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RAS遺伝子変異陽性大腸がんは、がん細胞の増殖スイッチである「RAS遺伝子」に変異が起きているタイプの大腸がんです。KRAS変異は大腸がんの30~40%に認められます。初期にはほとんど症状が出ませんが、進行すると血便、便が細くなる、便秘と下痢を繰り返す、腹痛、貧血、体重減少などが現れます。RAS変異があると抗EGFR抗体薬が効かないため、使える分子標的薬が限られることが治療上の課題となります。

本ページでは、RAS遺伝子変異陽性大腸がんの特徴や原因、症状、診断(大腸内視鏡検査・RAS遺伝子検査)、そして治療の選択肢についてわかりやすく解説します。治療を検討されている方やご家族が、いまの状況に合う選択肢を整理し、納得のいく方針を考えるための一助となれば幸いです。

  • KRAS変異は大腸がんの30~40%に認められる、珍しくないタイプ
  • RAS変異があると抗EGFR抗体薬が効かず、使える薬が限られる
  • 治療方針を決めるうえでRAS遺伝子検査が欠かせない

RAS遺伝子変異陽性大腸がんとは

大腸がんは、がん細胞が持つ遺伝子の状態によっていくつかのタイプに分けられます。なかでも治療方針を大きく左右するのが、「RAS遺伝子」の変異があるかどうかです。

RASは、細胞の表面から届いた「増殖せよ」という指令を、細胞の内側へ伝えるスイッチの役割を果たす遺伝子です。正常なRASは、指令があったときだけスイッチが入ります。しかしRAS遺伝子に変異が起きると、指令がなくてもスイッチが入りっぱなしになり、がん細胞が際限なく増えていきます。この変異を持つ大腸がんが、RAS遺伝子変異陽性大腸がんです。RASにはKRASとNRASという種類がありますが、KRASの変異が大部分を占めます。

RAS変異は、珍しくない大腸がんです。KRAS変異は大腸がんの30~40%に認められると報告されています。

RASが変異していない状態を「野生型」、変異している状態を「変異型」と呼びますが、変異型では後述する一部の分子標的薬が有効ではなく、より予後が不良になりやすいことが知られています。同じ大腸がんでも、RASの状態によって治療の組み立てが変わってきます。

RAS遺伝子変異陽性大腸がんの原因

RAS遺伝子変異陽性大腸がんは、RAS遺伝子の変異がきっかけで発症しますが、なぜ変異するかはまだ解明されていません。ただ、変異したRASは増殖のスイッチが入りっぱなしになり、細胞が増えていきます。

大腸がんは、いくつかの遺伝子変異が段階的に積み重なって発生することが分かっています。まず「APC」という遺伝子の異常で良性のポリープができ、そこにRASの変異が加わって増殖が加速し、さらに別の遺伝子の異常が重なって悪性化していく、という流れです。

ここで、その最後の段階で重要になるのが、がん細胞の暴走を食い止める「ブレーキ役」の、がん抑制遺伝子「p53(TP53)」です。p53はDNAに傷がついた細胞を修復させ、修復できないものは自然死(アポトーシス)へと導きます。p53が壊れると、傷ついた細胞が排除されずに生き残ってしまいます。

大腸がんでは、このp53変異が高い割合で起こります。TP53変異は転移のあるRAS遺伝子変異陽性大腸がんの約28%に認められると報告されています。

さらに、RASとTP53の両方に変異を持つ患者様は、標準的な化学療法への効果が弱く、術後の再発・転移を起こしやすいことも報告されています。

つまりアクセル(RAS)が入りっぱなしであるだけでなく、ブレーキ(p53)まで故障してしまう場合があり、それが治療の難しさにつながっているのです。

RAS遺伝子変異陽性大腸がんの診断

「(無)症状」から「確定診断」まで

大腸がんは、初期にはほとんど症状が出ません。進行してくると、血便、便が細くなる、便秘と下痢を繰り返す、腹痛、貧血、体重減少といった症状が現れます。

ただ、これらは痔や胃腸炎でも起こるため、見過ごされがちです。肛門から距離がある結腸にできたがんは症状が出にくく、肛門に近い直腸にできたがんは血便で気づかれやすいなど、部位によって症状の違いもあります。また、健康診断の便潜血検査が陽性となり、精密検査をすると偶然見つかる場合も少なくありません。

異常が疑われた場合、大腸内視鏡検査(大腸カメラ)で腸の中を観察し、疑わしい部分の組織を採取する生検を行います。採取した組織を顕微鏡で調べる病理検査で、大腸がんの診断を確定します。肝転移や肺転移など遠隔転移の評価にはCT検査やMRI検査などを用います。

RAS遺伝子検査という重要なステップ

大腸がん、特に転移をきたした大腸がんの治療方針を決めるうえで欠かせないのが、RAS遺伝子検査です。

採取したがん組織を使い、RAS遺伝子に変異があるかどうかを調べます。この検査は、BRAF遺伝子なども含め、特定の薬物による効果が見込めるかどうかを見極める「コンパニオン診断」と呼ばれます。

この検査が重要なのは、その結果により使用できる薬物が変わるからです。後述する抗EGFR抗体薬は、RASが変異していない野生型の患者様にしか効果が発揮されません。つまりRAS変異が見つかれば、抗EGFR抗体薬は最初から選択肢から外れます。

ステージ(病期)の確定

大腸がんのステージは、がんが腸の壁のどの深さまで達しているか(T)、リンパ節転移(N)、肝臓や肺などへの遠隔転移(M)を組み合わせて、0期~Ⅳ期に分類されます。RAS変異陽性大腸がんは、診断時にすでに肝転移や肺転移などをきたした状態で見つかることもあり、病期が予後を大きく左右します。

RAS遺伝子変異陽性大腸がんの一般的な治療法

早期であれば手術(内視鏡的切除または外科的切除)が主な治療法で、進行度に応じて薬物療法を組み合わせます。一方、診断時にすでに転移している場合や、術後に再発した場合は、薬物療法が治療の中心になります。

大腸がんの薬物療法は、複数の抗がん剤(フルオロウラシル、オキサリプラチン、イリノテカンなど)を組み合わせた化学療法を土台に、分子標的薬を上乗せするのが一般的です。

分子標的薬には、血管の新生を抑える「抗VEGF抗体薬(ベバシズマブ)」と、EGFRという増殖の入り口を狙う「抗EGFR抗体薬(セツキシマブ、パニツムマブ)」などがあります。

ここでRASの状態が決定的な意味を持ちます。抗EGFR抗体薬はEGFRの入り口をふさぐ薬ですが、RASはそのEGFRよりも下流にあるスイッチです。RASが変異してスイッチが入りっぱなしになっていると、入り口をふさいでも下流でRAS変異による増殖の信号が出続けるため、抗EGFR抗体薬は効果が発揮されません。

RAS遺伝子変異陽性大腸がんにおける保険診療の限界

RAS変異陽性大腸がんには化学療法と一部の分子標的薬という選択肢がありますが、保険診療にはいくつもの壁があります。

使える分子標的薬が限られる

最大の制約が、標的薬の選択肢の狭さです。大腸がんに使える分子標的薬のうち、抗EGFR抗体薬は前述のとおりRAS変異があると効果がありません。つまりRAS変異陽性の患者様は、有力な武器の一つを最初から失っているのです。すなわち、RAS遺伝子変異陽性大腸がんは「有効な薬物が限られる」タイプの大腸がんです。

使える薬をいずれ使い切ってしまう

化学療法と抗VEGF抗体薬を組み合わせても、多くの患者様でいずれ効果が薄れ、がんが再び増え始めます。一次治療、二次治療と薬を切り替えていきますが、大腸がんの標準的なレジメン(治療薬の組み合わせ)は無限にあるわけではありません。いくつかのレジメンを使い切ると、「保険診療ではもう有効な手立てがない」と説明される場面が訪れます。

手術後の高い再発率

早期に発見され、手術で取りきれたとしても、大腸がんは再発しうる疾患です。特にRAS変異を持つ場合、再発のリスクは軽視できません。ステージⅢの大腸がんでは、根治手術に術後補助化学療法を加えても、およそ17%の患者様が3年以内に再発すると報告されています。すなわち約5人に1人は再発するという計算です。手術と抗がん剤という標準的な手立てを尽くしてもなお、これだけの再発リスクが残ります。

しかも前述のとおり、RASとp53の両方に変異があると化学療法が効きにくく、術後の再発・転移を起こしやすいことも報告されています。さらに標準治療後に再発した場合、保険診療内で選べる有効な手立ては限られてしまいます。

化学療法に伴う「きつい」副作用

抗がん剤では、吐き気、強い倦怠感、食欲不振、脱毛、手足のしびれ(末梢神経障害)、下痢、骨髄抑制による感染症リスクなどが起こりえます。長期にわたる治療により、身体的・精神的な負担から治療の継続が難しくなり、生活の質(QOL)が損なわれるリスクがあります。

RAS遺伝子変異陽性大腸がんで重要な新しい治療の考え方

ここまで述べたように、RAS変異陽性大腸がんは、使える分子標的薬が限られ、再発のリスクも残るという固有の課題を抱えています。

がん中央クリニックグループでは、こうした課題に対して、標準治療とは作用の仕方が異なる治療を選択肢としてご提案しています。

分子レベルの異常にアプローチする「核酸医薬(アプタマー・miR-34a mimic)」

がんの発生や進行に関わる分子レベルの異常へ直接働きかける「核酸医薬」は、世界的に研究と臨床応用が進んでいます。当グループでは治療選択肢として、「アプタマー」「miR-34a mimic」といった核酸医薬を取り入れた治療を提供しております。

アプタマー核酸医薬」は、がん細胞に特有の異常なタンパク質にピンポイントで結合し、その働きをブロックすることで、がんの増殖抑制や死滅を狙う治療薬です。一方で「miR-34a mimic核酸医薬」は、がん化によって失われてしまった「体が本来持っているがんを抑制する力」を補い、がんの成長を止め、自然な細胞死(アポトーシス)を促す治療薬です。

RAS変異陽性大腸がんでp53変異が高頻度に併存することは、先に述べたとおりです。miR-34a mimicは、miR-34aと同じ働きをする分子を外部から補充することで、p53というブレーキが壊れた細胞に対しても、その先の経路から直接ブレーキをかけ直すことを狙います。RASという「アクセル」だけでなく、失われた「ブレーキ」の側から攻めるという発想です。

がん中央クリニックグループでは、がん種ごとに標的となる遺伝子を指定して核酸医薬を設計し、患者様一人ひとりの状態に合わせた治療をご提案しています。複数の核酸医薬を組み合わせて使い分けられる点も、特徴のひとつです。

免疫の「盾」を外す「ハイブリッド免疫療法」

ハイブリッド免疫療法は、がん細胞が免疫の攻撃から逃れるために使う「盾」、すなわち免疫ブロックタンパク質「PD-L1」を標的とする治療です。

RAS変異陽性大腸がんにはPD-L1が一定の割合で発現しています。大腸がんのPD-L1陽性率(1%以上変異を認める確率)は、約15%と報告されています。つまり6~7人中1人の方がハイブリッド免疫療法による効果が期待できる可能性があるということです。

ハイブリッド免疫療法は、このPD-L1を内側と外側の両方から無力化します。まず、がん細胞の表面に出ているPD-L1に結合し、免疫の攻撃を妨げる「盾」を取り払います。さらに、がん細胞の中に入り込んで、これから作られるPD-L1の設計図(mRNA)を分解し、新たな「盾」が生まれるのを防ぎます。攻撃を逃れる術を失ったがん細胞を、患者様ご自身の免疫細胞が敵として認識し、攻撃できるようになるという仕組みです。

当グループの自由診療・治療をおすすめする患者様

当グループで実施可能な治療法は、ほとんどの患者様にご検討いただけます。以下では、どのような患者様に効果が期待できるのかを解説します。ご自身の状況に照らし合わせてご検討ください。

治療方法がない、標準治療では治療困難な患者様へ

RAS変異陽性大腸がんでは、使える分子標的薬が限られることなどから、保険診療の選択肢が行き詰まることがあります。特に、いくつかのパターンの治療を使い切って次の手立てが見つからない患者様は少なくありません。

そうした場合でも、核酸医薬(アプタマー・miR-34a mimic)やハイブリッド免疫療法なら、標準治療とは異なるアプローチで治療を提供できます。これらは目立った副作用が起こりにくく体への負担が少ないため、「体力がないため抗がん剤はできません」などと説明された方にも、1つの治療の選択肢となり得ます。

また、まだ体力があるのに選択肢がなくなり、緩和治療を勧められている方にとっても、新たな選択肢として検討いただけます。

保険診療(標準治療)との併用で相乗効果が期待

核酸医薬とハイブリッド免疫療法は、化学療法や分子標的薬と併用でき、相乗効果が期待できます。化学療法や分子標的薬がすでに存在するタンパク質やシグナルに作用するのに対し、核酸医薬はそれらが作られる前の遺伝子レベルに作用します。ハイブリッド免疫療法は、PD-L1という別の標的を叩きます。攻撃するポイントが異なるため、組み合わせることでより高い効果が期待できると考えています。

このように、RAS変異陽性大腸がんの完治を目指すには、複数の治療法を組み合わせることが重要と考えています。標準治療を受けている患者様にとっても、これらの併用は選択肢のひとつとして検討いただけると考えています。

再発を抑制・防止するために手術前後の患者様

早期がんで手術を受けた場合でも、RAS変異陽性大腸がんは再発しうる疾患です。国内のステージⅢ結腸がん患者様を対象とした研究では、手術のみを受けた場合、約40%の方が3年以内に再発するリスクがあります。また、手術後に補助化学療法を行っても、再発する患者様は17%程度いらっしゃいます。さらに抗がん剤には副作用があるため、体力に不安のある高齢の患者様には、術後補助化学療法の完遂が難しいこともあります。

こうした背景から、手術前後に核酸医薬(アプタマー・miR-34a mimic)とハイブリッド免疫療法を併用することは、再発リスクを下げるひとつの選択肢として検討いただけます。

副作用が不安な患者様

核酸医薬(アプタマー・miR-34a mimic)とハイブリッド免疫療法は、目立った副作用が起こりにくい治療です。化学療法で起きやすい嘔気、食欲不振、倦怠感、脱毛、手足のしびれ、下痢、貧血、命に関わる副作用などはほとんど起こりません。核酸医薬の副作用としては、一時的な微熱、頭痛、アレルギー反応(0.3%以下)などが挙げられます。ハイブリッド免疫療法では、治療部位の反応などが見られることがあります。

解熱鎮痛剤など薬物を使う場合もありますが、自然と改善する副作用が大半で、治療の継続に支障をきたすことはありません。「体力面や仕事面で副作用の不安がある」「標準治療を続けながら副作用をできるかぎり抑えたい」という方にも受けていただける治療です。

RAS遺伝子変異陽性大腸がんの完治を目指して、保険診療と患者様に合った自由診療を組み合わせる

RAS遺伝子変異陽性大腸がんは、使える分子標的薬が限られ、再発という壁も立ちはだかる疾患です。しかし、適切に治療を行えば完治を目指せる疾患でもあります。

発症要因にRASやp53といった遺伝子異常があるため、保険診療と核酸医薬(アプタマー・miR-34a mimic)、ハイブリッド免疫療法などを組み合わせる集学的治療が有効な選択肢となります。保険診療だけではカバーしきれない場合でも、これらの治療によって腫瘍縮小効果や再発抑制効果が期待できると考えています。

がん中央クリニックグループでは、こうした「アプタマー核酸医薬」や「miR-34a mimic 核酸医薬」をはじめ、患者様1人ひとりに合ったがん治療をご提案いたします。RAS遺伝子変異陽性大腸がんの患者様は、どのような状況の場合でも是非お気軽にご相談ください。

HER2陽性胃がんは、胃がんの中でも、がん細胞の表面に「HER2」というタンパク質が過剰につくられているタイプです。胃がん全体の15~25%を占め、HER2を狙い撃ちにする分子標的薬(トラスツズマブ)が標準治療として確立しています。初期にはほとんど症状が出ませんが、進行するとみぞおちの痛み、胃もたれ、食欲不振、体重減少、貧血、黒色便などが現れます。有効な標的薬がある一方で、薬剤耐性や治療選択肢の少なさが課題となります。

本ページでは、HER2陽性胃がんの特徴や原因、症状、診断(内視鏡検査・HER2検査)、そして治療の選択肢についてわかりやすく解説します。治療を検討されている方やご家族が、いまの状況に合う選択肢を整理し、納得のいく方針を考えるための一助となれば幸いです。

  • 胃がん全体の15~25%を占め、HER2が過剰につくられているタイプ
  • HER2を狙い撃ちにする分子標的薬(トラスツズマブ)が標準治療
  • 薬剤耐性と、使える薬の少なさが治療上の課題

HER2陽性胃がんとは

胃がんは、がん細胞の性質によっていくつかのタイプに分類されます。その中のひとつが、HER2陽性胃がんで、がん細胞の表面に「HER2タンパク」と呼ばれる特定の受容体が過剰に現れているタイプです。

HER2とは、細胞の表面に存在する「ヒト上皮成長因子受容体2型」というタンパク質であり、細胞の成長や修復を助ける働きをしています。

しかし、何らかの理由でHER2を作る遺伝子が増えると、細胞表面にHER2タンパクが大量につくられます。この状態になったがん細胞は、増殖のアクセルが踏みっぱなしの状態になり、通常よりも速いスピードで分裂・増殖を繰り返すようになります。

HER2陽性胃がんは胃がん全体の15~25%に認められ、トラスツズマブなどのHER2を標的とした抗HER2療法が標準治療として位置づけられています。

HER2陽性胃がんの原因

一般的な胃がんの発生にはピロリ菌の持続感染や塩分の過剰摂取、喫煙などが関係しています。しかし、HER2が過剰に増える具体的なメカニズムについては、まだ解明されていないのが現状です。

分子レベルでは、HER2をつくる遺伝子(ERBB2)が増幅し、細胞表面にHER2タンパクが大量に並ぶことが確認されています。その結果、細胞を増殖させる信号が常に送られ続け、がん細胞が過剰に増殖します。

ここで、もうひとつ重要な遺伝子があります。がん細胞の暴走を食い止める「ブレーキ役」の、がん抑制遺伝子「p53(TP53)」です。p53はDNAに傷がついた細胞を修復させ、修復できないものは自然死(アポトーシス)へと導きます。このp53が壊れると、傷ついた細胞が排除されずに生き残ってしまいます。

HER2陽性胃がん全体におけるTP53遺伝子変異の頻度は約80%と高頻度に認められます。つまりアクセル(HER2)が過剰であるだけでなく、ブレーキ(p53)も故障しているケースが多いということです。

HER2陽性胃がんの診断

「(無)症状」から「確定診断」まで

胃がんは、初期にはほとんど症状が出ません。進行してくると、みぞおちの痛み、胃もたれ、食欲不振、体重減少、貧血、黒色便といった症状が現れます。ただ、これらは胃炎や胃潰瘍でも起こるため、見過ごされがちです。

受診すると、まず上部消化管内視鏡検査(胃カメラ)で胃の中を観察し、疑わしい部分の組織を採取する生検を行います。採取した組織を顕微鏡で調べる病理検査で、がんの有無を確定します。転移の評価にはCT検査などを用います。

「HER2陽性」と判定されるまでの検査の流れ

胃がんと診断されたら、その組織を使ってHER2の状態を調べます。ここが治療方針を分ける重要なステップです。

最初に行うのが免疫染色(IHC法)です。HER2タンパクの染まり具合をスコア0~3+の4段階で評価します。3+は陽性、0と1+は陰性、2+は判定保留(グレーゾーン)です。

判定保留(2+)だった場合、次にFISH法を行います。蛍光色素でHER2遺伝子の数を直接数える検査で、遺伝子の増幅が確認されれば陽性と確定します。この陽性判定が、抗HER2薬による保険治療の対象となる条件です。

ステージ(病期)の確定

胃がんのステージは、胃壁のどの深さまでがんが達しているか(T)、リンパ節転移(N)、腹膜播種を含む遠隔転移(M)を組み合わせて、Ⅰ期~Ⅳ期に分類されます。

HER2陽性胃がんの一般的な治療法

早期であれば手術(内視鏡的切除または外科的切除)が中心となり、進行度に応じて薬物療法を組み合わせます。一方、進行・転移した状態や再発した場合は、薬物療法が治療の柱になります。

HER2陽性胃がんの薬物療法で軸となるのが、HER2を狙い撃ちにする分子標的薬「トラスツズマブ(商品名:ハーセプチン)」です。これを抗がん剤(フッ化ピリミジン系+プラチナ系など)と組み合わせるのが、進行例の一次治療の基本形です。

ちなみに、トラスツズマブを化学療法に追加すると、治療開始後の生存期間の中央値は、抗がん剤だけの場合の11.1ヶ月から13.8ヶ月へと約2.7ヶ月延びました。

さらに、近年はこれに免疫チェックポイント阻害薬(ペムブロリズマブ)を加える治療も登場し、トラスツズマブと化学療法に追加すると、治療開始後の生存期間の中央値は、16.9ヶ月から20.0か月と約3.1ヶ月延長したと報告されています。

HER2陽性胃がんにおける保険診療の限界

HER2陽性胃がんには抗HER2療法という有効な標的薬があるとはいえ、保険診療にはいくつもの壁があります。

トラスツズマブの効果はいつまでも続かない

抗HER2療法の問題点として、がん細胞が薬物への抵抗性を獲得し、別の経路で再び増殖する「薬剤耐性」があります。耐性が生じるメカニズムは未解明な部分も多く、時間が経つと効果が低下するケースがあります。トラスツズマブは高い治療効果を発揮するものの、腫瘍が縮小した患者様のうち、半数の方ではその効果持続期間は6.9ヶ月程度にとどまるという報告もあります。

使える薬の種類が限られる

HER2陽性であっても、その先に用意された保険の手札は多くありません。一次治療でトラスツズマブ+化学療法、二次治療以降でトラスツズマブ-デルクステカンやその他の抗がん剤、と進んでいきますが、数種類のパターンを使い切ると「保険診療ではもう手立てがない」と説明されることがあります。

化学療法に伴う「きつい」副作用

抗がん剤では、吐き気、強い倦怠感、食欲不振、脱毛、手足のしびれ、骨髄抑制による感染症リスクなどが起こりえます。トラスツズマブ自体にも、まれに心機能低下という副作用があります。胃を切除した患者様では、もともと食事量が減って栄養状態が低下しているところに副作用が重なり、治療の継続が難しくなることも少なくありません。

再発のリスクをゼロにはできない

HER2陽性胃がんに対して手術にて根治切除を行った後、再発率を低くするために術後補助化学療法という治療を行う場合があります。ステージⅡ・Ⅲ胃がんの患者様に対して手術後に術後補助化学療法を実施すると、手術後3年間で再発せずに生存していた方は約72%でした。逆に言えば、10人に約3人が3年以内に再発または死亡していたことになります。

HER2陽性胃がんで重要な新しい治療の考え方

ここまで述べてきたとおり、HER2陽性胃がんは有効な標的薬がある一方で、耐性、治療薬の選択肢の少なさ、術後再発という課題を抱えています。

がん中央クリニックグループでは、こうした課題に対して、標準治療とは作用の仕方が異なる治療を選択肢としてご提案しています。

分子レベルの異常にアプローチする「核酸医薬(アプタマー・miR-34a mimic)」

がんの発生や進行に関わる分子レベルの異常へ直接働きかける「核酸医薬」は、世界的に研究と臨床応用が進んでいます。当グループでは治療選択肢として、「アプタマー」「miR-34a mimic」といった核酸医薬を取り入れた治療を提供しております。

アプタマー核酸医薬」は、がん細胞に特有の異常なタンパク質にピンポイントで結合し、その働きをブロックすることで、がんの増殖抑制や死滅を狙う治療薬です。一方で「miR-34a mimic核酸医薬」は、がん化によって失われてしまった「体が本来持っているがんを抑制する力」を補い、がんの成長を止め、自然な細胞死(アポトーシス)を促す治療薬です。

胃がんでTP53変異が高頻度に認められることは、先に述べたとおりです。miR-34a mimicは、miR-34aと同じ働きをする分子を外部から補充することで、p53というブレーキが壊れた細胞に対しても、その先の経路から直接ブレーキをかけ直すことを狙う治療です。

がん中央クリニックグループでは、がん種ごとに標的となる遺伝子を指定して核酸医薬を設計し、患者様一人ひとりの状態に合わせた治療をご提案しています。複数の核酸医薬を組み合わせて使い分けられる点も、特徴のひとつです。

免疫の「盾」を外す「ハイブリッド免疫療法」

ハイブリッド免疫療法は、がん細胞が免疫の攻撃から逃れるために使う「盾」、すなわち免疫ブロックタンパク質「PD-L1」を標的とする治療です。

HER2陽性胃がんは、免疫療法の標的となる「PD-L1」の陽性率(CPS≥1)が約85%と非常に高いため、免疫の仕組みを活用した治療アプローチが大きな意義を持ちます。

ハイブリッド免疫療法は、このPD-L1を内側と外側の両方から無力化します。まず、がん細胞の表面に出ているPD-L1に結合し、免疫の攻撃を妨げる「盾」を取り払います。さらに、がん細胞の中に入り込んで、これから作られるPD-L1の設計図(mRNA)を分解し、新たな「盾」が生まれるのを防ぎます。攻撃を逃れる術を失ったがん細胞を、患者様ご自身の免疫細胞が敵として認識し、攻撃できるようになるという仕組みです。

ただし、保険治療ですでに免疫チェックポイント阻害薬を使用されている場合は効果が弱まる可能性があるため注意が必要です。

当グループの自由診療・治療をおすすめする患者様

当グループで実施可能な治療法は、ほとんどの患者様にご検討いただけます。以下では、どのような患者様に効果が期待できるのかを解説します。ご自身の状況に照らし合わせてご検討ください。

治療方法がない、標準治療では治療困難な患者様へ

HER2陽性胃がんでは、トラスツズマブへの耐性や数パターンの化学療法を使用した後の選択肢不足といった理由から、保険診療が行き詰まることがあります。

そうした場合でも、核酸医薬(アプタマー・miR-34a mimic)、ハイブリッド免疫療法、分子標的ワクチン療法なら、標準治療とは異なるアプローチで治療を提供できます。これらは目立った副作用が起こりにくく体への負担が少ないため、「体力がないため抗がん剤はできません」と説明された方にも、1つの選択肢となり得ます。まだ体力があるのに選択肢がなくなり、緩和を勧められている方にとっても、新たな選択肢として検討いただけます。

保険診療(標準治療)との併用で相乗効果が期待

核酸医薬、ハイブリッド免疫療法、分子標的ワクチン療法は、化学療法や標準の分子標的薬と併用でき、相乗効果が期待できます。

化学療法がすでに増殖したがん細胞や産生されたタンパク質に作用するのに対し、核酸医薬はそれらが作られる前の遺伝子レベルに作用します。

分子標的ワクチン療法は患者様自身の免疫でHER2を発現するがん細胞を攻撃し、ハイブリッド免疫療法はPD-L1という別の標的を叩きます。攻撃するポイントが異なるため、標準治療と組み合わせることでより高い効果が期待できると考えています。

HER2陽性胃がんの完治を目指すには、複数の治療法を組み合わせることが重要と考えています。標準治療を受けている患者様にとっても、これらの併用は選択肢のひとつです。

再発を抑制・防止するために手術前後の患者様

HER2陽性胃がんは、先述した通り根治手術を行っても再発しうる疾患です。また抗がん剤には副作用があるため、胃切除後で栄養状態に不安のある患者様、体力に不安のある高齢の患者様では、術後補助化学療法の完遂が難しい場合もあります。

こうした背景から、手術前後の患者様が核酸医薬(アプタマー・miR-34a mimic)、ハイブリッド免疫療法を併用することは、再発リスクを下げるひとつの選択肢として検討いただけます。

副作用が不安な患者様

核酸医薬(アプタマー・miR-34a mimic)、ハイブリッド免疫療法は、目立った副作用が起こりにくい治療です。化学療法で起きやすい嘔気、食欲不振、倦怠感、脱毛、貧血、命に関わる副作用などはほとんど起こりません。核酸医薬の副作用としては、一時的な微熱、頭痛、アレルギー反応(0.3%以下)などが挙げられます。ハイブリッド免疫療法では治療部位の反応などが見られることがあります。

解熱鎮痛剤など薬物を使う場合もありますが、自然と改善する副作用が大半で、治療の継続に支障をきたすことはありません。

「胃を切除して食事が思うようにとれない」「体力面や仕事面で副作用の不安がある」「標準治療を続けながら副作用をできるかぎり抑えたい」。当グループの治療は、そのような方にも受けていただけます。

HER2陽性胃がんの完治を目指して、保険診療と患者様に合った自由診療を組み合わせる

HER2陽性胃がんは、有効な標的薬がある一方で、耐性や再発という壁が立ちはだかる疾患です。しかし、適切に治療を行えば完治を目指せる疾患でもあります。

発症要因にHER2やp53といった遺伝子異常があるため、保険診療と核酸医薬(アプタマー・miR-34a mimic)、ハイブリッド免疫療法、分子標的ワクチン療法などを組み合わせる集学的治療が有効な選択肢となります。保険診療だけではカバーしきれない場合でも、これらの治療によって生存率や予後の改善が期待できます。

がん中央クリニックグループでは、こうした「アプタマー核酸医薬」や「miR-34a mimic 核酸医薬」をはじめ、患者様1人ひとりに合ったがん治療をご提案いたします。HER2陽性胃がんの患者様は、どのような状況の場合でも是非お気軽にご相談ください。

胆道がんは、肝臓でつくられた胆汁が流れる「胆道」に発生するがんの総称です。

一つのがんの名前ではなく、発生する場所によって、肝内胆管がん、肝門部領域胆管がん、遠位胆管がん、胆のうがん、十二指腸乳頭部がんなどに分けられます。国立がん研究センターも、これらをそれぞれ異なる病型として分類しています。

同じ「胆道がん」であっても、病変ができた場所が違えば、症状の出方も大きく変わります。肝門部領域胆管がんや遠位胆管がん、十二指腸乳頭部がんでは、胆汁の流れが妨げられて黄疸が発見のきっかけになることがあります。一方、肝内胆管がんや胆のうがんは、早い段階では自覚症状がないことも少なくありません。

