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大腸がんcolorectal-cancer

「ステージ4の大腸がんです。」

診察室でそう告げられた瞬間、多くの患者さんやご家族は「もう治療法はないのではないか」「余命はどれくらいなのだろう」と強い不安を感じます。

大腸がんのステージ4とは、大腸から離れた臓器やリンパ節へがんが転移した状態を意味します。そのため「末期がん」と説明されることもあり、治療を諦めなければならない病気という印象を持たれがちです。しかし、現在の大腸がん治療は以前とは大きく変わっています。

抗がん剤や分子標的薬、免疫チェックポイント阻害薬の進歩に加え、転移した病変を切除する外科治療も発達し、ステージ4であっても根治を目指せる患者さんが存在する数少ないがんの一つになっています。

肝臓や肺への転移が限られている場合には、薬物療法で腫瘍を縮小させた後に切除を行い、長期間再発なく生活している患者さんもいます。診断時には手術が難しいと判断されても、治療への反応によって状況が変わることもあり「ステージ4だから手術はできない」と最初から決まっているわけではないのです。

一方で、すべての患者さんが同じ治療を受けるわけでもありません。近年では、転移の部位や数だけでなく、RAS遺伝子やBRAF遺伝子の変異、MSI(マイクロサテライト不安定性)の有無、HER2の発現なども調べたうえで、一人ひとりに適した治療法を選択します。「大腸がんステージ4」という診断名は同じでも、実際の治療内容や期待できる治療効果は患者さんによって大きく異なります。

生存率や余命についても、インターネット上にはさまざまな数字が掲載されていますが、それだけで将来を決めつけることはできません。新しい薬剤が次々と登場し、10年前の統計では現在の治療成績を十分に反映できなくなっているためです。

この記事では、大腸がんステージ4とはどのような状態なのかをはじめ、治療の流れ、生存率や余命、完治の可能性、最新治療、標準治療以外の選択肢まで、現在の医学的根拠に基づいて詳しく解説します。

診断されたばかりの方はもちろん、治療中で今後の選択肢について知りたい方、ご家族として情報を整理したい方にも、治療を考えるための判断材料となる記事を目指しています。

  • 大腸がんステージ4でも肝転移や肺転移を含めて切除できる一部の患者では根治を目指せる
  • 切除できない場合は遺伝子・免疫の特徴に応じた薬物療法が中心
  • ステージ4の5年生存率(ネット・サバイバル)は18.3%だが、経過には大きな幅がある

大腸がんステージ4とは

大腸がんのステージは、がんがどこまで広がっているかを表す指標です。

早期のステージⅠではがんは腸の壁の浅い部分にとどまっていますが、病気が進行すると腸の外側へ広がり、周囲のリンパ節へ転移するようになります。そして「大腸から離れた臓器や遠隔リンパ節へ転移した状態がステージ4」です。

医学的にはTNM分類によって決定され、「M(遠隔転移)」が認められた場合はステージ4に分類されます。

ここで重要なのは「ステージ4=全身へ無数に転移している状態」とは限らないということです。例えば、肝臓に小さな転移が一つだけ見つかった患者さんも、肝臓・肺・腹膜へ複数の転移が広がっている患者さんも、同じステージ4に分類されます。しかし、実際の治療方針や予後は大きく異なります。

近年の大腸がん診療では「ステージ4」という分類だけではなく、転移した臓器、転移の個数、腫瘍の大きさ、手術で切除できるか、遺伝子変異の有無、全身状態(Performance Status)などを総合的に評価し、一人ひとりに適した治療方針を決定します。

大腸がんの主な転移先

大腸がんで最も多い転移先は「肝臓」です。大腸から流れ出る血液は門脈を通って肝臓へ集まるため、がん細胞も肝臓へ運ばれやすくなります。実際、大腸がんステージ4患者さんの多くで肝転移が認められます。

次に多いのが「肺転移」です。直腸がんでは骨盤内の静脈を経由して肺へ転移することが多く、結腸がんとはやや異なる転移パターンを示します。そのほかにも、腹膜播種、遠隔リンパ節転移、骨転移、脳転移などがみられることがあります。

転移先によって異なる症状

転移した場所によって症状も異なります。肝転移では初期にはほとんど症状がありませんが、病気が進行すると倦怠感や黄疸が現れることがあります。肺転移では咳や息切れがみられることもありますが、健康診断やCT検査で偶然見つかるケースも少なくありません。腹膜播種では腹水がたまり、お腹の張りや食欲低下、腸閉塞などが問題になることがあります。

このように、大腸がんステージ4といっても転移した部位によって症状や治療方法は大きく変わります。

大腸がんはステージ4でも根治を目指せる

他の多くのがんでは、遠隔転移が見つかった時点で手術が難しくなることが少なくありません。

しかし、大腸がんでは肝転移や肺転移が限られた範囲にとどまっている場合には、転移巣も含めて切除できる可能性があります。さらに近年では、最初は切除できないと判断された患者さんでも、薬物療法への反応などを踏まえ、選択された患者では『コンバージョン手術』が検討されます。

もちろん、すべての患者さんが対象になるわけではありません。それでも「ステージ4=延命治療だけ」という考え方ではなく、「根治を目指せる可能性があるかどうか」を最初に評価することが、近年の大腸がん診療では非常に重要になっています。

大腸がんステージ4でも治療を行う理由

大腸がんステージ4の治療では「がんを完全になくすこと」だけが目標になるわけではありません。病気の進行を抑えながら生活の質を維持すること、つらい症状を改善すること、そして患者さんによっては根治を目指すことまで、病状に応じて複数の目標を持ちながら治療を進めていきます。

他のがんでは、遠隔転移が見つかった時点で手術による根治が難しくなることも少なくありません。一方、大腸がんでは肝臓や肺への転移が限られている場合、転移巣も含めて切除することで長期生存や根治を期待できる患者さんがいます。診断直後から「治療の目的は延命だけ」と決めつけることはできません。

現在の診療では、まず薬物療法で病気をコントロールし、その治療効果を慎重に評価しながら、手術を含めた次の治療へつなげられるかを検討していく流れが一般的になっています。

根治を目指せる可能性の見極め

大腸がんステージ4と診断された患者さんの中には、診断時には切除が難しいと判断されるケースも少なくありません。しかし、その判断が治療開始後も変わらないとも限りません。

近年は抗がん剤や分子標的薬の進歩によって、切除不能と考えられていた肝転移や肺転移が大きく縮小し、手術が可能になる例が増えています。このような治療戦略は「コンバージョン治療(Conversion Therapy)」と呼ばれ、大腸がんでは特に重要な考え方の一つです。

もちろん、すべての患者さんが対象になるわけではありません。転移の数や部位、全身状態などを総合的に判断する必要がありますが、「現在は手術できない」という診断が、そのまま将来まで変わらないとは限らないことは知っておくべきでしょう。

だからこそ、大腸がんステージ4では治療開始時だけではなく、薬物療法の途中でも画像検査を繰り返し行い、切除の可能性が生まれていないかを定期的に評価することが重要になります。

生活の質を保つことも治療の大切な目的

すべての患者さんが根治を目指せるわけではありません。転移が広範囲に及んでいる場合や、切除が難しい部位へ病変が広がっている場合には、病気と付き合いながら長く生活していくことが現実的な目標になります。

大腸がんでは、腸が狭くなることで便が通りにくくなったり、腸閉塞を起こしたりすることがあります。また、出血による貧血や腹膜播種による腹水などが日常生活へ影響することもあります。こうした症状を改善し、食事や睡眠、外出など、これまでの生活をできるだけ維持できるよう支援することも、ステージ4治療の重要な役割です。

場合によっては、人工肛門(ストーマ)の造設や腸閉塞を防ぐための手術、内視鏡によるステント留置などを行い、まず生活しやすい状態を整えてから薬物療法を開始することもあります。このような治療は「根治を諦めたから行う治療」ではありません。患者さんがその後の治療を安全に続けるためにも、大切な意味を持っています。

治療の目標は経過とともに変わることがある

大腸がんステージ4の治療では、診断された時点で最終的な治療方針が決まるわけではありません。薬物療法が予想以上によく効けば、当初は難しいと考えられていた手術が可能になることがあります。逆に、副作用や病気の進行によって治療内容を見直した方がよい場面もあります。

近年の診療現場では「最初に決めた治療を最後まで続ける」という考え方ではなく、その時々の病状や治療効果を評価しながら、最も適した選択肢へ切り替えていくことが基本になります。この柔軟な治療戦略こそが、大腸がんステージ4診療の特徴です。

治療開始時には延命を主な目的としていた患者さんが、その後コンバージョン手術を目指せるようになることもありますし、根治を目指していた患者さんが、生活の質を優先した治療へ切り替えることもあります。大切なのは「ステージ4だからこうする」と一律に考えるのではなく、現在の病状と治療への反応を踏まえながら、その時点で最善と考えられる選択を積み重ねていくことです。

治療方針を決める検査 ― 「切除できるか」と「どの薬が合うか」を同時に見極める

大腸がんステージ4の検査には、診断を確定するだけでなく、その後の治療方針を組み立てる役割があります。最初に確認するのは、原発巣と転移巣をすべて切除できる可能性があるかどうかです。同時に、がん細胞の遺伝子や免疫に関わる特徴を調べ、分子標的薬や免疫チェックポイント阻害薬のうち、どの治療が適しているかを判断します。

日常生活をどの程度送れているか、肝臓や腎臓が薬物療法に耐えられる状態か、食事や栄養を維持できているかも含めて評価するため、同じステージ4でも検査後に提示される治療は一人ひとり異なります。

画像検査は転移の有無だけでなく「切除できる配置か」を確認

CT検査

胸部・腹部・骨盤部の造影CTは、肝臓や肺、腹膜、遠隔リンパ節などへの転移を確認する基本的な検査です。肝転移が見つかった場合には、個数や大きさだけでなく、肝臓の左右どちらに分布しているか、重要な血管へどの程度近いか、切除後に十分な肝臓を残せるかまで確認します。

MRI検査

CTだけでは小さな病変の評価が難しい場合や、肝切除を具体的に検討する段階では、造影MRIを追加して転移の範囲をより詳しく調べることがあります。

直腸がんでは骨盤MRIの役割も大きく、原発巣が骨盤内の周囲組織へどこまで広がっているか、肛門を残せる可能性があるか、放射線治療を組み合わせる必要があるかを評価します。

PET-CT

PET-CTはすべての患者さんに必須の検査ではありませんが、通常の画像検査だけでは判断しにくい病変がある場合や、肝転移・肺転移を切除する前にほかの遠隔転移がないことを確認したい場合に検討されます。検査の目的は転移を数えることではなく、局所治療によってすべての病変を制御できる余地があるかを見極めることにあります。

大腸内視鏡検査

大腸内視鏡検査では原発巣の位置や大きさを確認し、採取した組織によって大腸がんであることを病理学的に確定します。腸管が狭くなって内視鏡を奥まで通せない場合には、画像検査も組み合わせながら別の病変がないかを確認します。

便がほとんど通らない、出血が続いている、腸閉塞が近いと判断される場合は、薬物療法の内容を決める前に、ステント留置や人工肛門造設、原発巣切除などの対応が必要になることもあります。

RAS・BRAF・MSI/MMRの結果が薬剤選択を変える

切除不能な大腸がんでは、病理組織を用いてRAS遺伝子、BRAF遺伝子、MSIまたはMMRの状態を調べます。

RAS遺伝子

RAS遺伝子に変異があるがんでは、セツキシマブやパニツムマブといった抗EGFR抗体薬の効果が期待しにくいため、別の分子標的薬を組み合わせた治療を検討します。RAS野生型であれば抗EGFR抗体薬の候補になりますが、原発巣が右側結腸にあるか、左側結腸から直腸にあるかによっても期待される効果が異なり、腫瘍の発生部位まで含めて一次治療を選びます。

BRAF V600E変異

BRAF V600E変異は、病気が進行しやすい性質を示す予後因子であると同時に、BRAFを標的とした治療へつながる情報でもあります。2025年以降は、BRAF V600E変異陽性の切除不能進行・再発大腸がんに対し、エンコラフェニブとセツキシマブを含む治療を一次治療から用いる選択肢も加わり、診断時にBRAFの状態を把握する意味がさらに大きくなっています。

MSI-H/dMMR

MSI-HまたはdMMRと判定された大腸がんでは、DNAの複製ミスを修復する機能が低下しており、免疫チェックポイント阻害薬が高い効果を示すことがあります。このタイプでは、従来の抗がん剤よりも免疫療法を先に検討する場合があるため、治療開始前の検査結果が初回治療そのものを変えます。

MSI-H/dMMRはリンチ症候群を疑う手がかりにもなり、発症年齢や家族歴などによっては、遺伝カウンセリングや追加の遺伝学的検査が提案されます。

HER2やKRAS G12Cなど、二次治療以降につながる検査もある

標準的な検査で治療方針が固まった後も、病状や治療歴に応じて追加のバイオマーカー検査を行うことがあります。

HER2の遺伝子増幅やタンパク質の過剰発現が確認された大腸がんでは、HER2を標的とする薬剤が治療候補になります。KRAS G12C変異陽性例では、KRAS G12C阻害薬と抗EGFR抗体薬を組み合わせる治療が選択肢となり、極めてまれではあるもののNTRK融合遺伝子などが見つかれば、がんが発生した臓器を問わず使える分子標的薬へつながる可能性があります。

がん遺伝子パネル検査

遺伝子変異を一つずつ調べるのではなく、複数の遺伝子をまとめて解析するがん遺伝子パネル検査が検討されることもあります。検査を受ければ必ず新しい薬が見つかるわけではありませんが、標準治療の選択肢が少なくなってきた段階で、治験や適応可能な薬剤を探す手がかりになります。

組織の量が不足している場合や再生検が難しい場合には、血液中の腫瘍由来DNAを調べるリキッドバイオプシーが利用できることもありますが、血液検査で異常が検出されなかったからといって、腫瘍に遺伝子変異がないとは断定できません。

治療を安全に続けられるかも検査で確認

薬物療法を選ぶ際には、腫瘍の情報だけでなく、患者さんの体が治療に耐えられる状態かを確認します。

血液検査/腫瘍マーカー検査

血液検査では白血球や血小板、貧血の程度に加え、肝機能や腎機能、電解質、栄養状態を評価します。CEAやCA19-9などの腫瘍マーカーは、それだけで治療効果を判定できるものではありませんが、治療前の値を基準として、その後の変化を画像検査とともに追う際に役立ちます。

イリノテカンを含む治療が候補になる場合には、UGT1A1遺伝子多型を調べることがあります。特定の型を持つ患者さんでは、重い白血球減少や下痢が起こりやすいため、開始時の投与量や治療中の観察方法を調整する判断材料になります。

パフォーマンスステータス(PS)評価

日常生活をどの程度自立して送れているかを示すPerformance Status、体重減少や筋肉量、心臓や肺の持病なども治療強度を決めるうえで欠かせません。医学的には使用できる薬であっても、現在の体力や臓器機能によっては、薬剤や投与量を変えた方が安全に長く治療を続けられることがあります。

治療中も定期的に検査を行う

検査結果は一度確認して終わりではありません。診断時には切除不能だった肝転移や肺転移が薬物療法で縮小し、手術や局所治療の対象へ変わることがあるため、治療中も定期的に画像を撮影して切除可能性を見直します。原発巣と転移巣の位置関係、遺伝子検査の結果、薬物療法への反応を、消化器内科、外科、放射線科、病理診断科などが共有して検討することで、手術へ切り替える時期を逃しにくくなります。

大腸がんステージ4の検査は、単に病状の悪さを確認するために行うものではありません。根治を目指せる余地があるのか、最初にどの薬を選ぶべきか、治療をどの程度の強さで始められるかを明らかにし、その後の選択肢をできるだけ多く残すために行われます。

参考:大腸癌治療ガイドライン|JSCCR 大腸癌研究会

大腸がんステージ4の治療全体像

大腸がんステージ4の治療方針を決める際、最初の分岐になるのは、原発巣と遠隔転移巣をすべて切除できるかどうかです。

肝臓や肺に転移があっても、病変の数や位置が限られ、手術後に十分な臓器機能を残せると判断されれば、転移巣を含めた切除によって根治を目指せる可能性があります。遠隔転移が見つかった時点で一律に薬物療法へ進むのではなく、まず外科的に病変を取り切れる余地がないかを検討する点は、大腸がんステージ4の大きな特徴です。

切除可能な場合は手術が検討される

切除可能と判断された場合には、大腸の原発巣と肝転移や肺転移の手術が検討されます。すべてを一度に切除する方法もあれば、患者さんの体力や手術範囲を考慮し、複数回に分けて行う方法もあります。肝臓に多数の病変がある場合でも、切除する順番を工夫したり、残す予定の肝臓をあらかじめ大きくしたりすることで手術を目指せることがあります。

手術の可否は単に転移の個数だけで決まるものではなく、血管との位置関係、切除後に残る臓器の量、原発巣の状態、ほかの臓器への転移の有無まで含めて判断されます。

切除できなくても薬物療法によって手術を目指せる場合がある

診断時には切除不能であっても、薬物療法によって腫瘍を十分に縮小させれば、手術へ移行できる可能性があります。これがコンバージョン治療です。肝転移が重要な血管へ近接している、多数の病変が肝臓の両側に広がっているといった理由で手術が難しい場合でも、抗がん剤と分子標的薬によって病変が縮小すれば、切除可能という判断へ変わることがあります。

コンバージョン治療では、腫瘍を小さくすること自体が最終目的ではありません。薬物療法が効いている間に、すべての病変を取り切れる時期が来ていないかを定期的に確認する必要があります。治療を長く続け過ぎると、薬剤による肝障害や全身状態の低下によって、かえって手術が難しくなることもあります。画像上の変化を腫瘍内科だけで判断するのではなく、大腸外科や肝胆膵外科、呼吸器外科などの専門医が早い段階から評価へ加わることが、手術へ切り替える機会を逃さないために重要です。

切除不能例ではバイオマーカーに応じた薬物療法が中心

遠隔転移が広範囲に及び、すべてを切除することが難しい場合には、薬物療法によって病気の進行を抑えることが治療の中心になります。FOLFOXやCAPOX、FOLFIRIなどの抗がん剤治療を土台として、RASやBRAF、MSI/MMRの検査結果、原発巣が右側結腸にあるか左側結腸から直腸にあるか、患者さんの体力や臓器機能を踏まえて、分子標的薬や免疫チェックポイント阻害薬を組み合わせます。

薬物療法は一つの治療を最後まで続けるものではありません。一定期間ごとにCTやMRIで効果を確認し、病気が抑えられていれば継続し、進行が確認された場合には作用の異なる薬剤へ切り替えます。

副作用が強いときには投与量を調整したり、原因となる薬だけを一時的に休薬したりしながら、治療効果と生活への負担のバランスを取ります。一次治療の時点から二次治療以降を見据え、将来使える薬剤を残しながら順番を考えることも、長期的な病勢コントロールにつながります。

