肺がんは、気管支や肺胞などの細胞から発生するがんです。2023年に国内で新たに肺がんと診断された人は12万3,989例、2024年に肺がんで死亡した人は7万5,569人でした。
2018年に診断された15歳以上の肺がん患者における5年生存率は39.6%と報告されています。ただし、この数字は非小細胞肺がんと小細胞肺がん、すべてのステージを合わせた全国統計であり、個人の治りやすさや余命を示すものではありません。
肺がんは、早期には症状がほとんど現れないことがあります。咳、痰、血痰、息切れ、胸の痛みなどがきっかけで見つかる場合もありますが、症状の強さと進行度は必ずしも一致しません。肺の奥にできた小さながんでは症状が出ない一方、気管支の近くにできたがんでは、比較的早い段階から咳や血痰が現れることがあります。
肺がんの治療を決めるうえでは、ステージだけでなく、非小細胞肺がんと小細胞肺がんのどちらか、腺がんや扁平上皮がんなどの病理型、がん細胞の遺伝子異常、PD-L1発現、呼吸機能、全身状態を確認します。同じステージでも、これらの結果によって選ばれる治療が異なります。
この記事では、肺がんの種類、原因とリスク、検診、症状、検査、ステージに加え、非小細胞肺がんと小細胞肺がんの治療の違いを解説します。遺伝子・バイオマーカー検査、手術、放射線治療、薬物療法、治療の副作用、ステージ別の生存率についても、検査結果を治療選択へどうつなげるかという視点から整理します。
参考:肺|国立がん研究センター がん統計
参考:2018年全国がん登録5年生存率報告|厚生労働省
- 肺がんは、非小細胞肺がんと小細胞肺がんで治療方針が大きく異なる
- 早期には症状がないことがあり、症状の強さだけでは進行度を判断できない
- 治療はステージ、病理型、遺伝子異常、PD-L1、呼吸機能などから決める
肺がんとは何か
肺がんは、気管支や肺胞などの細胞ががん化し、制御されずに増殖する病気です。がんが大きくなると、気管支を狭くしたり、正常な肺組織を圧迫したりして、咳、血痰、息切れ、肺炎などを引き起こすことがあります。
さらに進行すると、胸膜や胸壁、縦隔など肺の周囲へ広がるほか、リンパ液や血液の流れに乗って、脳、骨、肝臓、副腎などへ転移する場合があります。
肺がんは、顕微鏡で確認したがん細胞の形や性質によって、非小細胞肺がんと小細胞肺がんに大きく分けられます。この区別は名称の違いだけではなく、進行の速さ、転移のしやすさ、手術の適応、薬物療法や放射線治療への反応が異なるため、治療方針を決める出発点になります。
参考:肺がんについて|国立がん研究センター がん情報サービス
非小細胞肺がん
非小細胞肺がんは肺がん全体の約80〜85%を占め、主に腺がん、扁平上皮がん、大細胞がんなどに分けられます。
腺がんは肺の奥にある肺野に発生しやすく、非喫煙者にもみられます。小さいうちは咳などの症状が出にくく、検診やほかの病気の検査で偶然見つかる場合があります。EGFR遺伝子変異やALK融合遺伝子など、治療対象となる遺伝子異常が見つかることがあるため、進行例では遺伝子検査が特に重要です。
扁平上皮がんは、肺の入り口に近い太い気管支に発生することがあり、喫煙との関連が強い病理型です。気管支が狭くなることで、咳、血痰、息切れ、同じ場所に繰り返す肺炎などが現れる場合があります。
非小細胞肺がんの治療は、切除可能な早期・局所進行例では手術を中心に考え、必要に応じて手術前後の薬物療法を組み合わせます。切除できないステージ3では化学放射線療法など、ステージ4・再発では遺伝子異常やPD-L1発現などに応じた薬物療法が中心になります。
肺がんステージ4の病状、遺伝子検査、分子標的薬、免疫チェックポイント阻害薬、生存率については、以下の記事で詳しく解説しています。
小細胞肺がん
小細胞肺がんは非小細胞肺がんより頻度は低いものの、増殖が速く、早い段階からリンパ節やほかの臓器へ広がりやすいという特徴があります。喫煙との関連が強く、診断時にすでに胸部の広い範囲や遠隔臓器へ病変が及んでいる場合もあります。
治療方針を決める際はTNM分類によるステージに加え、病変が一つの放射線照射範囲に収まる限局型と、それを超えて広がっている進展型という分類が広く使われます。
ごく早期でリンパ節転移がない一部の患者さんでは手術を検討しますが、多くの限局型では薬物療法と胸部放射線治療を組み合わせます。進展型では、プラチナ製剤とエトポシドへ免疫チェックポイント阻害薬を組み合わせる薬物療法が主な選択肢です。
小細胞肺がんは薬物療法や放射線治療によって大きく縮小することがある一方、再発しやすい性質もあります。限局型・進展型の治療、再発時の治療、放射線治療、生存率については、以下の記事で詳しく解説しています。
非小細胞肺がんと小細胞肺がんでは、標準となる治療の組み立てが異なります。診断を受けた際には、「肺がんです」という説明だけでなく、病理型、ステージ、手術の可否、治療選択に必要な遺伝子・バイオマーカー検査について確認することが大切です。
肺がんの原因とリスク
肺がんは、一つの原因だけで発症する病気ではありません。年齢を重ねる中で細胞の遺伝子に変化が蓄積し、喫煙、受動喫煙、職業上の有害物質への曝露、慢性の肺疾患などが重なって発症すると考えられています。
肺がんの最も重要な危険因子は喫煙です。喫煙本数が多いほど、また喫煙を続けた期間が長いほど、肺がんの発症リスクは高くなります。国立がん研究センターによると、喫煙者は非喫煙者と比べ、男性で4.4倍、女性で2.8倍、肺がんになりやすいとされています。
ただし、肺がんは喫煙者だけが発症する病気ではありません。たばこを吸ったことがない人にも肺がんは発生し、とくに肺腺がんでは非喫煙者の患者さんもみられます。喫煙歴がないことだけを理由に、長引く咳や血痰などの症状を放置しないことが大切です。
参考:肺がん 予防・検診|国立がん研究センター がん情報サービス
受動喫煙や職業・環境による曝露
周囲のたばこの煙を吸い込む受動喫煙も、肺がんの発症リスクを高めます。国立がん研究センターでは、受動喫煙によって肺がんのリスクが2~3割程度高くなるとしています。
そのほか、アスベスト、シリカ、ディーゼル排気、金属や化学物質などへ仕事を通じて長期間さらされた場合にも、肺がんのリスクが高くなることがあります。屋外・屋内の大気汚染も、肺がんの危険因子の一つです。
過去に建設、解体、造船、断熱材の施工、鉱業、金属加工などに従事していた場合は、喫煙歴だけでなく、どのような粉じんや化学物質を扱っていたかも医師へ伝えます。喫煙とほかの有害物質への曝露が重なると、リスクがさらに高まる可能性があります。
慢性の肺疾患や家族歴
慢性閉塞性肺疾患(COPD)、間質性肺炎、肺結核などの肺疾患がある人では、肺がんの発症リスクが高くなることが報告されています。もともと咳や息切れがあると、肺がんによる変化に気付きにくいこともあるため、症状の悪化や画像の変化を定期的に確認します。
肺がんになった血縁者がいることも、リスクを考える材料の一つです。ただし、家族歴には遺伝的な体質だけでなく、喫煙や受動喫煙など共通する生活環境が影響している場合もあります。家族に肺がん患者がいるからといって、必ず発症するわけではありません。
危険因子がある人すべてが肺がんになるわけではなく、明らかな危険因子がない人にも発症します。肺がんと診断された理由を一つに決めつけたり、喫煙歴だけを理由に本人を責めたりすることは適切ではありません。
禁煙は肺がん予防と治療の両方に関係する
肺がんを予防するうえで最も有効な行動は、たばこを吸わないことと、現在吸っている場合に禁煙することです。禁煙を始めた後もリスクがすぐに非喫煙者と同じになるわけではありませんが、喫煙を続ける場合と比べて徐々に低下します。
すでに肺がんと診断された後でも、禁煙には意味があります。治療中の呼吸器合併症を減らし、手術後の回復や呼吸機能を保つためにも、できるだけ早く禁煙を始めます。自力での禁煙が難しい場合は、禁煙外来などの支援を利用できます。
参考:Lung Cancer Prevention|米国国立がん研究所
参考:Lung Cancer|国際がん研究機関
肺がん検診と症状がある場合の受診
肺がんは早期には自覚症状がないことがあるため、症状のない人が定期的に検診を受けることには意味があります。一方、すでに咳や血痰などの症状がある人は、がん検診ではなく、医療機関で診断を目的とした検査を受ける必要があります。
40歳以上は年1回の肺がん検診が推奨
日本の対策型肺がん検診は、症状のない40歳以上の男女を対象に、年1回行われます。基本的な検査は問診と胸部X線検査です。
50歳以上で、現在または過去の喫煙指数が600以上の人には、胸部X線検査に加えて喀痰細胞診(かくたんさいぼうしん)を行います。喫煙指数は、次のように計算します。
喫煙指数=1日に吸うたばこの本数×喫煙した年数
例:1日20本を30年間吸った場合は、20×30=600となる。
検診結果が「要精密検査」となった場合は、症状がなくても必ず精密検査を受けます。もう一度胸部X線検査を受けて異常がなければよい、というものではありません。必要に応じて胸部CTなどで確認します。
参考:肺がん検診について|国立がん研究センター がん情報サービス
症状がある場合は検診を待たない
血痰、長引く咳、胸の痛み、声のかれ、息切れなどがある場合は、次の検診を待たずに呼吸器内科などを受診してください。がん検診は、原則として症状のない人から肺がんの可能性がある人を見つけるためのものです。
胸部X線検査で異常なしと判定されても、肺がんを完全に否定できるわけではありません。症状が続く場合や、過去の画像と比べて変化が疑われる場合には、診察を受け、胸部CTなどが必要かを相談します。
低線量CT検診は全国一律の検診ではない
低線量CTは、通常の診断用CTより放射線量を抑えて肺を撮影する検査で、重喫煙者の肺がんを早期に発見する方法として検討されています。
2026年度から、重喫煙者を対象とした低線量CT肺がん検診の実証事業が、一部の地域で行われています。ただし、現時点で全国すべての自治体に導入された対策型検診ではありません。対象条件や実施地域は限られているため、住んでいる自治体や医療機関へ確認します。
低線量CTは胸部X線より小さな結節を発見しやすい一方、がんではない影が見つかって追加検査が必要になることや、経過観察が長く続くこともあります。検査を受ける際は、利益だけでなく、偽陽性、過剰診断、放射線被曝などの不利益についても説明を受けます。
肺がんの主な症状と受診の目安
肺がんは、早期には症状がないことも多く、検診やほかの病気の画像検査で偶然見つかる場合があります。一方、がんができた場所によっては、比較的小さい段階から咳や血痰などが現れます。
肺がんの主な症状は、咳、痰、血痰、胸の痛み、動いたときの息苦しさ、動悸、発熱、声のかれなどです。ただし、これらは肺炎、気管支炎、COPDなどでも起こるため、症状だけで肺がんかどうかを判断することはできません。
国立がん研究センターでは、原因が分からない咳や痰が2週間以上続く場合、血痰が出た場合、発熱が5日以上続く場合には、早めに医療機関を受診するよう案内しています。
参考:肺がんについて|国立がん研究センター がん情報サービス
がんができた場所によって症状は異なる
太い気管支の近くにがんができると、気道が刺激されたり狭くなったりするため、咳、痰、血痰、喘鳴などが現れやすくなります。気管支がふさがれると、その先の肺に空気が入りにくくなり、同じ場所に肺炎を繰り返すこともあります。
一方、肺の奥にある肺野にできたがんは、ある程度大きくなるまで症状が出ないことがあります。肺を包む胸膜や胸壁まで広がると胸の痛みが現れ、胸水がたまると息苦しさが強くなる場合があります。