さらに、発生場所によってステージ分類も手術方法も異なります。肝内胆管がんなら肝切除、遠位胆管がんや十二指腸乳頭部がんなら膵頭十二指腸切除、胆のうがんなら胆のう摘出を基本として必要に応じて肝切除などを組み合わせるというように、同じ胆道がんでも治療内容には大きな違いがあります。

一方、切除不能・再発例の薬物療法や術後補助化学療法など、複数の病型に共通して考えられる治療もあります。また近年は、がんが持つ遺伝子異常やタンパク質などのバイオマーカーも治療選択に関係するようになっています。

この記事では、胆道がんの種類と胆管がん・胆のうがんとの違いから、原因、症状、検査、ステージ、手術、胆道ドレナージ、薬物療法、バイオマーカー、生存率、再発後の治療まで順番に解説します。

参考:国立がん研究センター「胆道がんについて」

  • 胆道がんは一つのがんではなく、胆管・胆のう・十二指腸乳頭部などに発生するがんの総称
  • 発生場所によって症状、ステージ分類、手術方法が大きく異なる
  • 治療では病名やステージだけでなく「手術で完全に取り切れるか」を確認する

胆道がんとは何か

胆道とは、肝臓でつくられた胆汁を十二指腸まで運び、必要に応じて胆汁をためておくための経路や臓器をまとめた言葉です。

国立がん研究センターでは、胆道を大きく胆管、胆のう、十二指腸乳頭の3つに分けています。

胆汁は胆管を通って十二指腸へ流れる

肝臓の中には細い胆管が木の枝のように広がっています。これらが徐々に合流して太くなり、肝臓の出口で左右の肝管から総肝管へつながります。

その先で、胆のうとつながる胆のう管が合流すると総胆管となり、総胆管は膵臓の中を通って十二指腸へ向かいます。胆管と膵管が十二指腸へ開く部分が十二指腸乳頭です。

流れを簡単にすると、次のようになります。

肝臓の中の胆管

左右の肝管・総肝管

総胆管

十二指腸乳頭

十二指腸

胆のうは胆汁が必ず通る臓器ではなく、胆のう管を介して胆管につながり、胆汁を一時的にためて濃縮する袋状の臓器です。

食事をすると胆のうが収縮し、ためられていた胆汁が胆のう管から総胆管へ流れ、十二指腸へ送られます。胆汁は脂肪の消化や吸収を助けます。

胆道がんは一つの病気の名前ではない

胆道がんとは、この胆道を構成する胆管、胆のう、十二指腸乳頭などに発生するがんをまとめた総称です。

さらに胆管がんも、発生する位置によって分けられます。

胆道がん
├ 胆管がん
│ ├ 肝内胆管がん
│ └ 肝外胆管がん
│   ├ 肝門部領域胆管がん
│   └ 遠位胆管がん
├ 胆のうがん
└ 十二指腸乳頭部がん

したがって、「胆道がん」と「胆管がん」は同じ意味ではありません。

胆管がんは胆道がんの一部であり、胆のうがんや十二指腸乳頭部がんも胆道がんに含まれます。

胆管がんと胆のうがんでは見るべきポイントが違う

胆管がんでは、胆管のどこにがんがあるかによって、周囲にある血管や臓器との関係が変わります。そのため、肝内胆管がん、肝門部領域胆管がん、遠位胆管がんで、ステージ分類や手術方法も別々に考えます。

胆管がんについては、以下の記事で詳しく解説しています。

一方、胆のうがんでは、胆管のように「どこにできたか」だけでなく、がんが胆のう壁のどの層まで入り込んでいるのかが手術範囲を考える大きな判断材料になります。

胆のうがんについては、以下の記事で詳しく解説しています。

胆道がんの5つの病型

「胆道がん」という診断名だけでは、具体的な病状や治療方法まで判断することはできません。

国立がん研究センターは、胆道がんの病期について、肝内胆管がん、肝門部領域胆管がん、遠位胆管がん、胆のうがん、十二指腸乳頭部がんの5つに分けた病期表を掲載しています。

まず、それぞれの違いを整理します。

病型 発生する場所 症状の特徴 代表的な手術
肝内胆管がん 肝臓の中の胆管 早期には症状が出ないことも多い 肝切除
肝門部領域胆管がん 左右の肝管が合流する肝門部周辺 胆汁が流れにくくなり黄疸が出ることがある 肝切除+胆管切除など
遠位胆管がん 膵臓に近い側の胆管 閉塞性黄疸が発見のきっかけになることがある 膵頭十二指腸切除
胆のうがん 胆のう 早期には無症状のことが多い 胆のう摘出+必要に応じ肝切除・リンパ節郭清など
十二指腸乳頭部がん 胆管と膵管が十二指腸へ開く部分 黄疸や膵炎、それに伴う腹痛が起こることがある 膵頭十二指腸切除

症状と手術がこれだけ異なるのは、それぞれの病変の周囲にある臓器や血管が異なるためです。

肝内胆管がん|肝臓の中の胆管にできる

肝内胆管がんは、肝臓の中に張り巡らされた胆管から発生します。

肝臓から発生するため原発性肝がんの一つに分類され、「胆管細胞がん」と呼ばれることもあります。しかし肝細胞から発生する肝細胞がんとは別の病気であり、検査や治療法も異なります。

小さい段階では太い胆管を塞がないこともあり、黄疸などの症状が出ないまま、超音波やCTで肝臓の腫瘤として見つかる場合があります。

根治を目指せる場合には、がんがある部分を含めて肝臓を切除する肝切除が治療の中心になります。

肝門部領域胆管がん|胆管と重要な血管が集まる場所にできる

肝門部領域胆管がんは、左右の肝管が合流する肝門部付近に発生する胆管がんです。

この場所には胆管だけでなく、肝臓へ血液を運ぶ門脈や肝動脈などの重要な血管が集まっています。そのため、がんがどの胆管や血管へ広がっているかによって、手術可能性や切除する肝臓の範囲が変わります。

また、左右の肝臓から流れてきた胆汁が集まる場所に近いため、がんによって胆管が狭くなると黄疸が現れることがあります。

遠位胆管がん|膵臓に近い胆管にできる

遠位胆管がんは、肝門部より十二指腸側、特に膵臓に近い部分の胆管に発生します。

この部分の胆管は膵臓の中を通って十二指腸へ向かうため、根治手術では胆管だけを短く切除するのではなく、膵頭部や十二指腸などをまとめて切除する膵頭十二指腸切除が必要になることがあります。

また、細い胆管が塞がれることで閉塞性黄疸が起こり、皮膚や白目が黄色くなることが診断のきっかけになる場合があります。

胆のうがん|胆汁をためる胆のうにできる

胆のうがんは、肝臓の下にある袋状の臓器である胆のうから発生します。

早期には症状が出ないことが多く、胆石や胆のう炎、胆のうポリープを調べている際や、胆のう摘出後の病理検査で偶然見つかることもあります。

治療では、がんが胆のう壁のどこまで入り込んでいるかによって手術範囲が変わります。浅いがんなら胆のう摘出だけで治療できる場合がありますが、深く広がれば肝臓や胆管、リンパ節などの切除が必要になることがあります。

十二指腸乳頭部がん|胆管と膵管の出口にできる

十二指腸乳頭部は、胆汁を流す胆管と膵液を流す膵管が十二指腸へ開く部分です。ここにできるがんを十二指腸乳頭部がんと呼び、「乳頭部がん」「Vater乳頭部がん」と表記されることもあります。

乳頭部は胆汁と膵液の出口にあたるため、腫瘍によって流れが塞がれると黄疸だけでなく、膵液の流れが悪くなることで膵炎や腹痛が起こることがあります。

また、十二指腸の内側から観察できる場所にあるため、後述する内視鏡検査では腫瘍を直接観察し、組織を採取できる点も胆管がんや胆のうがんとの違いです。

根治手術では、膵頭部、十二指腸、下部胆管などを切除する膵頭十二指腸切除が標準的な手術となります。

自分がどの胆道がんなのかを確認する

「胆道がんです」と説明された場合、まず確認したいのは「具体的にどこから発生した胆道がんなのか」です。

「肝内胆管がん」なのか
「肝門部領域胆管がん」なのか
「遠位胆管がん」なのか
「胆のうがん」なのか
「十二指腸乳頭部がん」なのか

こうした違いによって、同じ「ステージⅡ」「ステージⅢ」という言葉でも意味する病状が違い、根治手術の方法も変わります。国立がん研究センターが病期表を5病型に分けているのも、このためです。

診断書などでは、肝内胆管がんが胆管細胞がん、肝門部領域胆管がんと遠位胆管がんがまとめて肝外胆管がんと書かれている場合もあります。

病名を確認することは単なる名称の確認ではありません。「どのステージ分類を見ればよいのか」「どの手術を考えるのか」「どの分子異常が比較的見つかりやすいのか」を理解する出発点になります。

胆道がんの原因・リスク・検診

胆道がんには、すべての患者さんに共通する一つの原因があるわけではありません。

胆管に慢性的な炎症が続く病気、胆道の生まれつきの構造異常、胆石など、発症リスクとの関連が知られている病気はいくつかありますが、明らかなリスク因子がない人にも胆道がんは発生します。

また、胆管がん、胆のうがん、十二指腸乳頭部がんでは、関連が知られている病気も同じではありません。

胆管がん|PSC・肝内結石など

胆管がんでは、原発性硬化性胆管炎(PSC)や肝内結石症など、胆管へ慢性的な炎症や胆汁うっ滞が起こる病気との関連が知られています。

また、膵管と胆管が通常とは異なる位置で合流する膵・胆管合流異常などの先天的な異常も胆道がんのリスクと関係します。

肝内胆管がんでは、肝硬変やB型・C型肝炎などの慢性肝疾患との関連も報告されています。

胆のうがん|胆石・胆のうポリープ・膵胆管合流異常など

胆のうがんでは、胆石症との関連が知られています。ただし、胆石がある人の大部分が胆のうがんになるわけではありません。

また胆のうポリープも、そのすべてががんではありません。大きさ、形、増大傾向、胆のう壁の変化などから、悪性の可能性を評価します。

膵・胆管合流異常では膵液が胆道へ逆流しやすくなり、胆のう粘膜が長期間刺激されるため、胆のうがんの発生リスクが高くなることが知られています。

十二指腸乳頭部がん|FAPとの関連が確認されている

十二指腸乳頭部がんの多くは散発的に発生し、一般の患者さんについて明確な原因を特定できるわけではありません。

一方、遺伝性疾患である家族性大腸腺腫症(FAP)では、十二指腸や十二指腸乳頭部に腺腫・がんを発症するリスクが一般人口より高いことが知られています。NCIのFAPに関する資料でも、十二指腸がんだけでなくampullary cancer(乳頭部がん)のリスク上昇が示されています。

2026年に報告されたオランダのFAP全国コホートでも、一般人口と比較して十二指腸がんと乳頭部がんの発症率が大きく高いことが確認されています。

また、乳頭部にできる腺腫は、がんへ進展する可能性がある病変として扱われます。

ただし、FAPがない人にも十二指腸乳頭部がんは発生します。「乳頭部がんになった=遺伝性の病気がある」という意味ではありません。

参考:NCI|Genetics of Colorectal Cancer PDQ2026年 FAP全国コホート研究|PubMed

リスク因子があっても胆道がんになるとは限らない

胆石、PSC、肝内結石、膵・胆管合流異常、FAPなどがあるからといって、必ず胆道がんになるわけではありません。反対に、こうした病気が一つもなくても胆道がんを発症することがあります。

したがって、リスク因子は「将来がんになるかどうかを決めるもの」ではなく、一般の人とは異なる経過観察や検査が必要かを考える材料として捉える必要があります。

一般人口を対象とした胆道がん検診はない

現在、胆道がんには、胃がん・大腸がん・肺がんなどのような国の指針に基づく対策型がん検診はありません。そのため、症状のない一般の人が毎年特定の検査を受ければ胆道がんを早期発見できる、という確立した方法はありません。

一方、PSCや膵・胆管合流異常、FAPなどの基礎疾患がある人は、その病気に応じた定期的な検査や診療を受けることがあります。これは一般人口を対象とした「胆道がん検診」とは別の考え方です。

症状がある場合は検診を探すのではなく受診する

皮膚や白目が黄色くなった、尿が濃くなった、便が白っぽくなった、右上腹部やみぞおちの痛みが続く、原因の分からない体重減少があるなどの症状がある場合には、胆道がん検診を探すのではなく医療機関を受診します。

特に黄疸に高熱や悪寒、強い腹痛を伴う場合には、胆汁がうっ滞して急性胆管炎を起こしている可能性もあります。胆管炎は重症化することがあるため、通常の定期受診まで待たず相談する必要があります。

参考:国立がん研究センター「胆道がん 予防・検診」

胆道がんの初期症状と進行時の症状

胆道がんの症状を理解するときには、「胆道がんならこの症状が出る」と一括りにしないことが必要です。

がんが胆汁の流れる太い胆管や十二指腸乳頭に発生すると、比較的小さな病変でも胆汁の通り道を塞ぐことがあります。一方、肝臓の中や胆のうに小さながんがある段階では、胆汁の本流が保たれ、特徴的な症状が現れない場合があります。

黄疸は胆汁の流れが塞がると起こる

胆道がんで代表的な症状の一つが黄疸です。

胆汁にはビリルビンという黄色い色素が含まれています。本来は胆汁と一緒に胆管を通り、十二指腸へ排出されます。

ところが、がんによって胆管が狭くなったり塞がったりすると、胆汁が正常に流れず、ビリルビンが血液中に増えます。その結果、以下のような変化が現れることがあります。

皮膚や白目が黄色くなる
尿が茶色っぽく濃くなる
便が白・灰色っぽくなる
皮膚がかゆくなる

ただし、黄疸は胆道がんだけで起こるものではありません。胆管結石、膵臓の病気、肝臓の病気などでも起こります。

また、「黄疸がある=末期」「黄疸がない=早期」と判断することもできません。腫瘍の位置によっては、小さくても胆管を塞いで黄疸が出るためです。

肝門部領域・遠位胆管がんでは黄疸が出やすい

肝門部領域胆管がんや遠位胆管がんは、胆汁が流れる胆管そのものから発生します。

特に胆汁が集中して流れる場所が狭くなると、上流側に胆汁がたまり、閉塞性黄疸が起こりやすくなります。国立がん研究センターも、肝外胆管がんでは黄疸がよくみられると説明しています。

十二指腸乳頭部がんでは黄疸や膵炎が現れることがある

十二指腸乳頭部は、胆汁だけでなく膵液も十二指腸へ流れ込む出口です。

この部分に腫瘍ができると、胆管が塞がれて黄疸が起こるだけでなく、膵管の流れが妨げられて膵炎を起こすことがあります。膵炎では、みぞおちや背中の強い痛み、吐き気などが現れる場合があります。

「胆道がんで膵炎」というと不思議に感じるかもしれませんが、胆管と膵管が同じ乳頭部付近から十二指腸へ開いているためです。

参考:日本肝胆膵外科学会|乳頭部がん

肝内胆管がん・胆のうがんは早期には症状がないことが多い

肝内胆管がんは、肝臓内部の胆管から発生します。小さい段階では太い胆管を塞がないため、黄疸などが現れないことがあります。

胆のうがんも、胆汁の本流である胆管そのものから発生するわけではないため、早期には自覚症状がないことが多いがんです。胆石や胆のう炎を調べるために受けた超音波検査や、胆のう摘出後の病理検査から胆のうがんが偶然見つかることもあります。

腹痛・食欲低下・体重減少・倦怠感などが現れる場合もある

胆道がんでは、進行に伴ってみぞおちや右上腹部の痛み、食欲不振、体重減少、全身のだるさなどが現れることがあります。しかし、これらは胆道がんだけに起こる症状ではありません。

「腹痛があるから胆道がん」「体重が減ったからがん」と判断することはできませんが、食事量や運動量を変えていないのに体重が減り続ける、腹部症状と黄疸が重なるなど、これまでになかった変化が続く場合には原因を調べる必要があります。

黄疸に発熱・悪寒が加わった場合は胆管炎にも注意

胆管が塞がって胆汁の流れが悪くなると、そこへ細菌感染が加わり急性胆管炎を起こすことがあります。胆管炎では、発熱、悪寒、黄疸、右上腹部痛などが現れ、重症になると血圧低下や意識障害につながることもあります。

胆道がんと診断されている患者さんや胆管ステントが入っている患者さんで、高熱、強い悪寒、黄疸の急な悪化などがみられた場合には、次の予約日まで待たず治療を受けている医療機関へ連絡します。

参考:日本肝胆膵外科学会|急性胆のう炎と急性胆管炎

胆道がんの検査

胆道がんの診断では、最初からすべての患者さんへ同じ検査を行うわけではありません。

一般的には、血液検査や腹部超音波で異常を確認し、CTやMRIで病変の場所と広がりを評価します。その後、疑われる病型や治療方針に応じてEUS、ERCP、内視鏡検査、病理検査などを追加します。

ここでは検査名を一つずつ詳しく覚えるよりも、「どの病型で、何を確認するためにその検査を行っているのか」を理解すると、検査結果と治療方針を結び付けやすくなります。

参考:国立がん研究センター|胆道がん 検査

最初は血液検査・超音波・CT・MRIなどで病変と広がりを調べる

血液検査では、胆汁の流れが悪くなっていないかをみるために、ビリルビン、ALP、γ-GTPなどを調べます。また、CA19-9やCEAなどの腫瘍マーカーを測定することがあります。ただし、腫瘍マーカーだけで胆道がんを診断することはできません。胆管炎や胆汁うっ滞などでも上昇し、反対にがんがあっても上昇しない場合があります。

腹部超音波では胆管の拡張、胆のう壁や胆石、肝臓の腫瘤などを確認します。異常が疑われた場合は造影CTで、がんの大きさや周囲臓器・血管への広がり、リンパ節転移、遠隔転移などを評価します。

MRIやMRCPでは、胆管や膵管の形を詳しく確認できます。CTとMRIは一方だけで完結するとは限らず、それぞれの情報を組み合わせて診断と切除可能性を評価します。

胆管がんではERCPなどで狭窄や広がりを詳しく調べる

胆管がんでは、CTやMRIだけでなく、胆管そのものへアクセスして詳しく調べる検査が必要になることがあります。

ERCP(内視鏡的逆行性胆管膵管造影)では、口から内視鏡を十二指腸まで進め、十二指腸乳頭からカテーテルを胆管へ入れます。胆管へ造影剤を注入して狭窄の形や広がりを調べるほか、胆汁の細胞診や胆管生検を行うことができます。黄疸がある場合には、そのまま胆汁を流す胆道ドレナージにつなげることもあります。

さらに必要に応じて、胆管内へ細い超音波プローブを入れるIDUSや、胆管内を直接観察するPOCSなどを使用します。

ただし、これらはすべての胆道がん患者さんに必要な検査ではありません。詳しい胆管がんの検査については「胆管がんとは?」の記事で解説しています。

胆のうがんではEUSで胆のう壁や病変を詳しく見ることがある

胆のうがんでは、腹部超音波やCT、MRIに加えてEUS(超音波内視鏡検査)を行うことがあります。

EUSは先端に超音波装置が付いた内視鏡を胃や十二指腸まで進め、体の内側から胆のうを観察する検査です。病変へ近づいて観察できるため、胆のうポリープや壁肥厚の性質、胆のう壁への深達度などを評価する際に役立ちます。

一方、胆のうがんでは、病変の位置や切除可能性などによっては手術前に組織検査を行わないこともあります。胆道がんは「がんが疑われたら全員同じ方法で生検する」病気ではありません。

さらに詳しい胆のうがんの検査については「胆のうがんとは?」の記事で解説しています。

十二指腸乳頭部がんでは内視鏡で病変を直接観察できる

十二指腸乳頭部がんは、胆管や胆のうのがんとは検査上の特徴が異なります。乳頭部は十二指腸の内側に露出しているため、内視鏡を十二指腸まで進めることで、腫瘍そのものを直接観察できます。さらに、疑わしい部分から組織を採取して病理検査を行うことも可能です。

EUSを使えば、十二指腸の壁や膵臓、胆管へどの程度広がっているかをより詳しく評価できます。ERCPでは胆管や膵管内への広がりを確認したり、黄疸に対してドレナージを行ったりすることがあります。

このように、胆道がんでも「内視鏡で腫瘍を直接見られる病型」と「胆管の中から間接的に調べる必要がある病型」があります。

PET・PET-CTはリンパ節・遠隔転移を追加評価するために行うことがある

PET・PET-CTは、FDGという放射性物質を含む薬剤を使って、糖を多く取り込む組織を画像化する検査です。

胆道がんでは、CTやMRIなどで評価したうえで、リンパ節転移や遠隔転移などを追加で確認する目的で行うことがあります。すべての患者さんに必須の検査ではなく、CT・MRIの所見や手術可能性などを踏まえて必要性を判断します。

病理診断の取り方も病型によって異なる

がんの確定診断では、採取した細胞や組織を顕微鏡で調べる病理診断が基本になります。ただし、検体の採り方は病型によって異なります。

十二指腸乳頭部がんでは、内視鏡で病変を直接見ながら生検できます。胆管がんではERCPで胆汁細胞診や胆管生検を行うことがありますが、十分な組織が取れず、がんがあっても検査で確認できない場合があります。胆のうがんでは、病変の深さや手術方針によっては、胆のう摘出後の病理検査で確定診断となる場合があります。

したがって「病理診断がまだついていない」「生検をしていない」という事実だけから、診断や治療が不十分だと判断することはできません。疑われている病型と、治療方針を決めるためにどの検査結果が必要なのかを合わせて確認します。

参考:胆道癌診療ガイドライン 第4版

胆道がんのステージ分類

胆道がんのステージを調べるときに最も気をつけたいのが、「胆道がん全体に一つのステージ表があるわけではない」という点です。

国立がん研究センターでは、胆道がんを以下の5つに分け、それぞれ別の病期表を掲載しています。

肝内胆管がん
肝門部領域胆管がん
遠位胆管がん
胆のうがん
十二指腸乳頭部がん

これは単なる分類上の違いではありません。発生する場所によって周囲の臓器や血管が違い、「どこまで広がると治療上大きな意味を持つのか」も異なるためです。

参考:国立がん研究センター|胆道がん 治療

原発巣・リンパ節・遠隔転移を組み合わせて病期を評価する

胆道がんでは、基本的に次のような情報から病気の広がりを評価します。

分類 何を評価するか
T 原発巣の大きさ・深さ・数・周囲臓器や血管への広がりなど。何を基準にするかは病型で異なる
N 領域リンパ節へ転移しているか、または転移リンパ節の数など
M 離れた臓器や遠隔リンパ節への転移があるか

ただし、Tで何を評価するかは5病型で大きく違います。

T分類で見るポイントが病型によって大きく違う

2026年8月時点で、国立がん研究センターが患者向けに掲載している病期表では、各病型で次のような違いがあります。

病型 T分類を理解するうえで主に見るポイント
肝内胆管がん 腫瘍の数や大きさ、血管・主要胆管への浸潤など
肝門部領域胆管がん 胆管壁を越えた広がり、門脈・肝動脈などへの浸潤
遠位胆管がん 胆管壁へ入り込んだ深さ、主要動脈などへの浸潤
胆のうがん 胆のう壁への深達度、肝臓側・腹腔側、周囲臓器や血管への浸潤
十二指腸乳頭部がん 乳頭部から十二指腸や膵臓などへどこまで広がっているか

したがって「T2だから、どの胆道がんでも同じくらい進んでいる」という読み方はできません。

たとえば、胆のうがんでは胆のう壁の深さが大きな意味を持ちますが、肝門部領域胆管がんでは門脈や肝動脈との位置関係が手術に直結します。

同じ「ステージⅡ・Ⅲ・Ⅳ」でも病型が違えば意味が異なる

同じステージ番号でも、含まれる病状は病型によって違います。

一部の胆道がんでは、ステージⅣであっても必ずしも遠隔転移を意味しません。多数の領域リンパ節転移や高度な局所進行がステージⅣに含まれる分類もあります。

そのため「ステージ4と書いてあったから、必ず肺や骨へ転移している」と数字だけから判断することはできません。反対に、同じステージでも、どの血管へ浸潤しているか、どの臓器へ広がっているかによって手術可能性が大きく異なる場合があります。

詳しい病期については、胆管がんと胆のうがんの記事でそれぞれ解説しています。

国立がん研究センターの現行ページでも病型によって分類が異なる

2026年8月時点で、国立がん研究センターの患者向けページでは、肝内胆管がんには日本肝癌研究会『原発性肝癌取扱い規約 第6版補訂版(2019年)』、肝門部領域胆管がん、遠位胆管がん、胆のうがん、十二指腸乳頭部がんにはUICC TNM第8版に基づく病期表が掲載されています。

一方、UICCはTNM第9版を2025年に刊行し、2026年1月1日からの使用を推奨しています。

病期表を見るときの注意
インターネットや冊子に掲載されているステージ表と、現在の診療で使われる分類・版が一致しているとは限りません。実際の診断書や病理報告書については、「どの病型に対して、どの分類・何版を使ったステージなのか」を確認してください。

治療前のcStageと手術後のpStageで変わることもある

治療前にはCT、MRI、EUS、内視鏡検査などを使って、がんの広がりやリンパ節・遠隔転移を推定します。

この治療前の情報から判断する病期を臨床病期(cStage)と呼びます。

一方、手術で摘出したがんやリンパ節を顕微鏡で詳しく調べると、画像では分からなかった小さな浸潤やリンパ節転移が見つかることがあります。この病理結果から決めるものが病理病期(pStage)です。

そのため、手術前に説明されたステージと、手術後の最終的なステージが変わることがあります。

特に胆のうがんでは、胆石や胆のう炎などで胆のうを摘出した後、病理検査によって初めてがんと深達度が分かることもあります。

ステージの数字だけを見るのではなく「どの胆道がんなのか」「cStageなのかpStageなのか」「どの分類を使っているのか」まで確認すると、自分の病状をより正確に理解できます。

参考:国立がん研究センター「胆道がん 治療」UICC「TNM Classification of Malignant Tumours」

胆道がん治療の全体像

胆道がんの治療には、手術、薬物療法、放射線治療などがあります。その中で、根治を目指せる場合に中心となるのが手術による完全切除です。

そのため胆道がんでは、ステージを確認したうえで、「手術によってがんを完全に取り切れる可能性があるか」を検討することが治療方針の大きな分岐になります。国立がん研究センターも、胆道がんではまず手術ができるかを検討し、手術できない場合には薬物療法を中心に治療すると説明しています。2025年版『胆道癌診療ガイドライン 改訂第4版』も、外科切除の可否を治療アルゴリズムの最初の大きな分岐としています。

病状 治療の基本的な考え方
切除可能 病型に応じた手術で完全切除を目指す。手術後は病理結果などから術後補助化学療法を検討する
局所進行で切除困難 薬物療法が中心。遠隔転移がない場合には放射線治療などを検討することがある
遠隔転移・再発 全身薬物療法が中心。治療歴やバイオマーカーも次の治療選択に関係する
黄疸・胆管炎を伴う 必要に応じて胆道ドレナージや感染治療を行い、手術・薬物療法を安全に進められる状態へ整える

ただし、「切除可能か」はステージ番号だけで自動的に決まるものではありません。

遠隔転移がなくても手術できない場合がある

胆道がんでは、肺や腹膜などへの遠隔転移がなければ必ず手術できるわけではありません。

たとえば肝門部領域胆管がんでは、がんが左右の胆管や門脈・肝動脈へどこまで広がっているか、がんを取り切った後に十分な肝臓を残せるかが手術可能性に関係します。

胆のうがんでは、肝臓、胆管、膵臓、十二指腸などへ広く浸潤している場合、すべてを切除しても完全切除できない、あるいは手術の負担が大きすぎると判断されることがあります。

国立がん研究センターも、胆道がんでは遠隔転移がなくても、原発巣や周囲への広がりによって技術的に切除が難しいことがあると説明しています。

したがって「手術できない」と説明された場合には、遠隔転移があるためなのか、重要な血管への広がりが問題なのか、必要な臓器を切除すると安全性を保てないためなのかまで確認すると、その後の治療方針を理解しやすくなります。

切除可能性の判断が難しい場合は専門施設への相談も選択肢

胆道がんの手術には、肝切除、胆管切除、膵頭十二指腸切除、血管を含む複雑な切除・再建など、高度な肝胆膵外科手術が必要になることがあります。

特に局所進行例では、同じ画像を見ても切除可能性の判断が施設や医師によって異なる場合があります。国立がん研究センターも、胆道がんでは手術できるかどうかの判断が施設・医師によって異なることがあり、必要に応じてセカンドオピニオンを検討できると案内しています。

そのため、大きな肝切除や複雑な血管処理を伴う手術を提案された場合や、「切除できない」と説明されたものの理由を十分理解できていない場合には、肝胆膵外科を専門とする施設で別の意見を聞くことも治療選択の一つです。

セカンドオピニオンは「現在の担当医を信用しない」という意味ではなく、切除可能性や治療選択について情報を増やすために利用できます。

参考:国立がん研究センター「胆道がん 治療」日本肝胆膵外科学会「胆道癌診療ガイドライン 改訂第4版」

黄疸がある場合の胆道ドレナージ

胆道がんでは、がんそのものへの手術や薬物療法だけでなく、胆汁を正常に流すための胆道ドレナージが治療計画の一部になる場合があります。

胆管ががんによって狭くなったり塞がったりすると、胆汁が十二指腸へ流れなくなり、黄疸やかゆみ、胆管炎などを起こします。さらに肝機能が悪化すると、手術や薬物療法を安全に行うことが難しくなる場合があります。

胆道ドレナージはがんそのものを治す処置ではない

胆道ドレナージの目的は、がんを小さくしたり消したりすることではありません。

詰まった胆道から胆汁を流し、黄疸や感染を改善して、その後のがん治療を安全に進められる状態へ整えるために行います。

そのため「抗がん剤を始める前にステントを入れる」「手術の前にドレナージをする」と説明された場合でも、がん治療が止まっているわけではありません。胆道ドレナージ自体が、その後の治療へ進むための準備になることがあります。