参考:大腸がん(結腸がん・直腸がん)治療|国立がん研究センター がん情報サービス

原発巣による症状が強い場合は、腸の状態を整える治療を優先

遠隔転移が切除できない状態でも、大腸の原発巣が腸閉塞や出血、穿孔を起こしている場合には、原発巣への対応が必要です。便やガスが通らないほど腸管が狭くなっていれば、内視鏡で金属製ステントを留置して通過を確保したり、人工肛門を造設して便の流れを変えたりします。出血が続いて重い貧血を起こしている場合や、腸に穴が開く危険が高い場合には、原発巣の切除を検討することもあります。

これらの処置は、遠隔転移を治すために行うものではありませんが、食事や排便ができる状態を取り戻し、その後の薬物療法を安全に始めるために欠かせないことがあります。一方、原発巣による症状がなく、遠隔転移を切除できない場合には、予防的に大腸を切除するより、全身治療を優先することが一般的です。大きな手術によって薬物療法の開始が遅れたり、術後合併症で体力が落ちたりする可能性もあるため、原発巣切除によって得られる利益を慎重に見極めます。

直腸がんでは放射線治療を組み合わせる場面もある

結腸がんと直腸がんでは、局所治療の考え方が一部異なります。直腸は骨盤の深い位置にあり、膀胱や生殖器、肛門に近いため、腫瘍が周囲へ広がると痛みや出血、排便障害を起こしやすくなります。こうした症状を抑える目的や、骨盤内の病変を小さくして切除可能性を高める目的で、放射線治療や化学放射線療法を組み合わせることがあります。

肝転移や肺転移に対しても、手術だけが局所治療ではありません。病変の大きさや位置、患者さんの体力によっては、ラジオ波焼灼療法や定位放射線治療などが検討されます。どの方法が適しているかは病変ごとに異なり、薬物療法との順番まで含めて治療計画を組み立てます。

大腸がんステージ4の治療は、手術か薬物療法かを一度だけ選んで終わるものではありません。切除可能性を繰り返し評価し、病気の広がりや薬物療法への反応が変われば、治療の目標と方法も見直します。切除不能から根治手術を目指す方向へ進む患者さんもいれば、症状を抑えながら薬物療法を長く続けることを目標とする患者さんもいます。最初の方針に固執せず、その時点で得られている検査結果をもとに治療を組み替えていくことが、ステージ4の診療を支える基本的な考え方です。

参考:ESMO Clinical Practice Guideline「Metastatic Colorectal Cancer」

抗がん剤治療 ― FOLFOX・CAPOX・FOLFIRIはどう使い分けるのか

大腸がんステージ4の薬物療法では、一種類の抗がん剤だけを投与するのではなく、作用の異なる複数の薬を組み合わせる治療が基本になります。中心になるのは、5-FUまたはカペシタビンといったフッ化ピリミジン系薬剤に、オキサリプラチンまたはイリノテカンを組み合わせる方法です。治療効果を高めるため、バイオマーカーの結果に応じて分子標的薬を追加することも多く、抗がん剤は薬物療法全体の土台として使われています。

どの組み合わせを選ぶかは、単純に「最も強い治療はどれか」で決まるものではありません。転移巣を縮小させて手術へつなげたいのか、病気を長く抑えながら生活を維持したいのかによって、必要な治療強度は変わります。手足のしびれや腎機能低下、下痢を起こしやすい持病、過去に受けた抗がん剤、通院方法や仕事の都合も薬剤選択へ影響します。大腸がんの抗がん剤治療では、腫瘍への効果と治療後の生活を切り離さずに考える必要があります。

FOLFOXとCAPOXはオキサリプラチンを使う代表的な治療

FOLFOX(フォルフォックス)

FOLFOXは、5-FU、レボホリナート、オキサリプラチンを組み合わせる治療です。国内ではmFOLFOX6と呼ばれる方法が広く使われており、一般的には2週間を一つの周期として投与します。

点滴当日だけで終わるわけではなく、携帯型ポンプを使って5-FUを約46時間かけて持続投与するため、多くの施設では中心静脈ポートを留置します。ポンプを装着したまま自宅で過ごす時間が生じますが、通院日と体調の波を把握できれば、仕事を続けながら治療を受けることも可能です。

CAPOX(カポックス)/XELOX(ゼロックス)

CAPOXは、オキサリプラチンの点滴と、カペシタビンという内服薬を組み合わせます。XELOXと呼ばれることもあり、一般的には3週間を一つの周期として、治療初日にオキサリプラチンを投与し、その後一定期間カペシタビンを服用します。

持続点滴用のポンプを必要としない点は生活上の利点ですが、毎日の服薬管理が必要であり、食事や水分を十分に取れない患者さん、腎機能が低下している患者さんでは別の治療が適することもあります。FOLFOXより簡単な治療、あるいは弱い治療という意味ではなく、同じオキサリプラチン系治療を異なる方法で行う選択肢と考える方が正確です。

オキサリプラチンの副作用について

オキサリプラチンで特徴的なのが、冷たい物へ触れた際に起こるしびれや痛みです。投与後しばらくは、冷たい飲み物で喉が締め付けられるように感じたり、冷蔵庫の物へ触れた手が強くしびれたりすることがあります。

治療を重ねると、温度に関係なく手足のしびれが残り、ボタンを留める、文字を書く、箸を使うといった動作へ影響する場合もあります。末梢神経障害は累積投与量とともに悪化しやすいため、症状が強くなる前にオキサリプラチンを休薬し、ほかの薬だけで治療を続ける判断も行われます。

参考:オキサリプラチン 添付文書|医薬品医療機器総合機構

FOLFIRI(フォルフィリ)ではイリノテカンを組み合わせる

FOLFIRIは、5-FUとレボホリナートにイリノテカンを加えた治療で、FOLFOXと同じく2週間ごとに行う方法が一般的です。

FOLFOXとFOLFIRIはいずれも転移性大腸がんに対する主要な治療であり、一方がすべての患者さんに優れているわけではありません。治療歴がない段階からFOLFIRIを選ぶ場合もあれば、最初にFOLFOXやCAPOXを使用し、病気が進行した後にオキサリプラチンからイリノテカンへ切り替える場合もあります。反対に、FOLFIRIから治療を開始し、二次治療でオキサリプラチン系へ変更する流れもあります。

イリノテカンの副作用

イリノテカンでは下痢と骨髄抑制が問題になりやすく、下痢は投与直後に現れるタイプと、数日後から続くタイプに分かれます。遅れて起こる下痢を放置すると脱水や腎機能低下につながるため、排便回数が急に増えた場合や、水分を取れない状態が続く場合には早い対応が必要です。白血球、とくに好中球が低下すると感染症の危険が高まり、発熱を伴う場合には緊急の診察が必要になることがあります。

イリノテカンの分解にはUGT1A1という酵素が関わっており、特定の遺伝子型を持つ患者さんでは重い好中球減少や下痢が起こりやすいことが分かっています。治療前にUGT1A1遺伝子多型を調べ、その結果や年齢、肝機能を踏まえて開始量を調整することがあります。検査で特定の型が見つかってもイリノテカンを必ず使えないわけではなく、副作用を避けるために投与方法を慎重に決めるための情報として利用されます。

腫瘍を大きく縮小させたい場合にはFOLFOXIRI(フォルフォキシリ)が検討

FOLFOXIRIは、5-FU、レボホリナート、オキサリプラチン、イリノテカンを組み合わせる治療です。通常は分子標的薬のベバシズマブと併用し、診断時には切除できなかった肝転移などを縮小させ、手術へつなげたい場合に検討されます。FOLFOXやFOLFIRIより多くの薬を同時に使うため、高い腫瘍縮小効果が期待できる反面、好中球減少、下痢、口内炎、末梢神経障害などの負担も大きくなります。

体力が保たれ、主要な臓器機能に問題がなく、強い治療を行う医学的な理由がある患者さんが主な対象です。高齢であることだけを理由に一律に除外されるわけではありませんが、持病や日常生活の状態を含めて慎重に適応を判断します。薬剤の数が多いほど良い治療ということではなく、治療強度を上げることで得られる利益が、副作用による不利益を上回るかを見極めなければなりません。

参考:National Cancer Institute「Colon Cancer Treatment(PDQ)」

副作用に合わせた減量や休薬は治療の失敗ではない

5-FUやカペシタビンでは、口内炎、下痢、食欲低下、骨髄抑制などが起こることがあります。カペシタビンでは、手のひらや足の裏に赤み、痛み、ひび割れが現れる手足症候群にも注意が必要です。初期の段階で保湿や摩擦の回避、休薬などの対応を行えば重症化を防ぎやすいため、日常動作へ影響が出るまで我慢する必要はありません。

抗がん剤の量を減らしたり、投与日を延期したりすると「治療効果がなくなるのではないか」と心配する患者さんもいます。しかし、副作用によって体力を大きく失い、治療を続けられなくなる方が、その後の選択肢を狭めることがあります。

安全に継続できる量は患者さんごとに異なり、減量や休薬は治療を長く続けるための調整です。発熱、強い下痢、食事や水分を取れない状態、急速に悪化するしびれなどがあれば、次の診察日まで待たずに治療施設へ連絡する必要があります。

参考:重篤副作用疾患別対応マニュアル 手足症候群|厚生労働省

同じ薬を最後まで続けるとは限らない

抗がん剤治療中は、一定の間隔でCT検査や腫瘍マーカー、全身状態を確認し、効果と副作用の両方を評価します。腫瘍が縮小して手術可能になれば、薬物療法を続けるのではなく、外科治療へ切り替える時期を検討します。切除を目的としない場合でも、治療効果が保たれている一方でオキサリプラチンによるしびれが蓄積してきたときには、オキサリプラチンだけを外し、フッ化ピリミジン系薬剤と分子標的薬を残す維持療法へ移行することがあります。

病気が進行した場合には、それまで使用していなかった作用機序の薬へ切り替えます。オキサリプラチン系から始めた患者さんではイリノテカン系を、イリノテカン系から始めた患者さんではオキサリプラチン系を次に使うことが基本的な考え方の一つです。後の治療ではトリフルリジン・チピラシルなど別の抗がん剤が候補となることもあり、最初の治療だけで全経過が決まるわけではありません。

大腸がんステージ4の抗がん剤治療では、強い薬を限界まで続けることより、効果が得られる治療を安全につなぎ、必要な時期に手術や次の薬へ移れる状態を保つことが大切です。使用する抗がん剤の骨格が同じでも、組み合わせる分子標的薬はRASやBRAFの遺伝子変異、原発巣の左右によって変わります。

分子標的薬 ― 遺伝子変異と原発巣の位置によって使う薬が変わる

大腸がんに使われる分子標的薬には、腫瘍が新しい血管を作る働きを抑える薬、がん細胞の増殖に関わる受容体を遮断する薬、特定の遺伝子変異を直接狙う薬があります。いずれも抗がん剤とは異なる仕組みで作用しますが、単独で使用するとは限りません。一次治療ではFOLFOXやCAPOX、FOLFIRI、FOLFOXIRIなどを土台に分子標的薬を組み合わせ、病気が進行した後は、それまでの治療歴と遺伝子検査の結果を見ながら作用の異なる薬へ切り替えていきます。

薬剤選択には、腫瘍の広がりだけでなくRAS、BRAF、HER2、KRAS G12Cなどの状態が関わります。抗EGFR抗体薬では原発巣が大腸の右側にあるか左側にあるかも治療効果へ影響するため、遺伝子変異がないという結果だけで薬が決まるわけではありません。どの分子標的薬を使うかは、腫瘍を縮小させて手術へつなげたいのか、病気を長く抑えたいのか、副作用をどこまで許容できるのかまで含めて判断されます。

ベバシズマブは、腫瘍へ栄養を送る血管が作られるのを抑える

ベバシズマブは、血管内皮増殖因子であるVEGFの働きを抑える抗体薬です。がんは増殖するために周囲へ新しい血管を作り、酸素や栄養を取り込もうとします。ベバシズマブはこの血管新生を妨げることで、抗がん剤の効果を補います。RAS遺伝子の変異の有無にかかわらず使用を検討でき、原発巣が右側にある大腸がんや、抗EGFR抗体薬の対象にならない患者さんにも広く用いられています。

一次治療ではFOLFOX、CAPOX、FOLFIRI、FOLFOXIRIなどと組み合わせます。病気が進行した後もVEGF経路を抑える治療を続ける考え方があり、ベバシズマブを別の抗がん剤と組み合わせて継続するほか、FOLFIRIへラムシルマブまたはアフリベルセプトを加える治療が候補になります。どの薬を選ぶかは、一次治療で使用した薬剤、副作用、病気の進行速度、肝臓や腎臓の状態などを踏まえて決めます。

参考:大腸癌治療ガイドライン医師用 2026年版|大腸癌研究会

ベバシズマブの副作用

抗VEGF薬では、高血圧、たんぱく尿、出血、血栓症などに注意が必要です。まれではあるものの、消化管穿孔や傷の治りにくさが問題になることもあります。手術を予定している患者さんでは、薬の投与と手術の間隔を適切に空けなければなりません。コンバージョン治療によって肝切除や肺切除を目指す場合には、腫瘍の縮小だけでなく、最後にベバシズマブを投与した時期まで含めて手術日程を組みます。

抗EGFR抗体薬は、RAS野生型の左側大腸がんで特に重要

セツキシマブとパニツムマブは、がん細胞の表面にあるEGFRへ結合し、増殖の信号を遮断する抗体薬です。効果を期待するには、少なくともRAS遺伝子が野生型、すなわち治療効果を妨げる変異が確認されていないことが前提になります。RAS変異がある腫瘍では、EGFRを遮断してもその下流で増殖の信号が流れ続けるため、これらの薬を使っても十分な効果は期待できません。

RAS野生型でも、原発巣の位置によって薬剤の選び方が変わります。下行結腸、S状結腸、直腸などの左側大腸がんでは、一次治療として抗EGFR抗体薬を抗がん剤へ加える治療が有力な選択肢です。

日本で行われたPARADIGM試験では、RAS野生型の左側大腸がんに対するmFOLFOX6との併用で、パニツムマブ群の全生存期間中央値は37.9か月、ベバシズマブ群は34.3か月でした。5年生存割合も32%対21%となり、左側原発では抗EGFR抗体薬を最初から用いる意義が示されています。

参考:世界初RAS遺伝子野生型大腸がんに対する標準治療を確認|国立がん研究センター

盲腸、上行結腸、横行結腸などの右側大腸がんでは、抗EGFR抗体薬による生存利益が左側ほど一貫していません。一次治療ではベバシズマブを組み合わせることが多いものの、肝転移を大きく縮小して手術へつなげたいなど、腫瘍縮小を強く求める状況では抗EGFR抗体薬が検討されることもあります。左右差だけで機械的に決めるのではなく、切除可能性や病気の勢いも含めた判断が必要です。

抗EGFR抗体薬の副作用

抗EGFR抗体薬で多い副作用は、顔や胸、背中に現れるにきびのような発疹、皮膚の乾燥、爪の周囲の炎症、低マグネシウム血症です。皮膚症状が悪化してから対応するより、治療開始時から保湿剤や日焼け止めを使用し、必要に応じて抗菌薬を併用する方が重症化を防ぎやすくなります。発疹が出たことだけを理由に薬が効いていると判断することはできませんが、皮膚障害を早く管理できれば治療を継続しやすくなります。

BRAF V600E変異には、BRAFとEGFRを同時に抑える治療を行う

BRAF V600E変異を持つ大腸がんは、進行が速く、従来の抗がん剤だけでは治療が難しい傾向があります。BRAFだけを阻害すると、がん細胞がEGFR経路を使って増殖の信号を再び活性化させるため、BRAF阻害薬と抗EGFR抗体薬を組み合わせる必要があります。化学療法後に病気が進行した患者さんには、エンコラフェニブとセツキシマブの併用が標準的な選択肢として用いられてきました。

2025年11月には、日本でもBRAF V600E変異陽性の切除不能進行・再発大腸がんに対し、一次治療からエンコラフェニブ、セツキシマブ、FOLFOXを組み合わせる治療が承認されました。根拠となったBREAKWATER試験では、奏効率が従来治療の40.0%に対して60.9%、無増悪生存期間中央値は7.1か月に対して12.8か月でした。BRAF V600E変異は予後不良因子として知られていますが、診断時に変異を確認することで、初回治療からその性質を直接狙う選択肢を持てるようになっています。

参考:BRAF阻害剤「ビラフトビ®カプセル」の結腸・直腸がんに対する併用療法の一部変更承認を取得

この治療では、抗EGFR抗体薬による皮膚症状に加え、下痢、悪心、倦怠感、肝機能異常などが現れることがあります。複数の薬剤を組み合わせるため、副作用がどの薬に由来するのかを見極め、休薬や減量を調整しながら続けます。

KRAS変異があっても、G12C型では標的治療を選べるようになった

長い間、RAS変異陽性の大腸がんは抗EGFR抗体薬が効きにくく、遺伝子変異を直接狙う治療もありませんでした。しかし、KRAS変異の中でもG12Cという特定の型に対する阻害薬が開発され、治療の考え方が変わっています。KRAS G12Cは大腸がん全体では少数ですが、該当する患者さんにとっては治療選択を左右する情報です。

日本では2025年、フッ化ピリミジン、オキサリプラチン、イリノテカンなどを含む治療後に増悪したKRAS G12C変異陽性の切除不能進行・再発大腸がんに対し、ソトラシブとパニツムマブの併用が承認されました。KRAS G12C阻害薬だけではEGFR経路が再活性化して効果が弱まりやすいため、パニツムマブを同時に用いて二つの経路を抑えます。

参考:ソトラシブとパニツムマブ併用療法の国内承認|武田薬品工業

「RAS変異があるから分子標的治療はない」という説明は、すべての患者さんには当てはまらなくなっています。ただし、対象になるのはKRAS変異全体ではなくG12C型に限られ、ほかの変異型へ同じ治療を用いることはできません。

HER2陽性大腸がんでも治療の選択肢が広がっている

一部の大腸がんでは、HER2遺伝子の増幅やHER2タンパク質の強い発現が認められます。HER2陽性はRAS野生型の腫瘍に多く、抗EGFR抗体薬への抵抗性に関わることもあります。頻度は高くありませんが、標準治療後の次の選択肢を考えるうえで、HER2検査の意味は大きくなっています。

2026年3月には、トラスツズマブ デルクステカンがHER2陽性の進行・再発固形がんへ適応拡大され、標準的な治療が困難となった大腸がんも、承認された検査でHER2遺伝子増幅が確認されるなど所定の条件を満たせば治療候補になり得ます。

参考:PMDA「エンハーツ適正使用ガイド」

この薬はHER2を目印に抗がん剤成分を腫瘍細胞へ届ける抗体薬物複合体です。肺に炎症を起こす間質性肺疾患が重症化することがあるため、咳や息切れ、発熱が現れた場合には速やかな評価が必要です。HER2の判定方法やこれまでの治療歴によって適応が異なるため、検査結果を専門医が確認したうえで使用を判断します。