症状が軽いことは、がんが早期であることを意味しません。反対に、咳や胸の痛みがあるからといって、必ず進行肺がんであるとも限りません。症状の程度ではなく、画像検査や病理検査によって病状を確認します。
胸部の周囲へ広がったときに現れる症状
肺がんや胸部リンパ節の病変が周囲の神経、気管、食道、血管などを圧迫すると、次のような症状が現れることがあります。
- 声のかれ:声帯を動かす神経が影響を受けた場合
- 飲み込みにくさ:食道が圧迫された場合
- 強い息苦しさ:気管や太い気管支が狭くなった場合
- 顔、首、腕の腫れ:上半身から心臓へ戻る血液の流れが妨げられた場合
- 肩から腕にかけての痛みやしびれ:肺の上部にあるがんが神経へ広がった場合
とくに、顔や首、片側または両側の腕が急に腫れる、首や胸の表面の血管が浮き出る、頭が重い、息苦しいといった症状は、上大静脈症候群の可能性があります。病変によって太い静脈の流れが妨げられていることがあるため、早急な診察が必要です。
転移した場所によって肺以外の症状も現れる
肺がんは、脳、骨、肝臓、副腎などへ転移することがあります。最初に現れる症状が咳や息切れではなく、転移した臓器による症状である場合もあります。
脳転移では、頭痛、吐き気、ふらつき、物が二重に見える、けいれん、片側の手足に力が入らない、言葉が出にくい、性格や行動が変化するなどの症状が現れることがあります。
骨転移では、背中、腰、肩、肋骨などの痛みが続くことがあります。骨が弱くなると、軽い動作や転倒で骨折することもあります。脊椎への転移が脊髄を圧迫すると、足のしびれや脱力、歩行困難、排尿・排便障害が現れる場合があります。
肝転移では、初期には症状がないこともありますが、病変が広がると、食欲低下、強いだるさ、腹部の張り、黄疸などが現れることがあります。
ステージ4肺がんの転移部位、治療、生存率については、以下の記事で詳しく解説しています。
予約日を待たずに相談・受診する症状
次の症状がある場合は、通常の診察予約日まで様子を見ず、治療中の医療機関や救急医療機関へ連絡してください。症状が強い場合や急激に悪化している場合は、救急車の要請を検討します。
- まとまった量の血を吐く、血痰が止まらない
- 急に強い息苦しさが現れた、会話が難しいほど呼吸が苦しい
- 顔、首、腕が急に腫れた
- 新たにけいれんが起きた、意識がぼんやりする
- 片側の手足に力が入らない、言葉が出にくい
- 足の脱力や歩行困難に、排尿・排便の異常を伴う
- 発熱とともに咳や息苦しさが急に悪化した
- 薬物療法中に、新しい空せきや息切れが現れた
薬物療法中の空せきや息切れは、感染症、肺がんの進行、肺血栓塞栓症などに加え、分子標的薬や免疫チェックポイント阻害薬などによる薬剤性肺障害の可能性があります。軽い症状でも、治療を受けている医療機関へ連絡し、薬を継続してよいか確認します。
参考:呼吸困難・咳・痰|国立がん研究センター がん情報サービス
参考:免疫療法 もっと詳しく|国立がん研究センター がん情報サービス
以前からある症状の「変化」も受診の手がかりになる
喫煙歴がある人やCOPDのある人では、以前から咳や痰、息切れが続いていることがあります。その場合は、症状があるかないかだけでなく、次のような変化を確認します。
- 咳の回数や強さが増えた
- 痰の色や量が変わった、血が混じった
- 同じ場所の肺炎を繰り返している
- これまでできていた歩行や階段昇降で息切れするようになった
- 声のかれや胸の痛みが続く
- 食欲や体重が理由なく低下している
症状が続く場合は、自分で肺がんと決めつける必要はありませんが、「喫煙のせい」「年齢のせい」「風邪が長引いているだけ」と判断して放置しないことが大切です。診察では、症状が始まった時期、悪化しているか、血痰や発熱を伴うか、生活のどの動作で息苦しくなるかを具体的に伝えます。
肺がんの検査と診断
肺がんが疑われたときの検査には、異常を見つける検査、肺がんかどうかを確定する検査、がんの広がりを調べる検査、治療を安全に受けられるか確認する検査があります。
それぞれ目的が異なるため、胸部CTで影が見つかっただけでは、肺がんの種類やステージ、適した治療まで確定したことにはなりません。
| 検査の目的 | 主な検査 | 確認すること |
|---|---|---|
| 病変の検出 | 胸部X線、胸部CT | 肺に結節や腫瘤、胸水などがあるか |
| 確定診断 | 気管支鏡、生検、胸水細胞診など | がんかどうか、非小細胞肺がんか小細胞肺がんか、病理型は何か |
| 病期診断 | 胸腹部造影CT、FDG-PET/CT、脳MRI、リンパ節生検など | リンパ節や脳、骨、肝臓、副腎などへ広がっていないか |
| 治療可能性の評価 | 呼吸機能、心機能、血液検査、全身状態の評価 | 手術や薬物療法、放射線治療を安全に受けられるか |
胸部X線と胸部CTで病変の位置や性状を調べる
咳や血痰などの症状がある場合や、検診で異常を指摘された場合は、胸部X線検査や胸部CT検査を行います。
胸部X線では、肺に大きな影がないかを広く確認できますが、心臓や骨と重なる場所、小さな病変、すりガラス状の病変などは分かりにくいことがあります。胸部X線で肺がんが疑われる場合や、症状が続く場合には、胸部CTで詳しく確認します。
CTでは、病変の大きさ、形、内部の状態、気管支や血管との位置関係、胸膜への広がり、胸水、リンパ節の腫れなどを確認できます。
ただし、画像だけで肺がんと確定することはできません。感染症、炎症、良性腫瘍などでも肺がんに似た影が現れるためです。小さな結節では、形や大きさ、以前の画像からの変化、喫煙歴などを考慮し、すぐに生検を行わずCTで経過を確認する場合もあります。
CEA、CYFRA、SCC、ProGRP、NSEなどの腫瘍マーカーを測定することもありますが、腫瘍マーカーだけで肺がんの有無を確定したり、正常値だから肺がんではないと判断したりすることはできません。診断後の治療効果や経過を確認する補助として用いることがあります。
組織や細胞を採取して肺がんを確定する
肺がんの確定診断には、病変から採取した組織や細胞を顕微鏡で調べる病理・細胞診断が必要です。
病理検査では、肺がんであるかどうかに加え、非小細胞肺がんと小細胞肺がんのどちらか、腺がんや扁平上皮がんなどのどの病理型に当たるかを確認します。治療方針を決めるためには、遺伝子検査やPD-L1検査に使用できる量の検体を確保することも重要です。
組織や細胞を採取する方法は、病変の位置や大きさ、リンパ節の状態、体への負担などから選びます。
気管支鏡検査
気管支鏡検査では、鼻または口から細い内視鏡を入れ、気管支の内側を観察しながら、がんが疑われる部分の組織や細胞を採取します。
太い気管支の近くにある病変だけでなく、超音波やナビゲーションを併用することで、肺の末梢にある病変から組織を採取できる場合もあります。
検査後には、一時的な発熱や血痰がみられることがあります。まれに出血、肺炎、肺から空気が漏れる気胸などが起こる可能性があるため、検査後に息苦しさや胸痛、出血の増加がある場合は医療機関へ連絡します。
CTガイド下生検
肺の外側に近く、気管支鏡では届きにくい病変では、CTで位置を確認しながら、胸の外側から針を刺して組織を採取する経皮的針生検を行うことがあります。
病変から直接組織を採取できる一方、気胸や肺からの出血が起こる可能性があります。肺気腫が強い場合や、病変が重要な血管に近い場合などは、ほかの検査方法を検討することがあります。
EBUS-TBNAによるリンパ節検査
肺門や縦隔のリンパ節が腫れている場合は、超音波気管支鏡ガイド下針生検であるEBUS-TBNAを行うことがあります。
気管支鏡の先端に付いた超音波でリンパ節の位置を確認し、気管支の壁を通して針を刺して細胞や組織を採取します。肺がんの確定診断だけでなく、リンパ節転移の有無を調べてステージを決める目的でも行われます。
胸水細胞診や胸腔鏡検査
肺の周囲に胸水がたまっている場合は、針を刺して胸水を採取し、がん細胞が含まれていないか調べます。胸水から十分な情報が得られない場合には、胸腔鏡で胸膜や肺、リンパ節などの組織を採取することがあります。
最初の検査で診断がつかない場合でも、直ちに肺がんではないと判断することはできません。病変の場所によっては組織を採取しにくいため、別の方法による再検査や、手術による生検を検討する場合があります。
胸腹部造影CT、PET/CT、脳MRIで広がりを調べる
肺がんと診断された後は、TNM分類に基づいてステージを決めます。病期診断では、肺の病変だけでなく、胸部リンパ節や離れた臓器への転移を調べます。
胸腹部造影CTでは、肺や胸部リンパ節に加え、肝臓、副腎などへの転移を確認します。造影剤アレルギーや腎機能の低下がある場合は、検査方法を調整することがあります。
FDG-PET/CTでは、糖に似た薬剤が集まる場所を画像化し、胸部リンパ節や骨、ほかの臓器への転移が疑われる部分を調べます。ただし、炎症や感染症にも薬剤が集まることがあり、反対に小さな病変や一部の肺がんでは集まりにくいこともあります。
そのため、PET/CTでリンパ節に強い集積があることと、病理検査でリンパ節転移が証明されたことは同じではありません。
リンパ節転移の有無によって手術や根治的放射線治療の方針が変わる場合は、必要に応じてEBUS-TBNAや経食道的超音波内視鏡検査、外科的なリンパ節生検などで確認します。
脳MRIでは、脳転移の有無を調べます。小さな脳転移は症状がないこともあるため、頭痛や麻痺がない場合でも、病期や病理型に応じて検査を行います。PET/CTだけでは脳転移を十分に評価できないため、脳はMRIなどで別に確認します。
骨の痛みがある場合やPET/CTを行えない場合などには、骨シンチグラフィや骨のMRIなどを追加することがあります。
ステージ4と診断された場合でも、転移している臓器、病変の数、症状の有無によって治療の目的や選択肢は異なります。
治療を安全に受けられるか評価する
肺がんの治療方針は、がんを切除できるかどうかだけでなく、治療後に呼吸や日常生活をどこまで保てるかを含めて決めます。
手術を検討する場合は、呼吸機能検査で肺活量や1秒量などを測定し、必要に応じて肺を切除した後に残る呼吸機能を予測します。COPDや間質性肺疾患がある場合は、手術や放射線治療、薬物療法による肺への影響も考慮します。
心電図などによる循環機能の評価、血液検査による腎機能・肝機能・血球数の確認も行います。シスプラチンなどの薬物療法は腎機能や聴力、全身状態によって使用しにくいことがあり、検査結果に応じて薬の種類や投与方法を検討します。
また、パフォーマンスステータスと呼ばれる指標を用いて、歩行、身の回りの動作、仕事や家事などをどの程度行えるかを評価します。年齢だけで治療の可否を決めるのではなく、呼吸機能、臓器機能、持病、認知機能、栄養状態、本人の希望などを組み合わせて判断します。
検査結果の説明で確認したいこと
肺がんの検査結果は、「肺がんだった」「ステージ3だった」という結論だけでなく、その根拠を確認することが治療選択につながります。
- 非小細胞肺がんと小細胞肺がんのどちらか
- 腺がんや扁平上皮がんなど、病理型は何か
- ステージを決めた病変やリンパ節はどこか
- リンパ節転移は画像上の疑いか、組織検査で確認されているか
- 脳MRIやPET/CTなど、追加の病期診断が必要か
- 遺伝子・PD-L1検査に使える検体が確保されているか
- 手術後に予測される呼吸機能はどの程度か
非小細胞肺がんでは、病理診断と病期診断に加え、治療薬を選ぶための遺伝子・バイオマーカー検査が必要です。次の章で、検査する遺伝子と治療との関係を詳しく解説します。
参考:非小細胞肺癌の外科治療|肺癌診療ガイドライン2025年版
