒色腫(メラノーマ)における保険診療の限界
治療は進歩したものの、日本人の悪性黒色腫には保険診療で越えにくい壁があります。
日本人では免疫療法が効きにくいタイプが多い
最大の課題は免疫療法が使いにくい点です。
免疫チェックポイント阻害薬の効果はタイプによって大きく異なります。免疫チェックポイント阻害薬であるニボルマブを投与した場合、日本人患者様の5年生存率は、表在拡大型66.7%に対し、末端黒子型14.3%、粘膜型16.7%にとどまりました。つまり、日本人の主流を占める末端黒子型タイプでは、免疫療法の恩恵が届きにくいのです。
BRAF阻害薬が使える患者様が少ない
BRAF阻害薬は、BRAF変異がある患者様にしか効きません。
前述のとおり日本人のBRAF変異率は約30%と低く、投与可能な患者様は一部にとどまります。欧米では半数が使えるこの薬を、日本人の多くは選択肢にできません。
・Melanoma skin cancer statistics derived from 7442 Japanese patients: Japanese melanoma study
・Current Controversies and Challenges on BRAF V600K-Mutant Cutaneous Melanoma
免疫療法を受けられない・続けられない場合がある
免疫療法やBRAF阻害剤が適応できても、全員が受けられるわけではありません。
自己免疫疾患のある方、全身状態が低下した方、高齢の方では使いにくく、始めても重い免疫関連の副作用で中止せざるを得ないことや、効果が出ず増悪してしまうこともあります。
手術後の高い再発率
早期に切除できても、悪性黒色腫は再発しうる疾患です。特にリンパ節転移があるステージⅢでは、手術単独の場合、5年で約40~90%が再発すると報告されています。
再発予防に術後補助療法(免疫療法やBRAF阻害薬)が行われますが、それでも3年で約半数が再発するため再発を防ぎきれないのが実情です。再発・転移をきたした際、日本人に多いタイプでは、前述のとおり保険診療で選べる有効な手立てが限られてしまいます。
・Treatment of Stage III Resectable Melanoma
・Epidemiology and Treatment Patterns of Stage III Resectable Melanoma Treated with Adjuvant Therapy
化学療法に伴う「きつい」副作用
免疫療法や分子標的薬が効かなくなると従来の抗がん剤が使われることがあり、吐き気、強い倦怠感、食欲不振、脱毛、骨髄抑制による感染症リスクなどが起こりえます。身体的・精神的な負担から治療の継続が難しくなり、生活の質(QOL)が損なわれるリスクがあります。
悪性黒色腫(メラノーマ)で重要な治療の考え方
日本人の悪性黒色腫は、免疫療法が効きにくいタイプが多く、BRAF阻害薬が使える患者様も少なく、再発のリスクも残るという固有の課題を抱えています。がん中央クリニックグループでは、こうした課題に対して、標準治療とは作用の仕方が異なる治療を選択肢としてご提案しています。
分子レベルの異常にアプローチする「核酸医薬(アプタマー・miR-34a mimic)」
がんの発生や進行に関わる分子レベルの異常へ直接働きかける「核酸医薬」は、世界的に研究と臨床応用が進んでいます。
当グループでは治療選択肢として、「アプタマー」「miRNA mimic」「RNA干渉(siRNA)」といった核酸医薬を組み合わせた治療を提供しております。がんは、ひとつの遺伝子異常だけで進むわけではありません。増殖を促す遺伝子、細胞死を妨げる遺伝子、転移や免疫逃避を助ける遺伝子など、複数の異常が絡み合って進行します。核酸医薬は、それぞれの異常に対応する分子を設計し、多角的に攻められる点に特徴があります。
アプタマー核酸医薬は、がん細胞に特有の異常なタンパク質にピンポイントで結合し、その働きをブロックすることで、がんの増殖抑制や死滅を狙う治療薬です。悪性黒色腫では、浸潤や転移に関わるHeparanase、増殖を支えるNucleolin、がん細胞の表面に現れるMUC1、免疫の攻撃を妨げるPD-L1などを標的とします。