内ろうと外ろうがある

胆道ドレナージは、大きく内ろう(内瘻:ないろう)外ろう(外瘻:がいろう)に分けられます。

方法 胆汁の流れ
内ろう 胆管内にステントを留置し、胆汁を本来の流れに近い形で腸へ流す
外ろう 鼻や腹部から出したチューブを通して胆汁を体外へ排出する

どちらを選ぶかは、胆管が詰まっている位置、手術を予定しているか、胆管炎の有無などによって変わります。

肝門部領域胆管がんのように複数の胆管が分かれる場所では、どの胆管をドレナージするかも治療計画に関係します。こうした細かな方法については「胆管がんとは?」の記事で詳しく説明しています。

発熱・悪寒・黄疸の再悪化は胆管炎や閉塞の可能性がある

胆管ステントやドレナージチューブを留置した後も、ステントが詰まったり、細菌感染による胆管炎を起こしたりする場合があります。

高熱、悪寒、右上腹部痛、黄疸の再悪化などがみられた場合には、予定された外来まで様子を見るのではなく、治療を受けている医療機関へ相談します。

参考:国立がん研究センター「胆道がん 治療」

胆道がんの手術

「胆道がんの手術」という一つの決まった手術があるわけではありません。

どこから発生したがんかによって、切除する臓器が大きく異なるのが胆道がん手術の特徴です。国立がん研究センターも、5病型それぞれについて別の手術方法を説明しています。

病型 代表的な手術 手術を理解するポイント
肝内胆管がん 肝切除 腫瘍の位置や数に応じ、がんを含む肝臓を切除する
肝門部領域胆管がん 肝切除+肝外胆管切除など 胆管だけでなく肝臓を大きく切除し、残った胆管と腸を再建することがある
遠位胆管がん 膵頭十二指腸切除 胆管が膵頭部を通るため、膵頭部や十二指腸などをまとめて切除する
胆のうがん 胆のう摘出+必要に応じ肝切除・リンパ節郭清など 胆のう壁への深達度と周囲への広がりで切除範囲が変わる
十二指腸乳頭部がん 膵頭十二指腸切除 十二指腸、膵頭部、肝外胆管、胆のうなどを切除して再建する

参考:国立がん研究センター|胆道がん 治療

肝内胆管がんでは肝切除が中心

肝内胆管がんは肝臓内部に発生するため、切除可能であればがんとその周囲の肝臓を含めて切除します。

腫瘍の場所によって部分的な肝切除から、右葉・左葉などを大きく切除する手術まで範囲が変わります。肝門部に近い病変では、肝外胆管や胆のう、周囲リンパ節の切除を追加することもあります。

肝門部領域胆管がんでは肝臓と胆管を一緒に切除することが多い

肝門部領域には、左右の胆管だけでなく門脈や肝動脈が複雑に集まっています。

そのため、肝門部領域胆管がんでは、がんが広がっている胆管だけを切り取るのではなく、左右どちらかの肝臓、肝外胆管、胆のう、周囲のリンパ節などをまとめて切除する手術が一般的です。切除した後には、残した胆管と小腸をつなぎ、胆汁が腸へ流れるよう再建します。

大きな肝切除が必要な場合には、「がんを取り切れるか」だけでなく、手術後に残る肝臓の大きさと機能が十分かも評価します。必要に応じて、手術前に門脈塞栓術を行い、残す側の肝臓を大きくしてから手術へ進む場合があります。

遠位胆管がんと十二指腸乳頭部がんでは膵頭十二指腸切除を行う

遠位胆管と十二指腸乳頭部は、いずれも膵頭部や十二指腸に近接しています。

そのため、根治手術では膵頭十二指腸切除が中心になります。

膵頭十二指腸切除では、膵頭部、十二指腸、胆管、胆のうなどを切除した後、残った膵臓や胆管、消化管を小腸などへつなぎ直します。十二指腸乳頭部がんについても、日本肝胆膵外科学会は膵頭十二指腸切除を標準的な手術としています。

同じ手術名でも、がんの広がりや患者さんの状態によって細かな切除・再建方法は異なります。

胆のうがんは深達度によって手術範囲が変わる

胆のうがんでは、浅い早期がんであれば胆のう摘出だけで根治できる場合があります。一方、胆のう壁を越えて広がると、肝切除やリンパ節郭清を追加し、胆管などへ浸潤していればさらに切除範囲が広がる場合があります。

胆のうがんのT1a・T1b・T2a・T2bや、胆のう摘出後に偶然がんが判明した場合の追加切除については、以下の記事で詳しく説明しています。

手術の説明を受けるときには、手術名だけでなく「どの臓器を、なぜそこまで切る必要があるのか」を確認すると、治療の目的を理解しやすくなります。

切除可能胆道がんの術前・術後薬物療法

手術によって目に見える胆道がんを完全に取り切れても、その後に再発する場合があります。これは、画像や手術では確認できないごく少量のがん細胞が、手術の時点ですでに体内に存在している可能性があるためです。そのため根治切除後には、病理結果や全身状態などをもとに術後補助化学療法を検討します。

日本ではS-1が術後補助化学療法の標準治療

日本で根治切除後胆道がんの術後治療を大きく変えたのが、JCOG1202/ASCOT試験です。

この第III相試験には、肝外胆管がん、胆のうがん、十二指腸乳頭部がん、肝内胆管がんの患者さんが含まれ、手術後に経過観察を行う群とS-1を投与する群が比較されました。440人を対象とした解析では、3年全生存割合は経過観察群67.6%、S-1群77.1%で、S-1による生存期間の改善が示されました。

この結果から、JCOGはS-1が胆道がん根治手術後の標準的な術後補助療法になったとしています。

S-1を使うのは「手術でがんを取り残したから」とは限りません。完全切除できていても、目に見えない微小ながん細胞を治療し、再発リスクを下げることが術後補助療法の目的です。

参考:JCOG|JCOG1202/ASCOT 試験結果JCOG1202/ASCOT 原著|PubMed

手術をした患者さん全員に機械的にS-1を使うわけではない

JCOG1202の結果があるからといって、胆道がんの手術を受けた患者さん全員が同じようにS-1を必要とするわけではありません。試験には一定の病期・病理条件を満たした患者さんが登録されているため、ごく浅い早期がんなどまで試験結果をそのまま当てはめることはできません。

実際には、がんの深達度、リンパ節転移、切除断端、病理組織型、手術後の回復状況、肝機能・腎機能、体力などを確認して術後治療を判断します。

術前化学療法はすべての切除可能胆道がんで確立した治療ではない

「抗がん剤でがんを小さくしてから手術した方がよいのでは」と考えるかもしれません。しかし2026年8月時点では、切除可能な胆道がんすべてに術前化学療法を行うことが標準治療として確立しているわけではありません。

JCOG1920では、切除可能胆道がんを対象に、手術を先に行う治療と、GCS療法を術前に行ってから手術する治療を比較する第III相試験が行われています。なお、2026年8月時点で患者募集は終了しており、結果の公表が待たれます。

したがって、手術可能と判断された患者さんが最初に手術を受けることは「必要な抗がん剤を省略している」という意味ではありません。

参考:JCOG1920/NABICAT

切除不能・再発胆道がんの薬物療法

手術で完全に取り切ることが難しい胆道がんや、手術後に再発した胆道がんでは、全身へ作用する薬物療法が治療の中心になります。ただし、ここでも「胆道がん」という総称だけで一括りにしない方がよい部分があります。特に2026年現在の免疫療法については、胆管がん・胆のうがんと、十二指腸乳頭部がんで主要臨床試験の対象が異なる点を理解しておく必要があります。

胆管がん・胆のうがんでは化学療法+免疫療法が一次治療の重要な選択肢

切除不能・再発の胆管がん・胆のうがんでは、長くゲムシタビン+シスプラチンを組み合わせるGC療法が治療の基本となってきました。

現在は、これに免疫チェックポイント阻害薬を加える「ゲムシタビン+シスプラチン+デュルバルマブ(GCD療法)」または「ゲムシタビン+シスプラチン+ペムブロリズマブ(GCP療法)」が一次治療の重要な選択肢になっています。PMDAではデュルバルマブとペムブロリズマブについて胆道がんの最適使用推進ガイドラインが公開され、デュルバルマブ版は2026年6月にも改訂されています。

デュルバルマブを検証したTOPAZ-1試験、ペムブロリズマブを検証したKEYNOTE-966試験はいずれも、進行胆道がんに対するGC療法へ免疫療法を加えることで全生存期間を改善することを示しました。

参考:PMDA|最適使用推進ガイドライン一覧TOPAZ-1 3年追跡|PubMedKEYNOTE-966 原著|PubMed

十二指腸乳頭部がんでは免疫療法の根拠をそのまま当てはめない

TOPAZ-1では乳頭部がんが除外されており、KEYNOTE-966も対象を肝内胆管がん、肝外胆管がん、胆のうがんとして、ampullary cancer(乳頭部がん)を除外基準にしています。

したがって「胆道がんだから、十二指腸乳頭部がんにもTOPAZ-1やKEYNOTE-966とまったく同じエビデンスがある」と説明するのは正確ではありません。

参考:TOPAZ-1|ClinicalTrials.govKEYNOTE-966|ClinicalTrials.gov

一方で、十二指腸乳頭部がんが胆道がんの薬物療法研究から常に除外されてきたわけでもありません。

国内のJCOG1113/FUGA-BT試験では、肝内胆管がん、肝外胆管がん、胆のうがんとともに十二指腸乳頭部がんが対象に含まれ、GC療法とゲムシタビン+S-1(GS療法)が比較されています。

また、GCS療法とGC療法を比較したMITSUBA試験にもVater乳頭部がんが含まれています。

つまり、十二指腸乳頭部がんでも薬物療法を行いますが、治療法ごとに「その病型が臨床試験に含まれていたか」を分けて考える必要があります。

実際の治療では、病理組織型、これまでの治療、全身状態、国内の承認条件やガイドラインなどを踏まえて個別に判断します。

参考:JCOG1113/FUGA-BT|PubMedJCOG1113 病型別解析|PubMedMITSUBA/KHBO1401|PubMed

GS療法やGCS療法も選択肢になる

日本では、患者さんの状態や治療方針によって、ゲムシタビン+S-1(GS療法)や、ゲムシタビン+シスプラチン+S-1(GCS療法)も検討されます。

JCOG1113ではGS療法がGC療法に全生存期間で劣らないことが示され、GS療法はシスプラチン投与に伴う補液を必要としない点にも特徴があります。

MITSUBA試験では、GCS療法とGC療法が比較され、GCS療法による生存期間の改善が示されました。

ただし現在は免疫療法を含む治療も導入されているため、これらの試験結果だけから「どの患者さんにもGSやGCSが第一選択」と考えるものではありません。

黄疸や胆管炎がある場合は薬物療法より先に状態を整えることがある

胆管が詰まり、強い黄疸や胆管炎がある状態では、そのまま薬物療法を開始することが難しい場合があります。

必要に応じて胆道ドレナージや抗菌薬治療を行い、胆汁の流れ、感染、肝機能などを改善してから薬物療法へ進みます。2025年版胆道癌診療ガイドラインでも、閉塞性黄疸を伴う切除不能胆道がんでの薬物療法開始時期が独立した臨床課題として扱われています。

二次治療以降ではバイオマーカーも次の治療選択に関係する

一次治療でがんが進行した場合には、これまで使った薬、全身状態、臓器機能などから次の治療を考えます。

現在はそれだけでなく、がんが治療につながる分子異常を持っているかも確認する必要があります。

2026年8月の3学会合同手引きでは、胆道がんにはFGFR2融合、IDH1変異、HER2遺伝子増幅、BRAF V600E、MSI-High/dMMR、TMB-High、NTRK融合、RET融合、ALK融合など、治療選択につながり得る複数のバイオマーカーが整理されています。

そのため、進行・再発胆道がんでは「今使っている抗がん剤」の次に何を使うかだけでなく「バイオマーカー検査がどこまで済んでいるか」も治療計画の一部になります。

胆道がんのバイオマーカー・遺伝子検査

胆道がんは、同じ病名・同じステージでも、がん細胞が持っている遺伝子異常などが患者さんごとに異なります。現在は、こうした特徴をバイオマーカーとして調べ、条件が合えば分子標的薬や免疫療法へつなげられる場合があります。

2026年8月に公開された3学会合同『胆道癌患者におけるバイオマーカー検査の手引き Ver.1.0』では、胆道がんを肝内胆管がん、肝外胆管がん、胆のうがん、Vater乳頭部がんを含む多様な疾患群として捉え、治療につながるバイオマーカーと検査方法を整理しています。

参考:3学会合同|胆道癌患者におけるバイオマーカー検査の手引き 2026年8月 Ver.1.0

同じ胆道がんでも見つかりやすい分子異常には偏りがある

胆道がんのバイオマーカー検査で理解しておきたいのは、「すべての胆道がんで同じ遺伝子異常が同じ頻度で見つかるわけではない」という点です。

大まかな特徴を整理すると、次のようになります。

病型 比較的注目されるバイオマーカー
肝内胆管がん FGFR2融合遺伝子、IDH1変異など
肝外胆管がん HER2異常などがみられる場合がある
胆のうがん HER2異常が胆道がんの中では比較的みられやすい
病型をまたいで検討 BRAF V600E、MSI-High/dMMR、TMB-High、NTRK融合、RET融合、ALK融合など

これは「肝内胆管がんなら必ずFGFR2がある」「胆のうがんならHER2がある」という意味ではありません。あくまで病型によって分子異常の分布に偏りがあるため、実際には患者さんごとに検査します。

肝内胆管がんではFGFR2融合・IDH1変異が重要

肝内胆管がんでは、FGFR2融合遺伝子とIDH1遺伝子変異が特に重要な治療標的になっています。

2026年手引きでは、FGFR2融合に対してペミガチニブ、フチバチニブ、タスルグラチニブ、IDH1変異に対してイボシデニブなど、対応する国内治療薬と検査法が整理されています。

これらの検査方法や薬剤の適応条件は、胆管がんの記事で詳しく説明しています。

胆のうがん・肝外胆管がんではHER2が治療につながる場合がある

胆のうがんや肝外胆管がんでは、HER2異常が治療選択につながる場合があります。特に胆のうがんでは、HER2タンパク質の過剰発現やHER2遺伝子増幅が胆道がんの中で比較的多く報告されています。

ただし、HER2陽性、HER2タンパク過剰発現、HER2遺伝子増幅は、検査方法まで含めれば完全に同じ意味ではありません。治療薬を使用できるかは、承認された適応条件と検査結果を確認して判断します。2026年手引きでは、HER2遺伝子増幅も治療につながるバイオマーカーとして整理されています。

胆のうがんのHER2については以下の記事で詳しく説明しています。

BRAF・MSI・TMB・NTRK・RETなどは病型をまたいで治療につながる場合がある

胆道がんでは、FGFR2・IDH1・HER2以外にも、以下の遺伝子変異などが条件を満たした場合に治療選択へつながることがあります。

  • BRAF V600E
  • MSI-High/dMMR
  • TMB-High
  • NTRK融合遺伝子
  • RET融合遺伝子
  • ALK融合遺伝子

これらの異常は頻度が高いとは限りませんが、見つかった患者さんでは治療選択を大きく変える可能性があります。

「遺伝子異常が見つかった=必ずその薬を使える」ではない

検査で分子異常が見つかっても、自動的に対応する薬を使用できるわけではありません。

治療薬ごとに、どの検査法で確認する必要があるか、どの治療歴で使用できるか、現在の病状・全身状態で治療できるかなどを確認します。

また、一つの検査で検出された情報が、そのまま薬剤の適応判定に使用できない場合もあります。2026年手引きでも、検査ごとにコンパニオン診断として使用できるバイオマーカーが異なることが示されています。

バイオマーカー検査とCGPは治療に間に合う時期を考える

進行胆道がんでは、標準治療がすべて終わった後に初めて遺伝子検査を考えると、検査結果が次の治療へ間に合わない場合があります。

2026年手引きでは、国内の実臨床で二次治療へ移行できる胆道がん患者さんの割合が約44%とするデータを紹介し、一次治療開始後の適切な時期からCGPを計画する必要性を説明しています。

ただし、保険診療でCGPを目的としたがん遺伝子パネル検査を行う場合には、原則として標準治療が終了した、または終了が見込まれることなどの実施条件があります。早くから検査について相談することと、直ちに保険診療でCGPを受けられることは同じではありません。

特定の薬を使えるか判断するコンパニオン診断と、治療候補を幅広く探索するCGPでは、検査の目的や保険診療上の実施条件が異なります。

そのため進行・再発胆道がんでは「遺伝子検査をしたか」だけでなく「何を調べた検査なのか」「次の治療判断に使える結果なのか」まで確認するとよいでしょう。

参考:肝癌研究会・日本肝胆膵外科学会・日本胆道学会合同「胆道癌患者におけるバイオマーカー検査の手引き(2026年8月 Ver.1.0)」

胆道がんの放射線治療・コンバージョン手術・緩和ケア

胆道がんでは、切除可能なら手術、切除不能・再発では薬物療法が治療の大きな柱になります。放射線治療も使われることがありますが、すべての胆道がん患者さんに一律に行う治療ではありません。

2025年版胆道癌診療ガイドラインでは、切除不能胆道がんへの放射線治療・化学放射線療法はFRQ(フューチャー・リサーチ・クエスチョン:将来の研究課題)として、明確な推奨を示すにはさらに検証が必要な課題として扱われています。

参考:胆道癌診療ガイドライン 第4版

遠隔転移のない局所進行例で放射線治療を検討することがある

手術できない理由が遠隔転移ではなく、がんが周囲の血管や臓器へ局所的に広がっているためという場合には、薬物療法に加えて放射線治療や化学放射線療法を検討することがあります。

目的は、局所の腫瘍を抑えることや症状を軽減することなどです。国立がん研究センターも、遠隔転移のない切除不能胆道がんで放射線治療を検討する場合があるとしています。

ただし、現時点ではすべての局所進行胆道がんへ行う標準治療とは位置づけられていません。

参考:国立がん研究センター|胆道がん 治療

コンバージョン手術は「抗がん剤が効けば必ず手術する」という治療ではない

最初は切除不能と判断された胆道がんでも、薬物療法によって腫瘍が縮小し、遠隔転移が出現せず、改めて評価した結果、完全切除できる可能性が生じる場合があります。

このように、薬物療法などの後に手術を再検討する考え方をコンバージョン手術と呼びます。

ただし、2025年版ガイドラインではコンバージョン手術はFRQ(将来の研究課題)として扱われており、切除不能胆道がんで「薬が効いたら手術する」という確立した一律の標準治療ではありません。腫瘍が小さくなっただけではなく、血管や周囲臓器との関係、遠隔転移、患者さんの全身状態などを再評価して判断します。

緩和ケア・支持療法はがん治療と並行して行う

胆道がんでは、痛み、黄疸、かゆみ、食欲不振、体重減少、倦怠感など、がんそのものによる症状が生活に影響することがあります。

また、手術や抗がん薬による副作用を軽減し、治療を続けられる身体の状態を保つための支持療法も治療の一部です。

緩和ケアは「もう抗がん治療をしない人だけが受ける治療」ではありません。痛みや不安、食事の問題などがあれば、手術・薬物療法などと並行して利用します。

参考:国立がん研究センター|緩和ケア

胆道がん治療後の生活

胆道がん治療後の生活を「胆道がんの手術後」と一つにまとめることはできません。肝臓を大きく切除した人、膵頭十二指腸切除を受けた人、胆のうだけを摘出した人では、残った臓器と身体の変化が大きく異なるためです。国立がん研究センターも、胆道がん治療後の日常生活上の注意は症状や治療内容によって異なると説明しています。

参考:国立がん研究センター|胆道がん 療養

肝切除後|残った肝臓が回復するまで状態を確認する

肝内胆管がんや肝門部領域胆管がんでは、大きな肝切除を行う場合があります。

肝臓には再生する力がありますが、大きく切除した直後は残った肝臓へ負担がかかります。術後には肝機能、黄疸、腹水などを確認し、まれに起こる肝不全にも注意します。

退院後の運動量や飲酒、食生活などは、残った肝臓の機能や手術範囲によって異なるため、個別に確認します。

膵頭十二指腸切除後|消化・栄養状態の変化に注意する

遠位胆管がんや十二指腸乳頭部がんでは、膵頭十二指腸切除を行うことがあります。

この手術では膵臓の一部、十二指腸、胆管、胆のうなどを切除し、残った臓器をつなぎ直すため、単純な胆のう摘出より身体への負担が大きくなります。

膵液には食べ物を消化する酵素が含まれているため、手術後に消化吸収が低下し、下痢や体重減少などが問題になる場合があります。膵臓手術後には必要に応じて栄養状態を評価し、食事方法や消化を助ける薬などを調整します。

胆のう摘出後|多くの場合は胆のうがなくても生活できる

胆のうは胆汁をつくる臓器ではなく、肝臓でつくられた胆汁を一時的にためる臓器です。

そのため胆のうを摘出しても、肝臓では胆汁がつくられ続け、胆管を通って十二指腸へ流れます。

胆のう摘出だけであれば、長期的に極端な食事制限を必要としない人も多くいます。一方、胆のうがんでは肝切除や胆管切除などを同時に受けている場合があるため、「胆のう摘出後」と「胆のうがんの拡大手術後」を同じものとして考えないことが必要です。

胆道ドレナージ中|外ろうと内ろうで生活上の注意が異なる

外ろうの場合には、鼻や腹部からチューブが体外へ出ているため、抜けたり曲がったりしないよう管理が必要です。

内ろうでは体外にチューブは出ませんが、ステントが閉塞すると再び黄疸や胆管炎が起こる場合があります。

国立がん研究センターも、胆道ドレナージ後は外ろうと内ろうそれぞれで生活上の注意点が異なるため、医療者へ確認するよう案内しています。

薬物療法中は副作用だけでなく「治療を続けられる状態か」をみる

胆道がんの薬物療法では、血球減少、食欲低下、吐き気、倦怠感、下痢などが生活に影響する場合があります。

シスプラチンでは腎機能、聴力、手足のしびれなどにも注意します。免疫チェックポイント阻害薬では、通常の抗がん薬とは異なり、免疫反応によって肺、肝臓、腸、甲状腺などに炎症や機能障害が起こる場合があります。PMDAでは胆道がんに対する免疫療法について現在も最適使用推進ガイドラインを公開しています。

副作用は単に「我慢する症状」ではありません。食事が取れず体重が落ちる、脱水する、感染症を起こすなどすると、予定していた薬物療法を続けにくくなることがあります。

治療を予定どおり続けることだけを目標にするのではなく、副作用を早く伝えて、休薬・減量・支持療法などで身体の状態を保つことも治療の一部です。

食べられない・体重が減る場合は食事量だけを責めない

胆道がんでは、手術による消化機能の変化、黄疸、感染、抗がん薬の副作用、がんそのものなど、さまざまな理由で食欲や体重が低下することがあります。

国立がん研究センターでは胆道がん治療後の一般的な食事として、一度に多く食べず回数を分けることや、症状に合わせて食べ方を調整することを案内しています。また、必要に応じて管理栄養士へ相談することもできます。

「食べなければ体力が落ちる」と無理に一度に多く食べるより、なぜ食べられないのかを確認し、その原因に合わせて食事量・回数・薬などを調整する方が治療を続けやすくなります。

胆道がんの生存率・予後

胆道がんの予後を調べるときに、最初に確認したいのは「どの胆道がんの生存率を見ているのか」です。

これまで説明したように、胆道がんには肝内胆管がん、肝門部領域胆管がん、遠位胆管がん、胆のうがん、十二指腸乳頭部がんがあり、病期分類そのものが同じではありません。国立がん研究センターも5病型を別々の病期表で示しています。

「胆道がんステージⅠの5年生存率は○%」という一つの表を、すべての胆道がんへ共通して当てはめることは適切ではありません。

胆道がん全体に一つのステージ別生存率を当てはめない理由

たとえば、同じ「ステージⅡ」であっても、肝内胆管がんと胆のうがんでは、そのステージに含まれるT・N・Mの組み合わせが異なります。

さらに、肝内胆管がんでは肝臓内の腫瘍の数や血管への広がりなどが病期評価に関係する一方、胆のうがんでは胆のう壁への深達度や肝臓側・腹腔側への広がりなどが大きな意味を持ちます。肝門部領域胆管がんや遠位胆管がんにも、それぞれ異なるT分類があります。

生存率を調べる際には「胆道がん」→「どの病型か」→「その病型のどの病期か」という順番で確認する必要があります。

国立がん研究センターの現在の統計も病型を分けて掲載

国立がん研究センターの現在の胆道がん統計ページでは、最新の病期別5年生存率へのリンクとして、肝内胆管がんと胆のうがんが個別に掲載されています。肝外胆管がんや十二指腸乳頭部がんについて、同じ形式で5病型を横並びに比較できる最新の病期別生存率表が掲載されているわけではありません。

そのため本記事では、異なる分類・集計方法の数字を無理に組み合わせて「胆道がんステージ別生存率表」を作成しません。

胆管がんについては、公開されている統計の範囲と病型の違いを含めて以下の記事で詳しく解説しています。

胆のうがんでは、国立がん研究センターの院内がん登録によるステージ別5年生存率を以下の記事で詳しく紹介しています。

十二指腸乳頭部がんは全国登録で比較的高い5年生存率が報告されている

十二指腸乳頭部がんは、胆管がんや胆のうがんとは別の病期分類を持つため、これらの生存率をそのまま当てはめることはできません。

2008~2013年に日本で登録された胆道がん18,606例を解析した全国胆道癌登録では、十二指腸乳頭部領域がんの5年生存率は61.3%でした。同じ報告では、胆のうがん39.8%、肝門部領域胆管がん24.2%、遠位胆管がん39.1%であり、十二指腸乳頭部がんは胆道がんの中では比較的良好な治療成績が報告されています。

さらに、当時の病期分類による5年生存率は、ステージIA 92.2%、ステージIB 74.7%、ステージIIA 47.8%、ステージIIB 31.3%、ステージIV 11.7%と報告されています。

ただし、この全国登録で使用された病期分類は、UICC TNM第7版を取り入れた当時の分類です。現在、国立がん研究センターの患者向けページでは、十二指腸乳頭部がんについてUICC TNM第8版に基づく病期分類を掲載しており、T分類やリンパ節分類などが変更されています。

そのため、上記のステージIA~IVの生存率を、現在のUICC TNM第8版で同じステージと診断された患者さんへそのまま当てはめることはできません。また、生存率は診断された年代、手術の可否、リンパ節転移、病理学的な特徴、全身状態などによっても異なります。

参考:Biliary tract cancer registry in Japan from 2008 to 2013|Journal of Hepato-Biliary-Pancreatic Sciences胆道がん 治療|国立がん研究センター

予後を左右するのはステージだけではない

ステージは予後を考えるうえで大きな情報ですが、それだけで今後の経過が決まるわけではありません。

胆道がんでは、発生部位、手術で完全切除できるか、リンパ節や遠隔臓器への転移、手術後の病理所見、全身状態、肝機能・腎機能、薬物療法への反応などによって経過が異なります。胆道がんの治療でも、病期だけでなく体の状態や切除可能性などを合わせて治療法が決められます。

進行・再発例では、利用できる薬物療法や、治療につながるバイオマーカーが見つかるかも治療選択に関係します。2026年の3学会合同手引きでは、胆道がんで複数の治療標的となる分子異常が整理されています。

5年生存率は「あと何年生きられるか」を示す数字ではない

5年生存率は、ある時期に診断された多くの患者さんを追跡して算出した集団の統計です。国立がん研究センターも、生存率のデータは平均的かつ確率として推測されるものであり、すべての患者さんにそのまま当てはまるものではないと説明しています。

そのため「5年生存率が20%だから、自分が5年生きられる確率も20%」と個人の余命へ直接置き換えることはできません。同じ病型・同じステージであっても、病変の広がり方や治療への反応などは一人ひとり異なります。

過去の生存率には現在の治療が十分反映されていない場合がある

生存率を見る際には、何年に診断された患者さんのデータなのかも確認します。

現在の胆道がん治療では、根治切除後のS-1による術後補助化学療法、切除不能・再発例に対する免疫療法、分子異常に応じた治療など、以前には標準的に行われていなかった治療が加わっています。2026年のバイオマーカー手引きでも、HER2を含む複数の分子標的と治療法が整理されています。

古い統計を見るときは「現在治療を受ける自分の将来そのもの」と考えるのではなく、治療成績を理解するための一つの参考資料として受け取ることが適切です。

参考:国立がん研究センター「胆道がん 患者数(がん統計)」「胆道がん 治療」2026年バイオマーカー検査の手引き

胆道がんの再発・経過観察

胆道がんを手術で完全に切除した後も、身体の回復や再発の有無を確認するために定期的な経過観察を行います。

国立がん研究センターでは、胆道がん治療後の検査頻度はがんの進行度や治療法によって異なるとし、問診、血液検査、腫瘍マーカー検査を行い、必要に応じて腹部超音波やCTなどを組み合わせるとしています。

2025年版『胆道癌診療ガイドライン 改訂第4版』でも、「胆道癌に対する術後経過観察はどのように行うか」がFRQ(フューチャー・リサーチ・クエスチョン)として独立した臨床課題になっています。

参考:国立がん研究センター「胆道がん 療養」胆道癌診療ガイドライン 改訂第4版

胆道がんは肝臓・リンパ節・肺・腹膜などに再発することがある

胆道がんは、周囲のリンパ節、肝臓、肺などへ転移することがあります。

手術後には、切除した場所やその周囲へ再びがんが現れる局所再発や、腹膜へがん細胞が広がる腹膜播種として見つかる場合もあります。再発した場所や数、これまでに受けた治療によって次の治療は異なります。再発胆道がんでは、多くの場合、全身へ作用する薬物療法を検討します。