分子標的薬は検査結果だけで決まるわけではない

同じRAS野生型でも、原発巣が左右どちらにあるか、腫瘍をどの程度縮小させたいか、手術を予定しているかによって、抗EGFR抗体薬と抗VEGF薬のどちらを選ぶかは変わります。BRAF V600EやKRAS G12C、HER2陽性では専用の治療が候補になりますが、治療を行う時期や、すでに受けた薬との関係まで確認しなければなりません。分子標的薬は「遺伝子に合う薬を一つ選べば終わり」という治療ではなく、抗がん剤との組み合わせや治療の順番まで含めて設計する医療です。

治療中に新たな遺伝子変異が現れ、以前効いていた薬へ抵抗性を持つこともあります。病気が進行した際には、保存してある組織を調べ直したり、再生検やリキッドバイオプシーを行ったりすることで、次の治療につながる変化が見つかる場合があります。初回の検査結果だけを固定的に見るのではなく、病気の変化に合わせて治療標的を再評価する視点も必要です。

分子標的薬によって大腸がんの薬物療法は細分化され、従来なら選択肢が限られていた遺伝子変異にも専用の治療が加わっています。さらに、MSI-HまたはdMMRの大腸がんでは、がん細胞を直接狙う分子標的薬とは異なり、患者さん自身の免疫を利用する治療が中心になることがあります。

免疫チェックポイント阻害薬

免疫チェックポイント阻害薬は、ステージ4大腸がんの患者さん全員に使用する治療ではありません。

主な対象になるのは、MSI-HまたはdMMRと呼ばれる特徴を持つ大腸がんです。切除不能な進行・再発大腸がんのうち、このタイプが占める割合は約4%と決して高くありませんが、該当する場合には、従来の抗がん剤ではなく免疫療法を最初の治療から選べることがあります。数としては少なくても、検査結果によって治療の組み立てが大きく変わるため、MSI/MMR検査はステージ4大腸がんで欠かせない検査の一つです。

MSI-H・dMMRとはどのような状態か

細胞が増えるときにはDNAが複製されますが、その過程では小さなコピーの間違いが生じます。正常な細胞には、その間違いを見つけて修復する仕組みがあります。修復機能がうまく働かなくなった状態がdMMRであり、その結果として特定のDNA配列に多くの異常が蓄積した状態がMSI-Hです。検査方法や見ている対象は異なるものの、治療選択では互いに近い意味を持つ指標として扱われています。

DNAの異常が多く蓄積したがん細胞は、免疫から見つけられやすい特徴を持ちます。しかし、がん細胞は免疫へブレーキをかけ、攻撃を逃れる仕組みも備えています。免疫チェックポイント阻害薬は、このブレーキを解除することで、患者さん自身の免疫細胞が再びがんを攻撃できる状態へ導く薬です。がん細胞を直接壊す抗がん剤とは、治療の仕組みそのものが異なります。

ペムブロリズマブ単剤と、ニボルマブ・イピリムマブ併用が主な選択肢

MSI-HまたはdMMRの切除不能進行・再発大腸がんでは、ペムブロリズマブを単独で使用する治療が、一次治療から選択肢になります。

KEYNOTE-177試験では、ペムブロリズマブを使用した患者の無増悪生存期間中央値は16.5か月で、抗がん剤を中心とした標準治療群の8.2か月を上回りました。5年時点の全生存率も、ペムブロリズマブ群で55%、標準治療群で44%と報告されています。これは臨床試験に参加したMSI-H/dMMR患者全体の結果であり、個人の余命を示す数字ではありませんが、免疫療法の効果が長く続く患者がいることを示しています。

参考:Diaz LA Jr, et al. KEYNOTE-177:5年以上の追跡解析

もう一つの選択肢が、ニボルマブとイピリムマブを組み合わせる治療です。ニボルマブとイピリムマブは、免疫にかかる別々のブレーキを解除する薬であり、二つを併用することで、より幅広く免疫反応を引き出すことを目指します。

CheckMate 8HW試験では、未治療のMSI-H/dMMR転移性大腸がんに対し、併用療法が抗がん剤を中心とした治療より病気の進行を長く抑える結果を示しました。日本でも2025年8月に適応が拡大され、一次治療から検討できるようになっています。

参考:オプジーボ・ヤーボイ併用療法の国内適応拡大|小野薬品工業

単剤と併用療法のどちらが適しているかは、病気の進行速度だけでなく、年齢、持病、自己免疫疾患の有無、副作用への対応力なども含めて判断します。二つの薬を組み合わせれば誰にでも有利になるわけではなく、免疫が過剰に働く副作用も増える可能性があるため、期待できる効果と体への負担を比べながら選ぶ必要があります。治療歴によっては、ニボルマブ単剤が候補になる場合もあります。

MSI-H・dMMRでも、すべての患者に効くわけではない

免疫療法が長く効く患者さんがいる一方で、治療開始後も腫瘍が縮小せず、早い段階で別の治療へ切り替えなければならないこともあります。MSI-HまたはdMMRであれば必ず効果が得られるわけではなく、定期的なCT検査や血液検査、症状の変化を通じて治療効果を確認します。十分な効果が得られない場合には、FOLFOXやFOLFIRIなどの抗がん剤、RASやBRAFの状態に応じた分子標的薬へ移ることになります。

大腸がんの大部分を占めるMSSまたはpMMRでは、免疫チェックポイント阻害薬を単独で使用しても十分な効果が得られにくく、一般的な標準治療にはなっていません。免疫療法という名称だけを見て、「抗がん剤より新しいから自分にも適している」と判断することはできません。MSI/MMR検査の結果を確認し、その治療が自分の大腸がんに合う医学的な根拠があるかを見極める必要があります。

免疫チェックポイント阻害薬の副作用

免疫チェックポイント阻害薬では、抗がん剤でよくみられる強い吐き気や脱毛、白血球減少が比較的少ない一方、活性化した免疫が正常な臓器まで攻撃する免疫関連有害事象が起こることがあります。甲状腺や副腎の機能低下、大腸炎、肝炎、肺炎、皮膚障害、1型糖尿病など、影響を受ける臓器は一つに限られません。投与中だけでなく、治療を終えた後に症状が現れる場合もあります。

強いだるさが続く、下痢の回数が急に増える、咳や息切れが出る、皮膚や白目が黄色くなる、異常に喉が渇いて尿の回数が増えるといった変化は、免疫関連有害事象のサインかもしれません。一般的な体調不良に見える症状もあるため、次の診察日まで様子を見るのではなく、治療施設へ連絡して評価を受けることが大切です。早い段階で発見できれば、休薬やステロイド治療などによって重症化を防げる可能性があります。

免疫チェックポイント阻害薬は、対象となる患者さんが限られる一方、効果が長く続けば大腸がんステージ4の経過を大きく変え得る治療です。MSI-H/dMMRかどうかを治療開始前に確認し、単剤と併用療法の違い、副作用への備えまで理解したうえで選択する必要があります。

手術・放射線治療・局所治療

大腸がんステージ4がほかの多くのがんと異なる点の一つは、肝臓や肺へ転移していても、原発巣と転移巣をすべて取り除けると判断された一部の患者さんでは、手術による根治を目指せることです。

ただし、転移があるだけで手術の対象になるわけではありません。転移の場所や数、重要な血管との位置関係、手術後に十分な肝臓や肺の機能を残せるか、ほかの臓器に制御できない病変がないかを詳しく確認し、体力や持病も含めて判断します。

手術が可能かどうかは、最初の検査だけで確定するとも限りません。診断時には切除できなかった病変が、抗がん剤や分子標的薬によって縮小し、後から手術の対象へ変わることがあります。反対に、画像上は小さな転移でも、位置によっては安全に切除するのが難しい場合があります。転移の個数だけではなく、すべての病変を取り切れるかどうかが治療方針を分けます。

肝転移では切除後に十分な肝臓を残せるか確認

大腸がんが最も転移しやすい臓器は肝臓です。肝転移の手術では、転移巣を取り除くことに加え、手術後も肝臓が十分に機能できる量を残す必要があります。病変が肝臓の左右に複数あっても、すぐに手術不能と決まるわけではなく、切除する順番を工夫したり、薬物療法で腫瘍を縮小させたりすることで、手術を目指せる場合があります。

原発巣と肝転移を同時に切除することもあれば、体への負担を考えて複数回に分けることもあります。大腸の手術を先に行う方法、肝転移を先に治療する方法のどちらが適しているかは、原発巣による腸閉塞や出血の有無、肝転移の広がり、薬物療法を急ぐ必要性などによって変わります。大腸外科だけでなく、肝胆膵外科や腫瘍内科も交えて計画を立てる必要があるのは、このように複数の治療順序が考えられるためです。

肝転移をすべて切除できれば、長期生存や治癒を期待できる患者さんもいますが、手術後の再発は決して珍しくありません。画像上の病変を取り切れたことと、体内にがん細胞が一つも残っていないことは同じではないためです。手術後も定期的なCT検査や血液検査を続け、病状によっては薬物療法を組み合わせます。

参考:大腸癌肝転移データベース委員会|大腸癌研究会

肺転移でも病変が限られていれば手術を検討できる

肺転移では、転移巣を切除しても呼吸機能を十分に保てること、ほかの病変が制御されていること、手術に耐えられる全身状態であることなどを確認します。

肺に複数の転移があっても切除を検討できる場合がありますが、取り除く範囲が広くなれば、残る肺の機能への影響も大きくなります。病変の数だけでなく、左右どちらの肺にあるのか、肺の奥か表面に近いか、過去に肺の手術を受けているかまで含めた評価が必要です。

肝転移と肺転移の両方があっても、すべての病変を安全に治療できると判断された患者さんでは、薬物療法と複数回の手術を組み合わせることがあります。ただし、手術による利益が期待できるのは選択された患者さんに限られます。「転移を切除できる」という情報だけで手術を急ぐのではなく、全身の病気がどの程度制御されているかを確認してから判断します。

手術が難しい場合には病変だけを狙う治療が候補になる

病変の場所や体力の問題で手術が難しい場合には、転移巣へ針を刺して熱で焼くラジオ波焼灼療法やマイクロ波凝固療法、放射線を病変へ集中させる定位放射線治療などが検討されます。小さく数の限られた肝転移や肺転移が主な対象で、手術の代わりに行う場合もあれば、切除と組み合わせてすべての病変を治療する場合もあります。

これらの局所治療は、体を大きく切開せずに行える可能性がある一方、どの病変にも手術と同じ効果を期待できるわけではありません。腫瘍の大きさや位置によって治療できる範囲が限られ、処置した場所に再びがんが現れることもあります。手術が可能な患者さんでは、切除が優先されることが多く、局所治療は外科手術が難しい理由や病変の特徴を踏まえて選ばれます。

放射線治療は、直腸がんが骨盤内で周囲へ広がっている場合や、骨転移による痛み、脳転移による症状を抑える場面でも使われます。結腸がんでは放射線治療が中心になることは多くありませんが、病変の場所を限定して治療できるため、薬物療法だけでは改善しにくい症状を和らげる役割があります。

参考:National Cancer Institute「Colon Cancer Treatment(PDQ)」

腹膜播種では手術の対象を慎重に選ぶ

腹膜播種は、お腹の内側を覆う腹膜へがん細胞が散らばった状態です。病変が広く分布している場合には、すべてを切除することが難しく、薬物療法が治療の中心になります。一方、腹膜以外に転移がなく、播種の範囲が限られ、目に見える病変を取り切れると判断された患者さんでは、専門施設で減量手術が検討されることがあります。

腹膜の病変を切除した後、お腹の中へ温めた抗がん剤を流すHIPECという治療を目にすることもありますが、すべての腹膜播種に行う標準治療ではありません。手術そのものの負担が大きく、HIPECを追加する利益が明確でない場合もあるため、実施経験のある専門施設で適応を慎重に判断する必要があります。自由診療として紹介されることもありますが、「腹膜へ直接薬を入れるから全身の抗がん剤より効く」と単純に考えることはできません。

参考:ASCO Guideline「Treatment of Metastatic Colorectal Cancer」

原発巣による腸閉塞や出血には症状を改善する治療を行う

遠隔転移をすべて切除できない場合でも、大腸の原発巣が便の通り道を塞いだり、出血や穿孔を起こしたりしているときには、原発巣への処置が必要です。内視鏡で金属製のステントを入れて腸を広げる方法、人工肛門を造って便の流れを変える方法、問題となっている腸を切除する方法などから、緊急性と患者さんの体力に合うものを選びます。

これらは遠隔転移を根治する治療ではありませんが、腸閉塞や感染を防ぎ、食事や排便を安定させたうえで薬物療法へ進むために行われます。原発巣による症状がない場合には、予防目的で大腸を切除するよりも、全身の病気へ作用する薬物療法を優先することが一般的です。大きな手術を受けることで治療開始が遅れたり、術後の体力低下によって薬物療法を受けにくくなったりする可能性があるためです。

大腸がんステージ4に対する手術や局所治療は、転移があるから行えない治療でも、希望すれば誰でも受けられる治療でもありません。病変をすべて制御できる見込みと、治療後に保てる臓器機能、手術による負担を比較しながら判断します。完全に切除できた場合でも再発の可能性は残るため、手術後の経過観察と必要に応じた薬物療法まで含めて一つの治療計画として考える必要があります。

緩和ケア・支持療法 ― 治療を続けながら日常生活を支える医療

緩和ケアという言葉から、抗がん剤などの治療を終えた後に受ける医療を想像する人は少なくありません。しかし、緩和ケアは終末期だけのものではなく、がんと診断された時点から、手術や薬物療法と並行して受けることができます。痛みや吐き気といった身体症状だけでなく、将来への不安、仕事や治療費、家族との関係など、病気によって生じるさまざまな負担を和らげることが目的です。

抗がん剤の副作用を抑える制吐薬や下痢止め、栄養管理、ストーマケアなども含め、治療を無理なく続けるための医療全体を支持療法と呼びます。

大腸がんステージ4では、病気そのものによる症状と治療による副作用が重なり、日常生活へ影響することがあります。転移巣があっても体調が安定している時期には、仕事や外出を続けながら通院治療を受けられる患者さんもいますが、腸の狭窄による排便の変化、腹膜播種による腹部の張り、薬物療法による下痢やしびれが生活を制限する場合もあります。症状が悪化してから対処するより、軽いうちに医療者へ伝えた方が治療内容を調整しやすく、重症化を防げることもあります。

参考:緩和ケア|国立がん研究センター がん情報サービス

腸閉塞を疑う症状は早めの連絡が必要

大腸の原発巣や腹膜播種によって腸が狭くなると、便やガスが流れにくくなり、腸閉塞を起こすことがあります。便秘だけでなく、お腹の張りや波のある腹痛、吐き気、嘔吐、ガスが出ないといった症状が重なっている場合には、次の診察日まで待たずに治療施設へ連絡してください。完全に腸が詰まっている状態で自己判断によって下剤を増やすと、症状が悪化する可能性もあります。

腸が狭くなっている患者さんでは、食物繊維の多い食品を積極的に取ることが、かえって便の通過を妨げる場合があります。一般的な便秘対策としては食物繊維が勧められますが、大腸がんによる狭窄がある場合は事情が異なります。

食事内容や下剤の使い方は病変の位置や狭窄の程度によって変わるため、担当医や看護師、管理栄養士の指示に合わせる必要があります。ステント留置や人工肛門造設によって便の通り道を確保した方が安全と判断されることもあり、症状を落ち着かせることで薬物療法へ進みやすくなる場合があります。

人工肛門は治療を続けるために必要になることがある

人工肛門は、腸の一部をお腹の表面へ出し、便の出口を新たに作る処置です。ストーマとも呼ばれ、一時的に造設して後から閉鎖する場合と、その後も継続して使用する場合があります。直腸がんで肛門を残せない場合だけでなく、ステージ4大腸がんで腸閉塞を避け、早く薬物療法を始める目的で造設されることもあります。人工肛門を勧められたからといって、治療の手段がなくなったという意味ではありません。

ストーマを造設した後は、お腹へ装具を貼り、袋の中へ便をためて処理します。排便の時刻を完全に調整することは難しいものの、装具には防臭対策が施されており、状態が安定すれば仕事や旅行、入浴、無理のない運動も可能です。便漏れや皮膚のかぶれを防ぐには、体形や便の状態に合った装具を選び、正しい交換方法を身に付ける必要があります。皮膚・排泄ケア認定看護師などの支援を受けながら慣れていくことで、日常生活の負担を減らせます。

参考:大腸がん Q&A|国立がん研究センター がん情報サービス

食事は「がんに効くもの」より、体力を保てるものを優先

特定の食品や食事療法だけでステージ4大腸がんを治せるという科学的な根拠はありません。食事で重視したいのは、治療を続けるためのエネルギーやタンパク質、水分を確保し、急激な体重減少や筋力低下を防ぐことです。食欲が落ちている時期には、栄養バランスを完璧に整えようとして無理に一人前を食べるより、食べられるものを少量ずつ複数回に分けた方が負担を抑えられます。

下痢が続いているときは脱水に注意し、水分と塩分を補いながら、冷たい飲み物や脂肪の多い食品など、症状を悪化させるものを一時的に控えることがあります。口内炎や味覚の変化があれば、柔らかい料理や刺激の少ない味付けに変えることで食べやすくなることもあります。

口から十分な栄養を取れない場合には栄養補助食品を利用し、病状によっては経管栄養や点滴からの栄養補給を検討します。食べられないことを本人の努力不足と考える必要はなく、病気や治療による症状として早めに相談することが大切です。

参考:がんと食事|国立がん研究センター がん情報サービス

痛みや副作用は我慢せず、治療内容を調整

がんによる痛みには、一般的な鎮痛薬から医療用麻薬まで、痛みの強さや原因に合わせた薬を使用します。医療用麻薬は終末期だけの薬ではなく、がんによる痛みを抑えて睡眠や食事、外出をしやすくするために使われます。医師の指示どおりに使用する限り、依存を過度に心配して痛みを我慢する必要はありません。痛む場所や時間帯、薬を飲んだ後にどれくらい改善したかを記録しておくと、薬の種類や量を調整しやすくなります。

薬物療法による吐き気、下痢、手足のしびれ、皮膚症状、強い倦怠感も、治療を続けるために対処すべき症状です。副作用を伝えると薬を中止されるのではないかと心配する人もいますが、早めに申告することで、予防薬の追加、投与量の調整、一時的な休薬などを行いやすくなります。限界まで我慢して体力を失うより、生活への影響が小さい段階で調整した方が、その後の治療選択肢を保ちやすくなります。

心配事や生活上の問題も相談対象

ステージ4と診断された後は、病気や治療のことだけでなく、仕事を続けられるか、医療費をどう負担するか、家族へどのように伝えるかといった問題も生じます。こうした悩みは治療と切り離されたものではありません。眠れない状態や強い不安が続けば食欲や体力にも影響し、通院や服薬が負担になることがあります。

病院では、担当医や看護師に加え、緩和ケアチーム、薬剤師、管理栄養士、リハビリスタッフ、医療ソーシャルワーカーなどが支援に関わります。がん相談支援センターでは、治療中の生活、仕事、経済的な制度、在宅療養などについて、患者さん本人だけでなく家族も無料で相談できます。