肺がんのステージ分類|TNM分類第9版
肺がんのステージは、がんの大きさだけではなく、周囲の臓器への広がり、リンパ節転移、離れた臓器への転移を組み合わせて決めます。
日本では2025年1月から、肺癌取扱い規約第9版に基づくTNM分類が使用されています。TNMは、次の3つの要素を表します。
| 要素 | 意味 | 主に確認すること |
|---|---|---|
| T | 原発腫瘍 | 腫瘍の大きさ、気管支・胸膜・胸壁・縦隔などへの広がり、同じ肺内の別病変 |
| N | 所属リンパ節 | 肺内、肺門、縦隔、鎖骨上などのリンパ節へ転移しているか |
| M | 遠隔転移 | 反対側の肺、胸膜、脳、骨、肝臓、副腎などへ広がっているか |
T・N・Mの組み合わせによって、ステージ0からステージ4までに分類します。正確なステージは組み合わせが細かいため、腫瘍の大きさだけを見て判断することはできません。
参考:肺癌の分類・TNM病期分類|肺癌診療ガイドライン2025年版
Tは原発腫瘍の大きさと周囲への広がりを表す
T分類は、肺にある原発腫瘍の状態を表します。
小さながんは、最大充実成分径などに応じてT1a、T1b、T1cに分けられます。腫瘍が大きくなる場合のほか、胸膜、胸壁、心膜、横隔膜、縦隔、気管などへ広がっている場合や、同じ肺葉内・別の肺葉内に別の腫瘍結節がある場合にもT分類が上がることがあります。
画像に写る病変全体の大きさと、ステージ判定に使用される充実成分の大きさが異なる場合もあります。とくに、すりガラス状の部分を含む肺腺がんでは、CT画像のどの部分を測定した数値かを確認する必要があります。
Nはリンパ節転移の場所と広がりを表す
N分類は、肺がんの周囲にある所属リンパ節への転移を表します。
- N0:所属リンパ節転移がない
- N1:がんと同じ側の肺内、気管支周囲、肺門リンパ節などへの転移
- N2:がんと同じ側の縦隔リンパ節、または気管分岐部下リンパ節への転移
- N3:反対側の縦隔・肺門リンパ節、または鎖骨上窩などのリンパ節への転移
TNM分類第9版では、N2がさらに次の2つに分けられました。
- N2a:縦隔リンパ節のうち、単一のリンパ節領域への転移
- N2b:複数の縦隔リンパ節領域への転移
縦隔リンパ節転移が一つの領域だけにある場合と、複数の領域に広がっている場合では、病状や治療の組み立てが異なる可能性があるためです。
CTやPET/CTでリンパ節が腫れている、または薬剤が集まっているだけでは、必ずしも転移が確定したとはいえません。リンパ節転移の有無によって手術や根治的放射線治療の方針が変わる場合には、EBUS-TBNAなどで組織を採取して確認することがあります。
Mは胸部以外を含む遠隔転移を表す
M分類は、肺がんが離れた場所へ転移しているかを表します。
- M0:遠隔転移がない
- M1a:反対側の肺の腫瘍、胸膜・心膜の結節、がん細胞を含む胸水・心嚢水など
- M1b:胸部以外の一つの臓器に、単発の遠隔転移がある
- M1c1:胸部以外の一つの臓器に、複数の遠隔転移がある
- M1c2:胸部以外の複数の臓器に遠隔転移がある
たとえば、脳に一つだけ転移がある場合と、脳や骨、肝臓など複数の臓器に転移がある場合は、いずれもステージ4に含まれますが、検討できる治療や見通しは同じではありません。
限られた数の遠隔転移では、全身薬物療法に加え、手術や定位放射線治療などの局所治療を組み合わせる場合もあります。ステージ4は「治療法が一つしかない状態」ではなく、病理型、遺伝子異常、PD-L1、転移部位と病変数、症状、全身状態によって治療を組み立てます。
ステージ4肺がんの分類、転移部位、薬物療法、局所治療については、以下の記事で詳しく解説しています。
ステージ0から4はどのような状態か
TNMの組み合わせは細かく分かれますが、ステージごとの大まかな捉え方は次のとおりです。
| ステージ | 大まかな状態 |
|---|---|
| ステージ0 | がん細胞が上皮内にとどまり、周囲へ浸潤していない上皮内がん |
| ステージ1 | 主に肺の中にとどまり、リンパ節転移が認められない段階 |
| ステージ2 | 腫瘍が大きい、周囲へ広がっている、肺門リンパ節などへ転移している段階。一部のT1・N2a症例を含む |
| ステージ3 | 縦隔リンパ節や鎖骨上リンパ節、胸部の重要な臓器などへ広がった局所進行段階 |
| ステージ4 | 反対側の肺、胸膜・心膜、脳、骨、肝臓、副腎などへ遠隔転移している段階 |
この表は病状の概要を理解するためのものであり、表だけから手術の可否や治療法を決めることはできません。
たとえばステージ2でも、縦隔リンパ節への転移を伴う場合があります。ステージ3には、手術を組み合わせられる可能性がある病状から、手術が難しく化学放射線療法を中心に考える病状まで含まれます。
臨床病期と病理病期は異なることがある
治療前のCT、PET/CT、脳MRI、生検などから判断するステージを臨床病期といいます。
手術を行った場合は、切除した肺やリンパ節を詳しく調べ、実際の腫瘍の広がりを確認します。この結果から決めるステージが病理病期です。
画像検査では転移がないように見えても、手術後の病理検査で小さなリンパ節転移が見つかることがあります。反対に、画像では転移が疑われても、病理検査ではがん細胞が確認されない場合もあります。
そのため、手術前に説明されたステージと、手術後に確定するステージが変わることがあります。術後に薬物療法が必要かどうかは、病理病期、腫瘍の大きさ、リンパ節転移、遺伝子異常などを踏まえて判断します。
小細胞肺がんでは限局型と進展型も用いる
小細胞肺がんにもTNM分類を用いますが、治療方針を考える際には、限局型と進展型という区分も広く使われます。
- 限局型:病変が片側の胸部を中心に存在し、許容できる一つの放射線照射範囲に収まる状態
- 進展型:病変が限局型の範囲を超えて広がっている状態
限局型と進展型は、TNM分類の特定のステージと完全に一対一で対応する分類ではありません。胸部放射線治療を安全に行える範囲かどうかも含めて判断します。
小細胞肺がんの限局型・進展型の治療や再発時の選択肢については、以下の記事で詳しく解説しています。
ステージだけで治療は決まらない
肺がんの治療方針を決めるには、ステージに加えて、次の情報が必要です。
- 非小細胞肺がんか小細胞肺がんか
- 腺がん、扁平上皮がんなどの病理型
- 病変を完全に切除できる可能性
- 呼吸機能や心機能、全身状態
- EGFR、ALKなどのドライバー遺伝子異常
- PD-L1発現
- 転移の場所、数、症状
次の章では、非小細胞肺がんと小細胞肺がんを分け、ステージごとの標準的な治療方針を解説します。
参考:肺癌取扱い規約第9版発刊のお知らせ|日本肺癌学会
参考:肺がん 検査|国立がん研究センター がん情報サービス
非小細胞肺がんのステージ別治療
非小細胞肺がんの治療は、ステージだけでなく、病変を完全に切除できるか、手術後に十分な呼吸機能を保てるか、リンパ節転移の範囲、遺伝子異常、PD-L1発現、全身状態などから決めます。
同じステージ3でも、手術を含む集学的治療を検討できる場合と、切除不能として化学放射線療法を行う場合があります。とくに縦隔リンパ節転移を伴う症例では、呼吸器外科、呼吸器内科、放射線治療科、病理診断科などによる検討が必要です。
| 病状 | 治療の中心 | 治療前に確認すること |
|---|---|---|
| ステージ1 | 手術。手術が難しい場合は定位放射線治療など | 腫瘍の大きさ・位置、呼吸機能、手術後に残る肺機能 |
| ステージ2~切除可能なステージ3 | 手術と周術期薬物療法 | リンパ節転移、病理型、EGFR・ALK、PD-L1、術前治療の適応 |
| 切除不能ステージ3 | 化学放射線療法と、その後の薬物療法 | 放射線の照射範囲、全身状態、肺疾患、EGFR遺伝子変異 |
| ステージ4・再発 | 分子標的薬、免疫療法、細胞障害性抗がん薬など | 遺伝子異常、PD-L1、病理型、転移部位、全身状態 |
参考:肺がん 非小細胞肺がん 治療|国立がん研究センター がん情報サービス
ステージ1は手術による完全切除を目指す
ステージ1の非小細胞肺がんでは、手術に耐えられる呼吸機能と全身状態があれば、がんを完全に取り除く手術が治療の中心です。
標準的な手術では、がんがある肺葉を切除する肺葉切除と、周囲のリンパ節を切除または採取するリンパ節郭清を行います。ただし、小型で肺の末梢にある一部のがんでは、肺葉の一部分を解剖学的に切除する区域切除を選べる場合があります。
区域切除は、単に体への負担が小さい手術というだけではありません。腫瘍の大きさ、すりガラス成分と充実成分の割合、病変の位置、十分な切除断端を確保できるかなどを確認して選択します。
呼吸機能の低下、重い心疾患、間質性肺疾患などによって手術が難しい場合には、定位放射線治療を検討します。定位放射線治療は、小さな肺がんへ多方向から放射線を集中させ、根治を目指す治療です。
医学的には手術が可能であっても、本人が手術を希望しない場合に放射線治療を選ぶことがあります。ただし、手術と放射線治療では病理診断の確実性、リンパ節評価、局所再発の評価方法などが異なるため、それぞれの利益と不利益を確認します。
ステージ2・切除可能なステージ3では手術前後の薬物療法を組み合わせる
ステージ2や一部のステージ3では、画像に写る病変を手術で切除できても、目に見えない微小ながん細胞が体内に残っている可能性があります。そのため、手術だけでなく、再発リスクを下げるための薬物療法を組み合わせます。
治療には、手術後に行う術後補助療法と、手術前から行う術前・周術期療法があります。
プラチナ製剤を含む術後補助化学療法
完全切除されたステージ2~3では、シスプラチンなどのプラチナ製剤を含む術後補助化学療法を検討します。
術後補助化学療法は、画像で確認できるがんを治療するのではなく、再発の原因となる可能性がある微小ながん細胞を減らすことが目的です。手術後の病理病期、リンパ節転移、全身状態、腎機能、聴力などを踏まえて、期待できる再発予防効果と副作用を比較します。
一部の早期肺腺がんでは、病理病期や腫瘍径などの条件に応じて、テガフール・ウラシル配合剤を使用することがあります。
EGFR変異陽性では術後オシメルチニブを検討する
完全切除後の非小細胞肺がんで、EGFR遺伝子のエクソン19欠失またはL858R変異が確認された場合は、病理病期などの条件を満たせば、術後にオシメルチニブを内服する治療を検討します。
オシメルチニブは細胞障害性抗がん薬の代わりとして一律に選ぶ治療ではありません。病期によっては、まずプラチナ製剤を含む術後補助化学療法を行い、その後にオシメルチニブを使用します。
治療期間が長くなるため、発疹、下痢、爪の炎症、間質性肺疾患、心機能への影響などを確認しながら継続します。
ALK陽性では術後アレクチニブを検討する
ALK融合遺伝子陽性の完全切除例では、病理病期などの条件を満たす場合に、術後アレクチニブを検討します。
EGFRやALKの検査はステージ4の薬を選ぶためだけの検査ではありません。現在は、手術後の再発予防治療にも関係するため、切除可能な段階でも治療前または手術後に検査します。
条件を満たす場合は免疫療法を手術前後に行う
ステージ2から一部のステージ3では、プラチナ製剤を含む抗がん剤と免疫チェックポイント阻害薬を手術前に併用する治療や、手術前後に免疫療法を行う周術期治療を検討する場合があります。治療薬によって、術前のみ行うか、術後も継続するかが異なります。
また、完全切除と術後補助化学療法の後に、PD-L1発現などの条件を踏まえて、アテゾリズマブなどによる術後免疫療法を検討する場合もあります。