腹膜播種についての治療法や完治の可能性については、以下の記事で解説しています。

問診・血液検査・腫瘍マーカー・画像検査を組み合わせる

経過観察では、単にCTだけを定期的に撮影するわけではありません。

問診では、黄疸、腹部痛、食欲の変化などを確認します。血液検査ではビリルビンなど胆道・肝臓の状態に関係する数値を調べ、CA19-9やCEAなどの腫瘍マーカーを測定することがあります。必要に応じて腹部超音波やCTなどを追加します。

検査間隔は、最初の病型やステージ、手術内容、病理結果、術後治療の有無などで異なります。そのため、他の胆道がん患者さんとCTの間隔が違うことだけで、経過観察が不足しているとは判断できません。

CA19-9だけで「再発した」と判断しない

CA19-9やCEAは胆道がんで使用される腫瘍マーカーですが、数値だけでがんの有無や再発を確定する検査ではありません。

国立がん研究センターは、胆道がんではがんがあっても腫瘍マーカーが上昇しない場合があり、反対にがんがなくても上昇することがあると説明しています。また、がんの進行や転移についても、腫瘍マーカーだけでなく画像検査などを組み合わせて判断します。

CA19-9が上昇した場合には、以前からの推移、胆汁の流れや炎症の状態、症状、CTなどの画像所見を合わせて原因を評価します。

再発した場合は「現在の病状」を評価する

手術時にステージⅡだった患者さんが数年後に再発した場合、「ステージⅡの治療をもう一度行う」と考えるわけではありません。

再発時には、現在どこに病変があるのか、いくつあるのか、遠隔転移があるのか、どの薬をすでに使用したのか、現在の肝機能・腎機能・体力はどうかを改めて評価します。胆道がんの再発では薬物療法が中心となる場合が多いとされています。

再発後の治療を考えるときは、「最初は何期だったか」より「今どのような病状なのか」が治療選択の中心になります。

再発時にはバイオマーカー検査の状況も確認する

進行・再発胆道がんでは、再発した場所だけでなく、がん細胞が持つ分子異常が治療選択に関係する場合があります。

過去に遺伝子検査を受けていても、どの遺伝子まで調べたか、コンパニオン診断として行ったのか、CGPを行ったのかによって得られている情報は異なります。

2026年の3学会合同手引きでは、FGFR2、IDH1、HER2などを含む複数のバイオマーカーが治療選択と関係し、検査方法や実施時期も治療戦略の一部として整理されています。

そのため、再発時には「以前どのバイオマーカーを調べたのか」「保存されている手術標本などを追加検査に利用できるのか」も確認すると、その後の選択肢を整理しやすくなります。

参考:2026年バイオマーカー検査の手引き

新しい症状が出たら次の定期検査まで待たない

定期的な経過観察を受けていても、予定されたCTの日まで必ず待つ必要はありません。国立がん研究センターも、経過観察では黄疸、腹部痛、食欲の変化などを確認し、気になる症状があれば担当医へ伝えるよう案内しています。

特に、黄疸が新しく出た・悪化した、発熱や悪寒がある、腹痛が続く、食欲や体重が急に落ちたなどの場合には、再発だけでなく胆管炎、胆道ドレナージの閉塞、治療の副作用など別の原因も考えられます。

症状だけから再発と判断することはできませんが、急な変化があれば治療を受けている医療機関へ相談します。

胆道がんの治療を選ぶときに確認したいこと

胆道がんでは、「ステージはいくつですか」と確認するだけでは、提案された治療の理由を十分に理解できないことがあります。

これは、胆道がんという一つの名前の中に複数の病型があり、発生部位によってステージ、手術、薬物療法の根拠、バイオマーカーの特徴まで異なるためです。国立がん研究センターも5病型を別々の病期分類として扱い、手術可能性を病状と全身状態から評価しています。

治療説明を受ける際には、次のように整理すると、自分の治療計画を理解しやすくなります。

確認したいこと なぜ確認するのか
正確な病名・発生部位はどこか 肝内胆管、肝門部領域胆管、遠位胆管、胆のう、十二指腸乳頭部では、ステージや手術が異なるため
どの分類・何版でステージを評価しているか 病型によって使用される病期分類が異なり、分類の版によって表記が変わる場合もあるため
手術で完全切除できる可能性があるか 根治を目指す手術が可能かどうかが治療方針の大きな分岐になるため
「手術できない」と判断された理由は何か 遠隔転移、血管や周囲臓器への広がり、残せる肝臓の量など、理由によって病状と次の治療が異なるため
黄疸・胆管炎への処置が必要か 胆道ドレナージや感染治療を、手術・薬物療法より先に行う場合があるため
どの臓器を、なぜ切除するのか 同じ胆道がんでも、肝切除、膵頭十二指腸切除、胆のう摘出など手術内容が大きく異なるため
術後S-1を行うか、その理由は何か 手術後の再発リスクと身体の回復状況から術後補助化学療法を判断するため
十二指腸乳頭部がんなら、提案された薬物療法の根拠は何か TOPAZ-1など乳頭部がんを含まない試験もあり、治療ごとにエビデンスとなる対象病型が異なるため
バイオマーカー検査では何を調べたか 病型によってFGFR2、IDH1、HER2などの分子異常に偏りがあり、次の治療候補につながる場合があるため
現在の治療が効かなくなった場合の次の候補は何か バイオマーカー検査や次の薬物療法を含め、先を見通した治療計画を考えるため

胆道がんで手術可能性の判断が難しい場合には、胆道手術を専門とする外科医への相談やセカンドオピニオンも選択肢になります。国立がん研究センターも、遠隔転移がなくても技術的に切除が難しい場合があり、切除可能性の判断が施設・医師によって異なることがあると説明しています。

胆管がんでは、さらに「どの胆管がんなのか」「血管への広がり」「残せる肝臓の量」などが大きな判断材料になります。

胆のうがんでは、「胆のう壁への深達度」「胆のう摘出後に偶然見つかった場合の追加切除」など、別の確認事項があります。

「胆道がん」という大きな病名だけで治療を理解しようとせず、自分の病型と、その治療が選ばれた理由まで確認することが、治療方針を整理する出発点になります。

参考:国立がん研究センター「胆道がん 治療」3学会合同「胆道癌患者におけるバイオマーカー検査の手引き」

まとめ|「胆道がん」だけでなく発生部位を確認する

胆道がんは、肝内胆管がん、肝門部領域胆管がん、遠位胆管がん、胆のうがん、十二指腸乳頭部がんを含む総称です。発生部位によって黄疸などの症状の出方、病期分類、根治を目指す手術が異なります。

治療を考える際には、ステージ番号だけでなく、どこに発生したがんか、手術で完全切除を目指せるかを確認することが重要です。切除不能・再発例では薬物療法が中心となり、病型によってはFGFR2、IDH1、HER2などのバイオマーカーが治療選択につながります。

「胆道がん」という総称から、自分の正確な病型まで一段深く理解することが、症状・ステージ・手術・薬物療法を正しく理解するための出発点です。

胆管がんについて詳しく知りたい場合はこちらをご覧ください。

胆のうがんについて詳しく知りたい場合はこちらをご覧ください。

胆のうがんは、肝臓の下にある「胆のう」に発生するがんです。胆のうは、肝臓でつくられた胆汁を一時的にためて濃縮し、食事の際に胆管を通して十二指腸へ送り出す働きをしています。

胆のうがんは、早い段階では症状が出ないことが多く、胆石や胆のう炎、胆のうポリープなどを調べている途中や、別の理由で胆のうを摘出した後の病理検査で初めて見つかることがあります。一方、進行すると、みぞおちや右上腹部の痛み、食欲低下、体重減少、黄疸などが現れることがあります。

胆のうがんの治療を理解するうえで特に重要なのが、「がんが胆のう壁のどこまで入り込んでいるか」と「手術で完全に取り切れるか」です。胆のうは肝臓に接し、近くに胆管、十二指腸、膵臓、大腸などがあるため、がんが壁を越えると必要な手術範囲が大きく変わります。胆道がんでは、まず外科切除が可能かを判断することが治療方針の大きな分岐になります。

胆のうがんでは、胆石や胆のうポリープとの関係、胆のう摘出後に偶然がんが見つかった場合の対応など、胆のう特有の判断が必要になる場面があります。

この記事では、胆のうがんの原因や症状、検査、ステージ、手術、胆のう摘出後に偶然がんが見つかった場合の対応、薬物療法、バイオマーカー、生存率、再発後の治療まで順番に解説します。

参考:国立がん研究センター|胆道がんについて

  • 胆のうがんは早期には症状が出にくく、胆石や胆のう炎の手術後に偶然見つかることもある
  • 胆石や胆のうポリープがあるからといって、すべてが胆のうがんになるわけではない
  • 胆のう壁への深達度、周囲への広がり、リンパ節・遠隔転移から「手術で取り切れるか」を判断する

胆のうがんとは何か

胆のうは、肝臓の下面にある袋状の臓器です。

肝臓では、脂肪の消化を助ける胆汁が絶えずつくられています。胆汁は胆管を流れ、一部が胆のう管を通って胆のうへ入ります。胆のうでは胆汁が一時的に蓄えられて濃縮され、食べ物が十二指腸へ入ると胆のうが収縮し、胆汁を胆管から十二指腸へ送り出します。

胆のうがんは、この胆のうを構成する細胞から発生する悪性腫瘍です。胆のうの内側を覆う上皮から生じるものが中心で、病理組織型では腺がんが大部分を占めます。腺がん以外にも扁平上皮がん、腺扁平上皮がん、神経内分泌癌などがありますが、頻度は低いため、本記事では一般的な「胆のう腺がん」を中心に説明します。

胆のうは胆汁を一時的にためて濃縮する臓器

胆汁は肝臓でつくられます。胆のうは、その胆汁を食事まで一時的に保存し、必要なときに送り出す役割を持っています。

そのため、後述する胆のう摘出術で胆のうを取り除いた後も、肝臓では胆汁がつくられ続けます。胆汁をためて一度に送り出す仕組みはなくなりますが、肝臓から胆管を通って十二指腸へ流れる経路は残ります。

胆のう摘出後の食事や生活については、後の「胆のうがん治療後の生活と治療の副作用」で詳しく説明します。

胆のう壁は薄く、すぐ近くに肝臓や胆管がある

胆のうがんを理解するうえでは、胆のうが肝臓に直接接していることが重要です。

胆のうの周囲には肝臓だけでなく、胆管、十二指腸、膵臓、大腸などがあります。胆のうがんが深くなると、胆のう壁を越えてこれらの周囲組織へ広がることがあります。日本肝胆膵外科学会も、胆のうがんでは周囲に重要臓器が多いことが、進行例の治療を難しくする一因だと説明しています。

この解剖学的な特徴は、後で説明するT1・T2・T3などの深達度と手術範囲に直結します。

浅い段階で胆のう内にとどまっていれば胆のう摘出だけで治療できる場合がありますが、肝臓側へ深く広がれば肝切除、胆管へ広がれば胆管切除などを追加することがあります。

参考:日本肝胆膵外科学会|胆のうがん

胆のうがんは胆道がんの一つ

胆のうがんは、胆道がんの一つです。胆道がんは胆汁が流れる胆道に発生するがんの総称で、胆管がん、胆のうがん、十二指腸乳頭部がんなどが含まれます。

同じ胆道がんでも、胆管がんと胆のうがんでは、症状の出方やステージの考え方、手術方法が異なります。胆のうがんでは特に、胆のう壁への深達度と周囲臓器への広がりが治療を理解するうえで大きな鍵になります。

参考:国立がん研究センター|胆道がんについて

胆のうがんの原因とリスク

胆のうがんの原因を一つに特定することはできませんが、胆石、胆のうポリープ、膵・胆管合流異常など、発症との関連が知られている病気や所見があります。2025年版『胆道癌診療ガイドライン 改訂第4版』でも、胆道がんの危険因子に加えて、無症状胆石に胆のう摘出を行うか、どのような胆のうポリープでがんを疑うかが独立した項目になっています。

ただし、胆石や胆のうポリープがある人すべてが胆のうがんを発症するわけではありません。

参考:胆道癌診療ガイドライン 第4版

胆石と胆のうがんの関係性

胆石症と胆のうがんには関連が知られています。

胆石が長期間存在すると、胆のう粘膜への慢性的な刺激や炎症が起こり、胆のうがんの発生と関連する可能性が考えられています。日本肝胆膵外科学会の患者向け解説でも、胆のうがん患者では胆石を合併する例が多いことが紹介されています。

しかし、胆石があっても、胆のうがんを発症する人は一部です。

NCIも、胆石は胆のうがんの代表的なリスク因子ではあるものの、胆石を持つ人全体からみた胆のうがんの発症リスクは低く、大多数は胆のうがんにならないと説明しています。

胆石を指摘された場合は「がんになる前に必ず胆のうを取る」と考えるのではなく、症状、胆のう壁の状態、ポリープや腫瘤の有無などから治療の必要性を判断します。

参考:日本癌治療学会|胆道癌診療ガイドライン 公開本文

無症状の胆石を胆のうがん予防で手術するべきか

腹痛や胆のう炎などを起こしている胆石では、症状そのものを治療する目的で胆のう摘出術を行うことがあります。

一方、症状がなく偶然見つかった無症状胆石については、胆のうがん予防だけを目的として、すべての人に胆のう摘出術を行う考え方にはなっていません。公開されている国内ガイドライン解説や日本肝胆膵外科学会の患者向け情報でも、胆のう壁を画像で評価できる無症状胆石では、がん予防目的の一律な手術ではなく経過観察を考える方向が示されています。

ただし、胆のう壁を十分に観察できない、胆のうに別の異常がある、胆石以外の病気が疑われるなどの場合には判断が変わります。

胆のうポリープの多くはがんではない

胆のうポリープとは、胆のうの内側へ盛り上がるようにできる病変の総称です。

胆のうポリープには腫瘍性と非腫瘍性のものがあり、多くは直ちにがんを意味する所見ではありません。画像上の特徴から、腫瘍性ポリープや胆のうがんを疑う所見があるかを評価します。

どのような胆のうポリープでがんを疑うのか

国内で公開されている胆道癌診療ガイドラインでは、胆のうポリープについて、10mm以上であること、広基性であること、画像上で増大傾向があることなどを、胆のうがんを疑う所見として挙げています。2025年版第4版でも「どのような胆嚢ポリープに対して癌を疑うのか」がBQ(基本項目)として継続されています。

ただし、10mmは重要な目安の一つですが、良性・悪性を分ける絶対的な境界ではありません。大きさに加えて、形、茎の有無、内部の超音波所見、胆のう壁の変化、増大傾向などを合わせて評価します。

膵・胆管合流異常は胆のうがんの重要なリスク

膵・胆管合流異常とは、膵液が流れる膵管と胆汁が流れる胆管が、通常とは異なる位置で合流する先天的な異常です。

通常は、胆管と膵管の合流部分にある括約筋の働きによって、膵液が胆道へ逆流しにくくなっています。膵・胆管合流異常では、この調節が働かない位置で両者が合流するため、膵液が胆管や胆のうへ逆流しやすくなります。膵液が胆のう粘膜へ長期間接触すると、粘膜への慢性的な刺激が続き、胆道がんの発生リスクが高くなると考えられています。

このため、膵・胆管合流異常では、がんが見つかってから治療するだけでなく、病型に応じて予防的な手術を検討します。2025年版胆道癌診療ガイドラインでも「膵・胆管合流異常には予防的手術を行うか?」が独立したBQ(バックグラウンドクエスチョン:対応の基本方針)として設定されています。

参考:日本胆道学会|膵・胆管合流異常と先天性胆道拡張症

胆のうの慢性炎症など

胆のうがんの発生には、胆石に伴う慢性胆のう炎など、胆のう粘膜へ長期間炎症が加わる状態が関係すると考えられています。ただし「胆のう炎になったことがあるから将来がんになる」という意味ではありません。

胆石や慢性炎症はあくまでリスクに関係する要素であり、明らかなリスク因子がなくても胆のうがんが発生することがあります。反対に、リスク因子があっても生涯胆のうがんにならない人もいます。

胆のうがんの予防・検診と受診の目安

現在、胆のうがんには、胃がんや大腸がんのような国の指針に基づく対策型がん検診はありません。国立がん研究センターは、胆のうがんを含む胆道がんについて、現在の国の指針で定められた検診はないとしています。

したがって、症状のない一般の人が「毎年胆のうがん検診を受ければ早期発見できる」という確立した方法はありません。

参考:国立がん研究センター|胆道がん 予防・検診

胆のうがんを確実に防ぐ方法は確立していない

胆のうがんには膵・胆管合流異常や胆石などのリスク因子がありますが、発症する人すべてに共通する原因が分かっているわけではありません。そのため、特定の食品、健康食品、サプリメントなどによって胆のうがんを確実に予防できる方法は確立していません。

国立がん研究センターは胆道がんに限らない一般的ながん予防として、禁煙、飲酒を控える、バランスのよい食事、身体活動、適正体重の維持、感染予防などを案内していますが、これらはがん予防に推奨される生活習慣であり、胆のうがんに特化した予防法ではありません。

胆石や胆のうポリープを指摘された場合

胆石や胆のうポリープがある人は、「胆のうがん検診」を別に探すというより、現在見つかっている胆のうの病変を適切に評価することが重要です。

無症状胆石であれば、症状の有無や胆のう壁を十分観察できるかなどを確認します。胆のうポリープであれば、大きさ、形、増大傾向などから、経過観察を続けるか、より詳しい検査や胆のう摘出を検討するかを判断します。

膵・胆管合流異常など明らかに胆道がんリスクが高い病気がある場合には、一般人口とは異なる管理が必要になることがあります。

参考:胆道癌診療ガイドライン 第4版

症状がある場合は検診ではなく医療機関を受診

みぞおちや右上腹部の痛みが続く、皮膚や白目が黄色くなる、原因の分からない体重減少や食欲不振が続くといった症状がある場合には、検診を待つのではなく医療機関を受診します。

胆のうがんは早期には症状が出ないことが多い一方、進行すると右上腹部痛や黄疸などが現れる場合があります。これらの症状は胆石症や胆のう炎などでも起こるため、症状だけから胆のうがんと判断することはできません。

特に強い腹痛に発熱や悪寒を伴う場合は、急性胆のう炎や胆管炎など、がん以外でも早い治療が必要な病気の可能性があります。

胆のうがんの初期症状・進行した場合の症状

胆のうがんは早期には自覚症状に乏しく、進行すると右上腹部痛、食欲低下、体重減少、黄疸などがみられることがあります。

胆のうがんは早期には症状がないことが多い

胆のうは腹部の奥にあり、早い段階のがんが胆のう内にとどまっている間は、胆汁の流れを大きく妨げないことがあります。

そのため、早期胆のうがんには「これが出たら疑う」という特徴的な初期症状がありません。日本肝胆膵外科学会も、胆のうがんは初期症状や自覚症状に乏しいと説明しています。

「症状がないから胆のうに異常はない」とは限りませんが、症状のない一般の人へ胆のうがん検診を行う方法も確立していません。実際には、胆石やポリープなど別の胆のう疾患を調べた際に見つかることがあります。

参考:日本肝胆膵外科学会|胆のうがん

右上腹部・みぞおちの痛み

胆のうがんが進行すると、右上腹部やみぞおちの痛みが出ることがあります。

ただし、右上腹部痛は胆石症や胆のう炎でも起こるため、痛みだけから胆のうがんかどうかを判断することはできません。痛みが繰り返す、長引く、発熱や黄疸を伴う場合には原因を調べます。

食欲低下・体重減少・倦怠感

胆のうがんが進行すると、食欲が落ちたり、体重が減少したり、全身のだるさを感じたりすることがありますが、これらも胆のうがんだけに起こる症状ではなく、感染症、胃腸の病気、肝臓や膵臓の病気などさまざまな原因があります。

食事量や生活習慣を変えていないのに体重が減り続ける、腹部の違和感と食欲不振が長く続くなど、これまでになかった変化が重なる場合には原因を調べることが必要です。

進行すると黄疸が出ることがある

胆のうがんは胆管がんと異なり、胆汁の通り道である胆管そのものから発生するがんではありません。

そのため、胆管がんほど黄疸が早期の中心症状にはなりません。一方、胆のうがんが進行して胆管へ広がったり、周囲のリンパ節などが胆管を圧迫したりすると、胆汁が流れにくくなり「閉塞性黄疸」が起こることがあります。黄疸では、皮膚や白目が黄色くなるだけでなく、尿が茶色っぽく濃くなる、便が白っぽくなる、皮膚がかゆくなるなどの変化がみられることがあります。

黄疸の有無だけではステージは決まりません。胆管がどの場所で、なぜ塞がっているのか、がんが周囲へどこまで広がっているのかを画像検査で確認して判断します。

発熱や強い腹痛では胆のう炎・胆管炎なども考える

発熱や強い右上腹部痛がある場合には、胆のうがんだけではなく急性胆のう炎なども考える必要があります。胆石などで胆のう管が詰まると胆のうに炎症が起こり、腹痛や発熱が生じることがあります。また、胆汁の流れが胆管で妨げられれば胆管炎を起こすこともあります。

特に高熱、悪寒、強い腹痛、黄疸などが急に現れた場合は、通常の外来予約まで様子を見るのではなく医療機関へ相談します。

参考:国立がん研究センター|胆道がんについて

胆のうがんの検査と診断

胆のうがんの診断では、病変の有無に加えて、良性・悪性の可能性、胆のう壁への深達度、周囲臓器やリンパ節・遠隔臓器への広がりを順に評価します。

国立がん研究センターは、胆道がんでは血液検査と腹部超音波を行い、必要に応じてCT、MRI、内視鏡検査、PET/PET-CT、生検・細胞診などを組み合わせると説明しています。

胆のうがんではさらに、画像でどの程度深く胆のう壁へ入り込んでいるか、肝臓や胆管へ広がっているかを評価することが、手術方法の決定にも直結します。

参考:国立がん研究センター|胆道がん 検査

血液検査・CA19-9・CEA

胆のうがんが疑われた場合には、肝臓や胆道の状態を確認するために血液検査を行います。

胆汁の流れが悪くなっていれば、ビリルビン、ALP、γ-GTPなどの値が変化することがあります。また、炎症の有無、肝機能や腎機能、血球数なども確認し、手術や薬物療法を安全に行える状態かを評価します。

胆道がんではCA19-9やCEAなどの腫瘍マーカーを測定することもあります。ただし、これらの数値だけで胆のうがんを診断することはできません。がんがあっても高くならない場合があり、逆に胆道の炎症や閉塞など、がん以外の状態で上昇する場合もあります。

そのため、腫瘍マーカーは画像所見や病理結果などと合わせて判断する補助的な情報です。

腹部超音波|胆のう壁やポリープを観察

腹部超音波検査は、胆のうの異常を見つけるために広く用いられる画像検査です。

体の表面から超音波を当てて、胆のう壁が厚くなっていないか、ポリープ状の病変や腫瘤がないか、胆石がないかなどを観察します。胆のうがんは、胆のう内へ盛り上がる腫瘤として見える場合もあれば、胆のう壁の一部が厚くなる形で見つかることもあります。国立がん研究センターは、腹部超音波を胆道がんの初期画像検査として位置づけています。

胆のうポリープの経過観察でも腹部超音波は重要です。以前の画像と比較し、大きさや形が変化していないかを確認します。腹部超音波だけで判断が難しい場合には、CT、MRI、EUSなどを追加します。

造影CT|肝臓や周囲臓器への広がりを見る

造影CTは、胆のうがんの進展度と切除可能性を評価するうえで重要な検査です。

胆のうの腫瘤や壁肥厚に加えて、胆のうに接している肝臓へがんが広がっていないか、胆管や十二指腸、膵臓、大腸などへ浸潤していないか、リンパ節や肝臓の別の部位、肺などへ転移していないかを調べます。国立がん研究センターも、CTをがんの広がりやリンパ節・他臓器転移を評価する検査として説明しています。

胆のうがんでは、手術で「胆のうだけを取るのか」「肝臓や胆管などをどこまで一緒に切除する必要があるのか」を考えるため、診断と進展度評価を同時に進めていきます。

MRI・MRCP|胆のうと胆管の関係を詳しく調べる

MRIは磁気を利用して体内を画像化する検査で、胆のうがんの存在や周囲への広がりを評価する際に使用します。

胆道領域では、MRIを利用したMRCP(磁気共鳴胆管膵管造影)によって、胆のうや胆管、膵管の形を非侵襲的に描き出すことができます。胆のうがんが胆のう管や胆管側へ広がっていないか、胆汁の通り道に異常がないかを評価する際にも役立ちます。

CTとMRIは、どちらか一方だけで診断するというより、それぞれの画像情報を組み合わせて病変の広がりを判断します。

参考:胆道癌診療ガイドライン 第4版

EUS|胆のう壁や腫瘤を近くから詳しく見る

EUS(超音波内視鏡検査)は、先端に超音波装置が付いた内視鏡を胃や十二指腸まで入れ、体の内側から胆のうを観察する検査です。

病変のすぐ近くから高い解像度で観察できるため、胆のうポリープや胆のう壁肥厚の性質、がんが胆のう壁のどの程度まで広がっている可能性があるかを評価する際に役立ちます。国立がん研究センターも、EUSは腫瘍の位置、良悪性、広がりを診断する検査と説明しています。

EUSでも、炎症による壁肥厚などがあると深達度の評価が難しい場合があります。

PET・PET-CT|リンパ節転移や遠隔転移を追加で調べることがある

PET・PET-CTは、FDGという放射性物質を含む薬剤を使い、糖を多く取り込む組織を画像化する検査です。

胆のうがんでは、CTやMRIなどで評価したうえで、リンパ節転移や遠隔転移などを追加で確認する目的で行うことがあります。国立がん研究センターは、PET/PET-CTを、進行がんの他臓器転移を確認したり、CTやMRIなどで診断がはっきりしない場合に追加したりする検査と説明しています。

すべての胆のうがん患者さんに必ず行う検査ではなく、CTやMRIの所見、手術可能性などを踏まえて必要性を判断します。

胆のう腺筋腫症・黄色肉芽腫性胆のう炎など良性疾患との鑑別

胆のう壁の肥厚や腫瘤状の所見は、胆のうがんだけでなく、胆のう腺筋腫症や黄色肉芽腫性胆のう炎などでもみられます。画像所見が似ることがあるため、超音波、CT、MRI、EUSなどを組み合わせて鑑別します。

参考:日本癌治療学会|胆道癌診療ガイドライン 公開本文

胆のうがんでは手術前に組織検査を行わない場合がある

一般にがんの診断では、生検によって組織を採取し、顕微鏡でがん細胞を確認することをイメージするかもしれません。

胆のうがんでは、手術前に組織や細胞を採取するかどうかは、疑われるがんの深さや予定している治療によって異なります。

比較的浅いT1胆のうがんが疑われる場合には、胆のう摘出そのものが診断を兼ねることがあり、手術前の生検や細胞診を必ずしも必要としない場合があります。一方、T2以深が疑われ、肝切除やリンパ節郭清などを含む大きな手術が予定される場合には、術前に生検または細胞診による診断を得ることが望ましいとされています。

ただし、胆のうから検体を採取する方法には技術的な制約があり、検査方法によっては胆汁性腹膜炎や播種などを考慮する必要もあります。そのため「がんが疑われるから全員に針生検を行う」というわけではなく、どの方法で病理診断を得るかを専門施設で判断します。

手術で切除することが難しく、薬物療法を行う場合には、治療を選択するために治療前の病理診断が重要になります。

胆のうがんのステージ分類|TNM分類・cStage/pStage

胆のうがんのステージは、原発巣の広がりを示すT、領域リンパ節への転移を示すN、遠隔転移を示すMを組み合わせたTNM分類によって決まります。国立がん研究センターの現行患者向け情報では、胆のうがんの病期分類にUICC TNM第8版を使用しています。

胆のうがんで特に理解しておきたいのがT分類です。胃がんなどでは腫瘍の大きさを気にする人も多いですが、胆のうがんでは「がんが胆のう壁のどの層まで入り込んでいるのか」「肝臓側か腹腔側か」「壁を越えて周囲臓器まで広がっているか」がT分類に大きく関係します。

※UICCはTNM第9版を2025年に刊行し、2026年1月からの使用を推奨しています。一方、国立がん研究センターの現行患者向け胆のうがん病期表と2026年の院内がん登録実務資料では第8版が使われています。本記事では患者向け公的情報と対応させるため第8版を示しますが、実際の診断書・病理報告書では、使用された分類と版を確認してください。
参考:国立がん研究センター|胆道がん 治療UICC|第9版発行・2026年1月からの使用推奨

胆のう壁の構造とT分類

胆のうの内側には粘膜があり、その外側に固有筋層、さらに筋層の外側の結合組織が続いています。がんが内側から外側へ深く入り込むにつれて、T分類も高くなっていきます。

UICC TNM第8版では、胆のうがんのT分類は次のように整理されています。

T分類 がんの広がり
Tis 上皮内がんで、浸潤がんになっていない状態
T1a 粘膜固有層まで浸潤している
T1b 固有筋層まで浸潤している
T2a 腹腔側の筋層周囲結合組織まで浸潤しているが、漿膜表面には達していない
T2b 肝臓側の筋層周囲結合組織まで浸潤しているが、肝実質には直接入り込んでいない
T3 漿膜を越える、肝臓へ直接浸潤する、または胃・十二指腸・大腸・膵臓・大網・肝外胆管など1つの周囲臓器・組織へ直接広がっている
T4 門脈本幹や肝動脈へ浸潤している、または肝臓以外の2つ以上の周囲臓器・組織へ広がっている

T1aとT1bでは、がんが粘膜にとどまるのか、固有筋層まで入り込んでいるのかが違います。T2になると筋層の外側まで進んでいますが、さらにT2aの「腹腔側」とT2bの「肝臓側」を分けて評価するのが胆のうがんの特徴です。

胆のうの肝臓側は肝臓と接しているため、同じ「筋層を越えたがん」でも、どちら側に広がっているかを区別して病期を評価します。したがって、診断書に「T2」と書かれている場合には、T2aなのかT2bなのかまで確認すると病状をより具体的に理解できます。

病理結果に書かれる「m・mp・ss」とは?