miRNA mimic核酸医薬は、がん化によって失われた「体が本来持っているがんを抑制する力」を補い、がんの成長を止め、自然な細胞死(アポトーシス)を促す治療薬です。がんを抑える働きを持つ分子を、外部から補充します。
ここで、先に触れたp53が関わってきます。例えば、当グループで使用できるmiR-34aは、本来p53によって制御される、その下流のブレーキ分子で、p53が働かなくなると失われます。これを外部から補うことで、壊れたブレーキの代わりを果たします。
RNA干渉(siRNA)核酸医薬は、がんの増殖や生存を支える遺伝子の設計図(mRNA)を分解して、その遺伝子がタンパク質を作れないようにする治療薬です。
当グループでは各々の患者様の状態にあわせて、様々な種類のRNA干渉核酸医薬を適切に組み合わせて治療できます。
このように、当グループの核酸医薬は、アプタマー・miRNA mimic・siRNAという3つの異なる仕組みを組み合わせ、増殖・生存・転移といった複数の経路を同時に攻めることを狙います。がん中央クリニックグループでは、がん種ごとに標的となる分子を指定して核酸医薬を設計し、患者様一人ひとりの状態に合わせた治療をご提案しています。
光でがんを狙い撃つ「がん光免疫療法」
がん光免疫療法は、光に反応する薬(光感受性物質)を点滴で投与し、そこに特定の波長のレーザー光を当ててがん細胞を破壊する治療です。光線力学的療法(PDT)の一種で、日本でも一部のがんでは1990年代から保険診療として用いられてきました。
仕組みは大きく2つあります。ひとつは「狙い撃ち」です。光感受性物質はがん細胞に集まる性質があり、そこへレーザーを当てると薬が反応してがん細胞を内側から傷つけます。使うレーザーは手をかざしても熱くない弱い光で、重要なのは熱ではなく薬を反応させる「波長」です。
もうひとつは「免疫の活性化」です。壊れたがん細胞から出る目印を免疫細胞が取り込むことで、離れた場所にある転移巣への攻撃力も高まると期待されます。
悪性黒色腫は皮膚やその近くにできるがんであり、体の外からレーザー光を届けやすい位置にあります。皮膚にとどまる病変や、皮下・リンパ節など経皮的にアプローチできる病変では、光を照射して治療できる可能性があります。
がんの位置や広がりを踏まえて、適応となるかを個別に判断します。体への負担が少なく、年齢やステージを問わず日帰りの通院で受けられること、正常な組織への影響が少なく治療後の副作用が少ないことも特徴です。
免疫の「盾」を外す「ハイブリッド免疫療法」
ハイブリッド免疫療法は、がん細胞が免疫の攻撃から逃れるために使う「盾」、すなわち免疫ブロックタンパク質「PD-L1」を標的とする治療です。
悪性黒色腫の標準治療では、すでに免疫チェックポイント阻害薬が中心的に使われています。そのため、この治療が意味を持つのは、標準の免疫療法の恩恵を受けられない患者様です。前述のとおり、日本人に多い末端黒子型では免疫療法が効きにくく、また副作用や全身状態のために受けられない方、中止せざるを得なかった方、効果が出ず増悪してしまった方もいます。こうした患者様でも、当グループのハイブリッド免疫療法を受けていただけます。
ハイブリッド免疫療法は、PD-L1を内側と外側の両方から無力化します。まず、がん細胞の表面に出ているPD-L1に結合し、免疫の攻撃を妨げる「盾」を取り払います。さらに、がん細胞の中に入り込んで、これから作られるPD-L1の設計図(mRNA)を分解し、新たな「盾」が生まれるのを防ぎます。攻撃を逃れる術を失ったがん細胞を、患者様ご自身の免疫細胞が敵として認識し、攻撃できるようになるという仕組みです。
当グループの診療・治療をおすすめする患者様
当グループで実施可能な治療法は、ほとんどの患者様にご検討いただけます。以下では、どのような患者様に効果が期待できるのかを解説します。ご自身の状況に照らし合わせてご検討ください。
治療方法がない、標準治療では治療困難な患者様へ