免疫療法が適しているかは、病期やPD-L1だけでは決まりません。EGFRやALKなどの遺伝子異常、自己免疫疾患、間質性肺疾患、臓器移植歴、手術までの予定なども確認します。
手術前の治療には、病変を縮小させ、体内の微小ながん細胞を早い段階から治療できる可能性があります。一方、治療中に病状が進行する、副作用によって手術が延期されるなどの可能性もあります。
術前治療を提案された場合は、何回治療した後に手術を行う予定か、どのような変化があれば手術方針を見直すのかを確認します。
ステージ3は手術で切除できるかを多職種で判断する
ステージ3には、腫瘍が周囲の臓器へ広がった状態、縦隔リンパ節へ転移した状態、鎖骨上リンパ節へ転移した状態など、さまざまな病状が含まれます。
一部では、術前薬物療法や化学放射線療法と手術を組み合わせることがあります。一方、複数領域の縦隔リンパ節転移や広い範囲への浸潤などがある場合は、手術ですべてを取り切ることが難しくなります。
「ステージ3だから手術できる」「ステージ3だから手術できない」と一律に判断することはできません。
手術の可能性を考える場合は、画像だけでなく、EBUS-TBNAなどによるリンパ節の病理診断、必要となる肺の切除範囲、術後に予測される呼吸機能を確認します。治療方針は、呼吸器外科医だけでなく、呼吸器内科医や放射線治療医を含むチームで検討します。
切除不能ステージ3では同時化学放射線療法を行う
切除不能の局所進行非小細胞肺がんで、全身状態が良く薬物療法を受けられる場合は、プラチナ製剤を含む薬物療法と胸部放射線治療を同じ時期に行う同時化学放射線療法が標準的な選択肢です。
放射線治療と薬物療法を同時に行うことで治療効果が高まる一方、食道炎、肺炎、血球減少、食欲低下などの副作用も強くなる可能性があります。
年齢だけで同時治療の可否を決めるのではなく、全身状態、照射範囲、呼吸機能、腎機能、肺疾患などから判断します。同時治療が難しい場合は、薬物療法と放射線治療を順番に行う方法や、放射線治療単独を検討します。
化学放射線療法後のデュルバルマブ
同時化学放射線療法によって病状が制御され、重い肺障害などがない場合は、免疫チェックポイント阻害薬のデュルバルマブによる地固め療法を検討します。
地固め療法は、化学放射線療法で小さくなった病変だけを治療するのではなく、その後の再発や進行を抑えることが目的です。治療中は、咳、息切れ、発熱など、放射線肺臓炎や免疫関連の肺障害を疑う症状に注意します。
EGFR変異陽性では化学放射線療法後のオシメルチニブを検討する
切除不能ステージ3で、EGFR遺伝子のエクソン19欠失またはL858R変異があり、化学放射線療法後に病状が進行していない場合は、オシメルチニブによる維持療法を検討します。
そのため、EGFR検査はステージ4だけでなく、切除不能ステージ3の治療後の選択にも関係します。化学放射線療法を開始する段階で、遺伝子検査の結果を確認できるよう検体を確保しておくことが望まれます。
参考:ステージ3非小細胞肺がんの治療|肺癌診療ガイドライン2025年版
ステージ4・再発では遺伝子異常を確認して薬物療法を選ぶ
ステージ4・再発非小細胞肺がんでは、薬物療法が治療の中心です。ただし、すべての患者さんに同じ抗がん剤を使用するわけではありません。
EGFR、ALK、ROS1、BRAF V600E、MET exon14スキッピング、RET、KRAS G12C、HER2、NTRKなど、治療対象となるドライバー遺伝子異常が確認された場合は、原則として対応する分子標的薬を検討します。
対象となるドライバー遺伝子異常が確認されない場合は、PD-L1発現、腺がんか扁平上皮がんか、全身状態などに応じて、免疫チェックポイント阻害薬の単独療法、細胞障害性抗がん薬との併用療法などを選びます。
PD-L1が50%以上であっても必ず免疫療法単独になるとは限らず、症状の強さや腫瘍量、病理型などから抗がん剤との併用を選ぶ場合があります。反対にPD-L1が低い場合でも、抗がん剤との併用によって免疫療法を使用できる場合があります。
転移が脳や副腎など限られた場所に少数だけ存在する場合には、全身薬物療法に加え、手術や定位放射線治療などの局所治療を組み合わせることがあります。
ステージ4の遺伝子別治療、脳・骨転移への治療、薬が効かなくなった場合の選択、生存率については、以下の記事で詳しく解説しています。
治療方針の説明で確認したいこと
- 現在の病変は手術ですべて切除できると考えられているか
- 手術前または手術後の薬物療法は、何を目的に行うのか
- EGFR、ALK、PD-L1など、周術期治療に必要な検査が行われているか
- 治療を先に行うことで、手術が延期・中止になる可能性はあるか
- ステージ3の場合、手術を含む治療と化学放射線療法のどちらが提案されているか
- 切除不能ステージ3では、化学放射線療法後にどの薬を使用する予定か
- ステージ4では、遺伝子検査の結果を待ってから治療を開始できるか
非小細胞肺がんでは、病期だけでなく遺伝子・バイオマーカーの結果が、手術前後、切除不能ステージ3、ステージ4のすべてで治療選択に関係します。次の章では、検査する遺伝子と治療薬との関係を整理します。
小細胞肺がんの限局型・進展型治療
小細胞肺がんは、増殖が速く、早い段階からリンパ節やほかの臓器へ広がりやすい一方、薬物療法や放射線治療が効きやすいという特徴があります。
治療方針を決めるときはTNM分類によるステージに加え、胸部放射線治療を行える範囲かどうかを基準に、限局型と進展型へ分けます。
| 病型 | 病変の範囲 | 治療の中心 |
|---|---|---|
| 限局型 | 主に片側の胸部を中心とし、許容できる一つの放射線照射範囲に収まる状態 | 薬物療法と胸部放射線治療。ごく早期の一部では手術 |
| 進展型 | 限局型の範囲を超え、反対側の肺、胸水、脳、骨、肝臓などへ広がっている状態 | 免疫チェックポイント阻害薬を含む薬物療法 |
限局型と進展型は、TNM分類の特定のステージと完全に一対一で対応するものではありません。胸部の病変がどこまで広がっているか、放射線を安全に照射できる範囲か、胸水や遠隔転移があるかなどから判断します。
参考:小細胞肺癌の治療方針|肺癌診療ガイドライン2025年版
ごく早期の限局型では手術を検討する
小細胞肺がんで手術の対象になる患者さんは多くありません。ただし、TNM分類第9版で臨床ステージ1~2Aに当たり、リンパ節転移がないN0の症例では、手術を含む治療を検討します。
手術を行う場合は、肺葉切除とリンパ節郭清が基本です。小細胞肺がんは画像に写らない微小な転移が残っている可能性があるため、完全切除できても手術だけで治療を終了せず、プラチナ製剤とエトポシドなどによる術後薬物療法を行います。
画像上はN0に見えても縦隔リンパ節転移が隠れている場合があります。手術を検討するときは、PET/CTや脳MRIに加え、必要に応じてEBUS-TBNAなどで縦隔リンパ節を調べます。
呼吸機能や持病などの医学的理由で手術が難しい早期N0例では、定位放射線治療と薬物療法を組み合わせる方法を検討する場合があります。
多くの限局型では同時化学放射線療法を行う
手術の対象にならない限局型小細胞肺がんで、全身状態が保たれている場合は、薬物療法と胸部放射線治療を同じ時期に行う同時化学放射線療法が治療の中心です。
薬物療法には、シスプラチンまたはカルボプラチンなどのプラチナ製剤とエトポシドを組み合わせます。放射線治療は、可能な場合には薬物療法の早い時期から開始します。
放射線の照射方法には、1日2回照射する加速過分割照射と、1日1回照射する通常分割照射があります。治療施設の体制、照射範囲、通院の可否、年齢や全身状態などを踏まえて選択します。
同時治療は、薬物療法と放射線治療を別々の時期に行う方法より高い治療効果を期待できる一方、次のような副作用が重なる可能性があります。
- 白血球や好中球の減少による感染症
- 食道炎による飲み込みにくさや胸の痛み
- 吐き気、食欲低下、体重減少
- 放射線肺臓炎による咳、発熱、息切れ
- 腎機能低下や聴力への影響
食事や水分を取れない、発熱がある、新しい空せきや息切れが現れた場合は、治療予定日まで待たずに医療機関へ連絡します。
化学放射線療法後はデュルバルマブを検討する
同時化学放射線療法を終えた後、病状が進行しておらず、全身状態が良好な限局型小細胞肺がんでは、免疫チェックポイント阻害薬のデュルバルマブによる地固め療法を検討します。
地固め療法の目的は、化学放射線療法で確認できる病変が小さくなった後に、再発や進行をできるだけ長く抑えることです。2025年版肺癌診療ガイドラインでは、PS 0~1の患者さんに対する標準的な選択肢とされています。
デュルバルマブは通常4週間ごとに投与し、病状の進行や継続できない副作用がなければ、最大2年間行います。
免疫療法では、肺、腸、肝臓、甲状腺などに免疫による炎症が起こることがあります。とくに化学放射線療法後は、放射線肺臓炎と免疫療法による肺障害の区別が難しい場合があります。新しい咳、発熱、息切れがあるときは、自己判断で治療を続けずに相談します。
進展型では薬物療法が治療の中心になる
進展型小細胞肺がんでは、胸部だけに治療を行っても、ほかの場所にあるがん細胞を十分に治療できません。そのため、全身へ作用する薬物療法が中心になります。
全身状態が良好な場合の一次治療では、次のいずれかを使用することが一般的です。
- カルボプラチン+エトポシド+アテゾリズマブ
- シスプラチンまたはカルボプラチン+エトポシド+デュルバルマブ
プラチナ製剤とエトポシドを通常4サイクル行い、病状の進行がなければ、アテゾリズマブまたはデュルバルマブの単独投与を維持療法として継続します。
小細胞肺がんの一次治療では、非小細胞肺がんのようにPD-L1の数値が一定以上であることを免疫療法の必須条件にはしません。年齢だけで治療の可否を判断することはありませんが、全身状態、腎機能、骨髄機能、感染症、間質性肺疾患などによっては、免疫療法を使用しない方法や、薬の種類・投与量を調整した方法を選びます。
病気によって全身状態が悪化している場合には、薬物療法で病変が縮小することで生活動作が改善する可能性があります。一方、臓器機能が大きく低下している場合には、治療による感染症や治療関連死の危険が高くなるため、利益と負担を慎重に比較します。
胸部や転移部位への放射線治療を追加する場合がある
進展型でも、薬物療法によって全身の病状がよく抑えられ、胸部に病変が残っている場合は、患者さんの状態に応じて胸部放射線治療を検討することがあります。
脳転移、骨転移、気道の狭窄などによって症状がある場合は、病変の縮小や症状の軽減を目的として放射線治療を行います。脳転移では、転移の数、大きさ、場所、症状、全身の病状に応じて、全脳照射や定位放射線治療などを検討します。
予防的全脳照射は利益と負担を比較する
小細胞肺がんは、初回治療で胸部の病変がよく縮小しても、その後に脳転移が起こることがあります。画像で脳転移が確認されていない段階に脳全体へ放射線を照射する治療を、予防的全脳照射といいます。
限局型で初回治療後に完全寛解が得られた場合には、脳転移の危険を下げる目的で予防的全脳照射を検討します。
一方、頭痛、吐き気、脱毛、倦怠感などの早期副作用に加え、時間がたってから記憶力や認知機能へ影響する可能性があります。年齢、もともとの認知機能、治療効果、定期的な脳MRIを受けられるかなどを踏まえ、利益と負担を比較します。
進展型では、日本の診療ガイドライン上、薬物療法後の予防的全脳照射は原則として推奨されていません。脳MRIを定期的に行い、脳転移を早期に発見して治療する方針が選ばれます。
再発時は再発までの期間と全身状態から薬を選ぶ