胆のう摘出後の病理結果では、がんの深さをm(粘膜)、mp(固有筋層)、ss(漿膜下層)などと表記することがあります。国内の胆道癌診療ガイドラインでも、偶発胆のうがんについて「m・mp」「ss以上」という表現が使われてきました。

m・mp・ssは主に胆のう壁への深達度を表すのに対し、T分類では肝臓側・腹腔側の違いや周囲臓器への浸潤も評価します。

参考:NCI|Gallbladder Cancer Treatment PDQ

胆のうがんのステージ0~Ⅳ

T分類だけでステージが決まるわけではありません。領域リンパ節転移のN分類と、遠隔転移のM分類を組み合わせます。

UICC TNM第8版では、領域リンパ節転移が1~3個ならN1、4個以上ならN2です。遠隔転移がなければM0、あればM1となります。

一般の人が病状を把握しやすいよう、ステージごとの意味を整理すると次のようになります。

ステージ 一般的な病状のイメージ
0期 上皮内がんで、リンパ節転移・遠隔転移がない状態
Ⅰ期 がんが粘膜または固有筋層までにとどまり、リンパ節・遠隔転移がない状態(T1N0M0)
ⅡA期 腹腔側で筋層の外側まで広がっているが、リンパ節・遠隔転移がない状態(T2aN0M0)
ⅡB期 肝臓側で筋層の外側まで広がっているが、肝臓そのものへの直接浸潤やリンパ節・遠隔転移はない状態(T2bN0M0)
ⅢA期 漿膜を越える、肝臓や1つの周囲臓器へ直接広がっているが、領域リンパ節転移・遠隔転移はない状態(T3N0M0)
ⅢB期 T1~T3のがんで1~3個の領域リンパ節転移があるが、遠隔転移はない状態
ⅣA期 門脈本幹・肝動脈への浸潤や2つ以上の周囲臓器への浸潤がある高度な局所進行だが、遠隔転移はない状態
ⅣB期 4個以上の領域リンパ節転移がある状態、または肝臓の離れた部位、肺、腹膜などへの遠隔転移がある状態

※上表は国立がん研究センターの現行患者向け情報と対応するUICC TNM第8版を一般向けに整理したものです。

胆のうがんのステージ4はどのような状態か

UICC TNM第8版の胆のうがんでは、ⅣA期とⅣB期で病状が異なります。ⅣA期は高度な局所進行で、遠隔転移はありません。ⅣB期には、4個以上の領域リンパ節へ転移しているものの遠隔転移がない状態と、肺・腹膜などへ遠隔転移している状態の両方が含まれます。

さらに、ステージ番号だけから手術できるかを機械的に決めることもできません。胆道がんでは、遠隔転移の有無だけでなく、周囲の血管や臓器への広がり、完全切除できる可能性、手術に耐えられる全身状態などを合わせて切除可能性を判断します。

治療前のcStageと手術後のpStageは異なることがある

手術前には、CTやMRI、EUS、必要に応じてPET・PET-CTなどから病変の深さ、リンパ節転移、遠隔転移を推定します。このような治療前の情報に基づくステージを臨床病期(cStage)と呼びます。

一方、手術後には摘出した胆のうや肝臓、リンパ節などを顕微鏡で詳しく調べられます。この結果から決める病期が病理病期(pStage)です。

胆のうがんでは、胆石や胆のう炎などのために胆のうを摘出し、術後の病理検査で初めてがんが判明することもあります。その場合には、病理検査によって「実際にはどこまで深く入り込んでいたか」が初めて分かることがあります。偶然見つかった胆のうがんについては「偶発胆のうがん」の章で詳しく説明します。

胆のうがん治療の全体像

胆のうがんの治療では、ステージに加えて、手術で完全切除できるかどうかが大きな判断材料になります。

国立がん研究センターは胆道がんについて、まず手術が可能かを検討し、手術できない場合には薬物療法を中心に治療すると説明しています。2025年版『胆道癌診療ガイドライン 改訂第4版』の診療アルゴリズムも「外科切除の可否」を最初の大きな分岐としています。

病状 主な治療の考え方
胆のう壁の浅い範囲に限局 胆のう摘出を中心に根治切除を目指す。深達度によっては胆のう摘出のみで治療が完結する場合がある
筋層を越えて広がっている 肝切除やリンパ節郭清などを含め、完全切除に必要な手術範囲を検討する
肝臓・胆管・周囲臓器へ広がる 浸潤範囲に応じて肝臓、胆管、十二指腸などの合併切除を検討する。完全切除できるかを慎重に評価する
局所進行で切除できない 薬物療法が中心。遠隔転移がない場合などには放射線治療を検討することがある
遠隔転移・再発 全身薬物療法が中心。治療歴やバイオマーカーも次の治療選択に関係する

国立がん研究センターでは、胆のうがんが胆のう内にとどまる場合には胆のう摘出を行い、周囲へ広がっている場合には、広がりに応じて肝臓、胆管、膵臓、大腸、十二指腸、リンパ節などの切除が必要になると説明しています。

切除不能と説明された場合には、遠隔転移、重要血管への浸潤、周囲臓器への広がり、全身状態など、手術が難しい理由を確認します。

参考:胆道癌診療ガイドライン 第4版

胆のうがんの手術|深達度によって切除範囲が変わる

胆のうがんの手術では、がんを残さず完全に切除することを目指します。

必要な手術範囲は、胆のう壁への深達度によって大きく異なります。早期で胆のう内に限局していれば胆のう摘出だけで治療できる場合がありますが、より深くなると肝切除やリンパ節郭清、さらに周囲臓器の合併切除が必要になることがあります。

参考:国立がん研究センター|胆道がん 治療

早期胆のうがんの摘出手術について

がんが粘膜などの浅い範囲に限られている早期胆のうがんでは、胆のうを摘出することで根治を目指せる場合があります。

特にT1aは粘膜固有層までのがんであり、リンパ節転移や遠隔転移がなければⅠ期です。胆のう摘出後の病理検査で浅いがんが偶然見つかり、追加治療を必要とせず経過観察となる場合もあります。

一方、T1bは固有筋層まで入り込んだがんです。

T1bでは、胆のう摘出後に追加切除を行う意義について一定の議論が残っています。NCI PDQでも、偶発T1b胆のうがんに対する再切除の必要性は議論のある領域とされています。2025年版国内ガイドラインで追加切除を独立したBQ(基本項目)として明示しているのは「胆のう摘出後に深達度ss以上と判明した場合」です。

したがって、実際には術前画像、病理結果、切除断端、リンパ節転移の可能性、患者さんの全身状態などを踏まえて手術範囲を判断します。

参考:NCI|Gallbladder Cancer Treatment PDQ胆道癌診療ガイドライン 第4版

筋層を越えた胆のうがんの切除範囲

がんが固有筋層を越えて筋層周囲結合組織まで入り込むT2以降では、胆のう周囲への微小な進展やリンパ節転移の可能性を考慮する必要が高まります。根治切除を目指す場合には、病変の位置や広がりに応じて、胆のうに接する肝臓の一部の切除や周囲リンパ節の郭清などを検討します。切除範囲はT2a・T2bの別、肝浸潤、胆のう管・胆管への広がりなどをもとに決めます。

なぜ胆のうがんで肝臓まで切除するのか

胆のうは肝臓の下面に接しています。

特に肝臓側へ向かって深く広がった胆のうがんでは、胆のうだけを取り外しても、胆のうと接していた肝臓側にがんが残る可能性があります。そのため、がんから十分な切除距離を確保して完全切除する目的で、胆のう床周囲の肝臓を一緒に切除することがあります。

国内で公開されている胆道癌診療ガイドラインでは、肝浸潤が疑われる胆のうがんについて、胆のう床切除とより系統的な肝切除を比較した研究を踏まえ、R0切除、すなわち顕微鏡的にもがんを残さず切除できることが重要だと説明しています。

胆のう床切除とより大きな肝切除はどう使い分けるのか

胆のうに接していた肝臓の部分を楔状に切除する方法は、一般に胆のう床切除などと呼ばれます。

一方、がんの位置や肝臓への広がりによっては、肝臓のS4a・S5と呼ばれる区域を含めた切除や、さらに大きな肝切除が必要になる場合があります。

肝切除の範囲は、肝浸潤の位置・範囲、確保できる切除断端、術後に残る肝機能などから計画します。国内ガイドラインでも、胆のう床切除か系統的肝切除かという術式そのものより、十分な切除断端を確保する考え方が重視されてきました。

胆管を一緒に切除するかはがんの広がりで判断する

胆のうがんの拡大手術では肝外胆管を切除する場合がありますが、肝外胆管切除は、胆管への直接浸潤や十分な切除断端の確保が必要な場合などに検討します。一方、国内で公開されているガイドラインでは、肝外胆管へ直接浸潤がない胆のうがんについて、リンパ節郭清などを目的とした予防的な肝外胆管切除を原則として行わない考え方が示されています。

胆管まで切除した場合には、残った胆管と小腸をつなぎ、胆汁が再び腸へ流れる経路をつくる再建が必要になることがあります。

参考:胆道癌診療ガイドライン 第4版

十二指腸・膵臓・大腸などの合併切除が必要になる場合

胆のうの周囲には、十二指腸、大腸、膵臓などがあります。

進行した胆のうがんがこれらへ直接入り込んでいる場合、完全切除を目指すために浸潤した臓器の一部を一緒に切除することがあります。

ただし、切除する臓器が増えるほど手術の負担や合併症リスクも大きくなります。そのため、画像上「隣の臓器へ接している」ことだけではなく、すべてを一緒に切除することで本当にがんを取り切れるのか、その大きな手術に耐えられるかまで含めて手術適応を判断します。2025年版ガイドラインでも、複雑な肝胆膵手術や胆道がん手術を経験の多い施設で行う意義が個別の臨床課題として扱われています。

腹腔鏡・ロボット手術は「手術範囲」とは別の問題

腹腔鏡手術やロボット支援手術は、手術を行う「アプローチ」の違いです。低侵襲手術を選択しても、胆のうがんの根治に必要な切除範囲が小さくなるとは限りません。

T2胆のうがんで低侵襲手術を検討する場合にも、病変の広がりに応じて肝切除やリンパ節郭清などを行います。2025年版胆道癌診療ガイドラインでは、深達度T2までの胆のうがんに対する腹腔鏡・ロボット支援下手術がCQ(クリニカルクエスチョン:臨床的課題項目)として検討されています。

手術の説明では、開腹・腹腔鏡・ロボットの別とあわせて、胆のう以外にどの臓器やリンパ節を切除する予定なのかを確認するとよいでしょう。

参考:胆道癌診療ガイドライン 第4版

胆のう摘出後にがんが見つかった場合|偶発胆のうがんとは

胆のうがんには、診断の時点から「胆のうがん」と分かって治療を始める患者さんだけでなく、胆石、胆のう炎、胆のうポリープなど別の病気のために胆のう摘出術を受け、摘出した胆のうを病理検査した結果、初めてがんが見つかる患者さんがいます。

このように手術前には胆のうがんと診断されておらず、胆のう摘出後に偶然判明したものを偶発胆のうがんと呼びます。国内ガイドラインでも、良性胆のう疾患として胆のう摘出を受けた後に病理組織学的に判明する偶発胆のうがんが独立した臨床課題として扱われています。

がんが見つかったからといって、すべての患者さんが直ちにもう一度手術を受けるわけではありません。病理結果からがんの深さや切除断端などを確認し、画像で現在の病状を再評価したうえで、追加治療が必要かを判断します。

まず病理結果で「がんの深さ」を確認する

胆のう摘出後にがんが見つかった場合、最初に確認したい情報の一つが深達度です。

病理報告書には「m」「mp」「ss」や「pT1a」「pT1b」「pT2」などと書かれている場合があります。

浅い粘膜内の病変なのか、固有筋層までなのか、それとも筋層を越えた漿膜下層まで入り込んでいるのかによって、最初の胆のう摘出だけで十分な可能性と、周囲へ目に見えないがんが残っている可能性が変わります。

胆のう摘出だけで治療が完結する場合

胆のう壁のごく浅い範囲にとどまるがんでは、最初の胆のう摘出によって病変が完全に取り切れており、追加手術を必要としない場合があります。

特に粘膜固有層までのT1aは早期の病変です。NCIも、胆のう摘出後に偶然見つかった表在性の胆のうがんでは、追加治療なしで治癒する患者さんが多いと説明しています。

一方、固有筋層まで達するT1bについては、追加切除の必要性を一律に決められるほど単純ではありません。NCIは偶発T1b胆のうがんに対する再切除について議論が残るとしています。国内の旧版ガイドラインでもmp症例について異なる報告があることが示され、2025年第4版で明確に追加切除のBQ(基本項目)として取り上げられているのはss以上です。

そのため「T1bと書いてあるから必ず再手術」「ステージⅠだから絶対に追加手術は不要」と患者さん自身で判断するのではなく、病理結果全体を確認します。

参考:NCI|Gallbladder Cancer Treatment PDQ

ss以上では追加手術を検討する

筋層を越えて漿膜下層までがんが入り込んでいると、最初の胆のう摘出だけでは、胆のう床側の肝臓や周囲のリンパ節などに目に見えない病変が残っている可能性を考える必要があります。国内の公開ガイドラインでも、ss以上では必要に応じて肝切除やリンパ節郭清を伴う追加根治手術を検討する考え方が示されています。

ここで行う追加手術は、「最初の手術が失敗だったからもう一度胆のうを取る」ものではありません。

すでに胆のうは摘出されています。追加手術では、がんが残っている可能性がある肝臓側やリンパ節などを切除し、最初から胆のうがんと分かっていれば行っていた根治手術の範囲へ近づけることが目的になります。

参考:胆道癌診療ガイドライン 第4版

追加手術を決めるときは深達度だけを見ない

追加手術の判断では、深達度は非常に重要ですが、それだけを見るわけではありません。

たとえば、胆のう管断端などの切除断端にがんが残っていないか、リンパ管・血管への侵襲があるか、病理学的な悪性度はどうかなどを確認します。また、CTなどで肝臓、リンパ節、腹膜、肺などに明らかな転移がないかを改めて評価します。リンパ節転移や切除断端は、胆道がん根治切除後の再発リスクとも関連する重要な病理情報です。

これらの病理所見と画像検査をもとに、追加手術によって完全切除を目指せるかを判断します。

追加手術は完全切除を目指せる場合に検討する

追加根治手術は、再発リスクを減らし、完全切除を目指せる可能性がある患者さんに検討する治療です。

しかし、術後の再評価ですでに遠隔転移が見つかった場合や、周囲へ広く浸潤して完全切除が難しい場合、全身状態から大きな手術の負担が高すぎる場合などには、追加手術以外の治療を考えます。胆道がんの切除可否は、遠隔転移、局所進展、全身状態などを総合して判断されます。

そのため、胆のう摘出後にがんが判明した場合には、「がんだった」という事実だけでなく、病理結果のどの所見が追加手術を勧める理由になっているのかを担当医に確認すると、その治療の目的を理解しやすくなります。

切除可能胆のうがんの術前・術後薬物療法

胆のうがんを手術で完全に切除できても、その後に再発することがあります。

画像や手術で確認できる病変を取り切っていても、検査では見えないごく少量のがん細胞がすでに身体の中に存在している場合があるためです。そのため、一定の再発リスクがある胆道がんでは、手術後に術後補助化学療法を行います。

術後補助化学療法ではS-1が標準治療

日本で胆道がん根治切除後の標準治療を大きく変えたのが、JCOG1202/ASCOT試験です。

この第III相試験には、肝内・肝外胆管がんだけでなく胆のうがんも含まれており、手術後に経過観察する群とS-1による補助化学療法を行う群が比較されました。440人を対象とした主解析では、3年全生存割合は経過観察群67.6%、S-1群77.1%で、S-1による生存期間の改善が示されました。JCOGはこの結果をもとに、S-1補助療法が胆道がん根治手術後の標準治療になったとしています。

S-1は、手術で目に見えるがんを取り残したから使用する薬ではありません。

画像には映らない微小ながん細胞を治療し、再発する可能性を下げることが術後補助療法の目的です。

参考:JCOG|JCOG1202/ASCOT 患者向け試験結果JCOG1202/ASCOT 原著論文|PubMed

ごく早期の胆のうがんではS-1の必要性を個別に判断する

「胆のうがんを手術したら全員S-1を飲む」と理解するのは正確ではありません。

JCOG1202で対象となった胆のうがんは、当時使用されたUICC第7版でT2~T4かつリンパ節転移なし、またはT1~T4でリンパ節転移ありなどの患者さんでした。pT1N0の胆のうがんは試験対象ではありませんでした。

したがって、T1aなどごく早期の胆のうがんまで、JCOG1202の結果をそのまま当てはめて「必ずS-1が必要」と考えるべきではありません。

実際の術後治療では、病理学的な深達度、リンパ節転移、切除断端、脈管侵襲などの再発リスクと、手術からの回復状況、年齢、臓器機能などを確認して治療方針を決めます。リンパ節転移や切除断端などは、JCOG1202の2026年副次解析でも術後早期再発と関連する因子として報告されています。

S-1を安全に続けられる状態かも確認する

標準治療として推奨される薬であっても、すべての患者さんが同じ状態で治療を開始できるわけではありません。

胆のうがんで胆のう摘出だけを受けた患者さんと、肝切除や胆管切除、周囲臓器の合併切除まで受けた患者さんでは、術後の身体への負担が大きく異なります。

術後補助化学療法を開始する際には、食事が取れているか、体重や体力が回復しているか、肝機能・腎機能・血球数に問題がないかなどを確認します。S-1では好中球減少などの血液毒性を含む副作用があり、JCOG1202でも治療中の有害事象が評価されています。

そのため主治医からS-1を勧められた場合には「病理結果のどの点から再発リスクがあると考えているのか」「自分の場合はS-1によるメリットをどう考えているのか」まで確認すると、術後治療の目的を理解しやすくなります。

切除可能胆のうがんの術前化学療法は臨床試験で検証が続いている

切除不能胆道がんでは複数の有効な薬物療法があります。しかし2026年現在、切除可能な胆のうがんすべてに術前化学療法を行う治療は標準として確立していません。

2025年版胆道癌診療ガイドラインでも「切除可能胆道がんに対する術前化学療法は推奨されるか」が独立CQ(臨床的課題項目)として扱われています。JCOGでは、切除可能胆道がんを対象に、ゲムシタビン+シスプラチン+S-1(GCS)による術前補助化学療法を検証する第III相試験JCOG1920が進められています。2026年8月時点では患者登録は終了しており、追跡・解析が続いています。

したがって、手術可能と判断された胆のうがんで最初に手術を行うことは、術前治療を省略しているという意味ではありません。

一方、非常に局所進行した病変などでは、個々の状況や臨床試験などに応じて術前治療が検討される場合があります。「手術前に薬を使うか」は、標準治療として確立している術後S-1とは分けて理解する必要があります。

参考:JCOG1920|術前GCS療法 第III相試験JCOG肝胆膵グループ

切除不能・再発胆のうがんの薬物療法

胆のうがんが肝臓や重要な血管、複数の周囲臓器へ広がっていて手術で完全に取り切ることが難しい場合や、肺・腹膜などへの遠隔転移がある場合、手術後に再発した場合には、全身に作用する薬物療法が治療の中心になります。

2025年版『胆道癌診療ガイドライン 改訂第4版』では、切除不能胆道がんについて一次治療と二次治療がそれぞれ独立したCQ(臨床的課題項目)として扱われています。胆のうがんだけ別の薬物療法体系があるわけではなく、胆管がんなどとともに「胆道がん」として治療法が検討されます。

参考:胆道癌診療ガイドライン 第4版

一次治療では化学療法+免疫療法が重要な選択肢

進行・再発胆道がんでは、長くゲムシタビン+シスプラチン(GC療法)が薬物療法の基本となってきました。

現在は、GC療法に免疫チェックポイント阻害薬を加える治療が重要な一次治療の選択肢となっています。代表的なのが、「ゲムシタビン+シスプラチン+デュルバルマブ」と、「ゲムシタビン+シスプラチン+ペムブロリズマブ」です。

デュルバルマブについては、2026年6月改訂のPMDA最適使用推進ガイドラインで、治癒切除不能な胆道がんに対してゲムシタビン・シスプラチンとの併用が示されています。ペムブロリズマブにも胆道がんの最適使用推進ガイドラインがあります。

デュルバルマブを検証したTOPAZ-1試験では、治癒切除不能胆道がんに対してGC療法のみの場合と比べ、デュルバルマブを加えた群で全生存期間が延長しました。さらに長期追跡でも生存効果が確認されています。

ペムブロリズマブを検証したKEYNOTE-966試験でも、進行胆道がんに対するGC療法へペムブロリズマブを加えることで全生存期間が改善しました。この試験には肝内・肝外胆管がんだけでなく胆のうがんも含まれています。

したがって、「胆のうがんだから特別な抗がん剤を使う」というより、切除不能・再発胆道がんとして病状と全身状態に応じた一次治療を選ぶと考える方が実際の診療に近くなります。

参考:PMDA|最適使用推進ガイドラインTOPAZ-1|デュルバルマブ+GC 3年追跡KEYNOTE-966|ペムブロリズマブ+GC

日本ではGCS療法も治療選択肢になる

日本では、ゲムシタビン+シスプラチン+S-1(GCS療法)も進行胆道がんに対する重要な選択肢です。

国内の第III相MITSUBA試験では、GCS療法とGC療法を比較し、全生存期間中央値はGCS療法13.5カ月、GC療法12.6カ月で、GCS療法による生存期間の改善が示されました。奏効率もGCS療法41.5%、GC療法15.0%でした。

ただし現在は免疫チェックポイント阻害薬を含む治療も標準的な選択肢となっているため、「どの患者さんにもGCSが第一選択」という意味ではありません。腫瘍の広がり、治療の目的、腎機能、体力、併存疾患、免疫療法を使用できるかなどを踏まえて治療を選びます。

参考:MITSUBA試験|GCS vs GC

シスプラチンや免疫療法を使いにくい場合は治療を調整する

薬物療法は、腎機能、体力、併存疾患などに応じて調整します。

シスプラチンでは腎機能への影響や聴力低下、末梢神経障害などに注意する必要があります。腎機能が低下している場合や、大量の補液が身体への負担になる場合には、シスプラチンを含む治療が適さないことがあります。国立がん研究センターも、胆道がん薬物療法におけるシスプラチン特有の副作用として腎臓への負担、難聴、手足のしびれなどを挙げています。

そのような場合には、ゲムシタビン+S-1(GS療法)など別の治療を検討することがあります。

国内のJCOG1113試験では、進行・再発胆道がんに対するGS療法はGC療法に全生存期間で劣らないことが示されました。またGS療法では、シスプラチンのような補液を必要としないという違いがあります。この試験には胆のうがん患者も含まれています。

免疫チェックポイント阻害薬についても、自己免疫疾患の状態などによって慎重な判断が必要になる場合があります。したがって、「標準治療をそのまま使えない=治療そのものができない」ではありません。

参考:JCOG1113/FUGA-BT|GS vs GC

黄疸や胆管炎がある場合は先に状態を整えることがある

胆のうがんが胆管へ広がったり周囲から胆管を圧迫したりすると、胆汁が流れにくくなり、黄疸や胆管炎を起こすことがあります。

強い黄疸や胆管炎がある状態では、そのまま薬物療法を始めることが難しい場合があります。2025年版ガイドラインでも、閉塞性黄疸を伴う切除不能胆道がんで、どの程度まで減黄してから薬物療法を開始するかがCQ(臨床的課題項目)として独立しています。

そのため必要に応じて胆管ステントなどによる胆道ドレナージや感染症治療を行い、胆汁の流れや肝機能、全身状態を整えてから薬物療法へ進みます。国立がん研究センターも、胆道閉塞が手術や薬物療法を妨げる場合に胆道ドレナージを行うと説明しています。

参考:国立がん研究センター|胆道がん 治療

二次治療以降は「前の治療」とバイオマーカーを確認する

一次治療を続けていても、がんが再び大きくなったり、新しい転移が出たりすることがあります。その場合には二次治療以降を検討します。

海外のABC-06試験では、GC療法後に進行した胆道がんに対して、フルオロウラシル、レボホリナート、オキサリプラチンを組み合わせるFOLFOX療法を行うことで、症状への治療だけを行う場合と比べて全生存期間が延長しました。この試験にも胆のうがんが含まれています。なお、ABC-06試験はGC療法後を対象とした試験であり、現在一次治療で用いられるGC療法+免疫チェックポイント阻害薬の治療後を直接検証した試験ではありません。

現在の二次治療では、単に「次の抗がん剤」を選ぶだけではありません。

2026年の3学会合同手引きでは、胆道がんには治療につながる複数のバイオマーカーがあり、切除不能・再発例では分子異常に応じた治療を検討することが重視されています。特に胆のうがんでは、次章で説明するHER2が治療選択につながる可能性があります。

参考:ABC-06|二次治療FOLFOX

胆のうがんのバイオマーカー・遺伝子検査

進行・再発胆のうがんでは、同じ病名であっても、がん細胞が持つ遺伝子異常やタンパク質の特徴が患者さんごとに異なります。こうした特徴をバイオマーカーとして調べることで、特定の分子標的薬や免疫療法が治療候補になる場合があります。

2026年8月に肝癌研究会・日本肝胆膵外科学会・日本胆道学会が合同で公表した『胆道癌患者におけるバイオマーカー検査の手引き Ver.1.0』では、FGFR2、IDH1、HER2、BRAF V600E、MSI-High/dMMR、TMB-High、NTRK、RET、ALKなど、胆道がんで治療につながるバイオマーカーと検査方法が整理されています。

参考:3学会合同|胆道癌患者におけるバイオマーカー検査の手引き(2026年8月 Ver.1.0)

胆のうがんではHER2が重要な治療標的の一つ

HER2は、細胞表面に存在し、細胞増殖に関わるシグナルを伝えるタンパク質です。HER2をつくるERBB2遺伝子が増幅したり、HER2タンパク質が過剰に発現したりすると、がん細胞の増殖に関係する場合があります。

HER2異常の頻度は胆道がんの発生部位によって異なります。

2026年の3学会合同手引きでは、HER2タンパク過剰発現または遺伝子増幅は胆道がん全体でおおむね5~15%程度、胆のうがんでは10~20%程度とする報告があると整理されています。C-CATのデータでも、検査方法によって割合は異なるものの、組織CGP全体では胆のうがんのHER2遺伝子増幅は17.6%でした。

そのため胆のうがんは、胆道がんの中でもHER2標的治療につながる可能性を比較的検討しやすい病型の一つです。

ただし、この「10~20%」という数字を、「胆のうがん患者の5人に1人が必ずHER2治療を受けられる」と解釈することはできません。検査方法や対象集団によって頻度が異なり、実際の治療にはHER2の判定方法、これまでの治療、薬剤の適応条件なども関係します。

HER2陽性とHER2遺伝子増幅は完全に同じ意味ではない

HER2については、言葉を分けて理解する必要があります。

HER2タンパク過剰発現は、IHC(免疫組織化学染色)を使って、がん細胞表面にHER2タンパク質がどの程度発現しているかを調べます。

一方、HER2遺伝子増幅は、FISHなどによってERBB2遺伝子のコピー数が増えているかを評価したり、CGPなどの遺伝子解析で調べたりします。2026年手引きでは、IHC、FISH、CGPがHER2異常を評価する方法として整理されています。

そのため「HER2陽性」「HER2タンパク過剰発現」「HER2遺伝子増幅」は関連する概念ですが、検査方法まで含めれば完全な同義語ではありません。どの結果を用いて薬を選べるかは、対象となる薬剤の承認条件や承認された検査法を確認する必要があります。

HER2異常が確認された場合の治療候補

HER2異常が確認された場合には、異常の種類や検査方法、これまでに受けた治療などを確認し、HER2を標的とする治療が選択肢になるかを検討します。

2026年3月、日本ではトラスツズマブ デルクステカン(T-DXd)「HER2陽性の進行・再発の固形癌(標準的な治療が困難な場合に限る)」という適応が追加されました。胆のうがんでも、HER2の判定とその他の適応条件を満たす場合には治療候補となります。

ただし、HER2に何らかの異常が見つかれば、すべてT-DXdの適応になるわけではありません。実際に治療へつなげられるかは、HER2の異常の種類、検査法、前治療、病状などを確認して判断します。

参考:PMDA|トラスツズマブ デルクステカン(エンハーツ)

HER2以外にも治療につながるバイオマーカーがある

2026年の3学会合同手引きでは、胆道がんで保険適用薬につながり得るバイオマーカーとして、次のような分子異常が整理されています。

なお、以下には「胆のうがん」という病名そのものを対象として承認されている治療だけでなく、特定の遺伝子異常などを持つ固形がんを横断的に対象とする治療も含まれます。異常が見つかっただけで直ちに薬を使用できるわけではなく、前治療、病状、使用した検査法、コンパニオン診断の条件などを確認する必要があります。

バイオマーカー 胆のうがんでの考え方 条件を満たした場合に検討される治療
HER2遺伝子増幅・HER2陽性 胆道がんの中では胆のうがんで比較的みられやすい 条件を満たせばT-DXdなどHER2を標的とした治療につながる場合がある
BRAF V600E 一部の胆道がんでみられる ダブラフェニブ+トラメチニブが候補になる場合がある
MSI-High/dMMR 頻度は高くないが、免疫療法の選択に関係する 条件を満たせばペムブロリズマブが候補になる
TMB-High 腫瘍の遺伝子変異量を示す指標 条件を満たせばペムブロリズマブが候補になる
NTRK融合遺伝子 まれ TRK阻害薬が候補になる場合がある
RET融合遺伝子 非常にまれ セルペルカチニブが候補になる場合がある
ALK融合遺伝子 非常にまれ アレクチニブが候補になる場合がある

FGFR2・IDH1は胆管がんほど胆のうがんの中心的な標的ではない

胆管がんの記事ではFGFR2融合とIDH1変異を詳しく扱いました。

これは、FGFR2融合やIDH1変異が主に肝内胆管がんで特徴的にみられる分子異常だからです。これに対して胆のうがんでは、HER2異常の方が比較的多く報告されています。3学会合同手引きでも、HER2異常は胆のうがん・肝外胆管がんに比較的多く、肝内胆管がんでは頻度が低いという分布が示されています。