緩和ケアは外来や入院中だけでなく、訪問診療や訪問看護を整えることで自宅でも受けられるため、通院が難しくなってから初めて考えるのではなく、早い段階から希望する生活について相談しておくこともできます。

大腸がんステージ4の治療では、腫瘍を小さくすることと同じように、食事や排便、睡眠、移動といった日常生活を保つことが重要です。つらさを我慢せず、症状がいつからどのように現れ、生活のどこへ影響しているかを伝えることで、治療と生活の両方を支える方法を検討しやすくなります。

参考:がん相談支援センターとは|国立がん研究センター がん情報サービス

大腸がんステージ4の生存率 ― 5年・10年の数字の受け止め方

大腸がんステージ4と診断されたとき、多くの患者さんやご家族が最初に知りたいのは「治療によってどれくらい長く生きられるのか」ということでしょう。生存率はその疑問を考えるための重要な資料ですが、一つの数字だけで個人の将来を予測できるものではありません。

大腸がんでは、肝臓や肺の転移をすべて切除できる患者さんと、複数の臓器へ病気が広がっている患者さんが同じステージ4に含まれるため、実際の経過には大きな幅があります。

国立がん研究センターの院内がん登録では、大腸がんの病期別ネット・サバイバルが公表されています。ネット・サバイバルとは、ほかの病気による死亡の影響をできるだけ除き、大腸がんが生命へ与える影響を推計した生存率です。

病期 5年ネット・サバイバル 10年ネット・サバイバル
ステージI 92.3% 79.2%
ステージII 85.5% 70.7%
ステージIII 75.5%  61.6%
ステージIV 18.3% 11.6%

※5年生存率は2014~2015年診断例、10年生存率は2012年診断例を対象とした院内がん登録の集計です。異なる時期に診断された別の患者集団であり、18.3%から11.6%へ同じ集団の生存率が低下したことを示す表ではありません。また長期の統計ほど新しい薬物療法や手術技術の影響が十分に反映されていない可能性があります。
参考:国立がん研究センター 院内がん登録生存率集計結果閲覧システム

表を見ると、ステージⅠからⅢまでは5年後にも多くの患者さんが生存している一方、遠隔転移を伴うステージⅣでは数字が大きく低下しています。

ただし、ステージ4の5年ネット・サバイバルが18.3%だからといって、診断された患者さんの余命が一律に決まるわけではありません。この数字には、転移を切除できた患者さん、薬物療法だけを受けた患者さん、体力の低下によって積極的な治療が難しかった患者さんなど、病状の異なる人がすべて含まれています。

結腸がんと直腸がんでも集計結果に違いがある

大腸がんは、結腸がんと直腸がんを合わせた呼び方です。2014~2015年診断例の5年ネット・サバイバルを見ると、ステージⅣの結腸がんは15.8%、直腸がんは23.1%でした。数値には差がありますが、この結果だけから「直腸がんの方が治りやすい」と判断することはできません。患者さんの年齢、転移の場所、手術を受けた割合、治療内容など、集計対象となった患者背景が異なるためです。

自分の病状を考える際には、大腸がん全体の数字よりも、原発巣が結腸と直腸のどちらにあるのか、どこへ転移しているのか、転移巣を切除できる可能性があるのかを確認する方が、治療方針の理解につながります。

参考:大腸がん 患者数(がん統計)|国立がん研究センター

転移をすべて切除できる場合、全体統計より良好な経過を期待できる

大腸がんステージ4の生存率を大きく左右するのが、原発巣と転移巣をすべて取り除けるかどうかです。肝臓や肺への転移が限られ、手術によって病変を完全に切除できる患者さんでは、ステージ4全体の18.3%という数字より良好な長期成績が報告されています。一部では10年以上再発なく経過し、治癒に近い状態へ至る患者さんもいます。

ただし、手術を受けた患者さんの生存率は、最初から病変の数や位置、体力などの条件が良く、切除可能と判断された人だけを集めた結果です。ステージ4全体の統計と単純に比較し「手術をすれば誰でも生存率が上がる」と受け取ることはできません。手術による利益が期待できるかは、病変をすべて制御できる見込み、残せる肝臓や肺の機能、ほかの臓器への転移の有無を確認したうえで判断します。

診断時には切除不能でも、抗がん剤や分子標的薬によって転移巣が縮小し、後から手術できる状態へ変わることがあります。治療中も定期的に画像検査を行うのは、薬が効いているかを調べるだけでなく、根治を目指す治療へ切り替えられる時期が来ていないかを確かめる意味もあります。

病気が広がっている範囲と治療を続けられる体力も経過へ影響する

同じステージ4でも、肝臓だけに転移している状態と、肝臓、肺、腹膜など複数の場所へ病気が広がっている状態では、治療の難しさが異なります。腹膜播種によって腸閉塞や腹水が起きている場合には、食事や栄養を維持しにくくなり、薬物療法を予定どおり続けられないこともあります。肝転移が広範囲に及び肝機能へ影響している場合にも、使用できる薬や投与量が限られる可能性があります。

日常生活をどの程度自分で送れているかを示すPerformance Statusや、体重、筋肉量、肝臓・腎臓の機能も治療選択に関わります。体力が保たれていれば、一次治療の後に二次治療、三次治療へ進みやすく、病気を長くコントロールできる可能性が高まります。年齢だけで治療の可否が決まるわけではなく、現在の生活状態や持病を含めて、治療による利益と負担を評価します。

遺伝子や免疫の特徴によって治療成績が変わる

大腸がんの一部には、MSI-HまたはdMMRという特徴があり、免疫チェックポイント阻害薬が長期間効く患者さんがいます。BRAF V600EやKRAS G12C、HER2などが確認された場合にも、それぞれを標的とする薬が治療候補になることがあります。これらの患者さんは大腸がん全体の中では少数ですが、従来は選択肢が限られていた病状にも専用の治療が加わり始めています。

一方で、標的となる遺伝子変異が見つからなくても、FOLFOXやFOLFIRIなどの抗がん剤と分子標的薬を順番に使用しながら、何年にもわたって病気をコントロールできる患者さんもいます。バイオマーカーだけで経過が決まるわけではなく、治療への反応、副作用を管理できるか、次の治療へ移れるかといった要素も重なって生存期間が変わります。

生存率は個人の余命を示す数字ではない

5年生存率が18.3%という数字は、5年後に18.3%の人だけが生きられると個人へ宣告するものではありません。過去の一定期間に診断された患者集団をまとめた結果であり、現在利用できるすべての治療や、これから登場する薬の効果まで反映しているわけではないからです。また、ステージ4と診断された時点で病変を切除できる人と、広範な転移を伴う人の数字も一緒に集計されています。

生存率は病気の厳しさを理解するために欠かせない情報ですが、自分の経過を考えるには、転移を切除できるか、病気がどこまで広がっているか、どの薬を使えるか、現在の体力を保てているかを併せて見る必要があります。統計を軽視するのでも、数字だけで将来を決めつけるのでもなく、自分がどの患者群に近いのかを主治医へ確認することが現実的です。

大腸がんステージ4の余命 ― 治療別の生存期間中央値の見方

大腸がんステージ4と診断された患者さんやご家族にとって、「あとどれくらい生きられるのか」は避けて通れない疑問です。インターネットでは「余命○年」と断定する情報も見られますが、実際の診療で使われるのは、個人の余命ではなく、臨床試験に参加した患者集団の『全生存期間中央値(Overall Survival:OS)』です。

大腸がんステージ4の経過は、転移を切除できるか、どの薬を使用できるか、治療開始時の体力が保たれているかによって大きく変わります。まずは、代表的な臨床試験で報告された全生存期間中央値を見てみましょう。

主な臨床試験で報告された全生存期間中央値

臨床試験 主な対象・治療段階 治療内容 全生存期間中央値(OS)
TRIBE試験 切除不能例の一次治療 FOLFOXIRI+ベバシズマブ 29.8か月
PARADIGM試験 RAS野生型・左側原発の一次治療 mFOLFOX6+パニツムマブ 37.9か月
KEYNOTE-177試験 MSI-H/dMMRの一次治療 ペムブロリズマブ 77.5か月
SUNLIGHT試験 標準治療後に病気が進行した患者 トリフルリジン・チピラシル+ベバシズマブ 10.8か月

※それぞれ対象患者、治療を始めた時期、遺伝子や免疫の特徴が異なるため、数値を横並びにして治療の優劣を判断することはできません。いずれも原則として、臨床試験の治療を始めた時点から数えた全生存期間であり、大腸がんと診断されてからの余命を示す数字ではありません。

表を見ると、一次治療の臨床試験では全生存期間中央値が約30~38か月に達する患者集団がある一方、MSI-H/dMMRという特徴を持つ患者では、ペムブロリズマブによる中央値が77.5か月、約6年半まで延びています。

反対に、複数の標準治療をすでに受けた患者を対象とするSUNLIGHT試験では10.8か月でした。この数字が短いのは治療そのものが劣っているからではなく、すでに複数の治療を受け、病気が進行した段階から計測されているためです。

参考:TRIBE試験|FOLFOXIRI+ベバシズマブとFOLFIRI+ベバシズマブの比較
参考:PARADIGM試験. JAMA. 2023.
参考:KEYNOTE-177試験 5年追跡解析. Annals of Oncology.
参考:SUNLIGHT試験. New England Journal of Medicine. 2023.

全生存期間中央値は「平均余命」ではありません

全生存期間中央値が29.8か月だった場合、29.8か月で全員が亡くなるわけではありません。治療を受けた患者を生存期間の短い順に並べたとき、中央に位置した人の期間を表しています。半数はそれより短い一方、残る半数は29.8か月を超えて生存していたことになります。

中央値が使われるのは、少数の長期生存者がいる場合でも、患者集団のおおまかな傾向を示しやすいためです。平均値は5年、10年と長く生存した患者の影響を強く受けますが、中央値はその影響を比較的受けにくくなります。それでも、中央値は個人の未来を予測する数字ではなく、同じ条件で治療を受けた患者集団を理解するための指標にすぎません。

もう一つ見落としやすいのが、数字を数え始める時点です。

PARADIGM試験やKEYNOTE-177試験の全生存期間は、原則として試験治療を開始した時点から計測されています。再発する前の治療期間や、別の薬を受けていた期間まで含めた「診断からの総生存期間」ではありません。SUNLIGHT試験の10.8か月も、複数の治療を終えた後にこの治療を始めてからの中央値であり、ステージ4と診断されてから10.8か月という意味ではありません。

同じステージ4でも数字が大きく違うのは、対象となる患者が異なるため

TRIBE試験のFOLFOXIRIは複数の抗がん剤を同時に使う強度の高い治療であり、治療に耐えられる体力と臓器機能を持つ患者が主な対象でした。すべての患者さんへ同じ治療を行えるわけではありません。

PARADIGM試験の37.9か月という数字も、大腸がんステージ4全体を示すものではありません。RAS遺伝子に治療を妨げる変異がなく、原発巣が左側にある患者に限った結果です。抗EGFR抗体薬の効果が期待しやすい条件を満たした患者集団であるため、ほかのタイプの大腸がんへそのまま当てはめることはできません。

KEYNOTE-177試験の77.5か月は、免疫療法が効きやすいMSI-H/dMMRという少数の大腸がんを対象とした結果です。非常に長い中央値ではありますが、ステージ4大腸がんの大部分を占めるMSS/pMMRの患者には、同じ結果を期待できません。数字を見る際には、治療名だけでなく、自分がその試験の対象条件に近いかを確認する必要があります。

転移を切除できる患者は当てはまらない

表に挙げた試験の多くは、原発巣と遠隔転移をすべて切除することが難しく、薬物療法を中心に治療する患者を対象としています。肝転移や肺転移が限られ、すべての病変を手術で取り除ける患者では、治療の目標も期待できる経過も異なります。

薬物療法で腫瘍が縮小し、後から根治切除へ移行できた場合にも、診断時の切除不能例だけを集めた中央値で将来を考えることはできません。前章で紹介したPARADIGM試験でも、左側大腸がんのパニツムマブ群では18.3%の患者がR0切除に進んでいます。薬物療法を続けることだけでなく、治療中に手術可能な状態へ変わっていないかを確認する意味がここにあります。

一方、複数の臓器へ病気が広がっている場合や、腸閉塞、腹水、肝機能低下などによって体力が大きく落ちている場合には、臨床試験の結果より厳しい経過になることもあります。多くの臨床試験では、一定の体力と臓器機能を保ち、決められた治療を受けられる患者が対象となるためです。

自分の余命を考えるときは「どの数字に近いか」を確認

主治医へ余命を尋ねても、明確な年数を答えられないことがあります。それは説明を避けているからではなく、診断時点では治療への反応や、その後に手術へ進めるか、二次治療以降を受けられるかまで分からないためです。

数字について相談するときは「これは診断時からの数字ですか、それとも現在の治療を始めてからの数字ですか」「自分はどの臨床試験の患者に近いですか」「肝転移や肺転移を切除できる可能性はありますか」と確認すると、統計と自分の病状を結び付けやすくなります。治療を始めた後は、画像上の縮小率、腫瘍マーカーの推移、食事や日常生活を維持できているかといった情報が加わり、見通しも少しずつ具体的になります。

大腸がんステージ4の余命は、ひとつの平均値で表すことができません。切除不能例の一次治療では2年半から3年以上の中央値が報告され、特定のタイプではさらに長い経過が示される一方、治療歴や全身状態によっては短くなることもあります。数字を曖昧にする必要はありませんが、どの患者集団から得られた数字なのかを理解せず、自分の余命として受け取ることも避ける必要があります。

大腸がんステージ4でも完治する可能性はあるのか

大腸がんステージ4は遠隔転移を伴う状態ですが、肝臓や肺などの転移を原発巣とともにすべて取り除ける一部の患者さんでは、根治を目指した治療が可能です。大腸がんステージ4全体の完治率を示す統一された数字はありませんが、特に切除可能な肝転移では、治療後10年以上にわたって再発せず、医学的にも治癒に近いと考えられる患者さんが実際に存在します。

ただし、これはステージ4の患者さん全体に当てはまる話ではありません。長期生存に関する多くのデータは、転移が限られ、すべての病変を安全に切除できると判断された患者さんを対象にしています。複数の臓器へ病気が広がっている場合や、切除しても十分な肝臓・肺の機能を残せない場合には、薬物療法による病勢コントロールが治療の中心になります。

転移を切除できた場合、どの程度の長期生存が報告されているか

根治を目指した治療の成績は、転移した臓器や病変の広がりによって異なります。以下の数値はいずれも、手術を受けられる条件を満たした患者さんの結果であり、ステージ4全体の生存率とは直接比較できません。

病状・治療 報告されている主な長期成績 数字を見る際の注意点
切除可能な肝転移の手術 5年生存率 25~40% 原発巣と肝転移を切除できると選択された患者が対象
肝転移切除後の長期追跡 実測10年生存率 約17~24%
観察上の治癒率 約17~20%
過去の単施設・選択症例を中心とした後ろ向き研究
肺転移切除後 メタ解析で5年生存率 54.1% 手術を受けた高度選択例の集計で、手術自体の利益には不確実性も残る
切除不能から薬物療法後に切除可能となった肝転移 当初から切除可能だった患者に近い5年成績が報告される場合がある 薬物療法がよく効き、完全切除へ進めた患者に限られる

米国国立がん研究所(NCI)のPDQでは、切除可能な肝転移を断端陰性で切除できた患者の5年生存率を25~40%とし、選択された転移切除例では5年治癒率が20%を超えると説明しています。ここでいう断端陰性とは、切除した組織の端を顕微鏡で調べてもがん細胞が確認されない状態です。日本では一般に「R0切除」と呼ばれ、根治を目指すうえで欠かせない条件になります。

参考:National Cancer Institute「Colon Cancer Treatment(PDQ)」

肝転移の手術後、10年以上再発しないケースもある

大腸がん肝転移を切除した612人を10年以上追跡した研究では、102人が実際に10年以上生存していました。割合にすると約16.7%です。10年生存者のうち99人は最終確認時にも病気がなく、10年を超えてから大腸がんで亡くなった患者は1人だけでした。研究者らは、この結果から「肝転移切除後に10年生存した患者は、実質的に治癒したと考えられる」と結論付けています。

別の長期追跡研究でも、肝転移切除後の実測10年生存率は24%、観察上の治癒率は20%と報告されました。これらの数字は、大腸がんステージ4でも完治に近い経過をたどる患者さんがいることを具体的に示しています。ただし、肝転移切除を受けた患者さんの中でも、がんの広がりや遺伝子の特徴、リンパ節転移、肝臓以外の病変などによって治療成績には大きな差があります。

参考:Tomlinson JS, et al. *Actual 10-year survival after resection of colorectal liver metastases defines cure.* Journal of Clinical Oncology. 2007.
参考:Viganò L, et al. *Actual 10-year survival after hepatic resection of colorectal liver metastases: what factors preclude cure?* Surgery. 2018.

R0切除ができても、再発の可能性は残る

画像に映る病変をすべて切除できても、体内に顕微鏡では確認できないほど小さながん細胞が残っている可能性があります。肝転移切除後の臨床試験では、5年時点で再発せずに生存していた患者の割合は約27~34%でした。言い換えると、多くの患者さんが手術後に何らかの再発を経験しており、R0切除がそのまま完治を保証するわけではありません。

再発した場合でも、病変が肝臓や肺の限られた範囲にとどまっていれば、再び切除できることがあります。手術、薬物療法、焼灼療法などを組み合わせながら再発を繰り返し治療し、その結果として長期生存へつながる患者さんもいます。最初の手術だけで治療が完結するとは限らず、再発後の治療まで含めて長期的に病気と向き合うことになります。

肺転移の切除でも長期生存例があるが、数字の解釈には注意が必要

大腸がん肺転移の手術に関する115研究、1万3,294人をまとめたメタ解析では、切除後の5年生存率は54.1%でした。病変が一つで2cm未満、胸部リンパ節転移がない、肺以外の転移歴がないといった患者さんでは、比較的良好な成績が報告されています。

一方、この分野の研究の多くは、手術を受けた患者さんの経過を後から調べたものです。病変が少なく、体力も保たれた患者さんが手術群へ選ばれているため、54.1%という数字を「手術をすれば半数以上が治る」と解釈することはできません。肺転移切除が生存期間をどこまで延ばすのかについては、質の高い比較試験が十分ではなく、手術の適応は慎重に判断されます。

参考:Gkikas A, et al. Preoperative prognostic factors for 5-year survival following pulmonary metastasectomy from colorectal cancer.* European Journal of Cardio-Thoracic Surgery. 2023.