小細胞肺がんは初回治療によって大きく縮小しても、再発することがあります。再発時の治療は、初回治療がどの程度効いたか、治療終了から再発までの期間、以前の副作用、全身状態などから選びます。
初回治療終了から比較的長い期間がたって再発した場合は、以前に使用したプラチナ製剤を含む治療をもう一度行う場合があります。治療中に進行した場合や、治療終了後早期に再発した場合は、異なる薬を検討します。
再発時に用いられる薬には、アムルビシン、ノギテカン、イリノテカンなどがあります。どの薬を選ぶかは、再発までの期間、血球減少、腎機能、これまでの治療歴などによって異なります。
再発小細胞肺がんに対するタルラタマブ
がん化学療法後に病状が増悪した小細胞肺がんでは、全身状態などの条件を満たす場合にタルラタマブを検討します。
タルラタマブは、小細胞肺がんの細胞に発現するDLL3と、免疫を担うT細胞のCD3の両方に結合し、T細胞をがん細胞へ誘導する二重特異性抗体です。
投与後にはサイトカイン放出症候群が起こることがあります。発熱、低血圧、頻脈、息苦しさ、低酸素状態などが主な症状です。また、意識の変化、言葉が出にくい、手の震え、けいれんなどを伴う神経系の副作用が起こる場合があります。
とくに治療初期は院内での観察や、治療施設の近くでの待機などが必要になることがあります。通院方法や家族の付き添いを含め、投与後の観察体制を治療前に確認します。
小細胞肺がんでは遺伝子検査の役割が異なる
非小細胞肺がんでは、多数のドライバー遺伝子異常を調べ、結果に対応する分子標的薬を選びます。
一方、小細胞肺がんでは、現時点でEGFRやALKなどの遺伝子異常を日常診療で幅広く検査し、一次治療の薬を選ぶ方法は確立していません。限局型・進展型、全身状態、初回治療への反応、再発までの期間が、治療選択の主な判断材料になります。
小細胞肺がんの症状、検査、限局型・進展型の治療、再発時の治療、生存率については、以下の記事で詳しく解説しています。
肺がんの遺伝子・バイオマーカー検査
非小細胞肺がんでは、がん細胞の遺伝子異常やPD-L1発現によって、効果を期待できる薬が異なります。そのため、薬物療法を検討する場合は、病理型やステージを調べるだけでなく、治療選択に関係する遺伝子・バイオマーカーを治療開始前に確認することが重要です。
検査結果は、ステージ4・再発肺がんの一次治療だけに使うものではありません。EGFRやALKなどは、手術後の再発予防治療や、切除不能ステージ3の化学放射線療法後の治療選択にも関係します。
ドライバー遺伝子異常とは
ドライバー遺伝子異常とは、がん細胞の増殖を促す原因となっている遺伝子の変化です。対応する分子標的薬がある場合は、その遺伝子異常を狙った治療を検討できます。
肺がんで調べるEGFR遺伝子変異やALK融合遺伝子などの多くは、がん細胞に後天的に生じた体細胞変異です。喫煙、受動喫煙、アスベストなどの発症リスクとは性質が異なり、検査で遺伝子異常が見つかったからといって、本人が生まれつきその変化を持っている、または家族へ遺伝するという意味ではありません。
また、ドライバー遺伝子異常は、たばこを吸ったことがない人にも見つかります。非喫煙者だから遺伝子検査が不要ということではなく、反対に喫煙歴があるから遺伝子異常がないとも限りません。
非小細胞肺がんで調べる主な遺伝子とPD-L1
2025年版肺癌診療ガイドラインでは、薬物療法を検討する非小細胞肺がんに対して、EGFR、ALK、ROS1、BRAF、MET、RET、KRAS、HER2の遺伝子検査とPD-L1検査を行うことが強く推奨されています。
| 検査項目 | 確認する主な異常 | 治療との関係 |
|---|---|---|
| EGFR | エクソン19欠失、L858R、エクソン20挿入など | 異常の種類と病期に応じてEGFR阻害薬を検討。術後治療や切除不能ステージ3の治療にも関係する |
| ALK | ALK融合遺伝子 | ALK阻害薬を検討。条件を満たす完全切除例では術後治療にも関係する |
| ROS1 | ROS1融合遺伝子 | ROS1阻害薬を検討 |
| BRAF | 主にBRAF V600E変異 | BRAF阻害薬とMEK阻害薬の併用を検討 |
| MET | METエクソン14スキッピング | MET阻害薬を検討 |
| RET | RET融合遺伝子 | RET阻害薬を検討 |
| KRAS | 主にKRAS G12C変異 | 治療歴などの条件に応じてKRAS G12C阻害薬を検討 |
| HER2 | HER2遺伝子変異 | 治療歴などの条件に応じて抗HER2薬を検討 |
| NTRK | NTRK融合遺伝子 | がんの発生臓器を問わず、条件を満たす場合にTRK阻害薬を検討 |
| PD-L1 | がん細胞などに発現するPD-L1タンパク質の割合 | 免疫チェックポイント阻害薬を単独または抗がん剤と併用する際の判断材料 |
PD-L1は遺伝子異常ではなく、がん組織を免疫染色して調べるタンパク質です。一般に、腫瘍細胞のうちPD-L1が発現している割合をTPSとして示します。
治療方針を検討するときは、PD-L1 TPSを50%以上、1~49%、1%未満などに分けます。ただし、PD-L1が高ければ必ず免疫療法が効く、低ければ使用できないという検査ではありません。
ドライバー遺伝子異常の有無、腺がんか扁平上皮がんか、病変の広がり、自己免疫疾患や間質性肺疾患、全身状態なども含めて、免疫療法単独または細胞障害性抗がん薬との併用を検討します。
遺伝子は一つずつではなく同時に調べる
肺がんの遺伝子検査では、EGFRが陰性だったら次にALK、その次にROS1というように、一つずつ順番に調べる方法もあります。しかし、検査のたびに組織を使用すると、途中で検体が不足する可能性があります。
ALK、ROS1、BRAF V600E、METエクソン14スキッピング、RET、KRAS G12C、HER2などは、それぞれ見つかる頻度が高くありません。一つずつ検査すると、すべての結果がそろうまで時間がかかり、頻度の低い遺伝子異常を調べる前に組織がなくなることもあります。
そのため日本肺癌学会は、検査項目に優先順位をつけず、複数の遺伝子を同時に調べることを強く推奨しています。複数の遺伝子を一度に解析する検査を、マルチプレックス遺伝子検査またはマルチ遺伝子検査と呼びます。
PD-L1検査も、遺伝子検査とは方法が異なりますが、薬物療法を決める段階で遺伝子検査と並行して行います。
治療を急ぐ必要がある場合でも、検査結果を待たずに免疫療法を始めると、後からドライバー遺伝子異常が見つかった際の治療順序や副作用管理へ影響することがあります。
病状が許す場合は、必要な遺伝子・PD-L1の結果がいつそろうかを確認し、結果を踏まえて一次治療を決めます。
腺がん以外でも遺伝子異常が見つかることがある
治療対象となるドライバー遺伝子異常は肺腺がんで見つかることが多いものの、扁平上皮がんや肉腫様がんなど、腺がん以外の非小細胞肺がんに見つかる場合もあります。
とくにMETエクソン14スキッピングは、肺扁平上皮がんや肉腫様がんでも確認されることがあります。病理型だけを理由に検査対象を狭めず、薬物療法を検討する非小細胞肺がんでは、必要な分子診断が行われているか確認します。
組織や胸水を使って検査する
遺伝子検査には、気管支鏡検査、CTガイド下生検、手術などで採取したがん組織を使用します。胸水に十分ながん細胞が含まれている場合は、胸水から作製した検体を使用できることもあります。
一つの検体から、病理診断、免疫染色、PD-L1検査、複数の遺伝子検査を行うため、採取できた組織を計画的に使用する必要があります。
検体に含まれるがん細胞が少ない、組織が古い、保存状態が適していないなどの理由で、検査が成立しない場合もあります。「陰性」と「検査不能」は意味が異なります。
検査不能の場合や、必要な遺伝子の一部しか調べられていない場合は、次の対応を検討します。
- 残っている組織で別の検査を行えるか確認する
- 胸水など、ほかの検体を利用できないか確認する
- 安全性を検討したうえで再生検を行う
- 血液を用いた遺伝子検査を行う
血液中に流れるがん由来のDNAを調べる方法は、リキッドバイオプシーと呼ばれます。組織を採取しにくい場合や、治療後に新たな遺伝子変化を調べる場合などに利用されます。
ただし、血液中へ放出されるがん由来DNAの量が少ないと、実際には遺伝子異常があっても検出されないことがあります。血液検査で異常が見つからなかった場合に、組織検査での確認を検討することがあります。
治療が効かなくなったときに再検査する場合がある
分子標的薬を使用している間に、がん細胞へ新たな遺伝子変化が生じ、薬が効きにくくなることがあります。これを薬剤耐性といいます。
病状が進行したときは、進行した場所、以前の検査結果、使用してきた薬などに応じて、組織の再生検や血液を使った遺伝子検査を検討します。
再検査の目的は、最初の検査が間違っていたかを確認することだけではありません。治療後に新しく生じた耐性の仕組みを調べ、次に使える薬や臨床試験がないか検討するために行います。
MSI・TMBを調べる場合もある
肺がんでは頻度が高くありませんが、MSI-HighやTMB-Highが確認された固形がんに対し、一定の条件で免疫チェックポイント阻害薬を検討できる場合があります。
MSIやTMBは、PD-L1とは異なるバイオマーカーです。検査結果だけで治療が決まるわけではなく、肺がんに対する標準治療、これまでの治療歴、国内の承認条件、全身状態などを確認します。
初回のマルチ遺伝子検査とがん遺伝子パネル検査は目的が異なる
肺がんの薬物療法を選ぶ際に早い段階で行うマルチ遺伝子検査は、現在の標準治療に直結するEGFR、ALK、ROS1などを調べることが主な目的です。
これに対し、がん遺伝子パネル検査では、がん組織または血液を使い、数十から数百の遺伝子を一度に解析します。標準治療では使われていない薬や臨床試験を含め、新たな治療の手掛かりを探すために行います。
保険診療によるがん遺伝子パネル検査は、原則として、標準治療がない、または標準治療の終了が見込まれる固形がんなど、一定の条件を満たす場合が対象です。また、検査を受けても、実際に使用できる薬や参加できる臨床試験が見つからない場合があります。
参考:がん遺伝子パネル検査とは|国立がん研究センター C-CAT
検査結果の説明で確認したいこと
- どの遺伝子とバイオマーカーを調べたか
- 検査項目の一部だけでなく、必要な項目がすべて測定できたか
- 結果は陰性なのか、検体不足などによる検査不能なのか
- 見つかった遺伝子異常に対応する国内承認薬があるか
- その薬は一次治療から使うのか、前の治療後に使うのか
- PD-L1の数値と、免疫療法の選択へどう影響するか
- 病状が進行した場合に再検査が必要か
- がん遺伝子パネル検査や臨床試験を検討する時期はいつか
ステージ4肺がんでの遺伝子別治療、分子標的薬が効かなくなった場合の治療、脳転移への効果については、以下の記事で詳しく解説しています。
肺がんのステージ別生存率
肺がんの予後は、診断された時点のステージだけでなく、非小細胞肺がんと小細胞肺がんのどちらかによって大きく異なります。
非小細胞肺がんでは、早期で完全切除できる場合には根治を目指しやすい一方、遠隔転移がある場合は薬物療法を中心に病状の長期的な制御を目指します。小細胞肺がんは薬物療法や放射線治療が効きやすい反面、増殖が速く、早い段階から再発・転移しやすい性質があります。
国立がん研究センターの院内がん登録では、2014~2015年に診断された患者さんについて、次の5年ネット・サバイバルが公表されています。
| ステージ | 非小細胞肺がん 5年ネット・サバイバル |
小細胞肺がん 5年ネット・サバイバル |