ただし、胆のうがんだからFGFR2やIDH1を絶対に調べる意味がないということではありません。CGPでは多くの遺伝子をまとめて解析するため、個々の患者さんで治療につながる異常が見つかる可能性を広く探索できます。

バイオマーカー検査・がん遺伝子パネル検査・CGPは目的が異なる

「遺伝子検査を受けた」と言われても、何を調べたかは検査によって異なります。

バイオマーカー検査は、薬の効果などに関係する「目印」を調べる広い概念で、遺伝子だけでなくHER2タンパク質の発現なども含まれます。

がん遺伝子パネル検査は、多数の遺伝子を一度に解析する検査方法です。

そのパネル検査を使い、特定の薬だけを前提にせず治療候補や臨床試験につながる異常を幅広く探索することをCGP(包括的がんゲノムプロファイリング)と呼びます。

一方、特定の薬を使えるか判断するための検査はコンパニオン診断です。一部のがん遺伝子パネル検査は、CGPとしてだけでなくコンパニオン診断としても使用できるため、「パネル検査=CGP」と完全に同義ではありません。2026年手引きでも、この違いを踏まえた検査の使い分けが説明されています。

バイオマーカー検査は次の治療に間に合う時期を考える

進行・再発胆道がんでは、標準治療がすべて終了してから初めてバイオマーカー検査について考えればよいとは限りません。次の治療選択に検査結果を生かせるよう、早い段階から「どの検査を、いつ行う可能性があるのか」を主治医と相談し、手術標本など利用できる検体について確認しておくことが役立ちます。

ただし、早い段階からCGPについて相談することと、実際に保険診療でCGPを実施できる時期は同じではありません。2026年8月時点では、保険診療によるがん遺伝子パネル検査には、標準治療がない、または標準治療の終了が見込まれる固形がんであることなどの条件があります。

そのため「今の治療を決めるために必要なバイオマーカー検査」「将来CGPを行う場合に備えた検体や検査計画」「実際に保険診療でCGPを実施できる時期」を分けて考えることが大切です。

参考:3学会合同|胆道癌患者におけるバイオマーカー検査の手引き(2026年8月 Ver.1.0)

胆のうがんの放射線治療・症状を和らげる治療

胆のうがんでは、根治を目指せる場合には手術、切除不能・再発では薬物療法が治療の大きな柱になります。

放射線治療を行う場合もありますが、切除不能胆のうがんの全患者さんに一律に行う標準治療という位置づけではありません。

2025年版胆道癌診療ガイドラインでは「切除不能胆道がんに放射線治療または化学放射線療法は有用か」と「胆道がん切除例に対する術後放射線療法・術後化学放射線療法は有用か」がFRQ(フューチャー・リサーチ・クエスチョン:将来の研究課題)として、今後さらに検証が必要な課題に位置づけられています。

参考:胆道癌診療ガイドライン 第4版

遠隔転移がない局所進行例で放射線治療を検討することがある

手術できない胆のうがんでも、理由が「遠隔転移」ではなく、周囲の血管や臓器へ局所的に広がっているためという場合があります。このような遠隔転移のない局所進行胆道がんでは、薬物療法とともに放射線治療や化学放射線療法を検討することがあります。

国立がん研究センターも、手術できない胆道がんで遠隔転移がない場合には、がんの進行を遅らせることなどを目的として放射線治療を行う場合がある一方、現時点では有効性が十分に証明された標準治療ではないと説明しています。

放射線治療を提案された場合には、根治、局所制御、症状緩和のどの目的で行うのか、薬物療法とどのように組み合わせるのかを確認するとよいでしょう。

痛みなどを和らげるために放射線治療を行うことがある

放射線治療には、がんを完全に消すことだけでなく、症状を軽減する目的もあります。たとえば骨転移によって強い痛みがある場合には、転移した場所へ放射線を照射し、痛みを和らげる治療を行うことがあります。

「緩和目的の放射線治療」と説明されても、それだけで抗がん治療をすべて終了するという意味ではありません。全身薬物療法を続けながら、特定の病変による症状を放射線で軽減する場合もあります。

参考:国立がん研究センター|胆道がん 治療

胆管が塞がって黄疸がある場合は胆道ドレナージを行うことがある

進行した胆のうがんが胆管へ浸潤したり周囲から圧迫したりすると、胆汁の流れが妨げられ、黄疸や胆管炎が生じることがあります。

この場合には、胆管へステントを入れるなどして胆汁を流す胆道ドレナージを行うことがあります。ドレナージはがんを消す治療ではありませんが、黄疸や感染を改善し、薬物療法を安全に続けるために必要になる場合があります。

薬物療法がよく効いた後に手術を再評価する場合がある

最初は切除不能と判断された胆のうがんでも、薬物療法によって腫瘍が縮小し、新しい遠隔転移が現れない状態が続くなどした場合には、手術で完全切除できる可能性を改めて評価することがあります。

このように、当初は切除不能だったがんに対して治療後に手術を検討する考え方をコンバージョン手術と呼びます。

ただし「抗がん剤が効けば手術する」という確立した一律の治療ではありません。2025年版胆道癌診療ガイドラインでも、切除不能胆道がんに対するコンバージョン手術はFRQ(将来の研究課題)として、今後さらに検証が必要な課題です。

薬物療法がよく効いている場合には、腫瘍の大きさだけでなく、肝臓や血管・周囲臓器との関係、リンパ節や遠隔転移、全身状態を改めて評価し、R0切除を目指せるかを検討します。

胆のうがん治療後の生活と治療の副作用

胆のうがんの治療後にどのような生活になるかは、胆のうだけを摘出したのか、肝臓や胆管まで一緒に切除したのか、その後に薬物療法を受けているのかによって大きく異なります。

術後の回復や生活への影響は、胆のう摘出のみか、肝切除・胆管切除などを伴うかによって大きく異なります。国立がん研究センターも、胆道がんでは手術範囲の違いによる術後の合併症として肝不全、胆汁漏、胆管炎などが起こる可能性を説明しています。

参考:国立がん研究センター|胆道がん 療養

胆のうを摘出しても生活できるのはなぜか

胆のうは胆汁をつくる臓器ではなく、肝臓でつくられた胆汁を一時的にためて濃縮する臓器です。

胆のうを摘出した後も肝臓では胆汁がつくられ続け、胆汁は肝臓から胆管を通って直接十二指腸へ流れます。そのため、胆のうがなくても消化そのものができなくなるわけではありません。

単純な胆のう摘出だけであれば、多くの人は長期的に特別な食事制限を必要とせず、通常の健康的な食生活へ戻れます。一方、胆のうがんでは肝切除や胆管切除などを追加していることもあります。その場合は、単純な胆石手術後と同じ回復経過とは限りません。

参考:NHS|Recovering from gallbladder removal

手術直後は少量ずつ食べ、脂肪の取りすぎを避ける

胆のう摘出後は、これまで胆のうにためていた胆汁が持続的に腸へ流れるようになります。術後しばらくは、一度に大量の食事や脂肪分の多い食事を取ると、下痢や腹部不快感などが起こる人もいます。

国立がん研究センターは胆道がん治療後の一般的な食生活として、一度の量を少なめにして回数を分ける、脂肪を取りすぎない、良質なタンパク質を取ることなどを案内しています。ただし、胆のうを取ったから一生脂肪をほとんど食べてはいけないという意味ではありません。単純な胆のう摘出後には特別な低脂肪食を長期間続ける必要がないとする患者向け医療情報もあり、実際には手術範囲や症状に合わせて調整します。

下痢、腹痛、食欲不振、体重減少などが続く場合には、自己判断で食事を大きく制限するより、医師や管理栄養士へ相談します。

参考:Guy’s and St Thomas’ NHS|胆のう摘出後の食生活

肝切除や胆管切除まで行った場合は回復の負担が大きくなる

T2以降などで胆のうに接する肝臓を切除した場合には、胆のう摘出だけの場合より手術侵襲が大きくなります。

大きな肝切除では、一時的に肝機能が低下したり、黄疸や腹水などを伴う肝不全が問題になったりすることがあります。また胆管を切除して腸とつないだ場合には、胆汁漏や術後胆管炎などが起こることがあります。

また、膵臓を含む手術を行った場合には、膵液がつないだ部分などから漏れる膵液漏が起こることもあります。どの合併症に注意する必要があるかは予定している手術によって異なるため、手術前には「自分の術式で特に起こりやすい合併症は何か」まで確認しておくとよいでしょう。

退院後に高熱、黄疸、強い上腹部痛などが出た場合には、単なる手術後の疲れとして様子を見るのではなく、治療を受けた医療機関へ相談します。胆管と腸をつないだ手術後の胆管炎は退院後にも起こる可能性があります。

参考:国立がん研究センター|胆道がん 治療

S-1では食欲・下痢・口内炎などが生活に影響することがある

術後補助化学療法などで使用するS-1では、血球減少に加えて、食欲低下、下痢、口内炎、皮膚症状、涙目などが起こることがあります。

手術後はもともと食事量や体重が落ちていることがあります。その状態に下痢や口内炎が加わると、脱水や栄養低下によって治療を予定どおり続けにくくなる場合があります。

飲み薬だから点滴より副作用が軽いとは限りません。

食事や水分が十分取れない、下痢が続く、口内炎で食べられない、強い倦怠感があるといった場合には、我慢して服用を続けるのではなく治療施設へ相談します。副作用の程度によって休薬や減量などを調整します。

ゲムシタビン・シスプラチンでは血球減少や腎機能に注意する

ゲムシタビンやシスプラチンでは、白血球・好中球・血小板の減少、貧血、食欲低下、吐き気、倦怠感などが起こることがあります。

シスプラチンでは腎機能への影響、難聴、手足のしびれなどにも注意します。ゲムシタビンでは頻度は高くないものの間質性肺炎が起こる可能性があります。

薬物療法中に発熱した場合には、好中球減少に伴う感染症だけでなく、胆管が塞がっている患者さんでは胆管炎も考える必要があります。

患者さん自身で原因を区別するのは難しいため、高熱や悪寒がある場合には「抗がん剤の副作用だろう」と自己判断せず治療施設へ連絡することが必要です。

免疫チェックポイント阻害薬では臓器の炎症に注意する

デュルバルマブやペムブロリズマブは、免疫ががんを攻撃する働きを利用する薬です。

そのため、通常の抗がん薬とは異なり、免疫反応が正常な臓器へ及ぶことで、肺、腸、肝臓、甲状腺、副腎などさまざまな場所に炎症や機能障害が起こることがあります。

2026年6月のデュルバルマブ胆道がん最適使用推進ガイドラインでも、間質性肺疾患、肝機能障害・肝炎、甲状腺機能異常、副腎機能障害などが報告されています。また、免疫反応による副作用が疑われる場合には専門医と連携して対応する必要があるとされています。

新しい咳や息切れ、続く下痢、強い倦怠感、急な体重変化など、これまでと違う症状が出た場合には早めに医療機関へ伝えます。

参考:PMDA|最適使用推進ガイドライン

HER2標的治療では間質性肺疾患に特に注意する

HER2陽性の進行・再発胆のうがんでT-DXdを使用する場合には、間質性肺疾患が特に重要な副作用です。

2026年3月の国内添付文書では、T-DXdによる間質性肺疾患で死亡した症例が報告されていることが警告され、投与開始前の胸部CT、投与中の呼吸困難・咳・発熱などの確認、胸部画像検査などが求められています。

HERB試験でもHER2陽性胆道がんへのT-DXd投与で間質性肺疾患が認められており、3学会合同手引きでも慎重なモニタリングが必要とされています。

したがって、治療中に新しく咳が出る、息切れする、発熱が続くといった変化があれば、風邪だと決めつけず早めに治療施設へ相談します。

参考:PMDA|トラスツズマブ デルクステカン

緩和ケア・支持療法は抗がん治療と並行して行う

胆のうがんでは、痛み、食欲不振、体重減少、黄疸、かゆみ、倦怠感など、がん自体の症状に加えて、手術や薬物療法による負担も生じます。

こうした問題を和らげる緩和ケアや支持療法は、診断時から治療と並行して受けることができます。

支持療法には、がんによる症状や治療の副作用・合併症・後遺症を軽減する治療やケアも含まれます。食べられない、痛みで眠れない、治療を続ける体力が落ちている、不安のため日常生活に支障があるといった問題も相談の対象です。

胆のうがんの治療では、画像上のがんを小さくすることだけでなく、治療を続けられる身体の状態を保ち、日常生活への負担をできるだけ軽くすることも治療の一部として考えます。

参考:国立がん研究センター|緩和ケア
胆のうがんのステージ別5年生存率

胆のうがんの予後を調べると「ステージ1なら何%」「ステージ4ではどのくらい生きられるのか」といった生存率の数字を目にすることがあります。

国立がん研究センターの院内がん登録では、2014~2015年に胆のうがんと診断された患者さんについて、ステージ別の5年生存率が公表されています。ここでは、がん以外の死因の影響を統計学的に調整した5年ネット・サバイバルを中心に示します。

ステージ 5年実測生存率 5年ネット・サバイバル
Ⅰ期 77.9% 87.2%
Ⅱ期 62.8% 71.4%
Ⅲ期 17.8% 19.9%
Ⅳ期 2.0% 2.1%

※国立がん研究センター「院内がん登録2014~2015年5年生存率」の胆のうがんデータ。対象は3,009人、生存状況把握割合は98.6%です。
参考:国立がん研究センター|胆のうがん 2014~2015年5年生存率

ネット・サバイバルは「胆のうがんだけが死亡に影響すると仮定した生存率」

実測生存率は、胆のうがん以外の病気や事故などによる死亡も含めて、実際にどのくらいの患者さんが生存していたかを示します。

一方、ネット・サバイバルは、一般人口の死亡率などを用いて、胆のうがん以外の死亡の影響を統計学的に取り除いた指標です。国立がん研究センターでは、2014~2015年診断例の5年生存率からネット・サバイバルを採用しています。

そのため、この記事ではがんそのものの予後を比較する目的ではネット・サバイバルを中心に見ますが、どちらも個人の寿命を直接予測する数字ではありません。

Ⅰ・Ⅱ期とⅢ期以降で生存率が大きく異なるのはなぜか

上の統計では、Ⅰ期・Ⅱ期とⅢ期以降で5年生存率に大きな差があります。

胆のうがんでは、がんが胆のう壁の浅い範囲にとどまっている段階では完全切除を目指しやすい一方、胆のう壁を越えて肝臓や周囲臓器へ広がったり、リンパ節転移が加わったりすると、手術でがんを完全に取り切ることが難しくなります。

ただし「現在のステージⅢなら5年生存率19.9%」とそのまま置き換えることはできません。

この生存率集計で用いられた2014~2015年診断例の病期はUICC TNM第7版です。一方、本記事のステージ章で説明した現在の国立がん研究センター患者向け病期表はUICC TNM第8版です。第8版ではT2が腹腔側T2aと肝臓側T2bに分けられるなど病期分類が変更されているため、生存率表のⅠ~Ⅳ期と現在の病期を一対一で対応させることはできません。

生存率表を見るときの注意

本記事のステージ解説:UICC TNM第8版
上記の2014~2015年生存率:UICC TNM第7版

病期分類の版が異なるため、現在のT2a・T2bなどを上記の生存率へ直接当てはめることはできません。

参考:国立がん研究センター|胆道がん 治療UICC|TNM Publications and Resources

5年生存率は「あと何年生きられるか」を示す数字ではない

たとえばⅣ期の5年ネット・サバイバルが2.1%だからといって、「ステージ4なら5年生きられる確率は自分の場合も2.1%」と判断することはできません。

生存率は、特定の年代に診断された多数の患者さんを集計した統計です。同じステージでも、局所進行なのか遠隔転移があるのか、どこへ転移しているのか、年齢や体力、肝機能・腎機能、治療への反応、がんが持つ分子異常などによって病状は異なります。さらに胆のうがんでは、ステージ番号だけでなく、手術で完全切除できるかどうかも予後に大きく関係します。

生存率は「自分の余命」を示すものではなく、同じ病気を持つ患者集団の治療成績を理解するための参考値として見る必要があります。

2014~2015年の統計には現在の治療が十分に反映されていない

もう一つ確認したいのが、診断された年代です。

上記の患者さんが診断されたのは2014~2015年です。その後、根治切除後の胆道がんではJCOG1202/ASCOT試験によってS-1術後補助療法が標準治療となりました。

切除不能胆道がんでも、2022年以降はデュルバルマブを含む免疫療法が国内診療へ導入され、2026年6月にも胆道がんの最適使用推進ガイドラインが改訂されています。

さらに2026年8月の3学会合同手引きでは、HER2、BRAF V600E、MSI-High/dMMR、TMB-High、NTRK、RETなど、胆道がんで治療選択につながる複数のバイオマーカーが整理されています。

したがって、2014~2015年の生存率は、現在使われている術後補助療法、免疫療法、分子標的治療などが十分普及する前の患者集団の成績です。

過去の数字を必要以上に楽観視することも悲観視することもせず「現在自分にどの治療が可能なのか」と合わせて考える必要があります。

胆のうがんの再発・経過観察

胆のうがんを手術で完全に切除した後も、再発がないか、手術から身体が回復しているかを確認するために定期的な経過観察を行います。

国立がん研究センターでは、胆道がん治療後の検査頻度はがんの進行度や治療法によって異なり、問診、血液検査、腫瘍マーカー検査を行い、必要に応じて腹部超音波やCTなどの画像検査を行うとしています。

一方、2025年版『胆道癌診療ガイドライン 改訂第4版』では「胆道癌に対する術後経過観察はどのように行うか」がFRQ(将来の研究課題)として位置づけられています。つまり、すべての患者さんに共通する最適な検査間隔や検査方法が十分なエビデンスによって一つに決まっているわけではありません。

参考:胆道癌診療ガイドライン 第4版

胆のうがんは肝臓・リンパ節・肺・腹膜などに再発することがある

胆道がんは、周囲のリンパ節、肝臓、肺などへ転移することがあり、手術後には切除した場所やその周囲へ再び現れる局所再発や、腹膜へがん細胞が広がる腹膜播種として再発することがあります。

胆のうがんは肝臓に接しているため、肝臓の再発についても画像検査で確認します。ただし「肝臓に影がある=胆のうがんの再発」と決めることはできず、CTやMRIなどから病変の性質を評価します。

再発する場所や数によって治療方針は異なりますが、再発胆道がんでは多くの場合、全身へ作用する薬物療法を検討します。骨転移による痛みなどには、症状を和らげる目的で放射線治療を行う場合もあります。

腹膜播種の治療法や診断については、以下の記事で解説しています。

術後は血液検査・腫瘍マーカー・画像検査などを組み合わせて経過を見る

経過観察では、黄疸、腹痛、食欲、体重、発熱などの変化を確認します。

血液検査では、ビリルビンなど肝臓・胆道に関係する値を確認し、CA19-9やCEAなどの腫瘍マーカーを測定する場合があります。また、必要に応じて腹部超音波やCTなどを行い、再発を疑う病変がないか調べます。

検査の頻度は、手術時のステージ、病理結果、リンパ節転移や切除断端、術後補助化学療法を受けているか、手術からどの程度時間が経過しているかなどによって変わります。

他の胆のうがん患者さんとCTの頻度が違うことだけで「自分は十分な経過観察を受けていない」と判断することはできません。

参考:国立がん研究センター|胆道がん 療養

CA19-9だけで胆のうがんの再発を判断しない

胆のうがんの経過観察ではCA19-9を測定する場合がありますが、CA19-9の値だけで再発を確定することはできません。

CA19-9は胆道がんで利用される腫瘍マーカーですが、胆汁の流れが悪い場合や炎症がある場合などにも変動することがあります。反対に、がんがあっても数値が高くならない患者さんもいます。

そのため、以下を組み合わせて再発の可能性を評価します。

腫瘍マーカーの推移
+症状
+肝胆道系の血液検査
+CTなどの画像所見

CA19-9が以前より上昇した場合には「再発した」と数字だけで結論づけるのではなく、原因を調べるための追加評価が必要です。

再発した場合は手術時のステージではなく「現在の病状」から治療を考える

たとえば最初の手術時に「ステージⅡ」と診断されていた患者さんが、その後に肺や肝臓へ再発した場合、再び「ステージⅡの治療」を行うわけではありません。

再発時には、どこに再発しているのか、病変はいくつあるのか、遠隔転移があるのか、それまでにどの薬を使ったのか、現在どの程度の体力や臓器機能が保たれているのかを改めて評価します。再発胆道がんでは薬物療法が治療の中心になります。

再発が見つかったときには「最初は何期だったか」だけでなく、「今どこに、どの程度の病変があり、現在どの治療を選べる状態なのか」を整理することが治療選択につながります。

再発時にはHER2などのバイオマーカー情報も確認する

現在の胆のうがん治療では、再発した場所だけでなく、がん細胞が持つ分子異常も次の治療に影響する場合があります。

2026年8月の3学会合同手引きでは、胆道がんは治療薬に直結するバイオマーカーが多いがん種の一つとされ、HER2遺伝子増幅、BRAF V600E、MSI-High/dMMR、TMB-High、NTRK融合、RET融合などが治療選択と関係するものとして整理されています。

特に胆のうがんでは、これまで説明したようにHER2異常が比較的多く報告されています。

そのため再発時には、「以前バイオマーカー検査を受けているか」「何を調べたのか」「保存されている手術標本を使って追加検査できるか」を確認する価値があります。

過去に「遺伝子検査済み」と説明されていても、すべてのバイオマーカーを評価したとは限りません。3学会合同手引きでも、検査方法によって評価できる遺伝子や薬の適応判定に利用できる結果が異なることが整理されています。

参考:2026年バイオマーカー検査の手引き

気になる症状があれば次の定期検査まで待たない

経過観察は、予定されたCTの日まで待つことだけではありません。

国立がん研究センターでは、胆道がんの経過観察で黄疸、腹部痛、食欲の変化などを確認し、気になる症状があれば担当医へ伝えるよう案内しています。

たとえば、これまでなかった黄疸、続く腹痛、原因の分からない体重減少、食欲低下、高熱などが現れた場合には、再発のほか、治療の副作用や胆道の感染などさまざまな原因が考えられます。

症状が出たから再発とは限りませんが、定期検査の予約日まで必ず待つ必要もありません。新しい症状や急な変化があれば、治療を受けている医療機関へ相談します。

胆のうがんの治療を選ぶときに確認したいこと

胆のうがんでは、「ステージはいくつか」だけを確認しても、自分に提案された治療の全体像が分からないことがあります。

治療を左右するのは、胆のう壁への深達度、肝臓や胆管への広がり、リンパ節・遠隔転移、手術で完全切除できる可能性、手術後の病理結果、バイオマーカーなど複数の情報だからです。国立がん研究センターも、胆道がんでは病期に加え、手術可能性を評価して治療を決定しています。

特に胆のうがんでは、胆石などの手術後に初めてがんが判明する患者さんもいるため、「これから最初の手術を受ける場合」と「すでに胆のうを摘出した後に追加治療を考える場合」では、確認する内容も少し異なります。

確認したいこと なぜ治療選択に関係するのか
がんは胆のう壁のどこまで入り込んでいるか T1a・T1b・T2などの深達度によって、胆のう摘出だけでよいか、肝切除やリンパ節郭清などを検討するかが変わるため
T2の場合、T2aかT2bか 腹腔側と肝臓側では病変の位置関係が異なり、手術や病期評価を理解する材料になるため
肝臓・胆管・十二指腸などへ広がっているか 胆のう以外の臓器をどこまで一緒に切除する必要があるかに関係するため
リンパ節転移・遠隔転移はあるか 手術で根治を目指せるか、全身薬物療法を中心にするかを判断する材料になるため
手術でR0切除を目指せるか 肉眼だけでなく顕微鏡的にもがんを残さない完全切除を目指せるかが手術適応を考えるうえで重要なため
胆のう摘出後に偶然がんが見つかった場合、深達度はどこまでか 特にss以上では追加切除を検討する臨床課題となるため
胆のう管断端などの切除断端は陰性か 最初の手術でがんが残っている可能性や追加切除の必要性を考える材料になるため
術後S-1が勧められる理由は何か 深達度、リンパ節、切除断端などから再発リスクを考え、術後補助化学療法の利益と負担を判断するため
切除不能の場合、手術できない理由は何か 遠隔転移なのか、局所の血管・臓器浸潤なのかによって病状やその後の治療の考え方が異なるため
HER2などのバイオマーカーを調べているか 進行・再発時に分子標的治療や免疫療法など別の治療候補につながる場合があるため

2025年版胆道癌診療ガイドラインでは、外科切除の可否を治療アルゴリズムの最初の分岐とし、胆のうがんについては、肝外胆管切除、肝切除、胆のう摘出後にss以上と判明した場合の追加切除などが独立した臨床課題として扱われています。

胆のうがんの治療説明を受ける際には、治療名だけでなく「なぜその治療が必要なのか」を確認することが役立ちます。手術では切除する臓器とその理由、切除不能・再発例では現在の治療だけでなく次の治療候補やバイオマーカー検査の状況まで確認すると、今後の治療計画を整理しやすくなります。

参考:胆道癌診療ガイドライン 第4版国立がん研究センター|胆道がん 治療NCI|Gallbladder Cancer Treatment PDQ

胆のうがんでは「壁のどこまで広がったか」が治療を左右する

胆のうがんの治療では、ステージだけでなく、がんが胆のう壁のどこまで入り込んでいるか、肝臓や胆管などへ広がっているか、手術で完全切除を目指せるかが重要な判断材料になります。

胆のう摘出後に偶然がんが見つかった場合には、深達度や切除断端、転移の有無を確認して追加手術の必要性を判断します。切除不能・再発例では、薬物療法に加えてHER2などのバイオマーカー情報が治療選択につながることもあります。

治療法を選ぶ際には、一つの数字や薬の名前だけで判断するのではなく、現在の病状と、その治療が何を目的として行われるのかを主治医と確認しながら治療計画を整理していきましょう。

胆管がんは、肝臓でつくられた胆汁を十二指腸へ運ぶ「胆管」に発生するがんです。胆管は肝臓の中から十二指腸まで続いているため、がんができた場所によって肝内胆管がん、肝門部領域胆管がん、遠位胆管がんに分けられます。同じ「胆管がん」という名前でも、症状の出方、ステージ分類、手術方法が大きく異なります。

特に肝門部領域胆管がんや遠位胆管がんでは、がんによって胆汁の流れが妨げられ、皮膚や白目が黄色くなる黄疸が発見のきっかけになることがあります。一方、肝臓の中に発生する肝内胆管がんは、早い段階では胆汁の流れを妨げないこともあり、症状がないまま見つかる場合があります。

胆管がんの治療を考えるうえでは、ステージだけを見るのでは不十分です。「胆管のどこにがんがあるのか」「血管や周囲の臓器へどこまで広がっているのか」「手術で完全に取り切れる可能性があるのか」を確認する必要があります。胆道がんでは、まず外科切除が可能かを判断することが治療方針の大きな分岐となっています。

また、胆管がんでは黄疸や胆管炎に対する胆道ドレナージ、手術後の補助化学療法、切除不能・再発時の免疫療法や遺伝子・バイオマーカー検査など、病状に応じて複数の治療を組み合わせます。

この記事では、胆管がんの3つの種類から、症状、検査、ステージ、手術、薬物療法、バイオマーカー検査、生存率、再発後の治療まで順番に解説します。

参考:胆道がんについて|国立がん研究センター

  • 胆管がんは「肝内胆管がん」「肝門部領域胆管がん」「遠位胆管がん」でステージや手術方法が異なる
  • 肝外胆管がんでは黄疸がよくみられるが、肝内胆管がんは早期に症状が出ないことも多い
  • がんの場所、血管への広がり、遠隔転移、残せる肝臓の量などから「手術で取り切れるか」を判断する

胆管がんとは何か

胆管は、肝臓でつくられた胆汁を十二指腸へ運ぶための管です。

肝臓の中には細い胆管が木の枝のように張り巡らされており、枝が合流しながら徐々に太くなります。肝臓から出る部分を肝門部といい、その先で胆のうから伸びる胆のう管と合流します。さらに胆管は膵臓の中を通り、最終的に十二指腸へつながります。

胆汁は肝臓でつくられる消化液で、脂肪の消化や吸収を助けます。また胆汁には黄色い色素であるビリルビンが含まれており、胆管がふさがれると、このビリルビンが血液中に増えて黄疸が起こります。

胆管がんは、この胆管を構成する細胞から発生するがんです。ただし胆管は肝臓の中から十二指腸付近まで長く続いているため、どこに発生したかによって同じ胆管がんでも病気の性質や治療が異なります。

参考:胆管がん|日本肝胆膵外科学会

胆管がんはできた場所によって3つに分かれる

胆管がんは、大きく肝内胆管がん、肝門部領域胆管がん、遠位胆管がんの3つに分けて考えます。国立がん研究センターでも、肝内胆管がんと肝外胆管がんを区別し、さらに肝外胆管がんを肝門部領域胆管がんと遠位胆管がんに分けています。

種類 発生する場所 治療を考えるうえでの特徴
肝内胆管がん 肝臓の中を走る胆管 肝臓の一部を切除する肝切除が中心。肝細胞がんとは別の病気として治療を考える
肝門部領域胆管がん 左右の肝管が合流する肝門部周辺 胆管だけでなく肝臓を大きく切除する手術が必要になることがある
遠位胆管がん 膵臓に近い側の胆管 胆管が膵臓の中を通るため、膵頭十二指腸切除が必要になることが多い

この違いは単なる病名の細分化ではありません。

たとえば肝内胆管がんなら「肝臓のどの部分をどれだけ切除するか」が手術の中心になります。一方、肝門部領域胆管がんでは胆管と肝臓、遠位胆管がんでは膵頭部や十二指腸を含めた手術が必要になることがあります。つまり「胆管がんです」と言われた後に、最初に確認したいのが「3つのうちどの胆管がんなのか」です。国立がん研究センターも、胆道がんの病期を発生部位ごとに分けて評価しています。