最初は切除不能でも、後から根治手術へ進めることがある

肝転移が多い、重要な血管へ近い、切除後に残る肝臓が少ないといった理由で、診断時には手術できないと判断されることがあります。その後、抗がん剤や分子標的薬によって病変が縮小し、すべて切除できる状態へ変われば、コンバージョン手術を検討します。NCIは、このように薬物療法後に切除可能となった肝転移患者では、当初から切除可能だった患者に近い5年生存率が得られる場合があると説明しています。

ただし、腫瘍が縮小しただけで手術へ進めるわけではありません。画像上見えなくなった病変が本当に消失したとは限らず、肝臓の奥に微小ながんが残っている可能性もあります。薬物療法を続けることで肝機能が低下し、手術の負担が増すこともあるため、治療開始時から外科医が画像を確認し、手術へ切り替える時期を見極めることが大切です。

薬物療法だけで病変が消えた場合は「完治」と言えるのか

抗がん剤や免疫チェックポイント阻害薬によって、画像上すべての病変が消える『完全奏効』が得られる患者さんもいます。ただし、完全奏効は「検査で確認できるがんがなくなった状態」であり、体内からがん細胞が完全に消えたことを証明するものではありません。治療を中止できるか、どの程度の期間再発がなければ治癒と考えられるかについても、すべての患者さんへ共通する基準はありません。

MSI-H/dMMR大腸がんでは免疫療法が長く効く患者さんがいますが、これも長期の病勢コントロールと完治を同じ意味で捉えることはできません。病変が見えなくなった後も、定期的な画像検査や血液検査を続け、再発の有無を確認していきます。

大腸がんステージ4で完治を目指せる可能性が最も高いのは、原発巣と遠隔転移をすべてR0切除できる患者さんです。なかでも肝転移切除後には、10年以上病気のない状態を保ち、治癒したと考えられる患者さんが一定数存在します。その一方で、手術後の再発は多く、肺転移切除の成績には患者選択の影響も含まれています。「手術できるかどうか」だけではなく、すべての病変を取り切れるのか、手術後も十分な臓器機能を保てるのか、再発した際に次の治療を行えるのかまで含めた評価が必要です。

標準治療以外の選択肢 ― 治験・遺伝子パネル検査・自由診療

現在受けている薬が効かなくなったと言われても、それだけで大腸がんの治療がすべて終わるわけではありません。

大腸がんステージ4では、作用の異なる薬を順番に使う治療が一般的であり、一次治療の後には二次治療、三次治療、さらにその後の治療が残っている場合があります。最初の薬が効かなくなった時点で自由診療を探すのではなく、まず承認された標準治療の中に未使用の薬がないか、病変を局所治療できる余地がないか、遺伝子や免疫の検査結果から新たな候補が見つからないかを整理します。

医療でいう標準治療は「一般的で古い治療」ではありません。臨床試験によって効果と安全性が確認され、その時点で多くの患者さんに勧められる最良の治療です。「最新治療」という名称だけで標準治療より高い効果が期待できるわけではなく、新しい治療が標準治療になるには、従来の方法を上回る利益を臨床試験で示す必要があります。

参考:標準治療と診療ガイドライン|国立がん研究センター がん情報サービス

薬が効かなくなった理由と、病気の進み方を確認

画像検査で腫瘍が大きくなった場合でも、全身の病変が一斉に進行しているとは限りません。多くの病変は抑えられているものの、肝臓や肺の一部だけが大きくなっている場合には、その病変へ手術や放射線治療、焼灼療法などを行い、全身治療を継続できることがあります。反対に、複数の臓器で新しい病変が増えていれば、作用の異なる薬へ切り替える判断が中心になります。

病気の進行ではなく、副作用によって現在の治療を続けられない場合もあります。このときは、投与量を減らす、原因となる薬だけを外す、別の薬へ変更するといった調整が可能です。「今の治療を中止すること」と「治療そのものを諦めること」は同じではありません。治療効果が乏しいのか、体が薬に耐えられないのかによって、次に選ぶ方法は変わります。

RAS、BRAF、MSI/MMR、HER2、KRAS G12Cなどの検査が十分に行われていない場合や、診断時から時間がたち、病気の性質が変化している可能性がある場合には、保存されている組織の再検査や新たな生検、血液を使った検査が提案されることもあります。すでに標準治療として使える薬が見つかることもあれば、治験を探す手がかりになる場合もあります。

「治験」は効果と安全性を確かめている研究段階の治療

治験は、承認前の薬や新しい治療の組み合わせについて、効果と安全性を確認する臨床試験です。「標準治療がなくなった人だけの最後の手段」とは限らず、一次治療や二次治療の段階から参加できる試験もあります。大腸がんでは、新しい分子標的薬、免疫療法、抗体薬物複合体、既存薬の新しい組み合わせなどが研究されています。

参加できるかどうかは、遺伝子変異、これまで受けた治療、転移の状態、年齢、全身状態、肝臓や腎臓の機能などの条件で決まります。希望する薬の治験が見つかっても、条件に合わなければ参加できません。比較試験では治療群が無作為に決められることもあり、必ず新薬を受けられるとは限らないため、試験の目的と治療内容を理解したうえで参加を判断します。

国内のがん臨床試験は、国立がん研究センターの検索サービスから調べることができます。ただし、掲載情報が更新される前に募集が終了している場合や、実施施設が表示されていない試験もあります。自分で見つけた試験へ直接申し込むのではなく、試験情報を主治医へ見せ、病状や検査結果が参加条件に合うかを確認する進め方が現実的です。

参考:がんの臨床試験を探す|国立がん研究センター がん情報サービス

治験には全身状態や臓器機能の基準が設けられることが多いため、治療選択肢がほとんどなくなり、体力が大きく低下してから探し始めると参加が難しくなる場合があります。現在の治療が効きにくくなった段階で、次の標準治療と並行して治験の可能性を確認しておくと、選択肢を比較する時間を取りやすくなります。

がん遺伝子パネル検査で多数の遺伝子をまとめて調べることがある

がん遺伝子パネル検査は、一度に100以上の遺伝子を調べ、治療につながる遺伝子変化がないかを探す検査です。大腸がんで最初から調べるRASやBRAF、MSI/MMRなどの検査とは役割が異なり、標準治療がない、または終了した・終了が見込まれる進行がんなど、一定の条件を満たす場合に保険診療で検討されます。結果は複数の専門家による会議で評価され、使用できる薬や参加可能な治験がないかを確認します。

参考:がんゲノム医療 もっと詳しく|国立がん研究センター がん情報サービス

検査を受ければ、自分に合う薬が必ず見つかるわけではありません。国立がん研究センターのC-CATが公表した2022年6月30日までの集計では、検査を受けた患者さんの44.5%に新しい治療候補が提示された一方、その治療が比較的早期に実施された割合は9.4%でした。候補となる薬が国内で承認されていない、治験の参加条件に合わない、実施施設へ通えないといった理由で、結果が治療へ結び付かないこともあります。

参考:がんゲノム医療とがん遺伝子パネル検査|国立がん研究センター がんゲノム情報管理センター(C-CAT)

多数の遺伝子を調べる過程で、現在の大腸がんの治療とは別に、生まれつきがんになりやすい体質が示唆されることもあります。本人だけでなく血縁者にも関係する可能性があるため、結果をどこまで知りたいかを検査前に確認し、必要に応じて遺伝カウンセリングを受けます。

先進医療や患者申出療養は、自由に未承認薬を使える制度ではない

「先進医療」という名称から、標準治療より進んだ優れた治療を想像する人もいますが、制度上は将来の保険適用に向けて評価されている医療技術です。対象となる治療や実施施設はあらかじめ定められており、患者さんが希望し、医師が必要性と合理性を認めた場合に実施されます。先進医療に当たる部分の費用は全額自己負担となり、通常の診察や検査など保険診療と共通する部分には保険が適用されます。

参考:先進医療の概要について|厚生労働省

患者申出療養は、国内で承認されていない薬や適応外の治療について、患者さんの希望をきっかけに臨床研究として実施する制度です。一定の安全性や有効性が確認され、将来の保険適用を目指せる治療が対象となり、専門家による審査を受けます。希望した治療を必ず受けられる制度ではなく、申請や検討に時間がかかることもあり、保険適用外の薬や研究に必要な費用は自己負担となる可能性があります。

参考:厚生労働省 患者申出療養制度

これらの制度を利用できるか知りたい場合は、治療を受けたい施設へ直接連絡するより、まず主治医やがん相談支援センターへ相談し、対象となる治療の科学的根拠、実施施設、費用、申請に必要な期間を確認します。

自由診療は「保険外だから効果が高い」という意味ではない

自由診療とは、公的医療保険を使わず、原則として費用を患者さんが負担する診療です。海外では承認されているものの日本では未承認の薬を使用する治療から、免疫細胞療法、がんワクチン、サプリメントや食事療法まで、内容は大きく異なります。自由診療という区分そのものは、その治療の有効性や安全性を保証するものではありません。

検討する際には、その治療を受けた患者数、比較対象を置いた臨床試験の有無、腫瘍が縮小した割合だけでなく生存期間が延びたか、重い副作用がどれくらい起きたかを確認します。「学会で発表した」「大学と共同研究している」「症例報告がある」という説明だけでは、標準治療を上回る効果が証明されたことにはなりません。治療費についても、薬剤費だけでなく検査、診察、副作用が起きた際の対応、交通・宿泊、治療を継続した場合の総額まで確認しておく必要があります。

標準治療を中断して自由診療だけへ切り替える場合は、特に慎重な判断が求められます。効果が確立していない治療を受けている間に病気が進行し、後から標準治療へ戻ろうとしても、体力や臓器機能の低下によって受けられなくなる可能性があるためです。健康食品やサプリメントであっても、抗がん剤の作用を弱めたり、予期しない副作用を起こしたりすることがあるため、使用前に治療担当医や薬剤師へ内容を伝える必要があります。

参考:がんと民間療法|国立がん研究センター がん情報サービス

次の選択肢は、順番を付けて確認

現在の治療が効かなくなったときには、まず未使用の標準治療と局所治療の可能性を確認し、必要ならバイオマーカーの再評価を行います。そのうえで、参加できる治験やがん遺伝子パネル検査を検討し、患者申出療養や自由診療は、科学的根拠と費用を十分に確認してから判断します。複数の選択肢がある場合には、セカンドオピニオンを利用し、標準治療を続けた場合と新しい治療を選んだ場合の利益と不利益を比較する方法もあります。

標準治療で期待した効果が得られなかった経験は、患者さんやご家族にとって大きな落胆につながります。しかし、そこで焦って「最も新しい」「最も高額な」治療を選ぶ必要はありません。病気の状態、残されている標準治療、治験の条件、検査結果、生活で大切にしたいことを整理し、その時点で根拠と現実性のある選択肢を比較することが、次の治療へ進むための出発点になります。

大腸がんステージ4の最新治療

大腸がんの「最新治療」には、すでに日本で承認され、条件を満たせば保険診療で受けられる治療と、治験によって有効性や安全性を確かめている研究段階の治療が混在しています。新しい薬が次々と報道されると、標準治療より優れた方法がすぐに受けられるように感じるかもしれませんが、研究段階の治療は効果が確立しているわけではなく、参加できる患者さんにも細かな条件があります。

執筆時点での大きな変化は、以前は専用の薬がなかった遺伝子変異に対する治療が増え、複数の標準治療を受けた後にも選べる薬が広がっていることです。一方、免疫療法が効きにくいタイプへの新しい治療や、血液検査によって再発や薬剤耐性を早く見つける方法については、まだ研究が続いています。

治療・技術 2026年7月時点の位置付け 主に関係する患者さん
BRAF V600Eを標的とする治療 国内承認済み。一次治療から選択可能 BRAF V600E変異陽性
KRAS G12Cを標的とする治療 国内承認済み。標準的な薬物療法後に検討 KRAS G12C変異陽性
HER2を標的とするADC 条件を満たせば国内で使用可能 HER2陽性で標準治療が難しくなった患者
フルキンチニブ 国内承認済み。複数の治療後に検討 バイオマーカーを問わず、一定の治療歴がある患者
ctDNAによる血液検査 遺伝子変異の検索には実用化。微小残存病変に基づく治療変更は研究段階 組織採取が難しい患者、手術後の再発リスクを詳しく調べる患者
MSS/pMMRに対する新しい免疫療法 治験段階 一般的な免疫療法が効きにくいタイプ

BRAF V600E変異では、最初の治療から遺伝子変異を狙えるようになった

BRAF V600E変異を持つ大腸がんは、病気の進行が比較的速く、従来の抗がん剤だけでは十分な効果を得にくいタイプとして知られてきました。以前は、一次治療の後に病気が進行してからBRAF阻害薬を使用するのが一般的でしたが、2025年11月、日本でもエンコラフェニブ、セツキシマブ、mFOLFOX6を組み合わせる治療が一次治療から使用できるようになりました。

承認の根拠となったBREAKWATER試験では、腫瘍が一定以上縮小した患者の割合が新しい併用療法で60.9%、従来治療で40.0%でした。病気が進行せずに過ごせた期間の中央値も12.8か月対7.1か月となり、診断時からBRAF V600E変異を直接狙う意義が示されています。誰にでも使える治療ではありませんが、予後が厳しいと考えられていたタイプに、最初から専用の治療を選べるようになったことは大きな変化です。

参考:「BRAF V600E変異陽性結腸・直腸がんに対する一次治療の国内承認」小野薬品工業

KRAS変異の一部にも専用の治療が加わっている

RAS遺伝子に変異がある大腸がんでは抗EGFR抗体薬の効果が期待しにくく、長い間、変異そのものを狙う薬もありませんでした。しかし、KRAS変異の中でもG12Cという型については、KRAS G12C阻害薬と抗EGFR抗体薬を組み合わせる治療が開発されています。

日本では2025年、標準的な抗がん剤治療後に病気が進行したKRAS G12C変異陽性の大腸がんに対し、ソトラシブとパニツムマブの併用が承認されました。対象になるのはKRAS変異全体ではなくG12C型に限られますが、「RAS変異があれば専用の分子標的薬は使えない」という状況は少しずつ変わっています。

参考:「KRAS G12C変異陽性結腸・直腸がんに対するソトラシブ・パニツムマブ併用療法の国内承認」武田薬品工業

HER2陽性大腸がんでは、抗体薬物複合体が治療候補になる

一部の大腸がんでは、がん細胞にHER2というタンパク質や遺伝子の異常が認められます。HER2を標的とする治療には複数の選択肢がありますが、2026年3月には抗体薬物複合体であるトラスツズマブ デルクステカンが、一定のHER2陽性条件を満たす進行・再発固形がんへ適応拡大されました。

抗体薬物複合体は、がん細胞の目印へ結合する抗体に抗がん剤成分をつなぎ、標的となる細胞へ薬を届ける仕組みです。大腸がんでも、HER2遺伝子増幅や強いHER2発現が確認され、標準的な治療が難しくなった場合には候補となることがあります。ただし、HER2がわずかに発現しているだけで使用できるわけではなく、承認された検査で条件を満たしているかを確認しなければなりません。重い間質性肺疾患を起こす可能性もあるため、治療中に新しい咳や息切れ、発熱が現れた場合には早急な評価が必要です。

参考:「エンハーツのHER2陽性進行・再発固形がんへの国内適応拡大」第一三共

複数の標準治療後にも、経口薬の選択肢が増えている

遺伝子変異に対応する薬だけでなく、バイオマーカーを問わず検討できる後方治療も増えています。フルキンチニブは、がんが新しい血管を作る際に使うVEGF受容体の働きを抑える飲み薬で、日本では2024年に承認されました。フッ化ピリミジン、オキサリプラチン、イリノテカン、分子標的薬など、複数の標準治療を受けた後に病気が進行した患者が主な対象です。

参考:「フリュザクラの国内発売」武田薬品工業

国際共同第Ⅲ相試験のFRESCO-2では、フルキンチニブを開始してからの全生存期間中央値が7.4か月、プラセボ群では4.8か月でした。これはステージ4と診断されてから7.4か月という意味ではなく、複数の治療を受けた後に試験治療を始めた時点からの数字です。腫瘍を大きく縮小させることより、病気の進行を遅らせる役割を持つ薬であり、高血圧、強い疲労感、手足症候群などに注意しながら使用します。

参考:Dasari A, et al. FRESCO-2. The Lancet.

ctDNA検査は、治療標的を探す目的では実用化が進んでいる

がん細胞から血液中へ流れ出したDNAを調べる検査を、ctDNA検査またはリキッドバイオプシーと呼びます。腫瘍組織を採取するのが難しい場合や、病気が治療によって性質を変えた可能性がある場合に、血液からRASやBRAFなどの遺伝子変異を調べる目的で使われることがあります。

採血だけで繰り返し調べられることは大きな利点ですが、血液中へ十分な腫瘍DNAが出ていないと、実際には変異があっても検出されない場合があります。結果が陰性でも必要に応じて組織検査を追加するのは、この偽陰性を避けるためです。

参考:「ctDNA検査に関する推奨」ESMO

手術後の血液中にctDNAが残っているかを調べ、画像に映らない微小な病変や再発リスクを推定する研究も進んでいます。

肝転移や肺転移を根治目的で切除した後に、ctDNAの結果をもとに抗がん剤を強くする、減らす、早く再開するといった治療戦略が検討されていますが、2026年7月時点では、ctDNAだけを根拠に治療方針を決めることは一般的な標準診療にはなっていません。CT検査や腫瘍マーカーに代わる検査ではなく、既存の検査へ情報を加える技術として研究が続いています。

参考:ctDNA applications and integration in colorectal cancer: an NCI Colon and Rectal–Anal Task Forces whitepaper

免疫療法が効きにくいタイプへの研究も続いている

免疫チェックポイント阻害薬が高い効果を示しやすいのは、MSI-HまたはdMMRという特徴を持つ少数の大腸がんです。大腸がんの多くを占めるMSSまたはpMMRでは、免疫療法を単独で使用しても十分な効果が得られにくく、この壁を越えることが研究上の大きな課題になっています。

研究では、免疫療法へ抗がん剤や血管新生阻害薬を組み合わせる方法、一つの薬で免疫と血管新生の両方へ作用する二重特異性抗体、免疫細胞をがん細胞へ近づける抗体などが検討されています。RAS経路をより広く抑える次世代薬や、HER2以外の目印へ抗がん剤成分を届ける抗体薬物複合体も治験段階にあります。研究が行われていることと、効果が確立していることは同じではなく、MSS/pMMRの患者さんへ一般診療として勧められる新しい免疫療法はまだ限られています。

最新治療を調べるときは「承認済みか、治験段階か」を確認

最新治療という言葉だけでは、その治療を実際に受けられるかどうかは分かりません。日本で承認され保険診療として使える薬なのか、海外だけで承認されているのか、治験で効果を検証している段階なのかによって、利用条件や費用、予測できる副作用は大きく異なります。自分が対象になるかを判断するには、遺伝子検査の結果だけでなく、これまで受けた治療、病気の広がり、全身状態、治験を実施している施設へ通えるかまで確認する必要があります。

大腸がんの最新治療は、すべての患者さんへ同じ新薬を追加する方向ではなく、がん細胞の特徴を細かく分け、それぞれに合う治療を選ぶ方向へ進んでいます。以前は予後が厳しいと考えられていたBRAF V600E変異や、専用薬がなかったKRAS G12C変異にも治療が加わり、標準治療後の選択肢も広がりました。その一方で、研究段階の治療を過度に期待せず、現在利用できる標準治療を逃さないことも同じくらい重要です。

よくある質問(FAQ)

Q1. 大腸がんステージ4でも手術を受けられますか?