|---|---|---|
| ステージ1 | 82.2% | 43.2% |
| ステージ2 | 52.6% | 28.5% |
| ステージ3 | 30.4% | 17.5% |
| ステージ4 | 9.0% | 2.2% |
ネット・サバイバルとは、肺がん以外の病気や事故などによる死亡の影響を統計的に調整し、肺がんだけが死亡原因になると仮定して算出した生存率です。死因を問わず、実際に生存していた人の割合を示す実測生存率とは異なります。
たとえば、非小細胞肺がんのステージ1における実測生存率は74.6%ですが、ネット・サバイバルは82.2%です。高齢者が多い肺がんでは、心臓病や脳血管疾患など、肺がん以外の死因による影響もあるため、使用する指標によって数値が変わります。
異なる指標で算出された数値を、同じ生存率として比較することはできません。
参考:非小細胞肺がん5年生存率|院内がん登録生存率集計結果閲覧システム
参考:小細胞肺がん5年生存率|院内がん登録生存率集計結果閲覧システム
肺がん全体の39.6%とは対象と計算方法が異なる
記事冒頭で紹介した肺がん全体の5年生存率39.6%は、2018年に診断された全国の肺がん患者さんを対象にした数値です。非小細胞肺がんと小細胞肺がん、すべてのステージが含まれています。
一方、表の数値は、全国のがん診療連携拠点病院などで2014~2015年に診断された患者さんを、非小細胞肺がんと小細胞肺がん、ステージ別に分けた5年ネット・サバイバルです。
対象となる診断年、医療機関、患者集団、計算方法が異なるため、肺がん全体の39.6%と表の数値を直接比較することはできません。
現在のステージ分類とは完全には一致しない
表の患者さんは2014~2015年に診断されており、当時使用されていたTNM分類に基づいてステージが登録されています。
一方、現在は2025年1月からTNM分類第9版が使用されています。第9版では、縦隔リンパ節転移を単一領域と複数領域に分けるなど、ステージの組み合わせが一部変更されました。
そのため、表に掲載したステージ1~4と、現在のTNM分類第9版で診断された患者さんの病状は、完全に同じ集団ではありません。病期別の大まかな傾向を知る資料として使用し、現在のステージを表の数値へそのまま当てはめないことが大切です。
公表値には現在の治療が十分反映されていない
2014~2015年の診断後、肺がんの薬物療法は大きく変化しました。
非小細胞肺がんでは、EGFR、ALK、ROS1、BRAF、MET、RET、KRAS、HER2、NTRKなどに対応する分子標的薬が増えています。免疫チェックポイント阻害薬も、ステージ4・再発だけでなく、手術前後や切除不能ステージ3の治療に用いられるようになりました。
小細胞肺がんでも、進展型に対するPD-L1阻害薬、限局型の化学放射線療法後のデュルバルマブ、再発時のタルラタマブなど、表の集計当時には一般診療で使用されていなかった治療が加わっています。
現在使用されている分子標的薬や免疫療法による長期的な治療成績は、この表へ十分に反映されていません。
ただし、新しい薬が増えたからといって、すべての患者さんが表より良好な経過をたどると断定することもできません。遺伝子異常、PD-L1、治療への反応、全身状態などによって、得られる効果は異なります。
ステージが同じでも見通しは一人ひとり異なる
生存率は、同じ病理型・ステージの多数の患者さんを集計した統計であり、個人の余命を示す数字ではありません。
非小細胞肺がんのステージ1でも、腫瘍の大きさ、病理型、肺の切除範囲、手術を受けられるかによって経過は異なります。ステージ3には、手術を組み合わせられる可能性がある病状から、切除不能として化学放射線療法を行う病状まで含まれます。
ステージ4では、さらに病状の幅が大きくなります。転移が一つの臓器に限られている場合と、脳、骨、肝臓など複数の臓器へ広がっている場合では、検討できる治療や見通しが異なります。
遺伝子異常に対応する分子標的薬があるか、PD-L1発現、脳転移の有無、呼吸機能、治療前の全身状態、薬物療法への反応なども経過へ影響します。
ステージ4肺がんの分類、完治を目指せる可能性、治療、生存率の受け止め方については、以下の記事で詳しく解説しています。
小細胞肺がんは限局型・進展型も含めて考える
小細胞肺がんの表はTNM分類のステージ別に集計されていますが、実際の治療選択では限局型と進展型という区分も用います。
限局型か進展型かは、TNM分類の特定のステージと完全に一対一で対応するものではありません。胸部の病変を一つの許容できる放射線照射範囲へ収められるかなども含めて判断します。
そのため、小細胞肺がんの見通しを確認するときは、ステージだけでなく、限局型と進展型のどちらか、化学放射線療法を行えるか、初回治療へどの程度反応したか、治療終了から再発までどの程度の期間があったかを確認します。
小細胞肺がんの限局型・進展型治療、再発時の治療、生存率については、以下の記事で詳しく解説しています。
生存率を治療の価値や余命へ置き換えない
生存率が高いステージでも再発の可能性がなくなるわけではなく、生存率が低いステージでも治療を受ける意味がないわけではありません。
進行肺がんでは、病変を完全に消すことが難しい場合でも、薬物療法や放射線治療によって進行を抑え、咳や痛みを軽減し、食事、歩行、仕事などを長く保てる場合があります。
自分の見通しを確認するときは、表の数字だけではなく、次の点について説明を受けます。
-
- 肺がんの病理型と現在のステージ
- 病変を完全に切除または根治的に照射できるか
- 治療対象となる遺伝子異常やPD-L1発現があるか
- 転移している臓器と病変の数
- 現在の治療がどの程度効いているか
- 呼吸機能や全身状態を保てているか
- 今後どのような変化があれば治療を変更するか
次の章では、手術後の息切れ、薬物療法や放射線治療の副作用など、治療が日常生活へ与える影響と、医療機関へ連絡すべき症状を解説します。
肺がん治療の副作用と生活への影響
肺がん治療の副作用は、手術、放射線治療、細胞障害性抗がん薬、分子標的薬、免疫チェックポイント阻害薬で異なります。同じ治療を受けても、症状の種類や強さ、現れる時期には個人差があります。
副作用を評価するときは、検査値だけでなく、食事や水分を取れるか、歩行や入浴を続けられるか、眠れているか、仕事や家事にどの程度支障があるかを確認します。
症状を早い段階で伝えることで、支持療法、休薬、投与日の延期、薬の変更などによって、安全に治療を続けられる場合があります。
手術後は息切れや胸の痛みが続くことがある
肺の手術後は、肺を切除したことや胸部の傷の影響により、歩行や階段昇降で息切れしやすくなることがあります。咳や深呼吸をしたときに胸が痛む、話をすると咳が出る、疲れやすいといった症状が続く場合もあります。
手術直後に痛みを避けて呼吸が浅くなり、痰を十分に出せない状態が続くと、無気肺や肺炎につながることがあります。鎮痛薬を適切に使用しながら、深呼吸、排痰、歩行などを段階的に行います。
退院後は、無理のない範囲で散歩などの軽い運動から始めます。速く歩く、坂道を上る、重い物を持つといった動作は、平地歩行より息切れしやすいため、休憩を入れながら少しずつ活動量を増やします。
肺葉切除や片肺全摘など、肺を切除した範囲が大きい場合は、手術前と同じ活動量へ戻りにくいことがあります。COPDや間質性肺疾患などがある場合は、もともとの肺機能も術後の生活へ影響します。
仕事へ戻る時期は、傷の大きさだけでなく、次の内容から判断します。
- 歩行や階段昇降でどの程度息切れするか
- 胸の痛みによって動作が制限されていないか
- 仕事で重量物を扱うか、高所作業や長距離運転があるか
- 通勤中に休憩や酸素療法が必要か
- 術後薬物療法を行う予定があるか
急に息苦しくなった、高熱や膿のような痰が出る、片脚だけが腫れる、胸の痛みが急に強くなった場合は、肺炎、気胸、血栓症などの可能性があるため、医療機関へ連絡します。
細胞障害性抗がん薬では感染症や食事量の低下に注意する
細胞障害性抗がん薬では、骨髄抑制、吐き気、食欲低下、口内炎、便秘、下痢、脱毛、だるさ、しびれなどが起こることがあります。使用する薬の組み合わせによって、現れやすい副作用は異なります。
白血球・好中球の減少
白血球や好中球が減ると、感染症にかかりやすくなります。血液検査を受けるまで自覚症状がない場合もありますが、発熱、悪寒、咳、痰、排尿時の痛みなどが感染症の手掛かりになります。
38℃以上、または治療施設から指定された体温以上の発熱がある場合は、解熱剤だけで様子を見ず、夜間・休日を含めて指定された連絡先へ相談します。
感染を完全に防ぐことはできませんが、手洗い、口腔ケア、食事前後の衛生管理を行い、好中球が少ない時期には人混みや感染症患者との接触をできる範囲で避けます。
吐き気・食欲低下・体重減少
シスプラチンなどを含む治療では、吐き気や嘔吐が問題になることがあります。現在は予防的に複数の制吐薬を使用しますが、治療当日だけでなく、数日後に吐き気が強くなる場合もあります。
食事を一度に取れないときは、少量を複数回に分け、においが少なく食べやすい物を選びます。食事内容を完璧に整えることより、水分と最低限のエネルギーを確保することを優先する時期もあります。
水分を取れない、尿量が減った、短期間で体重が低下した、処方された吐き気止めを使用しても嘔吐が続く場合は、点滴や薬の調整が必要になることがあります。
薬ごとに異なる臓器への影響
プラチナ製剤のうち、シスプラチンでは腎機能低下、聴力低下、強い吐き気などに注意します。治療前後に点滴を行い、水分を確保して腎臓への負担を減らす場合があります。
カルボプラチンでは、腎臓への負担がシスプラチンより少ない傾向がある一方、血小板などの血球減少が問題になることがあります。
パクリタキセルなどでは、手足のしびれや筋肉痛、関節痛が現れる場合があります。箸を使いにくい、ボタンを留めにくい、足の裏の感覚が鈍い、つまずくといった変化があれば、生活への影響が大きくなる前に伝えます。
薬によっては腎機能、聴力、末梢神経への影響が治療後も残ることがあります。血液検査が許容範囲であっても、日常動作に支障が出ている場合は治療量の調整を相談します。
分子標的薬では薬ごとに異なる副作用が現れる
分子標的薬は、対応する遺伝子異常を持つがん細胞へ作用しますが、標的となる分子は正常な細胞にも存在するため、副作用が起こります。
EGFR阻害薬では、顔や胸、背中などの発疹、皮膚の乾燥、爪の周囲の炎症、下痢、口内炎などがみられます。発疹は見た目だけの問題ではなく、人に会うことが負担になる、指先の痛みで家事や仕事が難しくなるなど、生活へ影響することがあります。
ALK、ROS1、MET、RETなどを標的とする薬では、薬によって、むくみ、肝機能障害、便秘、下痢、視覚の変化、脈拍低下、高血圧などが起こる場合があります。HER2を標的とする薬では、血球減少や吐き気、肺障害などにも注意します。
分子標的薬は内服薬が多いものの、副作用が軽い治療という意味ではありません。治療開始後は血液検査、心電図、心臓超音波検査などを、薬の特徴に応じて行います。
発疹や下痢などが強い場合は、症状を抑える薬を使用するほか、休薬や減量を検討します。飲み忘れた分をまとめて服用したり、自己判断で服用回数を変更したりしないでください。
薬剤性肺障害では新しい空せきや息切れが手掛かりになる
細胞障害性抗がん薬、分子標的薬、免疫チェックポイント阻害薬のいずれでも、肺に炎症が起こる薬剤性肺障害や間質性肺炎が生じることがあります。
肺がんそのもの、細菌・ウイルス性肺炎、心不全、肺血栓塞栓症、放射線肺臓炎でも似た症状が現れるため、自分で原因を判断することはできません。