悪性黒色腫では、日本人に多いタイプで免疫療法が効きにくいこと、BRAF阻害薬が使える患者様が限られること、免疫療法を受けられない事情があることなどから、保険診療の選択肢が行き詰まることがあります。特に、標準的な治療を使い切って次の手立てが見つからない患者様は少なくありません。
そうした場合でも、核酸医薬(アプタマー・miR-34a mimic)、がん光免疫療法、ハイブリッド免疫療法なら、標準治療とは異なるアプローチで治療を提供できます。これらは目立った副作用が起こりにくく体への負担が少ないため、「体力がないため抗がん剤はできません」などと説明された方にも、1つの治療の選択肢となり得ます。また、まだ体力があるのに選択肢がなくなり、緩和治療を勧められている方にとっても、新たな選択肢として検討いただけます。
なお、がん光免疫療法はレーザー光を届けられる位置にがんがあるか、ハイブリッド免疫療法は標準の免疫療法を受けられているかどうかで適応が変わります。ご自身の状況を踏まえて、個別に判断いたします。
保険診療(標準治療)との併用で相乗効果が期待
核酸医薬、がん光免疫療法、ハイブリッド免疫療法は、標準治療と併用でき、相乗効果が期待できます。標準治療がすでに存在するタンパク質やシグナルに作用するのに対し、核酸医薬はそれらが作られる前の遺伝子レベルに作用します。がん光免疫療法は光でがん細胞を局所的に破壊しつつ免疫の活性化も促し、ハイブリッド免疫療法は標準の免疫療法とは異なる仕組みでPD-L1を叩きます。それぞれ攻撃するポイントや仕組みが異なるため、標準治療と組み合わせることでより高い効果が期待できると考えています。
このように、悪性黒色腫の完治を目指すには、複数の治療法を組み合わせることが重要と考えています。標準治療を受けている患者様にとっても、これらの併用は選択肢のひとつとして検討可能です。
再発を抑制・防止するために手術前後の患者様
早期に切除できても、悪性黒色腫は再発しうる疾患です。特にがんが分厚い場合やリンパ節転移がある場合、術後補助療法を行っても再発する患者様は残ります。また、免疫療法やBRAF阻害薬には副作用や適応の制約があり、すべての方が術後補助療法を受けられるわけではありません。
こうした背景から、手術前後に核酸医薬(アプタマー・miR-34a mimic)、がん光免疫療法、ハイブリッド免疫療法を併用することは、再発リスクを下げるひとつの選択肢として検討いただけます。
副作用が不安な患者様
核酸医薬(アプタマー・miR-34a mimic)、がん光免疫療法、ハイブリッド免疫療法は、目立った副作用が起こりにくい治療です。化学療法で起きやすい嘔気、食欲不振、倦怠感、脱毛、貧血、命に関わる副作用などはほとんど起こりません。免疫チェックポイント阻害薬で問題となる重い免疫関連の副作用も起こりにくい治療です。核酸医薬の副作用としては一時的な微熱、頭痛、アレルギー反応(0.3%以下)などが、がん光免疫療法では治療後しばらく直射日光を避ける必要がある光線過敏や照射部位の反応が、ハイブリッド免疫療法では治療部位の反応などが見られることがあります。
いずれも自然と改善する副作用が大半で、治療の継続に支障をきたすことはありません。「体力面や仕事面で副作用の不安がある」「標準治療を続けながら副作用をできるかぎり抑えたい」という方にも受けていただける治療です。
悪性黒色腫(メラノーマ)の完治を目指して、保険診療と患者様に合った治療を組み合わせる
悪性黒色腫は、日本人に多いタイプでは免疫療法が効きにくく、BRAF阻害薬も使いにくいという壁が立ちはだかる疾患です。しかし、早期に発見し、適切に治療を行えば完治を目指せる疾患でもあります。
発症要因にBRAFやp53といった遺伝子異常があるため、保険診療と核酸医薬(アプタマー・miR-34a mimic)、がん光免疫療法、ハイブリッド免疫療法などを組み合わせる集学的治療が有効な選択肢となります。保険診療だけではカバーしきれない場合でも、これらの治療によって腫瘍縮小効果や再発抑制効果が期待できます。
がん中央クリニックグループでは、こうした「アプタマー核酸医薬」や「miR-34a mimic 核酸医薬」をはじめ、患者様1人ひとりに合ったがん治療をご提案いたします。悪性黒色腫(メラノーマ)の患者様は、どのような状況の場合でも是非お気軽にご相談ください。