受けられる場合があります。肝臓や肺への転移があっても、大腸の原発巣と転移巣をすべて切除でき、手術後に十分な臓器機能を残せると判断されれば、根治を目指した手術が検討されます。診断時には切除できなくても、薬物療法で腫瘍が縮小した後に手術へ進めることもあります。

手術の可否は、転移の個数だけでは決まりません。病変の位置、重要な血管との関係、肝臓や肺に残せる機能、ほかの臓器への転移、患者さんの体力まで含めて判断します。手術の可能性がある場合は、大腸外科だけでなく肝胆膵外科や呼吸器外科など、転移先の手術を専門とする医師にも評価してもらうことが重要です。

Q2. 肝転移や肺転移があっても完治できますか?

一部の患者さんでは、原発巣と転移巣を完全に切除し、長期間再発しない状態を目指せます。大腸がんでは、選択された肝転移や肺転移の患者さんに対して、手術が根治の可能性を持つ治療になります。

ただし、手術を受ければ必ず完治するわけではありません。画像で確認できる病変をすべて切除しても、体内に微小ながん細胞が残っている可能性があり、手術後に再発する患者さんもいます。再発した病変が再び切除できる場合もあるため、手術後も定期的な画像検査と血液検査を続けます。

Q3. ステージ4と診断されたら、必ず人工肛門になりますか?

必ず人工肛門になるわけではありません。人工肛門が必要になるのは、主に腫瘍によって便の通り道が塞がれている場合、腸に穴が開く危険がある場合、直腸がんの手術で肛門を残すことが難しい場合などです。腸閉塞を避け、早く薬物療法へ進む目的で一時的な人工肛門を造ることもあります。

人工肛門には、一時的に造設して後から閉鎖できるものと、継続して使用するものがあります。装具の扱いに慣れ、状態が安定すれば、仕事、旅行、入浴、無理のない運動も可能です。食事にも原則として一律の禁止はありませんが、便の状態や腸の狭窄に合わせた調整が必要になる場合があります。

Q4. 食事で大腸がんを小さくできますか?

特定の食品や食事療法だけで、ステージ4大腸がんを縮小させたり治したりできるという信頼できる根拠はありません。標準治療の代わりに極端な糖質制限や断食、健康食品だけへ頼ると、体重や筋肉量が低下し、予定していた治療を受けにくくなるおそれがあります。

治療中の食事で優先したいのは、十分なエネルギー、水分、タンパク質を確保し、体力を保つことです。食欲がないときは少量を複数回に分け、食べられる食品を利用します。ただし、腸が狭くなっている場合には、一般には健康的とされる食物繊維の多い食品が腸閉塞の原因になることもあります。病変の状態に応じて、担当医や管理栄養士へ具体的な食事内容を確認してください。

Q5. 治療を受けながら仕事を続けられますか?

病状と仕事内容によりますが、外来で薬物療法を受けながら仕事を続けている患者さんもいます。治療日と副作用が強く出やすい日を把握し、在宅勤務、時差出勤、勤務時間の短縮などを利用することで、退職せずに治療を続けられる場合があります。

診断直後に仕事を辞めるかどうかを決める必要はありません。治療を始めてから体調の波を確認し、必要な配慮を勤務先と相談する方法もあります。病院のがん相談支援センターや医療ソーシャルワーカーでは、休職制度、傷病手当金、職場への伝え方などについて相談できます。2026年度からは、事業主による治療と仕事の両立支援が努力義務として位置付けられています。

Q6. お酒は飲んでもよいのでしょうか?

大腸がんになったからといって、すべての患者さんが必ず禁酒しなければならないわけではありません。ただし、抗がん剤による吐き気や下痢、脱水、肝機能障害がある時期には、飲酒によって症状が悪化する可能性があります。手術前後や治療直後も、飲酒を控えるよう指示されることがあります。

飲酒できる量は、治療内容、肝臓の状態、服用している薬によって異なります。以前と同じ量を飲んでよいとは限らないため、治療中は担当医や薬剤師へ確認してください。下痢が続いている場合には、アルコールが腸を刺激して症状を強めることもあります。

Q7. 運動や旅行をしても大丈夫ですか?

体調が安定し、主治医から制限を受けていなければ、散歩や軽い筋力運動などを続けることは可能です。無理のない運動は筋力や体力の維持に役立ち、治療中の生活を保ちやすくします。ただし、骨転移がある場合、手術直後、貧血や発熱がある場合には、運動内容を調整しなければなりません。

旅行も一律に禁止されるものではありませんが、治療日程、副作用が出やすい時期、緊急時の受診先を確認してから計画します。人工肛門があっても旅行は可能です。装具を多めに持参し、長距離移動では脱水や血栓を防ぐため、可能な範囲で水分補給と体を動かす時間を確保します。

Q8. セカンドオピニオンはどの時点で受けるべきですか?

治療方針の説明を受けたものの、肝転移や肺転移を切除できる可能性について確認したい場合、複数の治療選択肢が提示されて迷っている場合、治験を含めた次の治療を知りたい場合には、セカンドオピニオンが役立ちます。大腸がんステージ4では、転移巣の切除可能性やコンバージョン治療の判断に複数分野の専門性が必要になるため、専門施設の意見を聞く意味があります。

セカンドオピニオンは、転院を前提とした診察ではありません。現在の検査画像や病理結果を別の専門医に見てもらい、診断や治療方針について意見を聞く制度です。治療開始前だけでなく、薬が効かなくなり次の方針を考える時点も利用しやすいタイミングです。ただし、治療を急ぐ病状では時間的な制約があるため、いつまでに決める必要があるかを主治医へ確認しておきます。

Q9. 大腸がんは家族へ遺伝しますか?

大腸がんの多くは、親から子へ直接遺伝する病気ではありません。一方、ごく一部にはリンチ症候群や家族性大腸腺腫症など、生まれつき大腸がんになりやすい体質が関係するものがあります。若い年齢で発症した場合、血縁者に大腸がんや子宮体がんなどの患者さんが複数いる場合、複数のがんを経験している場合には、遺伝性腫瘍の評価が提案されることがあります。

治療選択のために調べるRASやBRAFなどの遺伝子変異は、多くの場合、がん細胞の中だけに生じた変化であり、そのまま家族へ遺伝するものではありません。MSI-H/dMMRが見つかった場合にはリンチ症候群が隠れている可能性もあるため、必要に応じて遺伝カウンセリングや血液を使った遺伝学的検査を行います。

Q10. 標準治療が効かなくなったら、もう治療法はありませんか?

現在の薬が効かなくなっても、作用の異なる標準治療へ切り替えられる場合があります。特定の病変だけが進行しているなら、手術や放射線治療を追加して、全身治療を続ける方法も検討されます。バイオマーカーを再評価し、BRAF V600E、KRAS G12C、HER2などに対応する治療が候補になることもあります。

標準治療の選択肢が少なくなった段階では、治験やがん遺伝子パネル検査も検討できます。ただし、自由診療を含む「最新治療」が標準治療より優れているとは限りません。現在残されている保険診療、治験の参加条件、期待できる効果と副作用を整理したうえで、次の選択肢を比較することが大切です。

大腸がんステージ4と向き合うために ― 納得できる治療を選ぶための考え方

大腸がんステージ4は、原発巣から離れた臓器や腹膜、遠隔リンパ節などへがんが広がった状態であり、決して治療が容易な病期ではありません。しかし、ステージ4という診断だけで治療の目的や将来が一つに決まるわけでもありません。

大腸がんステージ4の治療を考えるとき、最初に確認したいのは「一番強い薬は何か」ではなく、「すべての病変を切除できる可能性があるか」という点です。肝転移や肺転移を切除できるかどうかは、単純な個数だけでは判断できません。初回の診断だけで「生涯手術できない」と決まるものではない一方、腫瘍が小さくなっただけで必ず手術できるわけでもなく、完全に取り切れる見込みがあるかを慎重に判断する必要があります。

生存率や全生存期間中央値は、病気の厳しさや治療の進歩を理解するうえで欠かせない情報です。しかし、それらは一定の条件を満たした患者集団の結果であり、個人の余命をそのまま示すものではありません。数字を見ないようにする必要はありませんが「自分はその統計のどの患者群に近いのか」「数字は診断時から数えたものか、特定の治療を始めてから数えたものか」を確認しなければ、実際以上に悲観したり、反対に過度な期待を抱いたりすることがあります。

治療方針に迷いがある場合、セカンドオピニオンを利用することもできます。別の専門医へ相談することは、現在の担当医を否定する行為ではありません。今の方針が妥当であることを確認し、納得して治療へ進むためにも利用できます。ただし、腸閉塞や出血など急いで対応しなければならない病状では、意見を聞くために治療開始を長く遅らせないよう、相談できる期限を主治医へ確認しておく必要があります。

大腸がんステージ4は、根治を目指せる患者さんと、病気を長くコントロールすることを目標とする患者さんが同じ病期の中に含まれています。治療開始時の方針が途中で変わることもあり、一度の選択ですべてが決まるわけではありません。切除可能性を繰り返し評価し、遺伝子や免疫の特徴に合った薬を選び、副作用や生活への影響を調整しながら、その時点で現実的な選択を積み重ねていくことが大切です。

大腸がんは、日本人にとって非常に身近ながんの一つです。単に「患者数が多いがん」というだけでなく、現在の統計では、男女を合わせた罹患数で最も多いがんとして報告されています。

国立がん研究センターのがん統計によると、2023年に新たに大腸がんと診断された人は154,039例で、男性85,208例、女性68,830例でした。また、2024年の死亡数は54,416人とされています。5年相対生存率は71.4%と報告されていますが、この数字だけで「治りやすい」「治りにくい」と単純に判断することはできません。大腸がんは、発見された段階、がんの深さ、リンパ節転移の有無、遠隔転移の有無によって治療方針も予後も大きく変わるからです。

大腸がんが厄介なのは、初期には自覚症状が乏しいことです。便の調子が少し変わった、血が混じっている気がする、便秘や下痢が続いているといった変化があっても、多くの人はすぐにがんを疑いません。痔、食生活の乱れ、ストレス、年齢による体質変化だと考え、検査を後回しにしてしまうことがあります。

しかし、大腸がんは「症状が出てから考える病気」ではありません。むしろ、症状がはっきりしない段階で検査によって見つけるべき病気です。症状が出た時点で必ず進行しているわけではありませんが、症状をきっかけに見つかる場合は、すでに治療の選択肢が限られ始めていることもあります。

この記事では、大腸がんについて、単に「症状」「原因」「治療法」を並べるのではなく、なぜその症状が起こるのか、どの段階で治療方針が変わるのか、どのタイミングで検査や相談を考えるべきなのかまで掘り下げて解説します。

出典:国立がん研究センター がん統計「大腸」

  • 大腸がんは男女を合わせた罹患数が最も多いがん
  • 進行度、がんの深さ、転移の有無で治療方針も予後も大きく変わる
  • 症状をきっかけに見つかる場合は、すでに治療の選択肢が限られ始めていることもある

大腸がんとは何か

大腸がんは、結腸や直腸の粘膜から発生するがんです。大腸は食べ物の消化・吸収が進んだ後の内容物から水分を吸収し、便を形成して体外へ排出する役割を担っています。そのため、大腸に腫瘍ができると、便の通り道、排便リズム、出血、腸の動きに影響が出ることがあります。

多くの大腸がんは、ポリープの一種である腺腫が時間をかけてがん化することで発生すると考えられています。この「時間をかけて進む」という特徴は、早期発見の機会があるという意味では有利です。一方で、症状が出るまでに時間がかかるため、本人が異変に気づきにくいという問題もあります。

大腸の壁は、内側から粘膜、粘膜下層、筋層、さらに外側の層へと重なっています。大腸がんは最初、粘膜に発生しますが、進行すると壁の深い層へ入り込みます。国立がん研究センターのがん情報サービスでは、がんの深さが粘膜下層までにとどまるものを「早期がん」、粘膜下層より深いものを「進行がん」と説明しています。

この深さの違いは、単なる分類ではありません。治療が内視鏡で済む可能性があるのか、手術が必要になるのか、リンパ節転移の可能性を考える必要があるのかを左右します。つまり、大腸がんでは「がんがあるかどうか」だけでなく、「どこまで深く入り込んでいるか」が治療判断の中心になります。

参考:大腸がんファクトシート2024

大腸がんの原因とリスク

大腸がんは、ひとつの原因だけで発症する病気ではありません。生活習慣、加齢、遺伝的な要因、腸内環境などが複雑に関係します。

食生活との関係が語られやすいのは、大腸が食べ物の影響を長時間受ける臓器だからです。脂肪分の多い食事、食物繊維の不足、赤身肉や加工肉の摂取量、飲酒、喫煙、運動不足、肥満などは、リスク要因として考えられています。これらは単独で発症を決定するものではありませんが、長年積み重なることで腸内環境や炎症、代謝に影響し、発がんリスクを高める可能性があります。

大腸がんの遺伝的要因

一方で、生活習慣に大きな問題がなければ大腸がんにならない、というわけではありません。遺伝的な要因が関係する大腸がんもあります。日本大腸肛門病学会・大腸癌研究会関連の文献では、遺伝性大腸がんは大腸がん全体の約5%を占めるとされ、代表的なものとしてリンチ症候群や家族性大腸腺腫症が挙げられています。

約5%という数字だけを見ると少なく感じるかもしれません。しかし、遺伝性大腸がんでは若い年齢で発症したり、複数のがんが同時または時期をずらして発生したりすることがあります。家族に若年発症の大腸がんがいる場合や、大腸がん以外の関連がんが複数見られる場合は、一般的な生活習慣リスクとは別に、遺伝的背景を含めた相談が必要になることがあります。

自分のリスクを考えるときは、「生活習慣が乱れているか」だけで判断しない方がよいです。家族歴、年齢、過去のポリープの有無、便潜血検査の結果、排便習慣の変化などを合わせて見ることで、検査を受けるべきタイミングを判断しやすくなります。

参考:日本大腸癌学会(JSCCR)遺伝性大腸癌の臨床診療ガイドライン2024

大腸がんの主な症状と見逃されやすさ

大腸がんが見逃されやすい理由は、症状が特別ではないからです。血便、便秘、下痢、腹痛、便が細くなる、残便感、貧血、体重減少といった症状はありますが、どれも大腸がんだけに特有のものではありません。

血便は、腫瘍が粘膜を傷つけて出血することで起こります。ただし、痔でも血便は起こります。そのため、血が混じっていても「痔だろう」と考えてしまう人は少なくありません。問題は、痔と大腸がんを見た目だけで区別することが難しい場合があることです。とくに出血が繰り返される場合、便に血が混ざる状態が続く場合、排便習慣の変化を伴う場合は、自己判断で済ませない方が安全です。

便が細くなる、便秘と下痢を繰り返す、残便感が続くといった変化は、腫瘍によって腸の通り道が狭くなることで起こることがあります。腸の内側が狭くなると、便が通りにくくなり、形が変わったり、排便後もすっきりしない感覚が残ったりします。ただし、これも過敏性腸症候群や食生活の変化で起こることがあるため、本人は「いつもの不調」として処理してしまいがちです。

よくある見逃しの原因と判断基準

発生部位によって症状の出方が変わる点も、見逃しの原因になります。直腸やS状結腸など左側に近い部位では、便が固形に近いため、腫瘍による狭窄や出血が排便異常として現れやすくなります。一方、盲腸や上行結腸など右側の大腸では、便がまだ液状に近いため、腸が狭くなってもすぐには詰まりにくく、症状が出にくいことがあります。その場合、血便ではなく貧血や倦怠感として気づかれることもあります。

よく迷いやすいのは、「一度だけなら様子を見てもよいのではないか」という判断です。たしかに、一時的な便通異常や出血がすべて大腸がんを意味するわけではありません。しかし、大腸がんは初期症状が乏しく、症状に頼るほど発見が遅れやすい病気です。血便や排便習慣の変化が続く場合、あるいは40歳以上で検査を受けていない場合は、便潜血検査や内視鏡検査を含めた確認を考える段階です。

大腸がんの検査と診断

大腸がんは、症状だけで判断する病気ではありません。疑わしい症状がある場合も、症状がない場合も、最終的には検査によって確認します。

便潜血検査

検診として広く使われているのが便潜血検査です。便に目に見えない血液が混じっていないかを調べる検査で、症状が出る前の段階でも異常を拾い上げることができます。便潜血検査で陽性になった場合は、精密検査として大腸内視鏡検査が行われます。

ただし、すでに血便、便の細さ、便秘と下痢の反復、貧血、原因不明の体重減少などがある場合は、「まず便潜血検査で様子を見る」という考え方が適切でないことがあります。便潜血検査はスクリーニングには有用ですが、症状がある人の不安を解消するための最終確認ではありません。症状がある場合は、大腸内視鏡検査を含めた精密検査を検討する方が現実的です。

大腸内視鏡検査

大腸内視鏡検査では、大腸の内側を直接観察し、ポリープやがんが疑われる病変があれば、その場で組織を採取できます。採取した組織は病理検査で詳しく調べられ、がんかどうか、どのような性質の病変かが確認されます。がんと診断された場合には、CTやMRIなどの画像検査によって、がんの広がり、リンパ節転移、肝臓や肺などへの転移の有無を調べます。

検査の目的は、単に「がんかどうか」を知ることではありません。治療方針を決めるために、深達度、リンパ節転移、遠隔転移、遺伝子変異などを確認することが必要です。大腸がんの治療は、がんの進行度や遺伝子変異、本人の希望、生活環境、年齢、体の状態を総合的に検討して決めるとされています。

 

ステージ分類

大腸がんのステージは、治療方針を考えるための土台です。国立がん研究センター中央病院では、大腸がんのステージは、がんの壁深達度、リンパ節転移、遠隔転移の3つの因子を組み合わせて決まると説明しています。

ステージ0は粘膜内、ステージ1は固有筋層まで、ステージ2は固有筋層を超えて浸潤、ステージ3はリンパ節転移あり、ステージ4は他臓器への転移ありと整理されています。

ステージ別の治療方針

この分類は、単なる病名の細分化ではありません。ステージが変わると、治療の目的が変わります。

ステージ0や一部のステージ1では、がんが大腸の壁の浅い層にとどまっているため、内視鏡治療や手術で局所的に取り切ることを目指せます。

ステージ2ではリンパ節転移はないものの、がんが壁の深い層まで進んでいるため、手術後の再発リスクをどう評価するかが課題になります。

ステージ3ではリンパ節転移があるため、目に見える病変を手術で取るだけではなく、微小ながん細胞を抑える目的で術後補助化学療法が検討されます。

ステージ4では遠隔転移があるため、手術だけで完結するとは限らず、薬物療法、転移巣の切除可能性、放射線治療、緩和的治療を含めて方針を組み立てます。

ステージの数字がひとつ上がるということは、単に「少し悪くなる」という意味ではありません。内視鏡で済む可能性がある段階から手術が必要な段階へ、手術中心の治療から薬物療法を組み合わせる段階へ、根治を目指す治療から病状を抑えながら生活を維持する治療へと、考え方そのものが変わっていきます。