次の症状が新しく現れた場合は、軽い段階でも治療施設へ連絡します。
- 痰を伴わない空せき
- 以前は問題なかった歩行や階段での息切れ
- 安静にしていても息苦しい
- 原因の分からない発熱
- 血液中の酸素飽和度が普段より低い
薬剤性肺障害が疑われる場合は、原因と考えられる薬を中止し、胸部CT、血液検査、酸素状態などを確認します。重症度によっては入院し、副腎皮質ステロイドなどによる治療を行います。
「肺がんがあるから咳や息切れは仕方がない」と考え、次の診察まで待たないことが重要です。
参考:呼吸困難・咳・痰|国立がん研究センター がん情報サービス
免疫チェックポイント阻害薬では免疫関連副作用に注意する
免疫チェックポイント阻害薬では、活性化された免疫が正常な臓器を攻撃し、肺、腸、肝臓、皮膚、甲状腺、下垂体、副腎、膵臓、心臓、神経、筋肉などに炎症が起こることがあります。
症状が現れる臓器や時期を予測することは難しく、治療開始直後だけでなく、治療を長く続けた後や、治療終了後に現れる場合もあります。
次のような変化がある場合は、治療との関係がなさそうに見えても医療機関へ伝えます。
- 新しい咳、息切れ、胸の痛み
- 下痢、排便回数の増加、腹痛、血便
- 皮膚や白目が黄色い、尿の色が濃い
- 強いだるさ、食欲低下、頭痛、めまい
- 異常な喉の渇き、尿量の増加、急な体重変化
- 動悸、脈の乱れ、胸部の圧迫感
- 手足に力が入らない、歩きにくい、物が二重に見える
- 意識がぼんやりする、言動が普段と異なる
免疫チェックポイント阻害薬の副作用への対応は、細胞障害性抗がん薬とは異なります。
細胞障害性抗がん薬や一部の分子標的薬では減量する場合がありますが、免疫チェックポイント阻害薬では通常、投与量を段階的に減らす方法は取りません。重症度に応じて休薬または中止し、副腎皮質ステロイドや免疫抑制薬などを使用します。
ほかの医療機関や救急外来を受診するときも、現在または過去に免疫チェックポイント阻害薬を使用していたことを伝えます。
参考:免疫療法 もっと詳しく|国立がん研究センター がん情報サービス
放射線治療では食道炎と放射線肺臓炎が生活へ影響する
胸部放射線治療では、照射範囲に食道が含まれると、治療開始から数週間後に飲み込みにくさや胸の痛みが現れることがあります。
熱い物、辛い物、硬い物が刺激になる場合は、冷ましたスープ、やわらかい麺、豆腐、ゼリーなど、飲み込みやすい食品を選びます。水分も飲めない、体重が急に減った、痛みで食事を取れない場合は、鎮痛薬、粘膜保護薬、補液、栄養支援などを検討します。
放射線肺臓炎は、照射中よりも治療終了後の数週間から数カ月後に現れる場合があります。空せき、発熱、息切れなどが主な症状です。
薬物療法を併用または継続している場合は、放射線肺臓炎と薬剤性肺障害の区別が難しいことがあります。症状が現れた時期、照射した範囲、CT画像、使用薬などから判断します。
副作用による休薬や減量は治療の失敗ではない
肺がんの薬物療法は、予定された量を一度も変更せずに続けることだけが目標ではありません。
副作用によって呼吸機能や臓器機能が低下すると、その後に必要な治療を受けられなくなる可能性があります。症状や検査結果に応じて、投与を延期する、薬を減量する、原因となる薬だけを中止する、治療法を変更するといった対応を行います。
分子標的薬では、副作用を抑えながら長く治療を続けるために減量する場合があります。免疫チェックポイント阻害薬では、前述のとおり、通常は減量ではなく休薬・中止で対応します。
治療を調整するときは、次の内容を確認します。
- 今回の調整は、どの副作用や検査異常が理由か
- 休薬後に同じ薬を再開できる可能性があるか
- 減量によって期待される効果と副作用はどう変わるか
- 中止した場合に、次に選べる治療があるか
- 症状が改善するまで自宅で何を記録すればよいか
仕事や家事は治療日に合わせて調整する
薬物療法の副作用は、投与直後だけでなく、数日後に強くなる場合があります。治療前に「投与後何日目に吐き気や血球減少が起こりやすいか」を確認すると、仕事や家事の予定を組みやすくなります。
点滴治療では、診察や採血を含めて長時間の通院が必要になる場合があります。胸部放射線治療では、平日の通院が数週間続くことがあります。内服の分子標的薬では通院回数が少なくても、毎日の服薬管理と副作用の観察が必要です。
息切れやだるさがあるときは、すべてを治療前と同じように行おうとせず、活動を小分けにします。調理や入浴の前に休む、座ってできる作業へ変える、移動時にエレベーターを使うなど、消費する体力を調整します。
車の運転については、眠気、視覚障害、めまい、手足のしびれ、鎮痛薬の使用などがある場合に制限が必要なことがあります。使用薬ごとの注意事項を医師や薬剤師へ確認します。
呼吸リハビリと栄養管理で治療を続ける力を保つ
肺がんや治療によって息切れがあると、動くことを避け、筋力が低下し、さらに息切れしやすくなる悪循環が起こることがあります。
病状が安定している場合は、医師や理学療法士の指導のもと、歩行、下肢の筋力訓練、呼吸法などを行います。運動量は酸素状態や息切れを確認しながら調整し、急に強い運動を始めないようにします。
食欲低下や飲み込みにくさがある場合は、体重が大きく減る前に栄養士へ相談します。筋肉量の減少は、歩行能力や治療への耐えやすさにも影響します。
治療中は、次の内容を記録しておくと診察時に伝えやすくなります。
- 体温と酸素飽和度
- 咳、痰、息切れの変化
- 食事量、水分量、体重
- 下痢や排便回数
- 発疹、むくみ、しびれ
- 歩行、入浴、仕事などで困ったこと
- 症状が治療後何日目に始まったか
副作用は、我慢できるかどうかだけで評価するものではありません。生活のどの動作ができなくなったかを具体的に伝えることが、治療の安全性と継続可能性を判断する材料になります。
肺がんの緩和ケア・支持療法
緩和ケアは、抗がん治療を終えた後だけに受ける医療ではありません。肺がんと診断された時点から、手術、放射線治療、薬物療法と並行して利用できます。
支持療法は、肺がんによる症状や、治療に伴う副作用・合併症を予防、軽減するための治療です。緩和ケアでは身体症状だけでなく、不安、仕事、家族関係、治療費、療養場所などの問題も扱います。
とくに進行・再発肺がんでは、息苦しさ、咳、痛み、食欲低下などが治療の継続や日常生活へ直接影響します。症状が強くなってから相談するのではなく、生活に支障が出始めた段階で原因を確認し、早めに対処することが大切です。
息苦しさは原因によって対処法が異なる
肺がん患者さんの息苦しさには、さまざまな原因があります。
- がんによる気管や気管支の狭窄
- 胸水や心嚢水の貯留
- 肺炎などの感染症
- 肺血栓塞栓症
- 貧血や心不全
- 放射線肺臓炎や薬剤性肺障害
- COPDや間質性肺疾患などの持病
- 筋力や体力の低下
- 不安や緊張による呼吸の乱れ
原因によって治療が異なるため、息苦しさがあるからといって、すぐに酸素吸入だけを行えばよいとは限りません。診察、酸素飽和度、胸部画像、血液検査などによって原因を確認します。
血液中の酸素が不足している場合は、酸素吸入を行います。ただし、酸素飽和度が保たれていても強い息苦しさを感じることがあります。その場合は、姿勢や呼吸法の調整、薬物療法などを組み合わせます。
息苦しさが強い場合には、症状を和らげる目的でモルヒネなどの医療用麻薬を少量から使用することがあります。医療用麻薬は痛みだけに使用する薬ではありません。医師が症状や全身状態を確認し、眠気、吐き気、便秘などへ対応しながら量を調整します。
胸水がたまった場合は排液や再貯留を防ぐ治療を検討する
肺を包む胸膜の間に水がたまる状態を胸水といいます。胸水が増えると肺が十分に広がらず、息苦しさ、咳、胸の圧迫感などが現れることがあります。
症状がある場合は、針やチューブを胸腔へ入れて胸水を抜く胸腔穿刺・胸腔ドレナージを行います。排液によって息苦しさがどの程度改善するかも、その後の治療を考える材料になります。
胸水を一度抜けば再びたまらないとは限りません。排液後にどの程度の期間で再貯留したか、肺が十分に広がるか、全身状態、今後の薬物療法などを踏まえて方針を決めます。胸水が繰り返したまる場合には、胸膜を癒着させて水がたまる空間を減らす胸膜癒着術や、留置カテーテルなどを検討することがあります。
気道が狭い場合は放射線治療や気管支鏡治療を検討する
肺がんが気管や太い気管支を狭くすると、強い息苦しさ、喘鳴、肺炎、血痰などが起こることがあります。
病変の位置や広がりに応じて、薬物療法や放射線治療で腫瘍を縮小させるほか、気管支鏡を使って病変を取り除く処置、レーザーなどによる焼灼、気道を広げるステント留置を検討する場合があります。
どの方法が適するかは、狭窄している場所、緊急性、肺の先に感染や無気肺があるか、今後の全身治療などから判断します。
息苦しさが急に悪化した、会話が難しい、横になると呼吸できないなどの場合は、通常の予約日を待たずに医療機関へ連絡します。
咳や痰は性質を確認して治療する
咳は、腫瘍による気道刺激、感染症、胸水、薬剤性肺障害、放射線肺臓炎、COPDなどによって起こります。
診察では、痰を伴うか、乾いた咳か、血が混じっているか、発熱や息切れを伴うかを確認します。咳が強い場合は、一般的な鎮咳薬に加え、コデインやモルヒネなどを使用する場合があります。痰が粘って出しにくい場合は、去痰薬、水分摂取、加湿、排痰法などを組み合わせます。
痰がたまると気道が狭くなり、肺炎の危険も高くなります。理学療法士や看護師から、痰を出しやすい姿勢や呼吸方法の指導を受けることがあります。
薬物療法中に新しい空せきや息切れが現れた場合は、単なる肺がんの症状と考えず、薬剤性肺障害の可能性を確認します。
喀血や血痰は量と呼吸への影響で緊急度を判断する
少量の血が痰に混じる血痰が繰り返す場合は、出血している場所や原因を調べます。
大量の血を吐く喀血では、出血そのものだけでなく、血液によって気道がふさがり、呼吸できなくなる危険があります。まとまった量の血が出る、出血が止まらない、息苦しさを伴う場合は、救急受診が必要です。
出血している場所に応じて、気管支鏡による止血、出血する血管を塞ぐ気管支動脈塞栓術、放射線治療などを検討します。
出血があるときは、服用している抗凝固薬や抗血小板薬についても医療者へ伝えます。自己判断で薬を中止せず、処方した医師を含めて対応を確認してください。
参考:呼吸困難・咳・痰|国立がん研究センター がん情報サービス
痛みは原因と生活への影響を伝える
肺がんでは、胸膜や胸壁への広がり、骨転移、手術後の神経痛などによって痛みが生じることがあります。
痛み止めは、痛みの強さや原因に応じて、アセトアミノフェン、非ステロイド性抗炎症薬、医療用麻薬、神経障害性疼痛に対する薬などを組み合わせます。
医療用麻薬を使うことは、病状が終末期であることを意味しません。強い痛みを抑え、睡眠、食事、歩行などを保つために、治療中から使用できます。
骨転移の痛みには、放射線治療が有効な場合があります。骨折や脊髄圧迫の危険がある場合は、整形外科的な固定術や骨を支える薬なども検討します。
診察では、「痛い」と伝えるだけでなく、次の点を説明すると治療を調整しやすくなります。
- どこが、どのように痛むか
- いつから始まり、何をすると強くなるか
- 夜眠れるか、歩行や食事へ影響しているか
- 痛み止めを飲んで、どの程度・何時間楽になるか
- しびれ、脱力、排尿・排便障害を伴っていないか
食欲低下と体重減少は早めに対処する
肺がんや治療の影響により、食欲低下、味覚の変化、飲み込みにくさ、吐き気、息苦しさなどが重なり、食事量が減ることがあります。食事量が低下すると体重だけでなく筋肉も減り、歩行や呼吸に必要な力が低下します。息切れによって動かなくなり、さらに筋力が落ちる悪循環が起こることもあります。