参考:胆道がんについて|国立がん研究センター

肝内胆管がんと肝細胞がんは同じ肝臓にできても別のがん

肝内胆管がんは肝臓の中に発生するため、医学的には原発性肝がんの一つに分類されます。「胆管細胞がん」と呼ばれることもあります。

しかし、一般に「肝臓がん」と呼ばれることが多い肝細胞がんとは別の病気です。

肝細胞がんは肝臓の中心となる肝細胞から発生しますが、肝内胆管がんは胆汁を運ぶ胆管の細胞から発生します。そのため、同じ肝臓の中にできた腫瘍でも、ステージ分類、手術以外の治療、使用する薬物療法などが異なります。国立がん研究センターも、肝内胆管がんについて肝細胞がんとは治療法が異なるため区別しています。

「肝臓にがんがある」と説明された場合には、肝細胞がんなのか肝内胆管がんなのかを病理診断などで確認することが、その後の治療を理解する出発点になります。

肝細胞がんの治療法やステージ、症状や生存率などについては以下の記事で詳しく解説しています。

胆管がんと胆道がんは同じ意味ではない

「胆管がん」と「胆道がん」は似た言葉ですが、意味する範囲が異なります。

胆道がんは、胆汁が流れる胆道に発生するがんをまとめた総称です。国立がん研究センターでは、胆道を胆管、胆のう、十二指腸乳頭の3つに分け、そこに発生する胆管がん、胆のうがん、十二指腸乳頭部がんを胆道がんとして扱っています。

したがって関係を整理すると、胆管がんは胆道がんの一部です。

本記事では胆道がん全体ではなく、肝内胆管がん、肝門部領域胆管がん、遠位胆管がんの3つを「胆管がん」として詳しく説明します。

参考:胆道がんについて|国立がん研究センター

胆管がんの原因とリスク

胆管がんは、原因を一つに特定できる病気ではありません。実際には、明らかな危険因子が見つからないまま発症する患者さんもいます。

一方で、胆管に長期間炎症や胆汁うっ滞が起こる病気、胆管の先天的な構造異常、一部の化学物質への高濃度曝露などは、胆管がんの発生リスクと関連することが分かっています。胆道癌診療ガイドラインでも、胆道がんの危険因子は独立した臨床課題として扱われています。

参考:胆道癌診療ガイドライン|日本癌治療学会

原発性硬化性胆管炎など胆管の慢性炎症

原発性硬化性胆管炎(PSC)とは、肝臓の内外にある胆管に慢性的な炎症と線維化が起こり、胆管が狭くなったり拡張したりする病気です。

胆管に慢性的な炎症が続くことから、PSCは胆管がんの危険因子として知られています。日本癌治療学会が公開する胆道癌診療ガイドラインでも、PSCは胆管がんの代表的な危険因子として挙げられています。

ただし、PSCと診断されたから必ず胆管がんになるわけではありません。また、胆管がん患者さんの大多数にPSCがあるという意味でもありません。

PSCがある人では、もともとの病気による胆管狭窄と胆管がんによる狭窄を区別することが難しい場合があります。そのため、黄疸の悪化や胆管の形の変化などがみられたときには、画像検査や内視鏡検査などを組み合わせて詳しく評価します。日本胆道学会も、PSCでは胆管がんを合併しやすいことを患者向け情報で説明しています。

参考:原発性硬化性胆管炎(PSC)|日本胆道学会

肝内結石と肝内胆管がん

肝臓の中の胆管に結石ができる肝内結石症も、肝内胆管がんとの関連が知られています。

結石があることで胆汁の流れが滞ったり、胆管炎を繰り返したりすると、胆管の粘膜に慢性的な刺激や炎症が加わります。肝内胆管がんの国内診療ガイドラインでも、肝内結石症は肝内胆管がんのリスク因子の一つとして挙げられています。

ただし、肝内結石が見つかった人すべてが将来胆管がんになるという意味ではありません。結石そのものの治療や胆管炎の有無などを含め、個々の状態に応じた経過観察が必要になります。

膵・胆管合流異常など胆道の先天的な異常

膵・胆管合流異常とは、胆管と膵管が十二指腸の壁の外側で合流する先天的な構造異常です。

通常とは異なる場所で胆管と膵管がつながるため、膵液が胆管側へ逆流しやすくなり、胆道の粘膜へ慢性的な障害を与えると考えられています。胆管が拡張するタイプの膵・胆管合流異常は、胆管がんの危険因子として国内ガイドラインでも挙げられています。

膵・胆管合流異常では胆のうがんとの関連も強いため、胆管だけの問題として考えるのではなく、胆道全体を評価します。

職業性胆管がんと化学物質

胆管がんの中には、特定の化学物質への職業上の曝露との関連が明らかになったものがあります。

国内では、印刷事業所などで使用されていた1,2-ジクロロプロパンやジクロロメタンへの高濃度曝露が、胆管がんの発生リスクを高めると考えられています。国立がん研究センターも、これらの化学物質を胆管がんの発生要因として掲載しています。

これは通常の生活環境で少量接することと同じ意味ではなく、主に職業上の高濃度曝露が問題となったものです。

参考:胆道がん 予防・検診|国立がん研究センター

肝内胆管がんでは慢性肝疾患などとの関連も報告されている

肝内胆管がんは、胆管そのものの病気だけでなく、肝硬変、B型・C型肝炎などの慢性肝疾患との関連も報告されています。

日本肝癌研究会が作成した肝内胆管がん診療ガイドラインでは、肝硬変、B型・C型肝炎、アルコール、糖尿病、肥満、非アルコール性脂肪肝炎なども報告されたリスク因子として挙げられています。

ここでも、リスク因子があることと発症することは同じではありません。胆管がんは、特定の生活習慣や病気がある人だけに起こるがんではなく、明らかな背景疾患がない人にも発生します。

参考:肝内胆管がん診療ガイドライン 論文(英文)|日本肝癌研究会

胆管がんの予防・検診と受診の目安

現在、胆管がんについては、胃がんや大腸がんのように国の指針で定められた対策型がん検診はありません。国立がん研究センターも、胆道がんには現在、国の指針として定められている検診はないとしています。

そのため「○歳から毎年胆管がん検診を受ければ早期発見できる」という一般人口向けの方法は確立していません。

参考:胆道がん 予防・検診|国立がん研究センター

胆管がんを確実に防ぐ方法は確立していない

胆管がんにはPSCや膵・胆管合流異常などのリスク因子がありますが、すべての患者さんに共通する原因が分かっているわけではありません。そのため、特定の食品やサプリメントなどで胆管がんを予防できるという医学的根拠はありません。

国立がん研究センターでは、胆道がんに限った方法ではなく、がん全般の予防として禁煙、飲酒を控える、バランスのよい食事、身体活動、適正体重の維持、感染予防などを案内しています。

これらは健康維持のためには有用ですが、実践すれば胆管がんを確実に防げるという意味ではありません。

リスクとなる病気がある場合の経過観察は「一般のがん検診」とは違う

PSCや膵・胆管合流異常、肝内結石などの病気がある場合には、その基礎疾患自体の診療として定期的な画像検査や血液検査などを受けることがあります。これは症状のない一般の人を対象とする「胆管がん検診」とは意味が異なります。

特にPSCでは胆管そのものが狭くなるため、胆管の変化が基礎疾患によるものなのか、がんが加わったものなのかを慎重に見分ける必要があります。

すでに胆道や肝臓の病気で通院している人は、「胆管がんが心配なので別の検診を探す」というよりも、現在の病気にどのような経過観察が必要かを担当医に確認する方が適切です。

参考:原発性硬化性胆管炎(PSC)|日本胆道学会

黄疸などの症状がある場合は検診ではなく医療機関を受診

皮膚や白目が黄色くなった、尿が急に濃くなった、便が白っぽくなった、原因の分からない体重減少が続く、といった症状がある場合には、検診を待つのではなく医療機関を受診します。

がん検診は基本的に症状のない人を対象とするものです。国立がん研究センターも、胆道がんについて気になる症状がある場合には早めに医療機関を受診するよう案内しています。

特に黄疸に発熱や悪寒、腹痛を伴う場合には、後述する急性胆管炎が起きている可能性があります。胆管炎は重症化することがあるため、通常の定期受診を待たず医療機関へ相談する必要があります。

胆管がんの初期症状・進行した場合の症状

胆管がんの症状は、肝内胆管がんと肝外胆管がんで出方が異なります。

肝門部領域胆管がんや遠位胆管がんは、胆汁が流れる太い胆管を狭くするため、比較的早い段階から黄疸が現れることがあります。一方、肝内胆管がんは肝臓の中に腫瘤をつくるため、早期には自覚症状がないことがあります。

そのため、「黄疸がないから胆管がんではない」「黄疸が出たから末期である」と症状だけから判断することはできません。

肝内胆管がんは早期には症状が出にくい

肝内胆管がんは肝臓の内部にある細い胆管から発生します。

腫瘍が小さいうちは太い胆管の流れを直接妨げないことがあるため、早い段階では黄疸などの特徴的な症状が現れない場合があります。国立がん研究センターも、肝内胆管がんは早期には症状が出ないことが多いと説明しています。

健康診断などの血液検査で肝機能異常を指摘されたり、別の目的で受けた腹部超音波やCTで肝臓の腫瘤が偶然見つかったりすることもあります。

進行すると、右上腹部の痛みや違和感、食欲低下、体重減少、倦怠感などが現れることがあります。

参考:胆道がんについて|国立がん研究センター

肝門部領域・遠位胆管がんでは黄疸が発見のきっかけになることがある

肝門部領域胆管がんと遠位胆管がんでは、がんが胆管の内腔を狭くし、胆汁が十二指腸へ流れにくくなることがあります。この状態を閉塞性黄疸(へいそくせいおうだん)といいます。

国立がん研究センターでは、肝外胆管がんでは黄疸がよくみられる症状として挙げられています。

ただし、黄疸が出るタイミングは腫瘍の位置や胆管の狭窄の程度によって変わります。小さな腫瘍でも胆管の重要な場所を塞げば黄疸が出ることがあるため、黄疸の有無だけでステージを判断することはできません。

黄疸はなぜ起こるのか

胆汁には、赤血球が分解された後にできるビリルビンという黄色い色素が含まれています。

通常、ビリルビンは胆汁とともに胆管を通って十二指腸へ排出されます。しかし胆管ががんで塞がれると胆汁が流れなくなり、ビリルビンが血液中へ増えていきます。その結果、皮膚や白目が黄色く見えるようになります。

黄疸は胆管がんだけで起こる症状ではありません。胆管結石、膵臓の病気、肝臓の病気などでも起こるため、原因を画像検査や血液検査で確認する必要があります。

尿が濃い・便が白っぽい・皮膚がかゆい

閉塞性黄疸では、皮膚や目が黄色くなる前後に、尿や便の色が変わることがあります。血液中に増えたビリルビンが尿へ排出されるため、尿が濃い茶色のようになることがあります。

反対に、胆汁が腸へ流れなくなると便へ届く胆汁色素が減るため、便が灰色や白っぽくなることがあります。また胆汁うっ滞に伴って皮膚の強いかゆみが生じる場合もあります。

単なる尿の濃さは脱水でも起こりますが、白目の黄ばみや白っぽい便などを伴う場合には胆汁の流れが悪くなっている可能性を考えます。

腹痛・食欲低下・体重減少・倦怠感

胆管がんでは、みぞおちや右上腹部の痛み、全身のだるさ、食欲不振、体重減少などが起こることがあります。これらは胆管がんだけに特有の症状ではありません。そのため「体重が減ったから胆管がん」と判断することはできません。

一方、特に食事や運動量を変えていないのに体重が減り続ける、腹部の違和感と肝機能異常が続くなど、これまでになかった変化が重なる場合には原因を調べることが必要です。

黄疸に発熱・悪寒を伴う場合は胆管炎にも注意する

胆管が狭くなって胆汁が流れにくくなると、胆管内で細菌感染が起こり、急性胆管炎を発症することがあります。胆管がんも胆汁うっ滞を起こす原因の一つです。

胆管炎では、発熱、悪寒、黄疸、右上腹部痛などがみられます。重症になると血圧低下や意識障害を起こすこともあり、抗菌薬だけでなく、詰まった胆管から胆汁を流す胆道ドレナージが必要になる場合があります。

胆管がんの治療中や胆管ステント留置中に、高熱、強い悪寒、黄疸の急な悪化などがみられた場合には、次の予約日まで待たず治療を受けている医療機関へ連絡します。

参考:日本胆道学会「急性胆管炎」

胆管がんの検査と診断

胆管がんの診断は、一つの検査だけで完結するとは限りません。

大きく分けると、以下のような流れで進みます。

血液検査や超音波で異常を見つける
→ CT・MRIで胆管のどこに病変があり、どこまで広がっているかを見る
→ 必要に応じてPET・PET-CTでリンパ節転移や遠隔転移などを追加で評価する
→ EUSやERCPなどで胆管や周囲をさらに詳しく調べる
→ 細胞や組織を採取して病理診断を行う

すべての患者さんがこれらの検査を順番に受けるわけではなく、病変の場所やCT・MRIの所見、手術を検討しているかなどによって必要な検査を組み合わせます。国立がん研究センターでも、胆道がんではまず血液検査と腹部超音波検査を行い、胆管狭窄や拡張などがあればCTやMRI、さらに必要に応じて内視鏡検査、生検、細胞診へ進む流れを示しています。

胆管がんでは、診断と同時に「手術で取り切れる範囲なのか」まで評価する必要があります。そのため、単に「がんがあるか」を探す検査ではなく、胆管の長さ方向への広がり、門脈・肝動脈などの血管との位置関係、リンパ節や遠隔臓器への転移まで調べます。

参考:胆道がん 検査|国立がん研究センター

血液検査|ビリルビン・ALP・γ-GTPなどを確認する

胆管が狭くなって胆汁の流れが悪くなると、血液中のビリルビン、ALP、γ-GTPなどが上昇することがあります。

ビリルビンは黄疸の程度を知る手がかりになり、ALPやγ-GTPは胆道系の異常を評価するために使われます。国立がん研究センターも、胆道がんの初期検査としてこれらを確認するとしています。

手術や薬物療法を安全に行えるか判断するために、肝機能、腎機能、血球数、炎症反応なども確認します。

ただし、胆管がんがあっても初期には大きな異常が出ない場合があります。反対に胆石や胆管炎などでも胆道系酵素が上がるため、血液検査だけでは胆管がんを診断できません。

CA19-9・CEAなどの腫瘍マーカー

胆管がんでは、血液中のCA19-9やCEAを測定することがあります。国立がん研究センターでも胆道がんで用いる代表的な腫瘍マーカーとしてCA19-9とCEAを挙げています。

腫瘍マーカーは、診断を補助したり治療前後の変化や経過をみたりするために利用します。しかし、CA19-9が高い=胆管がん、と確定することはできません。

胆管が詰まって胆汁がたまっている場合や胆管炎がある場合でもCA19-9が高くなることがあります。逆に胆管がんがあっても数値が高くならない患者さんもいます。したがって、CA19-9の数字だけを見るのではなく、黄疸や炎症の有無、CT・MRIなどの画像所見と合わせて判断します。

腹部超音波検査|胆管の拡張や肝臓の腫瘤を確認する

腹部超音波検査は、体の表面から超音波を当てて肝臓や胆道を観察する検査です。放射線被ばくがなく、身体への負担も比較的小さいため、胆道の異常を調べる最初の画像検査としてよく使われます。

肝外胆管が狭くなっている場合には、その上流側の胆管が拡張して見えることがあります。肝内胆管がんでは、肝臓の中の腫瘤が見つかることもあります。

ただし、超音波だけでは腫瘍の正確な広がりや血管との関係を十分評価できないため、異常が疑われた場合には造影CTやMRIなどへ進みます。

造影CT|がんの広がりと切除可能性を調べる

胆管がんでは造影CTが非常に重要な検査です。

CTでは、胆管が狭くなっている場所や腫瘍の大きさだけでなく、門脈や肝動脈などの血管へどこまで接しているか、周囲臓器へ広がっていないか、リンパ節転移や肝臓・肺などへの遠隔転移がないかを調べます。

特に肝門部領域胆管がんでは、どの血管へどこまで広がっているかによって、どの範囲の肝臓を切除できるかが変わります。

国内の胆道癌診療ガイドラインでは、胆管がんの局在や進展度を評価するためCTを重要な検査として位置づけており、胆道ドレナージを行う前にCTで評価することも推奨されています。この理由は、胆管へステントやチューブを入れた後には胆管炎や画像所見の変化が起こり、治療前の腫瘍の広がりを評価しにくくなる場合があるためです。

ただし、胆管炎など緊急性の高い状態では、画像検査より感染や胆汁うっ滞への治療を優先することがあります。

参考:胆道癌診療ガイドライン 第4版

MRI・MRCP|胆管がどこで狭くなっているかを調べる

MRIは磁気を利用して体内を詳しく画像化する検査です。

胆管がんでは、MRIを利用したMRCP(磁気共鳴胆管膵管造影)がよく用いられます。

MRCPでは造影剤を胆管へ直接注入しなくても、胆管や膵管を画像として描き出すことができます。胆管がどこで細くなっているのか、その上流側がどの程度拡張しているのか、腫瘍が胆管に沿ってどこまで広がっている可能性があるのかを評価する際に役立ちます。

CTとMRIはどちらか一方で十分というより、それぞれ異なる情報を補いながら手術可能性を評価することがあります。国内ガイドラインでも、CTとMRI/MRCPによって相補的な情報を得られると説明されています。

PET・PET-CT|リンパ節転移や遠隔転移を追加で調べることがある

PET・PET-CTは、放射性物質を含む薬剤を使って、がん細胞の活動性を画像化する検査です。胆管がんでは、CTやMRIなどで評価したうえで、リンパ節転移や遠隔転移などを追加で確認する目的で行うことがあります。

一方、すべての胆管がん患者さんに必ず行う検査ではありません。病変の場所やCT・MRIの所見、手術可能性などを踏まえて必要性を判断します。

EUS|胆管周囲を近くから調べる

EUS(超音波内視鏡検査)は、先端に超音波装置が付いた内視鏡を胃や十二指腸まで挿入し、体の内側から胆管や周囲組織を観察する検査です。

体表からの超音波より病変へ近づいて観察できるため、胆管壁の変化、周囲組織への広がり、リンパ節などを詳しく評価できます。特に遠位胆管は膵臓や十二指腸に近いため、EUSによる評価が役立つ場合があります。

一方、どの患者さんにも必ずEUSを行うわけではなく、CT・MRIなどの結果や病変の場所に応じて必要性を判断します。

ERCP|胆管を詳しく調べ、細胞や組織を採取する

ERCP(内視鏡的逆行性胆管膵管造影)では、口から十二指腸まで内視鏡を入れ、十二指腸乳頭から細いカテーテルを胆管へ挿入します。胆管内へ造影剤を入れてX線撮影することで、胆管狭窄の形やがんの広がりを詳しく調べます。

MRCPが身体の外から胆管の全体像を見る検査であるのに対し、ERCPは胆管へ直接アクセスできる点が特徴です。そのため、胆汁を採取して細胞診を行ったり、狭窄部分から組織を採って生検したりできます。黄疸が強い場合には、そのまま胆道ドレナージを行うこともあります。

ただしERCPは、膵炎や胆管炎などの合併症を起こす可能性もあるため「胆管がんが心配だからとりあえずERCPを行う」という検査ではありません。まずCTやMRIなどで病変を評価し、その後、必要な患者さんに行います。

IDUS・経口胆道鏡(POCS)が必要になる場合

通常のCT、MRI、ERCPだけでは、胆管壁のどこまでがんが入り込んでいるか、胆管の長さ方向へどこまで広がっているかを判断しにくい場合があります。

そのようなときに使われる検査の一つがIDUS(管腔内超音波検査)です。ERCPの際に非常に細い超音波プローブを胆管内へ入れ、胆管壁の深さや周囲の血管との関係などを観察します。

POCS(経口胆道鏡)では、細い内視鏡を胆管の中へ進め、胆管粘膜そのものを直接観察します。疑わしい場所から狙って生検できることも利点です。胆管がんが胆管の表面に沿って広がっている範囲を確認する際にも使われます。

これらはすべての患者さんに必要な検査ではありません。「手術でどこまで胆管を切ればがんを取り切れるのか」をより正確に判断する必要がある場合などに追加します。

参考:POCS診療ガイドライン PDF|日本胆道学会

胆管の狭窄=胆管がんとは限らない

胆管が細く狭くなっている画像を見ると、「胆管がんではないか」と疑いますが、胆管狭窄があるだけではがんと確定できません。

胆管を狭くする病気には、原発性硬化性胆管炎やIgG4関連硬化性胆管炎などがあります。特にIgG4関連硬化性胆管炎では、胆管壁が厚くなったり狭窄したりして閉塞性黄疸を起こすことがあり、画像だけでは胆管がんとの鑑別が難しい場合があります。

日本癌治療学会の胆道癌診療ガイドラインでも、硬化性胆管炎は胆管がんと鑑別が必要な「腫瘍類似病変」として扱われています。そのため、画像所見だけではなく、血液検査、IgG4値、ERCP、胆管生検、ほかの臓器の所見などを組み合わせて診断します。

この区別が重要なのは、治療がまったく異なるためです。がんであれば手術や薬物療法を考えますが、IgG4関連硬化性胆管炎はステロイド治療が有効な病気です。

参考:IgG4関連自己免疫性胆管炎|日本胆道学会

胆管がんでは治療前に病理診断がつかない場合もある

一般に「がんの診断」と聞くと、組織を採取して顕微鏡でがん細胞を確認してから治療を始めるイメージがあります。

胆管がんでも可能な限り生検や細胞診による病理診断を行います。国立がん研究センターでは、ERCPやPOCS、胆道ドレナージなどの際に胆汁細胞診や胆管生検を行うことがあると説明しています。

しかし胆管は細い管であり、胃や大腸の腫瘍のように大きな組織を簡単に採取できるとは限りません。がんが胆管壁の内部へ入り込むように広がっている場合には、採取できた組織にがん細胞が含まれず、検査結果が陰性になることもあります。

そのため、細胞診や生検でがん細胞が確認できなかったからといって、胆管がんを完全に否定できるとは限りません。

画像所見、胆管狭窄の形、進展の仕方、腫瘍マーカー、複数回の病理検査などを総合して、胆管がんの可能性が高いと判断することがあります。

一方で、前述したIgG4関連硬化性胆管炎など良性疾患との鑑別も必要です。「病理診断がついていないのになぜ手術を検討するのか」と疑問に思った場合には、画像からどの程度胆管がんが疑われているのか、追加でできる検査はあるのか、良性疾患の可能性をどこまで評価したのかを担当医に確認すると、治療判断を理解しやすくなります。

胆管がんのステージ分類|3つの胆管がんで分類が異なる

胆管がんのステージは、がんがどこまで広がっているのかを示すTNM分類をもとに決めます。

ただし、胆管がんでは肝内胆管がん、肝門部領域胆管がん、遠位胆管がんで同じステージ分類を使うわけではありません。同じ「ステージⅡ」でも、発生した場所によって意味する病状が異なります。国立がん研究センターも、この3種類をそれぞれ別の病期表で掲載しています。

そのため、自分のステージを理解するときには、数字だけでなく、「どの種類の胆管がんについて、どの病期分類を使って説明されているのか」を確認することが大切です。

参考:国立がん研究センター|胆道がん 治療

TNM分類とは

TNM分類は、原発巣の広がりを示すT、リンパ節転移を示すN、遠隔転移を示すMを組み合わせて、がんの進行度を表す方法です。

分類 何を見ているか
T 原発巣の大きさや数、胆管壁への深達度、血管や周囲組織への広がりなど。何を基準にするかは胆管がんの発生部位によって異なる
N 周囲の領域リンパ節へ転移しているか、または転移したリンパ節の数
M 肺、骨、腹膜、遠隔リンパ節など、離れた場所への転移があるか

ここで気をつけたいのがT分類です。

遠位胆管がんでは、がんが胆管壁の中へ何mm入り込んでいるかがT分類に関係します。一方、肝門部領域胆管がんでは門脈や肝動脈への広がりが重視されます。肝内胆管がんでは、腫瘍の大きさだけでなく、単発か多発か、血管や主要胆管へ入り込んでいるかなどが評価されます。

つまり「T2だから3種類とも同じ程度の進行度」という読み方はできません。

胆管がんには一つの共通ステージ分類がない

胆管がんを3種類に分けて病期を考えるのは、発生する場所によって周囲の解剖が大きく異なるためです。

肝内胆管がんは肝臓の中で広がるため、腫瘍の数や血管浸潤などが重要になります。肝門部領域には左右の胆管だけでなく、門脈や肝動脈が複雑に集まっています。遠位胆管は膵臓の中を通っているため、胆管壁への浸潤とリンパ節、周囲の主要血管などを別の基準で評価します。

以下では、それぞれのステージがどのような病状を表すのかを、一般向けに整理します。

肝内胆管がんのステージⅠ~Ⅳ

国立がん研究センターの現行患者向け情報では、肝内胆管がんについて、日本肝癌研究会『原発性肝癌取扱い規約 第6版補訂版(2019年)』に基づく病期分類を掲載しています。

この分類では、主に次の3つがT分類を決める要素になります。

「腫瘍が1個である」「大きさが2cm以下である」「門脈・肝動脈などへの血管浸潤や主要胆管への浸潤がない」という条件です。満たす条件が少なくなるほどT分類が上がり、さらにリンパ節転移や遠隔転移を組み合わせてステージを判定します。

ステージ 一般的な病状のイメージ
Ⅰ期 腫瘍が単発・2cm以下で、血管や主要胆管への浸潤がなく、リンパ節転移・遠隔転移もない状態
Ⅱ期 「単発」「2cm以下」「血管・主要胆管浸潤なし」の3条件のうち2つを満たし、リンパ節・遠隔転移がない状態
Ⅲ期 3条件のうち1つだけを満たし、リンパ節・遠隔転移がない状態
ⅣA期 3条件をいずれも満たさない高度な局所進行、または一定範囲までの腫瘍でリンパ節転移があるものの、遠隔転移はない状態
ⅣB期 局所の広がりが大きくリンパ節転移もある状態、またはほかの臓器などへの遠隔転移がある状態

※上表は、国立がん研究センターの現行患者向け情報で採用されている日本肝癌研究会「原発性肝癌取扱い規約 第6版補訂版(2019年)」を一般向けに整理したものです。原発性肝癌取扱い規約は2025年10月に第7版が刊行されています。実際の診療では、どの版・分類で病期が説明されているかを確認してください。

この分類では、リンパ節転移があるだけで直ちに遠隔転移を意味するわけではありません。また、ⅣA期にも遠隔転移がない患者さんが含まれます。

肝門部領域胆管がんのステージⅠ~Ⅳ

肝門部領域胆管がんでは、がんが胆管壁の外へどこまで広がったかに加えて、門脈や肝動脈への浸潤とリンパ節転移がステージを大きく左右します。

国立がん研究センターの現行患者向け情報では、UICC TNM第8版を基準としています。

ステージ 一般的な病状のイメージ
0期 異常な細胞が胆管の表面にとどまる上皮内がんの状態
Ⅰ期 がんが胆管内にとどまり、筋層や線維組織までの広がりで、リンパ節・遠隔転移がない状態
Ⅱ期 胆管壁を越えて周囲の脂肪組織や隣接する肝実質へ広がっているが、リンパ節・遠隔転移がない状態
Ⅲ期 門脈・肝動脈などの主要血管へ広がっている、または1~3個の領域リンパ節へ転移している状態。遠隔転移はない
ⅣA期 4個以上の領域リンパ節へ転移しているが、遠隔転移は確認されない状態
ⅣB期 離れた臓器や遠隔リンパ節などへ転移している状態

※上表は、国立がん研究センター患者向けページが採用しているUICC TNM第8版を一般向けに整理したものです。

Ⅲ期の中でも状態は一様ではありません。ⅢA期では片側の門脈・肝動脈の枝への浸潤、ⅢB期では主門脈や両側の門脈枝、総肝動脈など、より手術に影響する血管への広がりが含まれます。ⅢC期は1~3個の領域リンパ節転移がある状態です。

このため、肝門部領域胆管がんでは「ステージⅢ」という数字だけでは、手術が可能かどうかまで判断できません。どの側の胆管・門脈・肝動脈へ広がっているのか、反対側の肝臓を十分に残せるのかまで確認する必要があります。

遠位胆管がんのステージⅠ~Ⅳ

遠位胆管がんでは、UICC TNM第8版においてがんが胆管壁へどのくらいの深さまで入り込んでいるかがT分類の中心になります。

さらに、リンパ節転移の個数や主要動脈への浸潤、遠隔転移を組み合わせてステージを判定します。

ステージ 一般的な病状のイメージ
0期 がん細胞が胆管の表面にとどまる上皮内がん・高度異形成の状態
Ⅰ期 胆管壁への浸潤が5mm未満で、リンパ節転移・遠隔転移がない状態
Ⅱ期 胆管壁への浸潤がより深くなっている、または1~3個の領域リンパ節へ転移している状態。遠隔転移はない
Ⅲ期 4個以上の領域リンパ節へ転移している、または腹腔動脈・上腸間膜動脈・総肝動脈など重要な血管へ広がっている状態。遠隔転移はない
Ⅳ期 肝臓、肺、腹膜など離れた場所へ遠隔転移している状態

※上表は、国立がん研究センター患者向けページが採用しているUICC TNM第8版を一般向けに整理したものです。

遠位胆管がんでは、Ⅰ期は胆管壁への浸潤が5mm未満、T2は5~12mm、T3は12mmを超える深さが一つの基準です。ただしステージⅡ以降は、深さだけでなくリンパ節転移との組み合わせによって病期が変わります。

胆管がんのステージ4はどのような状態か

「ステージ4」と聞くと、すべての胆管がんで「遠くの臓器へ転移した状態」をイメージするかもしれません。

しかし、胆管がんでは発生部位と病期分類によって、ステージ4の意味が異なります。

たとえば、遠位胆管がんのUICC第8版ではⅣ期は遠隔転移がある状態です。一方、肝門部領域胆管がんでは、4個以上の領域リンパ節転移があるものの遠隔転移がない状態もⅣA期に含まれます。国立がん研究センターが掲載している国内分類では、肝内胆管がんについても遠隔転移のないⅣA期があります。