参考:大腸癌治療ガイドライン(医療者向け)

大腸がん治療の全体像

大腸がんの治療には、内視鏡治療、手術、薬物療法、免疫療法、放射線治療、緩和ケア・支持療法があります。治療はひとつを選んで終わりではなく、ステージ、切除可能性、転移の有無、遺伝子変異、体力、生活背景に応じて組み合わせて考えます。

国立がん研究センターのがん情報サービスでは、0期〜Ⅲ期ではまず切除できるかを判断し、切除できる場合には内視鏡治療または手術を行い、Ⅲ期または再発リスクが高いⅡ期では手術後に薬物療法を行うことがあると説明しています。Ⅳ期では、遠隔転移巣と原発巣が切除可能かどうかを見て治療方針を検討します。

治療の組み合わせについて

治療が複数に分かれる理由は、がんの広がり方が一様ではないからです。腸の内側にとどまる病変なら、内視鏡で切除できる可能性があります。腸の壁の深い部分やリンパ節転移の可能性がある場合は、手術で腸管とリンパ節を切除する必要があります。

目に見えない微小転移の可能性がある場合は、薬物療法によって再発リスクを下げることを考えます。直腸がんでは、骨盤内再発を抑える目的で放射線治療を組み合わせることがあります。転移や痛み、出血などの症状がある場合には、生活の質を守るための緩和的治療が必要になることもあります。

治療方針を理解するときは、「どの治療が一番よいか」と考えるより、「自分のがんはどこまで広がっていて、何を目的にその治療を行うのか」を確認する方が役立ちます。同じ大腸がんでも、早期がんとステージ4では治療の目的がまったく違います。

内視鏡治療

内視鏡治療は、大腸の内側から病変を切除する治療です。体への負担が比較的少なく、開腹手術に比べて回復が早い可能性があります。ただし、すべての早期がんが内視鏡で治療できるわけではありません。

国立がん研究センターのがん情報サービスでは、内視鏡治療の適応は、リンパ節転移の可能性がほとんどなく、技術的に一度で完全切除できる大きさと部位にある場合で、深さとしては粘膜下層への広がりが軽度、1mmまでにとどまるがんと説明されています。

内視鏡治療の適応

この1mmという基準は、患者にとって非常に大きな意味を持ちます。がんが浅い段階で見つかれば、内視鏡で切除して治療が完結する可能性があります。しかし、粘膜下層への浸潤が深くなると、リンパ管や血管を通じた転移の可能性が出てくるため、手術による追加切除が必要になることがあります。国立がん研究センター中央病院も、T1b以深では転移の可能性が出てくるため、基本的には外科治療の適応になると説明しています。

内視鏡治療の種類

内視鏡治療には、ポリペクトミー、EMR、ESDなどがあります。茎のあるポリープ状病変ではポリペクトミー、茎のない病変ではEMR、より大きく一括切除が必要な病変ではESDが選択されることがあります。EMRは病変の下に液体を注入して浮かせ、スネアで切除する方法です。ESDは粘膜下層を切開し、病変をはがし取る治療です。

内視鏡治療の合併症

負担が少ない治療とはいえ、合併症がないわけではありません。内視鏡治療後には、出血や穿孔が起こることがあります。出血が起これば血便、穿孔が起これば腹痛や発熱が見られる場合があります。多くは内視鏡で対応されますが、まれに手術が必要になることもあります。

内視鏡治療を受ける人が確認すべきなのは、「切除できるか」だけではありません。切除後の病理検査で、リンパ節転移や再発のリスクがないかを評価し、追加手術が必要になる可能性があるかを確認する必要があります。治療が終わったと思っていた段階で、病理結果によって方針が変わることがあるためです。

参考:国立がん研究センター がん情報サービス 大腸がん(結腸がん・直腸がん)治療

手術治療

内視鏡治療で十分に切除できない場合や、リンパ節転移の可能性がある場合には、手術が基本になります。手術では、がんがある腸管だけでなく、がんが広がっている可能性のある周囲の腸管やリンパ節も切除します。国立がん研究センターのがん情報サービスでは、がんが周囲の臓器まで及んでいる場合には、可能であればその臓器も一緒に切除すると説明されています。

手術が必要になる理由は、目に見える腫瘍だけを取ればよいわけではないからです。大腸がんはリンパ管や血管を通じて広がることがあり、腫瘍の周囲にあるリンパ節に小さな転移が隠れている可能性があります。そのため、手術では腸管とリンパ節を含めて切除し、再発リスクを下げることを目指します。

結腸がんの手術

結腸がんの手術では、がんの周囲にあるリンパ節も同時に切除するため、がんのある部位から口側・肛門側に一定の距離をとって腸管を切除します。部位によって、回盲部切除、結腸右半切除、横行結腸切除、結腸左半切除、S状結腸切除など方法が変わります。

直腸がんの手術

直腸がんでは、さらに複雑な判断が必要になります。直腸は骨盤内の深く狭い場所にあり、周囲には膀胱、前立腺、子宮、卵巣などがあります。肛門に近いがんでは、がんを取り切ることと肛門機能を残すことのバランスが問題になります。がんの位置や深さによっては、肛門を温存できることもありますが、永久的な人工肛門が必要になる場合もあります。

人口肛門・ストーマ

人工肛門、つまりストーマは、患者にとって非常に大きな心理的負担になりやすいものです。しかし、国立がん研究センターの説明では、ストーマ袋には防臭加工があり、扱いに慣れれば外出、軽い運動、入浴も可能とされています。ストーマ自体には痛みを伝える神経がないため、触れたり排泄したりするときに痛みを感じることはありません。

それでも、ストーマが生活に与える影響は小さくありません。服装、外出、仕事、旅行、睡眠、入浴、性生活など、患者が不安に感じる場面は多くあります。治療方針を考えるときには、がんを取り切れる可能性だけでなく、術後の生活をどのように支えるかまで確認する必要があります。

手術後の合併症

手術後には、縫合不全、創感染、腸閉塞などの合併症が起こることがあります。縫合不全では、腸をつなぎ合わせた部分から内容物が漏れ、発熱や腹痛を伴う腹膜炎につながることがあります。腸閉塞では、便やガスが出にくくなり、腹痛、吐き気、嘔吐が起こることがあります。

手術は「がんを取る治療」であると同時に、術後の回復、排便機能、ストーマ管理、合併症への対応まで含めた治療です。患者が医師に確認すべきなのは、手術名だけではありません。どこをどれだけ切除するのか、リンパ節郭清の範囲、人工肛門の可能性、一時的か永久か、術後の排便機能、仕事復帰の目安、合併症リスクまで確認することで、治療後の生活を具体的に想像しやすくなります。

参考:ストーマ(人工肛門)について|WOC支援室|がん研有明病院

薬物療法:抗がん剤・分子標的薬・免疫チェックポイント阻害薬

大腸がんの治療を考える上で、薬物療法を軽く扱うことはできません。薬物療法は、手術後の再発予防にも、切除が難しい進行・再発大腸がんにも使われます。

国立がん研究センターのがん情報サービスでは、大腸がんの薬物療法には、手術でがんが取り切れた場合に再発を防ぐ目的で行う補助化学療法と、手術で取り切ることが難しい場合に症状を緩和し、進行を抑える目的で行う切除不能進行・再発大腸がんに対する薬物療法があると説明されています。

また、大腸がんで使う薬は、細胞障害性抗がん薬、分子標的薬、免疫チェックポイント阻害薬に大きく分けられます。

再発を防ぐための補助化学療法

補助化学療法は、手術で目に見えるがんを取り切れた後に、再発を防ぐ目的で行われます。とくにステージⅢで体の状態がよい場合に推奨され、ステージⅡでも再発リスクが高い場合には検討されます。治療期間は一般的に6カ月ですが、がんの状態や薬の種類によっては3カ月の場合もあります。

この治療で患者が理解しておきたいのは、「手術で取れたのになぜ抗がん剤を使うのか」という点です。理由は、画像検査や手術で見えない微小ながん細胞が残っている可能性があるためです。

補助化学療法は、今ある症状を改善するためというより、将来の再発リスクを下げるための治療です。そのため、治療中に「効いている実感」が得られにくい一方で、副作用は実際に感じることがあります。このギャップが、患者にとって大きな負担になります。

進行・再発した大腸がんに対する薬物療法

切除不能進行・再発大腸がんに対する薬物療法では、目的が少し変わります。がんを完全に取り切ることが難しい場合、治療の目的は、がんの進行を抑えること、症状を軽減すること、生活の質を保つことになります。薬物療法によってがんが小さくなれば、後から手術で切除できるようになることもあります。

進行・再発大腸がんの薬物療法では、一次治療から始まり、効果が落ちた場合や副作用で続けにくい場合には、二次治療、三次治療へと進みます。

どの段階まで治療を行うかは、体力、臓器機能、副作用、生活の希望によって変わります。国立がん研究センターは、治療適応を判断する際、自分で歩いて身の回りのことを行う体力があるか、肝臓や腎臓などの主な臓器機能が保たれているか、他に重い病気がないかを参考にすると説明しています。

大腸がんの遺伝子検査

近年の大腸がん治療では、遺伝子検査の役割も大きくなっています。RAS遺伝子、BRAF V600E、MSI/MMR-IHCなどの検査結果によって、使える薬や優先される治療が変わります。MSI-High/dMMRではない場合は、細胞障害性抗がん薬と分子標的薬の併用が検討され、MSI-High/dMMRの場合は免疫チェックポイント阻害薬が一次治療で使われることがあります。

薬物療法について医師に確認すべきなのは、薬の名前だけではありません。治療の目的が再発予防なのか、進行抑制なのか、症状緩和なのか。どのくらいの期間続ける想定なのか。効果判定はどの検査で、どのタイミングで行うのか。副作用が強い場合に薬の変更や休薬、減量が可能なのか。遺伝子検査の結果が治療選択にどう関係しているのか。これらを確認することで、治療を「受けるもの」ではなく、自分の生活と照らし合わせて選ぶものとして理解しやすくなります。

参考:国立がん研究センター がん情報サービス 大腸がん(結腸がん・直腸がん)治療

放射線治療

大腸がん、とくに結腸がんでは、放射線治療が中心になることは多くありません。しかし直腸がんでは、骨盤内再発を抑える目的で放射線治療が使われることがあります。また、進行・再発がんでは、痛み、出血、便通障害、転移による症状を和らげる目的で緩和的放射線治療が行われることがあります。

国立がん研究センターは、大腸がんの放射線治療には、主に直腸がんの骨盤内再発を抑える目的で行う補助放射線治療と、痛みや吐き気、嘔吐、めまいなどの症状を和らげる目的で行う緩和的放射線治療があると説明しています。切除可能な直腸がんでは、手術前に薬物療法と一緒に放射線治療を行うことがあり、緩和的放射線治療では、骨盤内腫瘍による痛みや出血、便通障害、肝転移・肺転移・脳転移・骨転移に伴う症状に対して照射が行われることがあります。

放射線治療を考えるときは、「がんを治すための治療なのか」「再発を抑えるための治療なのか」「症状を和らげるための治療なのか」を区別する必要があります。同じ放射線治療でも、目的が違えば、期待する効果も、受け止め方も変わります。

放射線治療の副作用

副作用も照射部位によって異なります。治療期間中に起こる副作用として、だるさ、吐き気、嘔吐、食欲低下、白血球減少、腸炎、皮膚炎、膀胱炎などがあります。腹部や骨盤に照射する場合は、下痢や腹痛が見られることがあります。治療後しばらくしてから、腸管や膀胱からの出血、潰瘍、穿孔、瘻孔、頻回の排便、腸閉塞などが起こることもあります。

患者が放射線治療について確認すべきなのは、照射の目的、照射範囲、治療期間、通院頻度、仕事や日常生活への影響、早期副作用と晩期副作用の違いです。直腸がんでは、手術、薬物療法、放射線治療が組み合わさることで治療期間が長くなることがあり、生活設計にも関わります。

免疫療法と「効果が証明された治療」の見分け方

免疫療法という言葉は、患者にとって希望を感じやすい一方で、慎重に理解する必要があります。国立がん研究センターのがん情報サービスでは、2025年3月現在、大腸がんに効果があると証明されている免疫療法は、MSI-High/dMMRの場合と、腫瘍遺伝子変異量高スコア(TMB-High)の場合に免疫チェックポイント阻害薬を使用する方法のみと説明しています。その他の免疫療法で、大腸がんに対して現時点で標準治療として有効性が確立しているものは限られています。

この情報は、治療を探している患者にとって非常に大きな意味を持ちます。進行がんや再発がんでは、患者や家族が「標準治療以外に何かないか」と考えるのは自然です。しかし、免疫療法と呼ばれるものの中には、科学的に有効性が確認されているものと、十分に証明されていないものが混在しています。

判断するときは、「免疫療法」という名前だけで選ばないことが必要です。自分のがんがMSI-High/dMMRなのか、TMB-Highなのか、免疫チェックポイント阻害薬の適応があるのかを確認することが先です。根拠が十分でない治療を高額な自費診療で受ける前に、標準治療の中で使える選択肢がないか、がんゲノム医療やセカンドオピニオンで確認することが、後悔を減らす判断につながります。

治療の副作用と生活への影響

副作用は、医学的には「治療に伴う望ましくない作用」と説明されます。しかし患者にとっては、単なる症状の一覧ではありません。食べられるか、眠れるか、働けるか、外出できるか、家族との生活を維持できるかという現実の問題です。

薬物療法では、だるさ、吐き気、嘔吐、食欲不振、下痢、便秘、口内炎、しびれ、手足症候群、白血球減少、血小板減少、貧血、肝機能や腎機能の悪化などが問題になることがあります。副作用の種類や程度によっては、治療を継続できなくなることもあるため、治療開始前に、いつどのような副作用が起こりやすいか、どの症状に特に気をつけるべきかを確認しておく必要があります。

吐き気や食欲不振が続くと、食事量が減り、体重や筋力が落ちます。体力が落ちると、治療を続ける余力も下がります。倦怠感が強いと、仕事や家事、通院そのものが負担になります。しびれが出ると、文字を書く、箸を使う、ボタンを留める、階段を上るといった日常動作に影響します。下痢や便秘が続けば、外出や睡眠にも影響します。

副作用があるから治療を避けるべき、という話ではありません。副作用をどう管理するかが、治療を続けるうえで重要になります。薬の量を調整する、休薬期間を設ける、支持療法を使う、生活上の工夫を取り入れることで、治療を継続しやすくなる場合があります。

治療を受ける人が確認すべきなのは、「副作用はありますか」では不十分です。自分の治療で起こりやすい副作用は何か、いつ出やすいか、どの症状が出たらすぐ連絡すべきか、仕事は続けられるか、食事や運動はどう調整すべきか、しびれなどが残る可能性はあるかまで確認すると、治療中の生活を具体的に準備できます。

ステージ別の予後

大腸がん全体の5年相対生存率は71.4%と報告されています。 ただし、この数字だけで自分の見通しを判断することはできません。大腸がんの予後は、ステージによって大きく異なります。

ステージ0~Ⅰ期

ステージ0やステージ1では、がんが粘膜内または比較的浅い層にとどまり、リンパ節転移や遠隔転移がない状態です。この段階で見つかれば、内視鏡治療や手術によって根治を目指せる可能性が高くなります。治療後も定期的なフォローは必要ですが、治療の目的は「取り切ること」に置かれます。

ステージⅡ期

ステージ2では、がんが大腸の壁の深い部分まで進んでいるものの、リンパ節転移は認めない段階です。基本は手術で切除を目指しますが、再発リスクが高い所見がある場合には術後補助化学療法が検討されます。同じステージ2でも、腫瘍の深さ、病理所見、閉塞や穿孔の有無、患者の体力によって、術後治療の判断は変わります。

ステージⅢ期

ステージ3では、リンパ節転移があるため、手術だけでは再発リスクが残ります。この段階では、手術で原発巣とリンパ節を切除した後、再発予防のために補助化学療法が検討されます。治療期間が長くなり、副作用と生活の両立も課題になります。患者が理解しておきたいのは、ステージ3は「もう手遅れ」という意味ではなく、再発リスクを下げるために集学的治療が必要になる段階だということです。

ステージⅣ期

ステージ4では、肝臓、肺、腹膜、骨、脳などへの遠隔転移がある状態です。治療の目的は症例によって大きく変わります。転移巣が切除可能であれば、原発巣や転移巣の切除を検討することがあります。手術で切除できない場合でも、薬物療法によってがんが小さくなり、後から切除可能になることもあります。

一方で、病状によっては、がんを完全に取り切ることよりも、進行を抑え、症状を和らげ、生活の質を維持することが治療の中心になることもあります。国立がん研究センターのがん情報サービスでも、Ⅳ期では遠隔転移巣と原発巣が切除できるかどうかで治療方針を検討すると説明されています。

数字を見るときは、平均値だけで判断しないことが必要です。全体の5年相対生存率は、大腸がん全体をまとめた数字です。実際の見通しは、ステージ、発生部位、転移部位、切除可能性、遺伝子変異、治療反応性、年齢、体力、合併症によって変わります。生存率は不安を煽るための数字ではなく、自分の状態に近い情報を医師に確認し、治療方針を理解するための材料として使うべきです。

参考:国立がん研究センター がん統計「大腸」

標準治療の限界

標準治療は、現時点で有効性と安全性が確認されている治療の基本です。大腸がんでも、ステージや遺伝子変異、切除可能性に応じた標準治療が整理されています。ただし、標準治療があることと、すべての患者に同じように効果が出ることは別です。

進行がんや再発がんでは、薬物療法を行っても効果が十分に出ないことがあります。最初は効いていても、時間が経つと効果が弱くなることがあります。副作用が強く、治療を続けることが難しくなることもあります。体力や臓器機能の低下によって、強い薬物療法が適応にならない場合もあります。

標準治療の限界に直面したときに考えるべきなのは、「もう治療法がない」とすぐに結論づけることではありません。治療の目的を見直す、レジメンを変更する、遺伝子検査の結果を確認する、免疫チェックポイント阻害薬の適応を確認する、症状緩和を重視する、セカンドオピニオンを受けるなど、状況を整理する方法があります。

一方で、根拠の乏しい治療に飛びつくことにも注意が必要です。特に「免疫を高める」「副作用がない」「末期でも治る」といった表現で紹介される治療の中には、大腸がんに対する有効性が十分に証明されていないものもあります。標準治療に限界を感じたときほど、治療の根拠、適応、費用、期待できる効果、生活への影響を冷静に確認する必要があります。

大腸がんの治療選択の考え方

大腸がんの治療選択では、医師が提案する治療を理解することと、自分が何を重視するかを整理することの両方が必要です。

治療方針は、がんのステージ、深達度、リンパ節転移、遠隔転移、遺伝子変異、切除可能性、年齢、体力、併存疾患、生活環境によって変わります。国立がん研究センターのがん情報サービスでも、治療は標準治療を基本としつつ、本人の希望や生活環境、年齢を含めた体の状態などを総合的に検討して担当医と話し合って決めるとされています。