呼吸が比較的楽な時間帯に食べる、一度の量を減らして回数を増やす、調理のにおいが少ない食品を選ぶなど、症状に合わせて工夫します。
放射線治療による食道炎や腫瘍による圧迫で飲み込みにくい場合は、食形態の調整だけでなく、痛み止め、粘膜保護薬、補液などが必要になることがあります。
短期間で体重が減った、食事や水分をほとんど取れない、むせが増えた場合は、医師、看護師、管理栄養士などへ相談します。
不安や気持ちの落ち込みも緩和ケアの対象になる
肺がんと診断された後は、病状、治療、副作用、家族、仕事、経済面など、さまざまな不安が生じます。息苦しさへの恐怖によって外出や入浴を避け、生活範囲が狭くなることもあります。
不安や抑うつは本人の気持ちの弱さによって生じるものではありません。症状、睡眠不足、薬の影響、先の見通しを理解できないことなどが重なっている場合があります。
担当医や看護師に相談するほか、必要に応じて心理職、精神科・心療内科、医療ソーシャルワーカー、がん相談支援センターなどの支援を利用します。
家族も、介護や治療方針への迷い、仕事との両立などで負担を抱えることがあります。緩和ケアでは、患者さん本人だけでなく家族の相談にも対応します。
自宅で受けられる支援を早めに確認する
肺がんの治療中でも、訪問診療、訪問看護、在宅酸素療法、介護保険サービスなどを利用しながら自宅で生活できる場合があります。
在宅医療は、抗がん治療をやめた人だけが利用するものではありません。通院で薬物療法を受けながら、自宅で症状管理や生活支援を受けることもあります。
病状が急に変化してから準備を始めると、希望する療養環境を整える時間が不足することがあります。次の内容を早めに確認しておくと、本人と家族の負担を減らしやすくなります。
- 夜間や休日に症状が悪化した場合の連絡先
- 訪問診療や訪問看護を利用できるか
- 酸素や医療用麻薬を自宅で管理する方法
- 家族が行うケアと、医療者へ任せられること
- 緊急時に入院できる病院があるか
- 自宅、病院、緩和ケア病棟など、希望する療養場所
緩和ケアを相談する目安
緩和ケアは、症状が非常に強くなるまで待つ必要はありません。次のような状況では、担当医や看護師へ相談しましょう。
- 息苦しさ、咳、痛みなどで眠れない
- 症状のために食事、入浴、外出が難しい
- 治療を続けたいが、副作用や体力低下が不安
- 治療の目的や今後の見通しを整理したい
- 本人と家族で治療への考え方が異なる
- 仕事、治療費、介護、子育てなどに困っている
- 通院が負担になり、在宅医療について知りたい
緩和ケアを受けることは、がんに対する治療を諦めることではありません。症状と生活上の問題を軽減し、必要な治療を受け続けるための支援でもあります。
次の章では、標準治療で効果が不十分になった場合を含め、治療の利益と負担をどのように比較し、セカンドオピニオンや臨床試験を検討するかを解説します。
肺がんの治療を選ぶときに確認すること
肺がんの治療は、ステージだけで決まるものではありません。非小細胞肺がんか小細胞肺がんか、遺伝子・バイオマーカー、病変を切除できるか、呼吸機能、全身状態、持病などによって選択肢が変わります。
治療法を比較するときは、薬や治療の新しさだけでなく、何を目指す治療なのか、どの程度の利益が期待できるのか、生活へどのような負担が生じるのかを確認します。
治療の主な目的には、次のような違いがあります。
- 手術や化学放射線療法によって根治を目指す
- 手術後の再発リスクを下げる
- 病変を縮小させ、手術や局所治療につなげる
- 進行を抑えて生存期間を延ばす
- 咳、息苦しさ、痛みなどの症状を軽減する
同じ薬物療法でも、再発予防を目的とする場合と、ステージ4・再発肺がんの進行を抑える場合では、治療効果の評価方法や治療期間が異なります。
治療を受ける場合と受けない場合を比較する
副作用が心配なときは、治療を受ける危険だけでなく、治療を行わない場合や開始を遅らせた場合に起こり得ることも確認します。
たとえば、術後薬物療法では、再発リスクをどの程度下げることが期待されるのか、治療を行わなかった場合と比べてどのような違いがあるのかを尋ねます。
切除不能ステージ3では、化学放射線療法を受けられる時期を逃すと根治を目指す治療が難しくなる可能性があります。一方、ステージ4では、遺伝子検査の結果を待ってから治療を決めた方がよい場合もあります。
治療を急ぐ必要があるか、検査結果やセカンドオピニオンを待つ時間があるかは、病状によって異なります。治療開始の期限を具体的に確認します。
次の薬を選ぶ前に検査結果を見直す
進行・再発非小細胞肺がんで治療効果が不十分になった場合は、未使用の承認薬が残っていないか、これまでに行った遺伝子検査が必要な項目を網羅しているかを確認します。
初回診断時にEGFRとALKだけを調べていた場合は、ROS1、BRAF、MET、RET、KRAS、HER2、NTRKなどが未検査の可能性があります。検体不足で検査できなかった項目がないかも確認します。
分子標的薬を使用した後に病状が進行した場合は、薬剤耐性に関係する新たな遺伝子変化を調べるため、組織の再生検や血液を用いたリキッドバイオプシーを検討することがあります。ただし、再検査を行えば必ず次の薬が見つかるわけではありません。検査の目的、組織採取の危険、結果が治療へ結び付く可能性について説明を受けます。
標準治療は効果を保証する治療ではない
標準治療とは、臨床試験などの結果から、現時点で有効性と安全性のバランスが優れていると判断され、広く推奨されている治療です。
「一般的な治療」「古い治療」という意味ではなく、新しい薬が標準治療へ組み込まれることもあります。一方、標準治療であっても、すべての患者さんに同じ効果が得られるわけではありません。
標準治療で病状を抑えられなくなった場合も、直ちに受けられる医療がなくなるわけではありません。未使用の承認薬、局所治療、再検査、臨床試験、症状を軽減する緩和ケア・支持療法などを検討します。
臨床試験は効果が確立した治療ではない
臨床試験は、新しい薬や治療法の効果と安全性を調べ、将来の標準治療をつくるために行われる研究です。
参加条件には、肺がんの病理型、ステージ、遺伝子異常、これまでに使用した薬、臓器機能、全身状態などが定められています。条件を満たしているように見えても、詳しい検査の結果によって参加できない場合があります。
また、新しい治療を受けられる臨床試験だけではありません。標準治療と新しい治療を比較する試験では、無作為に治療群が割り付けられ、本人や担当医が治療法を選べない場合があります。
臨床試験を検討するときは、次の内容を確認します。
- 試験の目的と現在の開発段階
- 標準治療と比べて何を確認する試験か
- 治療法を本人が選べるか、無作為割り付けがあるか
- 予想される副作用と、まだ分かっていない危険は何か
- 検査や通院の回数、入院の必要性
- 治療費や検査費、交通費などの負担
- 参加しない場合に選べる標準治療は何か
- 途中で参加を中止した場合、その後に受けられる治療は何か
臨床試験への参加を断ったり、途中で参加を取りやめたりしたことを理由に、通常必要な医療を受けられなくなることはありません。
参考:肺がん 臨床試験|国立がん研究センター がん情報サービス
自由診療を検討するときは標準治療との関係を確認する
自由診療には、国内で肺がんに対する有効性と安全性が確立していない治療も含まれます。「先端的」「免疫を高める」「副作用が少ない」といった説明だけでは、治療効果を判断できません。
検討するときは、治療名を具体的に確認し、肺がんのどの病理型・ステージを対象とした臨床試験があるのか、標準治療と比較して生存期間や病状の進行を抑える効果が示されているのかを確認します。
また、自由診療を受けることで、標準治療や臨床試験を受ける時期が遅れないか、薬の相互作用や副作用によって後の治療へ影響しないかも確認します。
セカンドオピニオンは転院を決める場ではない
提案された治療に迷う場合や、ほかに選択肢がないか確認したい場合は、セカンドオピニオンを利用できます。
セカンドオピニオンは、現在の担当医から診療情報の提供を受け、別の医師の意見を聞く仕組みです。必ずしも転院を前提とするものではありません。別の医師の意見を聞いた後、現在の医療機関で治療を続けることもできます。
肺がんでは、次のような場面で利用を検討できます。
- ステージ3で、手術と化学放射線療法のどちらを選ぶか迷っている
- 肺の切除範囲や術後の呼吸機能について別の意見を聞きたい
- 遺伝子検査が十分に行われているか確認したい
- 希少な遺伝子異常が見つかり、治療経験のある施設へ相談したい
- 治療変更を提案された理由や、残っている選択肢を確認したい
- 臨床試験や再生検について専門施設の意見を聞きたい
病理標本や画像データが必要になる場合があるため、紹介状だけでなく、CT・MRI・PET/CTの画像、病理診断書、遺伝子・PD-L1検査の結果、これまでの治療歴などを準備します。
参考:セカンドオピニオン|国立がん研究センター がん情報サービス
がん相談支援センターも利用できる
がん診療連携拠点病院などに設置されたがん相談支援センターでは、治療、副作用、セカンドオピニオン、臨床試験、がんゲノム医療、緩和ケア、仕事や治療費などについて相談できます。
その病院へ通院していない人や家族も、無料で相談できる場合があります。相談員が特定の治療法を決定することはありませんが、情報を整理し、どこへ相談すればよいかを考える支援を受けられます。
参考:がん相談支援センターで相談できること|国立がん研究センター がん情報サービス
診察で確認したい質問
- この治療は、何を目標に行うのか
- 自分と近い病状では、どの程度の効果が期待されるか
- 治療を受けない場合や開始を遅らせた場合、何が起こり得るか
- ほかに標準治療として選べる方法があるか
- 治療効果は、いつ、どの検査で評価するか
- どのような変化があれば治療を変更するか
- 現在の治療を変更する理由は、病状の進行、副作用、臓器機能の低下のうち、どれに当たるか
- 追加の遺伝子検査や再生検は必要か
- 臨床試験やセカンドオピニオンを検討する時間があるか
- 治療によって仕事、家事、通院へどのような影響があるか
治療を選ぶときは、すべての情報を一度に理解する必要はありません。説明を受けた内容をメモし、分からない点を再度質問したり、家族や身近な人に同席してもらったりする方法があります。
治療の医学的な利益と危険に加え、本人が保ちたい生活や避けたい負担を医療者へ伝えることが、納得できる治療選択につながります。
まとめ|治療とこれからの生活について
肺がんと診断されると「治るのか」「仕事を続けられるのか」「家族にどこまで頼ればよいのか」など、治療以外の不安も生じます。検査や治療の説明を一度ですべて理解し、自分だけで正解を決める必要はありません。
治療を選ぶときは、効果や副作用だけでなく、仕事、家事、通院、食事、趣味など、今後もできるだけ保ちたい生活を医療者へ伝えてください。「長く生きたい」「苦痛を減らしたい」「働き続けたい」「家で過ごす時間を大切にしたい」といった希望も、治療方針を考えるための大切な情報です。
分からないことがある場合は、現在の病状、治療の目的、生活に予想される影響、困ったときの連絡先を一つずつ確認します。治療中に希望や体調が変わったときは、その都度方針を話し合うことができます。
肺がんと向き合うことは、病気だけを中心に生活を組み立てることではありません。医療者や家族、相談支援サービスの力を借りながら、自分が大切にしたい時間をできるだけ保てる方法を探していきましょう。