治療を受けるリスク・受けないリスク

患者側が迷いやすいのは、「医師に勧められた治療を受けるべきか」「副作用が怖いが受けないと後悔するのではないか」「他の選択肢があるのではないか」という場面です。このとき、治療を受けるかどうかだけで考えると、判断が苦しくなります。まず、その治療の目的を確認することが必要です。根治を目指す治療なのか、再発予防なのか、進行抑制なのか、症状緩和なのか。目的が違えば、受け入れるべき負担の意味も変わります。

次に、治療を受けた場合と受けなかった場合の見通しを確認します。手術をしない場合に腸閉塞や出血のリスクが高まるのか。補助化学療法を行うことで再発リスクがどの程度下がると見込まれるのか。薬物療法を続けることで生活の質は維持できるのか。副作用が強い場合に代替案はあるのか。

治療選択では、「正しい治療を一つ選ぶ」というより、「自分の病状と生活に合う選択肢を理解する」ことが現実的です。納得できないまま治療を始めると、途中で副作用が出たときに迷いが大きくなります。逆に、治療の目的と負担を理解していれば、つらい時期があっても医師と相談しながら調整しやすくなります。

納得できる治療を選択するために

大腸がんは、早期に発見できれば治療の選択肢が広がる一方で、症状に頼ると発見が遅れやすいがんです。便の変化、血便、便秘や下痢の反復、貧血、体重減少などは、必ず大腸がんを意味するわけではありません。しかし、自己判断で長く放置してよい症状でもありません。

無症状であっても、年齢や家族歴、過去のポリープの有無によっては、定期的な検査が必要です。症状がある場合は、便潜血検査だけで安心せず、内視鏡検査を含めた精密検査を検討する方が現実的です。すでに診断を受けている場合は、ステージ、深達度、リンパ節転移、遠隔転移、遺伝子検査、治療の目的を確認することで、治療方針を理解しやすくなります。

治療では、内視鏡、手術、薬物療法、免疫チェックポイント阻害薬、放射線治療、緩和ケア・支持療法などが、病状に応じて組み合わされます。内視鏡や手術だけでなく、補助化学療法、進行・再発がんに対する薬物療法、副作用管理、生活への影響まで含めて考えることが必要です。

治療に迷ったときは、「どの治療が有名か」ではなく、「自分の状態では何を目的に行う治療なのか」を確認してください。今の治療でよいのか、他の選択肢があるのか、副作用をどう管理できるのか、生活をどこまで維持できるのか。こうした疑問を整理して相談することが、納得できる治療選択につながります。

腹膜播種(ふくまくはしゅ)とは、がんが腹膜に広がることで起こる転移の一種です。

お腹の中にがん細胞が広がるため、進行すると様々な症状が現れ、治療や予後にも大きな影響を及ぼします。この記事では、腹膜播種の原因や初期症状、診断方法、そして完治の可能性についてわかりやすく解説します。

  • 早期発見が非常に難しいがんの一つ。
  • がん種に応じて様々な遺伝子が高確率で変異を起こしている。
  • 適切な治療をすることで完治が見込める。

腹膜播種とは

出典:腹膜播種とは|日本腹膜播種研究会

腹膜播種とは、元々のがん(原発巣)からがん細胞がお腹の中に脱落した後、腹膜と呼ばれるお腹を覆う膜に定着して増殖し、小さな腫瘍ができた状態です。原発巣としては、胃、大腸、膵臓、卵巣など全身の様々な臓器が報告されています。

腹膜播種の状態になっても初期には症状が現れにくいですが、進行すると腹部膨満(お腹が張る)、腹痛、食欲不振、吐き気などの症状が出現します。

腹膜播種が現れると、原発巣のがん種によっても予後や余命が異なります。例えば胃がんであれば約7ヶ月ですが、卵巣がんでは5年生存する患者様が約半数と報告されています。

参考:
胃癌腹膜播種に特化したアンチセンス核酸医薬開発|AMEDfind
院内がん登録生存率集計結果閲覧システム 卵巣がん(卵巣癌)|国立がん研究センター

腹膜播種の原因

腹膜播種が発生する原因は、もともとの癌が体のどこかにあることです。このような癌が発生する原因としては、がん種にもよりますが、大きな原因の1つとして「遺伝子変異」があげられます。

遺伝子とは、細胞を作るための情報がつまった部分ですが、この遺伝子が異常になると遺伝子変異が起こり、がんを発症すると報告されています。

腹膜播種を引き起こす胃がんや大腸がん、膵臓がん、卵巣がんで頻度が高い代表的な遺伝子変異としては、「KRAS」「TP53」などがあげられます。

参考:
KRAS, TP53, CDKN2A, SMAD4, BRCA1, and BRCA2 Mutations in Pancreatic Cancer|MDPI
Comprehensive molecular characterization of gastric adenocarcinoma|nature
The consensus molecular subtypes of colorectal cancer|nature

腹膜播種の診断

腹膜播種は早期発見が非常に難しいがんの一つであり、診断には腫瘍マーカーを測定する血液検査や、お腹の中である腹腔内を観察する画像検査や腹腔鏡検査など複数の手法を組み合わせて行われます。

腹膜播種は微細な結節で見つけにくいことも多く、正確な診断には工夫と複数の検査の組み合わせが必要です。

血液検査では、腫瘍マーカーと呼ばれるそれぞれのがんで異常を認めやすいタンパク質などを測定します。画像検査では、造影CT検査・MRI検査・PET検査・超音波検査などを行います。また、腹腔内を直接観察する腹腔鏡検査や、腹水が貯留している場合は、腹水内に含まれるがん細胞を採取して顕微鏡検査を行う場合があります。

患者様の状態によって実施すべき検査が異なりますので、具体的には主治医の先生と相談して検査内容や種類を決定していくのがおすすめです。

腹膜播種の一般的な治療法

腹膜播種に対して実施される一般的な保険診療での治療としては、完治(根治)できる状態であれば、手術を行います。ただし、元々のがん種によって治療法が異なり、腹膜播種が少しでもあれば外科的な手術は適応がないとして化学療法などの薬物療法や放射線療法を行う施設もあります。

また、手術も患者様の体に負担をかけるため、ある程度体力があることが望まれます。
そのため、体力があまり無い患者様や、様々な病気をお持ちで手術が危険だと判断される患者様には手術の対象とならない場合があります。

さらに、手術で目に見える範囲の腹膜播種を切除できたとしても、目に見えない微小病変が残っていることで再発リスクが高い状態です。例えば、胃がんであれば腹膜播種が少量しか認めない場合でも約30~50%、大腸癌であればごくわずかな腹膜播種しか認めない患者様で約20~30%、卵巣がんでは約30~70%と報告されています。

このように、手術後も再発リスクが高いため、手術後に再発しないように抗がん剤治療が勧められるケースが多いです。ただし、抗がん剤治療にはつらい副作用もあるため、体力があまり無い患者様や副作用が心配な患者様には実施できません。

また、腹膜播種が発見されて手術を実施できない患者様には、抗がん剤治療などの化学療法や抗がん剤を直接腹腔内に注入する腹腔内化学療法を実施します。このような治療を組み合わせることで寛解を目指せることもあります。

以上のような点から、腹膜播種は難治性のがんの状態だということが分かります。

参考:
Peritonectomy procedures|PubMed
A comprehensive treatment for peritoneal metastases from gastric cancer with curative intent|PubMed
A comprehensive overview of ovarian cancer stem cells: correlation with high recurrence rate, underlying mechanisms, and therapeutic opportunities|BMC

 

腹膜播種は寛解が期待できる状態

腹膜播種は寛解を見込める状態です。

腹膜播種が発見された時にはすでに元あるがんから転移を起こしている状態であるため、いわゆる進行がんの状態ではありますが、様々な化学療法や手術、放射線療法などを組み合わせることで治癒も十分に期待できます。

また、がん中央クリニックグループでは、患者様の状態や目的に応じて、核酸医薬(アプタマー、RNA干渉、miRNA mimic)を治療計画の一部としてご提案しています。ぜひ一度お問い合わせください。

腹膜播種に対する保険診療の限界

腹膜播種に対する保険診療には、化学療法や手術、放射線療法などがあります。手術法の発達や化学療法・放射線療法の進歩といった医療界の発展によりがん治療(手術、薬物療法、放射線療法)は発展してきましたが、、保険診療では治療が困難な場合もあります。

実施できる化学療法の制限

保険診療では腹膜播種に対して使用できる抗がん剤の数に制限があります。

腹膜播種を発症させる元々のがん細胞のタイプに合わせて様々な抗がん剤や分子標的薬、免疫チェックポイント阻害薬などを使い分けます。しかし、通常3~4種類程度しか有効な薬物療法はありません。

そのため、使用できる薬物を使い切った場合、もしくは体に合わない場合には、選択できる薬剤や治療はもう存在しないと医師から言われてしまいます。

また、1個の新しい抗がん剤などの薬物が開発されるまでには10~20年かかると言われているため、投与できる薬物療法には制限ができてしまいます。

保険診療ではカバーしきれない腹膜播種の再発

腹膜播種が発見され、手術によって病巣を切除した場合でも、がんの種類によっては再発率が30~70%に達することが報告されています。

そのため、手術単独では不十分であると考えられ、再発予防を目的として、術前化学療法および術後補助化学療法(いずれも抗がん剤治療)を組み合わせた治療戦略が推奨されることが一般的です。

しかしながら、抗がん剤治療にはさまざまな副作用が伴うため、高齢者や体力の低下した患者にとっては実施が困難となるケースもあります。さらに、腹膜播種の切除手術自体が大きな負担を伴うため、術後に著しく体力を消耗し、本来予定していた抗がん剤治療が継続できなくなることも少なくありません。

また、仮に術後補助化学療法が実施された場合であっても、腹膜播種は進行がんに分類されるため、再発リスクは依然として高い状態にあります。例えば胃がんでは、術後でも再発率が約50%にのぼるというデータも存在します。

このように、現在の国内保険診療の範囲内で提供できる治療では、腹膜播種に対する手術を行ったとしても、2人に1人が再発するという厳しい現実があるのです。

参考:
Risk Factors for Recurrence After Curative Conversion Surgery for Unresectable Gastric Cancer|ANTICANCER RESEARCH 35: 6183-6188 (2015)

化学療法の「きつい」副作用

腹膜播種に対する化学療法では、主に抗がん剤が使用されますが、その副作用は薬剤の種類や患者さんの体質によって大きく異なります。一般的にみられる副作用としては、吐き気、食欲不振、下痢、脱毛、手足のしびれ、倦怠感、発疹、貧血、高血圧などが挙げられます。これらの症状は個人差が大きく、軽度で済む方もいれば、日常生活に支障をきたすほど強く出る方もいます。

また、使用する薬剤によっては、まれに命に関わるような重篤な副作用や合併症が発生する可能性もあり、十分な注意が必要です。治療を開始した当初は問題なく受けられていたとしても、回を重ねるごとに副作用が蓄積し、継続が困難になる場合もあります。

さらに、化学療法の副作用が精神的な影響を及ぼすこともあります。頑張って治療を続けていても、副作用によって生活の質(QOL)が大きく低下し、気分の落ち込みや意欲の低下につながる患者さんも少なくありません。

最新の治療アプローチとして核酸医薬の導入

腹膜播種は、原発巣(胃・大腸・膵臓・卵巣など)によって病態が異なり、分子レベルの異常が関与することがあります。こうした背景から、患者様の状態や治療目的に応じて、核酸医薬を治療計画の一部として検討する考え方があります。核酸医薬には、標的タンパク質に結合して働きを抑えるアプタマー、特定の遺伝子発現を抑えるRNA干渉、体内の抑制機構を補うmiRNA mimic などがあります。

海外では「がんの部位」ではなく「分子レベルの情報」で治療を決定

特に欧米では、がんの種類(胃がん・大腸がん・膵がん・卵巣がんなど)ではなく、どのような分子レベルの情報があるかを重視して治療法を選ぶという考え方が主流になりつつあります。

このような治療法は「がんゲノム医療」や「プレシジョン・メディシン(個別化医療)」と呼ばれ、さまざまな臨床試験が世界中で進行中です。腹膜播種の原因となる分子レベルの情報に対しても、個別に効果的な治療薬や治療方法が検討されています。

日本の現状と今後の展望

日本でも近年、がん遺伝子パネル検査(がんゲノムプロファイリング)や、特定の分子レベルの情報対応する分子標的薬が一部保険適用化されるなど、少しずつ普及が進んでいます。しかしながら、欧米に比べると臨床現場への導入は遅れているのが現状です。

がん中央クリニックグループでは、いち早く分子レベルの情報に基づく個別化診療を導入し、腹膜播種を含むさまざまながんに対して柔軟な治療を提供しています。

がん中央クリニックグループのクリニックでは、患者様の状態に合わせて行う様々ながん治療を提供しております。是非一度ご相談ください。

保険診療では「治療方法がない」方も治療可能

腹膜播種に対する核酸医薬は保険診療ではなく自由診療(保険外診療)であり、保険診療ではもう治療方法がない、と言われた患者様でも実施できます。

がん中央クリニックグループでは患者様1人ひとりに合わせてテーラーメイドのがん治療を提供します。

保険診療と組み合わせた治療設計

核酸医薬は、標準治療(保険診療)と組み合わせて検討し得る治療アプローチの一つです。

標準治療の薬物療法は、すでに産生された細胞やタンパク質の働きを抑えることで治療効果を狙います。一方、核酸医薬は、タンパク質が作られる前段階の遺伝子発現や分子レベルの制御機構に働きかけることを狙う点が特徴です。作用点の考え方が異なるため、当院では患者様の状況に応じて、標準治療と組み合わせた治療設計も含めてご提案しています。

治療継続可能な副作用

核酸医薬は目立った副作用が起こりにくいです。特に、化学療法で起きやすい嘔気、食欲不振、倦怠感、脱毛、貧血、命に関わる副作用などはほとんど起こりません。

核酸医薬の副作用としては、一時的な微熱、血圧上昇、顔の紅潮、アレルギー反応(0.3%以下)などがあります。解熱剤など薬物を使う場合もありますが、自然と改善する副作用が大半であり、治療を継続するのに支障をきたしません。

核酸医薬をオススメする患者様

どのような患者様に効果が期待できるのかを以下に具体的に解説します。ぜひご自身のパターンに合わせてご検討ください。

腹膜播種に対して薬物治療中や放射線療法中の患者様

核酸医薬は、抗がん剤治療などの薬物治療や放射線療法などの標準治療を行っている患者様でも、治療の選択肢を広げる観点から併用を含めてご相談いただける治療アプローチの一つです。
がんは放置すると進行するため、状況に応じて作用点の異なる治療手段を組み合わせ、腫瘍の縮小を目指していくことが重要です。

腹膜播種手術後のすべての患者様

腹膜播種に対して、術前化学療法や術後補助化学療法を組み合わせて手術を行った場合でも、がんの種類によっては再発率が約50%にのぼると報告されています。つまり、抗がん剤治療を受けたとしても2人に1人が再発するリスクがあるのが現状です。

さらに、抗がん剤には吐き気や倦怠感などの副作用があるため、体力の低い高齢者や副作用に不安を感じる方には治療の継続が難しい場合もあります。

このような患者様にも、状態や目的に応じて核酸医薬を治療計画の一部として検討し、再発抑制も含めた治療設計を行うことが重要です。

保険治療では治療困難な患者様

腹膜播種に対する核酸医薬は、保険診療ではなく自由診療(保険外診療)として提供されているため、保険診療では「治療の選択肢がない」と言われた患者さんでも受けることが可能です。

がん中央クリニックグループでは、患者さん一人ひとりの遺伝子異常や体調に応じた「テーラーメイドのがん治療」を行っており、標準治療が難しい方にも対応しています。

この治療法の大きな特徴は、副作用がほとんど見られない点です。そのため、通院が可能であれば、体力が落ちている方や高齢の方でも無理なく受けていただけます。

また、通院が難しい方には、訪問診療による対応が可能な場合もあります。詳しいご相談や治療の可否については、下記の無料相談窓口までお気軽にお問い合わせください。専門スタッフが丁寧に対応いたします。

腹膜播種の寛解を目指して保険診療と患者様に合った自由診療を組み合わせるのがおすすめ

腹膜播種は、適切な治療を行うことで寛解を目指すことが可能な疾患です。そのためには、がんの進行状況や体調に応じた柔軟な治療戦略の選択が重要です。

中でも近年注目されているのが、がんの発生原因のひとつとされる分子レベルの異常に着目した治療法です。

また、保険診療だけでは対応が難しいケースでも、核酸医薬を取り入れることで新たな治療の選択肢が広がる場合があります。

がん中央クリニックグループでは、核酸医薬をはじめとした患者様一人ひとりの状態に合わせた自由診療プランをご提案しています。標準治療が難しいと感じている方や、他の医療機関で治療の選択肢が限られていると伝えられた方も、ぜひ一度ご相談ください。

腹膜播種の患者様が前向きに治療へ臨めるよう、専門スタッフが丁寧にサポートいたします。どのようなご状況でも、まずはお気軽にお問い合わせください。

  • HER2低発現・超低発現のがん患者さまに、新たな治療の選択肢が広がる
  • トリプルネガティブというワードが無くなる可能性
  • 分子標的ワクチン療法の可能性が拡大

HER2は乳がんと胃がんでは有名ですが、非小細胞肺がん、大腸がんでも認可されました。

従来はHER2が陽性、陰性の2通りに分けていたのですが、エンハーツと呼ばれる抗HER2抗体が、陰性でも認可されたことでHER2に関する考え方が大きく変わり、従来は陰性、陽性の分け方だったのが、HER2低発現という分類が出現しました。

さらに1+未満の超低発現の乳がんでもアメリカのFDAで認可されたことを、第一三共株式会社2025年1月28 日にプレスリリースしたことが大きな話題となりました。

ENHERTU®(トラスツズマブ デルクステカン)の米国における化学療法未治療のHER2低発現またはHER2超低発現の乳がんに係る一部変更承認取得について
第一三共株式会社 ※リンク先のプレスリリースはPDF形式のため、ご利用の環境によってはダウンロードが必要となる場合があります。

HER2低発現という分類が出現

これによりトリプルネガティブというワードが無くなる可能性すら出て来ています。

アメリカのFDAではすべてのがん種でHER2抗体がFDA認可された

アメリカの治験では胆道がん、膀胱がん、子宮頸がん、子宮内膜がん(子宮体がん)、卵巣がん、膵臓がん、非小細胞肺がん、大腸がん、希少がんなどのがんで抗HER2抗体が高い効果が得られた結果、アメリカのFDAではがん種を問わずにすべてのがん種でHER2抗体がFDA認可されたことでどんながんでも分子標的ワクチン療法をやることががん治療を大きく変える治療と期待しています。

がん中央クリニックグループでは、HER2が発現しているがん細胞を免疫細胞が攻撃するように仕向ける分子標的ワクチン療法を提供しています。

分子標的ワクチン療法の詳細は下記リンクよりご覧いただけます。