したがって「ステージ4=必ず肺や骨などへ遠隔転移している」とは限りません。

また、ステージだけで手術の可否が自動的に決まるわけでもありません。胆管がんでは、血管への広がり、切除後に残せる肝臓の量と機能、リンパ節転移、遠隔転移、全身状態などを合わせて切除可能性を判断します。国立がん研究センターも、遠隔転移がなくても技術的に切除が難しい場合があり、その判断が施設によって異なる場合もあると説明しています。

切除できないと判断された場合には薬物療法が治療の中心になりますが、現在は免疫療法や、特定の遺伝子異常に応じた治療も使われるようになっています。後の章で、切除不能・再発胆管がんの治療とバイオマーカー検査について詳しく説明します。

参考:日本肝胆膵外科学会|胆管がん

治療前のcStageと手術後のpStageは異なることがある

治療前には、CTやMRIを中心に、EUSや、必要に応じてPET・PET-CTなどの検査結果を組み合わせて、がんの広がりを評価します。このように治療前の情報から判断する病期を臨床病期(cStage)と呼びます。

手術を行った場合には、切除した胆管、肝臓、膵臓、リンパ節などを病理検査で詳しく調べることができます。この結果から評価される病期が病理病期(pStage)です。

画像では転移がないように見えたリンパ節から、手術後にがん細胞が見つかることもあります。反対に、画像でがんの浸潤が疑われた場所に、病理検査ではがん細胞が確認されないこともあります。

そのため、手術前に説明されたステージと手術後に説明されるステージが変わることがあります。これは必ずしも最初の診断が誤っていたという意味ではなく、手術によってより詳しい情報が得られた結果です。

※国立がん研究センターの現行患者向け情報ではUICC TNM第8版が掲載されています。一方、UICCでは第9版が2025年に刊行され、2026年1月からの使用が推奨されています。本記事では国立がん研究センターの患者向け情報と対応させるため第8版を示していますが、実際の診療では診断書・病理報告書で使用された分類・版を確認してください。

胆管がん治療の全体像

胆管がんでは、ステージを決めた後に「ステージ○なら必ずこの治療」という一対一の対応で治療が決まるわけではありません。

治療方針を決める大きな分岐は「がんを手術で完全に取り切れる可能性があるか」です。

胆道がんではまず手術が可能かを検討し、手術できない場合には薬物療法を中心とした治療を行います。2025年版『胆道癌診療ガイドライン 改訂第4版』でも、診療アルゴリズムは外科切除の可否を大きな分岐として構成されています。

病状 主な治療の考え方
手術で取り切れると判断される 根治切除を目指して手術を行う。根治切除後は、術後の回復や全身状態などを確認し、S-1による術後補助化学療法を検討する
切除できるか慎重な判断が必要 血管への広がり、残せる肝臓の量と機能、胆管の広がりなどを専門施設で詳しく評価する
局所進行で切除できない 薬物療法を中心に行い、遠隔転移がない場合などには放射線治療を検討することがある
遠隔転移・再発 全身に作用する薬物療法が中心。治療歴やバイオマーカーによって使用する薬を選ぶ
黄疸・胆管炎がある 状態に応じて胆道ドレナージや感染治療を行い、胆汁の流れと全身状態を整えてから手術や薬物療法へ進む

手術を行えるかは、腫瘍の大きさだけでは決まりません。国立がん研究センターでは、手術に耐えられる全身状態であること、遠隔転移がないこと、肝切除が必要な場合には手術後に十分な肝機能を保てると予測できることなどを、切除可能性の判断材料として挙げています。

特に肝門部領域胆管がんでは、門脈や肝動脈と胆管が狭い範囲に集まっています。同じ画像所見でも、血管再建を含む手術を行えるか、どのくらい肝臓を残せるかなどによって判断が難しくなることがあります。

2025年版ガイドラインでも「borderline resectable(切除可能境界)胆道がんとはどのような症例か」はFuture Research Question(将来の研究課題)として残されており、膵がんのように全国共通の明確な切除可能境界分類が確立しているわけではありません。

そのため「手術できない」と説明されたときには、遠隔転移があるためなのか、重要な血管や胆管への広がりのためなのか、残せる肝臓の量・機能が不足するためなのかを確認することが、その後の治療を理解する助けになります。

参考:国立がん研究センター|胆道がん 治療
参考:胆道癌診療ガイドライン 第4版

黄疸がある場合の胆道ドレナージ

肝門部領域胆管がんや遠位胆管がんでは、腫瘍によって胆管が狭くなり、胆汁が流れなくなることがあります。

胆汁がたまると黄疸が強くなるだけでなく、胆管炎を起こしたり、肝機能が低下したりすることがあります。また、黄疸が強い状態では予定している手術や薬物療法を安全に行いにくくなることもあります。国立がん研究センターも、胆道閉塞によって手術や薬物療法が妨げられる場合に、胆道ドレナージを行うと説明しています。

胆道ドレナージとは、詰まった胆管から胆汁を流れるようにする処置です。これはがんそのものを取り除く治療ではありません。しかし、次のがん治療へ安全に進むために非常に重要な治療になることがあります。

参考:国立がん研究センター|胆道がん 治療

手術を考える場合は胆道ドレナージ前に造影CTで広がりを確認することがある

黄疸があると「まず胆管へステントを入れればよい」と思うかもしれません。しかし、手術による切除を目指す胆管がんでは、可能であれば胆道ドレナージを行う前に造影CTで腫瘍の広がりを評価することがあります。

2025年版『胆道癌診療ガイドライン 改訂第4版』でも、胆道ドレナージ章の最初に「閉塞性黄疸を有する胆道癌切除企図例に対して、胆道ドレナージ前に造影CTを行うか」が独立した項目として設けられています。

ドレナージ前の画像には、治療による胆管の変化が加わっていません。そのため、腫瘍が胆管のどこまで広がっているか、門脈や肝動脈とどのような位置関係にあるかなどを評価し、どの肝臓を残すかという手術計画を立てるうえで役立ちます。従来の国内ガイドラインでも、CTやMRI/MRCPは可能な限り胆道ドレナージ前に評価する考え方が示されてきました。

ただし、高熱や悪寒を伴う胆管炎など、感染への緊急対応が必要な場合には、画像診断より胆汁を流す処置や感染治療を優先することがあります。

参考:胆道癌診療ガイドライン 第4版

胆道ドレナージとは

胆道ドレナージでは、狭くなった部分を越えてチューブやステントを留置し、たまった胆汁を排出します。

大きく分けると、胆汁を体の外へ出す「外ろう(外瘻:がいろう)」と、胆汁を十二指腸など体内へ流す「内ろう(内瘻:ないろう)」があります。国立がん研究センターでは、内視鏡を使う方法と、体表から肝臓を通して胆管へ到達する経皮的な方法などを説明しています。

胆管がんでは「黄疸があれば全員同じ方法」というわけではありません。がんの場所、手術予定、胆管炎の有無、どの胆管が詰まっているのかによって方法を選びます。

ENBDと胆管ステントは胆汁の流し方が異なる

内視鏡を用いた代表的な方法には、内視鏡的経鼻胆管ドレナージ(ENBD)内視鏡的胆管ステント留置(EBS)があります。

方法 仕組み 特徴
ENBD 胆管に入れたチューブを鼻から体外へ出し、胆汁を外へ排出する 胆汁の量や性状を確認しやすく検査にも利用できる一方、鼻からチューブが出ているため違和感や自己抜去などが問題になる
胆管ステント 狭窄部分にステントを留置し、胆汁を体内から十二指腸へ流す 体外にチューブが出ないため生活上の負担は少ないが、詰まりや感染が起こると交換などが必要になる

2025年版ガイドラインでも、肝門部領域胆管がんの術前ドレナージについてENBD、EBS、インサイドステントを比較するCQ(クリニカル・クエスチョン:臨床的疑問)が独立して設けられており、病変の場所や手術計画に応じて方法を選ぶことが前提となっています。

肝門部領域胆管がんでは「どの胆管を流すか」も重要

肝門部領域胆管がんでは、左右の胆管が分かれる場所に腫瘍があるため、「胆汁を流せればどこでもよい」というわけではありません。

手術で右側の肝臓を切除して左側を残す予定であれば、手術後に残る肝臓から胆汁が流れる状態を整えることが特に重要になります。

国内ガイドラインでも、大きな肝切除を予定する胆道がんでは、残す予定の肝臓側を中心とした胆道ドレナージが重視されています。

このため、肝門部領域胆管がんの胆道ドレナージは、単なる黄疸の処置ではなく、その後に行う肝切除の計画と一体になった治療と考える方が実態に近くなります。

遠位胆管がんでも全員に術前ドレナージを行うわけではない

遠位胆管がんでも、強い黄疸や胆管炎がある場合には胆道ドレナージを行います。

一方で、肝切除を伴わず膵頭十二指腸切除へ速やかに進める患者さんなどでは、必ずしも全員に術前ドレナージが必要になるわけではありません。2025年版ガイドラインでも、遠位胆管がんの術前経乳頭的ドレナージを独立したCQとして検討しています。

黄疸の程度、胆管炎の有無、手術までの期間、術前薬物療法の予定などを考慮して判断します。

内視鏡で胆汁を流せない場合には別の方法を検討する

通常はERCPを利用して十二指腸側から胆管へ到達する方法が用いられますが、胆管の狭窄や消化管の形などによって内視鏡的ドレナージが難しい場合があります。

その際には、体表から肝臓を通して胆管へチューブを入れる経皮経肝胆道ドレナージなどを検討することがあります。EUSを利用した胆道ドレナージもありますが、切除を目指す胆管がんでの位置づけについては、2025年版ガイドラインでも今後の研究課題として扱われています。

発熱・悪寒・黄疸の再燃は胆管炎やステント閉塞の可能性がある

胆道ドレナージを行えば、その後ずっと胆汁が問題なく流れるとは限りません。

ステントやチューブが詰まったり、位置がずれたりすると再び胆汁が流れにくくなり、胆管炎を起こすことがあります。腹痛、発熱、黄疸などは、胆道ドレナージに問題が起きたときにみられる症状です。

胆管ステント留置後に高熱、悪寒、黄疸の悪化、強い腹痛などが現れた場合は、次回の診察日を待たず治療を受けている医療機関へ連絡します。

胆管がんの手術|発生部位で手術方法が大きく変わる

胆管がんで根治を目指す場合には、がんを残さず切除することが手術の目的になります。

ただし、胆管は肝臓の中から膵臓まで続いています。そのため、同じ胆管がんでも、発生した場所によって一緒に切除する臓器が大きく変わります。国立がん研究センターも、肝内胆管がん、肝門部領域胆管がん、遠位胆管がんで異なる術式を示しています。

種類 主な手術 なぜその手術が必要か
肝内胆管がん 部分肝切除・肝葉切除・拡大肝切除など がんが肝臓内の胆管に発生するため、腫瘍を含む肝臓を切除する
肝門部領域胆管がん 肝切除+肝外胆管切除+胆のう摘出+リンパ節郭清など 胆管が肝臓内へ枝分かれする部分にがんがあるため、片側の肝臓と胆管を一体として切除することが多い
遠位胆管がん 膵頭十二指腸切除+リンパ節郭清 遠位胆管が膵頭部の中を通るため、胆管だけを安全に分離して切除することが難しい

参考:国立がん研究センター|胆道がん 治療

肝内胆管がんでは腫瘍を含む肝臓を切除する

肝内胆管がんでは、がんがある場所と広がりに応じて肝臓を切除します。

腫瘍が一部に限られていれば部分切除を行う場合があります。右葉または左葉にまとまっている場合には、右肝切除・左肝切除などを行い、さらに広い範囲に及ぶ場合には拡大肝切除が必要になることがあります。

また、肝門部に近い肝内胆管がんでは、肝臓だけでなく肝外胆管や胆のうを切除し、周囲のリンパ節を郭清する場合もあります。日本肝胆膵外科学会も、肝内胆管がんでは胆管に沿った進展などを考慮して切除範囲を決める必要があると説明しています。

「肝内胆管がんなら肝臓の腫瘍だけを小さく取ればよい」とは限らず、がんを残さない切除範囲と、手術後に十分な肝機能を残すことの両方を考えて術式を決めます。

参考:日本肝胆膵外科学会|胆管がん

肝門部領域胆管がんではなぜ大きな肝切除が必要になるのか

肝門部では、右肝管と左肝管が合流して一本の胆管になります。

がんがこの合流部にできると、胆管の表面に沿って左右どちらかの肝臓側へ広がることがあります。胆管だけを途中で切除しても十分な切除断端を確保できない場合があるため、がんが広がっている側の肝臓と胆管を一体として切除します。

さらに肝門部には門脈と肝動脈も集まっているため、がんとの位置関係によって手術の難しさが大きく変わります。

切除後には、残った肝臓側の胆管と小腸をつないで、胆汁が再び腸へ流れるように再建します。

残す肝臓が小さい場合には門脈塞栓術を行うことがある

肝臓は再生能力のある臓器ですが、あまりに多く切除すると、残った肝臓だけでは身体に必要な働きを維持できず、術後肝不全を起こす危険があります。

そこで大きな肝切除を予定しており、手術後に残る肝臓の量が不足すると予測される場合に「門脈塞栓術(PVE)」を行うことがあります。

門脈塞栓術では、手術で切除する予定の肝臓へ流れる門脈をあらかじめ塞ぎます。すると血流が残す側へ多く流れるようになり、数週間かけて残す予定の肝臓を大きくすることを目指します。国立がん研究センターも、大きな肝切除が必要な場合には手術前に門脈塞栓術を行うことがあると説明しています。2025年版ガイドラインでもPVEと残肝機能評価が独立した項目になっています。

つまり門脈塞栓術は、がんそのものを治療するためではなく、予定した肝切除をより安全に行える状態へ近づけるための術前処置です。

遠位胆管がんではなぜ膵頭十二指腸切除を行うのか

遠位胆管は、十二指腸へ入る直前に膵臓の頭側である膵頭部の中を通っています。そのため、遠位胆管がんだけを胆管からくり抜くように切除すると、十分な切除範囲を確保できないことがあります。

一般的には膵頭十二指腸切除術を行い、遠位胆管と胆のう、膵頭部、十二指腸などを一緒に切除し、周囲のリンパ節も郭清します。切除後は残った膵臓、胆管、胃などを小腸につなぎ直し、食物、胆汁、膵液が再び腸へ流れるように再建します。

「胆管がんなのに、なぜ膵臓や十二指腸まで取るのか」と疑問に感じるかもしれませんが、これは遠位胆管が膵頭部と解剖学的に一体となっているためです。

血管まで広がっていても一律に手術不能とは限らない

肝門部領域胆管がんでは、門脈や肝動脈へがんが接したり入り込んだりすることがあります。血管浸潤は切除を難しくする重要な要素ですが、「血管に広がっている=必ず手術不能」ではありません。

病変の範囲によっては、門脈などをがんと一緒に切除して再建する手術を検討することがあります。2025年版胆道癌診療ガイドラインでも、肝動脈の合併切除・再建や複合的な大きな手術が個別の臨床課題として扱われています。ただし、このような手術は通常の胆管切除よりはるかに難易度が高く、合併症リスクも含めて慎重な判断が必要です。

手術不能と説明された場合には「どの血管への広がりが理由なのか」「残す側の血流を保てないためなのか」「ほかの臓器への転移が理由なのか」を確認すると、なぜその治療方針になったのかを理解しやすくなります。

肝門部領域胆管がんの肝移植は研究段階

通常の肝切除ではがんを取り切れない一部の肝門部領域胆管がんに対して、肝臓全体を摘出して生体肝移植を行う治療が研究されています。

日本では「切除不能な肝門部領域胆管癌に対する生体肝移植」が先進医療Bとして実施され、多施設共同の前向き臨床研究で安全性や治療成績の評価が続いています。厚生労働省の2026年の先進医療一覧にも掲載されており、臨床研究登録も募集中となっています。

対象になるのは、通常の肝切除では十分な肝臓を残せない、重要な血管への浸潤で残す肝臓への血流を確保できないなど、厳格な条件を満たす患者さんです。

現時点では、切除不能な肝門部領域胆管がんに対する一般的な標準治療として確立した肝移植ではありません。

「手術できないなら肝移植を受ければよい」という治療ではなく、現在は研究の対象となる一部の患者さんで検討される治療です。

参考:日本肝胆膵外科学会|切除不能な肝門部領域胆管癌に対する生体肝移植(先進医療B)
参考:厚生労働省|先進医療の各技術の概要

胆管がん手術では施設・術者の経験も確認する

胆管がんの手術には、大きな肝切除、胆管再建、膵頭十二指腸切除、場合によっては血管の合併切除・再建など、高度な肝胆膵外科技術が必要になる場合があります。

2025年版ガイドラインでも、「胆道がん手術は手術数の多い施設で行うことが推奨されるか」が独立したCQ(臨床的疑問)として扱われています。

特に「切除できるかできないか」の境界にある場合には、ステージ番号だけで判断するのではなく、胆道がん手術の経験が多い施設で切除可能性を評価することにも意味があります。

参考:胆道癌診療ガイドライン 第4版

切除可能胆管がんの術前・術後薬物療法

手術で目に見える胆管がんをすべて切除できても、身体の中に画像では確認できない微小ながん細胞が残っている可能性があります。

そのため胆管がんでは、手術だけで治療を終えるのではなく、手術後に再発を減らすための薬物療法を行うことがあります。

一方、食道がんなどとは異なり、切除可能な胆管がんの患者さん全員に手術前の化学療法を行うことは、現在の標準治療として確立していません。術前治療と術後治療では、現時点での位置づけが異なります。

手術で取り切っても再発することがある

画像検査や手術で確認できるがんを完全に切除しても、ごく少量のがん細胞がすでにリンパ管や血液を通って身体の中に広がっていることがあります。

このような微小ながん細胞はCTやMRIでは確認できません。

胆道がんは根治切除後にも再発することがあり、JCOG1202の2026年公表の副次解析でも、根治切除を受けた患者さんの約30%が術後12カ月以内に再発したと報告されています。

術後補助化学療法は、手術で取り残した大きながんを治療するのではなく、画像には見えない微小ながん細胞を治療し、再発の可能性を下げることを目的としています。

参考:JCOG1202 サブグループ解析|PubMed

術後補助化学療法ではS-1が標準治療

現在、日本では根治切除後の胆道がんに対する術後補助化学療法として、S-1(エスワン)が標準治療となっています。

その根拠となったのが、日本で行われたJCOG1202/ASCOT試験です。

根治手術を受けた胆道がん患者440人を対象に、手術後に経過観察する群とS-1を使用する群を比較したところ、3年生存割合は経過観察群67.6%に対してS-1群77.1%で、S-1によって生存期間が有意に延長しました。この結果を受け、国立がん研究センターはS-1補助療法が日本における胆道がん根治手術後の標準治療として確立したとしています。

S-1は飲み薬ですが「点滴ではないから負担が小さい」という意味ではありません。骨髄抑制、食欲低下、下痢、口内炎などによって治療継続が難しくなる場合もあるため、副作用については後の「治療の副作用と生活」の章で詳しく説明します。

参考:JCOG1202 原著論文|PubMed

S-1をすべての患者さんが同じように受けられるわけではない

JCOG1202の結果から、根治切除後のS-1は標準的な第一選択となっています。

ただし、標準治療であることと、手術を受けたすべての患者さんが同じ条件で安全に治療できることは別です。

胆管がんの手術は、肝切除や膵頭十二指腸切除など身体への負担が大きい手術になることがあります。術後には体重減少や食事量の低下、肝機能・腎機能の変化、感染症などが起こることもあります。

そのため実際にS-1を開始するか、どのように継続するかについては、手術からの回復状態、血液検査、臓器機能、併存疾患、副作用への耐容性などを確認して判断します。

主治医から術後薬物療法を勧められた場合には、「なぜ自分にはS-1が勧められているのか」「いつから始める予定か」「術後の回復が遅れた場合はどうするのか」を確認すると、その目的を理解しやすくなります。

術前化学療法はすべての切除可能胆管がんに行う標準治療ではない

「手術後に抗がん薬を使うのであれば、手術前から使った方がよいのではないか」と考えるかもしれません。

胆管がんでも、手術前に薬物療法を行うことで、画像では見えないがん細胞を早い段階から治療したり、再発を減らしたりできる可能性が研究されています。

しかし、2026年現在、切除可能な胆管がんすべてに術前化学療法を行うことは標準治療として確立していません。

2025年版胆道癌診療ガイドラインでも、切除可能胆道がんに対する術前化学療法は独立したCQ(臨床的疑問)として検討されています。さらにJCOGでは、切除可能胆道がんを対象として、ゲムシタビン+シスプラチン+S-1(GCS)による術前化学療法の有効性を検証する第III相試験JCOG1920が現在も行われています。

したがって「胆管がんでは手術前の抗がん剤をしないのは治療が足りない」ということではありません。

現在の標準治療と、治療成績をさらに改善するために臨床試験で検証されている治療を区別して理解する必要があります。

参考:JCOG1920|切除可能胆道癌に対する術前GCS療法 第III相試験

切除不能・再発胆管がんの薬物療法

遠隔転移がある場合や、重要な血管への広がりなどから手術でがんを取り切ることが難しい場合、手術後に再発した場合には、全身へ作用する薬物療法が治療の中心になります。

薬物療法の目的は、画像で確認できる病変だけでなく、全身に存在する可能性があるがん細胞へ作用し、がんの進行を抑えて生存期間を延ばしたり、がんによる症状を軽減したりすることです。

2025年版『胆道癌診療ガイドライン 改訂第4版』では、切除不能胆道がんについて一次治療と二次治療をそれぞれ独立したCQ(クリニカル・クエスチョン:臨床的疑問)として扱っています。

参考:胆道癌診療ガイドライン 第4版

一次治療では化学療法+免疫療法が重要な選択肢

長く胆道がんの薬物療法の基本となってきたのが、ゲムシタビン+シスプラチン(GC療法)です。

現在はGC療法に免疫チェックポイント阻害薬を加える治療が加わり、主な選択肢として「ゲムシタビン+シスプラチン+デュルバルマブ」または、「ゲムシタビン+シスプラチン+ペムブロリズマブ」などが用いられています。

デュルバルマブ、ペムブロリズマブはいずれも2026年8月現在、日本で胆道がんに対する最適使用推進ガイドラインが公表されています。デュルバルマブの胆道がんガイドラインは2026年6月にも改訂されています。

デュルバルマブを検証したTOPAZ-1試験では、未治療の切除不能局所進行・転移性胆道がんを対象として、GC療法だけの場合と比べてデュルバルマブを加えた群で全生存期間が改善しました。長期追跡でもこの効果は維持され、3年生存割合はデュルバルマブ併用群14.6%、対照群6.9%でした。

参考:TOPAZ-1|デュルバルマブ+GC 長期追跡

ペムブロリズマブについても、1,069人を対象としたKEYNOTE-966試験で、GC療法への追加によって全生存期間が改善したことが示されています。これらの試験は胆道がん全体を対象としており、肝内胆管がん・肝外胆管がんなどが含まれています。

参考:KEYNOTE-966|ペムブロリズマブ+GC

一方、日本ではゲムシタビン+シスプラチン+S-1(GCS療法)も重要な一次治療の選択肢です。

日本で行われたMITSUBA試験では、GCS療法はGC療法と比較して全生存期間を改善し、奏効率も高くなりました。中央値はGCS療法13.5カ月、GC療法12.6カ月で、奏効率はそれぞれ41.5%、15.0%でした。

参考:MITSUBA試験|GCS vs GC

そのため現在の胆管がん治療は、「GC療法だけ」が唯一の標準治療という状況ではありません。

どの一次治療を選ぶかは、がんの広がりだけでなく、腎機能、全身状態、胆管炎などの感染状況、これまでの病気、免疫療法を安全に使用できるかなどを合わせて判断します。

参考:PMDA|最適使用推進ガイドライン

免疫療法やシスプラチンを使いにくい場合は治療を調整

「化学療法+免疫療法が標準的」と言っても、すべての患者さんが同じ組み合わせを受けられるわけではありません。

シスプラチンは腎臓への負担があるため、腎機能が低下している患者さんでは使用しにくい場合があります。また、大量の点滴による水分補給が負担になる状態や、以前の治療による副作用が残っている場合なども、治療内容の調整が必要になります。シスプラチンでは腎障害のほか、聴力低下や末梢神経障害などにも注意します。

免疫チェックポイント阻害薬についても、自己免疫疾患などの既往や現在の病状によっては使用を慎重に判断することがあります。使えるかどうかは疾患名だけで一律に決まるのではなく、病気の活動性や治療内容などから個別に評価します。

シスプラチンを含む治療が適さない場合には、腎機能や全身状態などを踏まえて、ゲムシタビン+S-1(GS療法)など別の治療を検討することがあります。

日本のJCOG1113(FUGA-BT)試験では、GS療法はGC療法に全生存期間で劣らないことが示されました。GS療法ではシスプラチン投与時のような大量の補液を必要としないことも治療上の違いです。

したがって「免疫療法を使えないから治療がない」「シスプラチンを使えないから抗がん治療ができない」とは限りません。臓器機能や体力に合わせて、治療の組み合わせや薬の量を調整していきます。

参考:JCOG1113/FUGA-BT|GS vs GC

黄疸や胆管炎がある場合は薬物療法より先に状態を整えることがある

胆管がんでは、薬物療法そのものだけでなく、胆汁が十分に流れているかが治療継続に関係します。

胆管が閉塞してビリルビンが高い状態や胆管炎を起こしている状態では、抗がん薬を予定どおり使用できない場合があります。2025年版胆道癌診療ガイドラインでも「閉塞性黄疸を伴う切除不能胆道がんで、どこまで減黄してから薬物療法を開始するか」が独立したCQになっています。

そのため、高度の黄疸や胆管炎があれば、前章で説明した胆道ドレナージや感染治療を行い、肝機能や全身状態を整えてから薬物療法を開始することがあります。

治療中にステントが詰まって胆管炎を起こした場合にも、抗がん薬をそのまま続けるのではなく、一時的に治療を休み、感染や胆道閉塞への対応を優先することがあります。

二次治療以降は「前に何を使ったか」とバイオマーカーを確認する

一次治療を続けていても、がんが再び大きくなったり新しい転移が現れたりすることがあります。その場合には二次治療を検討しますが、「二次治療だから全員この薬」と一つに決まるわけではありません。

これまでにどの抗がん薬・免疫療法を使用したか、どの副作用が残っているか、肝機能や腎機能、体力がどの程度保たれているかによって選択肢が変わります。

海外のABC-06試験では、GC療法後に病状が進行した胆道がんに対して、フルオロウラシル、レボホリナート、オキサリプラチンを組み合わせるFOLFOX療法を行うことで、症状への治療だけを行った群と比べて全生存期間が改善しました。

参考:ABC-06試験|FOLFOX療法

一方、日本では治療歴や全身状態に応じて、フルオロピリミジン系薬剤を含む治療などを検討します。2025年版ガイドラインでも二次治療は一次治療とは別にCQ24として評価されています。

さらに現在は、二次治療以降を考える際にもう一つ確認したい情報があります。

それが、がんが持つ遺伝子異常やバイオマーカーです。

胆管がんでは、一部の患者さんでFGFR2融合遺伝子、IDH1遺伝子変異などに対応した薬を使用できるようになっています。そのため、進行・再発胆管がんでは、「次の抗がん薬は何か」だけでなく、「自分のがんで治療につながるバイオマーカーが調べられているか」も治療選択の一部になっています。

胆管がんの遺伝子検査・バイオマーカー

胆管がんでは、同じ病名・同じステージであっても、がん細胞が持っている遺伝子異常などの特徴は患者さんによって異なります。現在は、その違いをバイオマーカーとして調べることで、特定の分子標的薬や免疫療法を使用できる患者さんを見つけられる場合があります。

特に胆管がんでは、FGFR2融合遺伝子やIDH1変異をはじめ、BRAF V600E、HER2遺伝子増幅、MSI-High/dMMR、TMB-High、NTRK融合遺伝子、RET融合遺伝子、ALK融合遺伝子など、治療選択につながる複数のバイオマーカーがあります。2026年8月に肝癌研究会・日本肝胆膵外科学会・日本胆道学会が合同で公表した『胆道癌患者におけるバイオマーカー検査の手引き Ver.1.0』でも、これらと検査方法が整理されています。

ただし、遺伝子異常が見つかったから必ず対応する薬を使用できるわけではありません。これまで受けた治療、病状、承認されている薬の適応条件、使用した検査方法、全身状態などを確認したうえで治療を判断します。

参考:3学会合同|胆道癌患者におけるバイオマーカー検査の手引き(2026年8月 Ver.1.0)

バイオマーカー検査・遺伝子パネル検査・CGPは何が違う?

胆管がんの治療について調べると、「バイオマーカー検査」「遺伝子検査」「がん遺伝子パネル検査」「コンパニオン診断」「CGP」など、似た言葉がいくつも出てきます。

これらは同じ意味ではありません。「何を調べる検査なのか」と「何のために行う検査なのか」が混ざって使われているため、分けて考えると理解しやすくなります。

バイオマーカー検査は、がんの性質や治療効果の予測に役立つ「目印」を調べる検査の総称です。バイオマーカーには遺伝子だけでなく、タンパク質なども含まれます。

その中で遺伝子の異常を調べるものが遺伝子検査です。1つまたは少数の遺伝子だけを調べる検査もあれば、数十~数百の遺伝子を一度に調べるがん遺伝子パネル検査もあります。国立がん研究センターは、がん遺伝子パネル検査を数十から数百個の遺伝子異常を一度に調べる検査と説明しています。

一方、コンパニオン診断は検査を行う「目的」を表す言葉で、特定の薬を使用できる患者さんかどうかを判断するために行います。1つの遺伝子を調べる検査が使われる場合もあれば、承認されているがん遺伝子パネル検査をコンパニオン診断として使用する場合もあります。

CGP(包括的がんゲノムプロファイリング)では、がん遺伝子パネル検査を用いて多数の遺伝子を幅広く調べ、特定の薬だけを前提とせず、その患者さんに治療につながる遺伝子異常や臨床試験の候補がないかを探索します。なお、一部のがん遺伝子パネル検査はCGPとして使われるだけでなく、特定の薬に対するコンパニオン診断としても承認されているため、両者は完全に別々の検査というわけではありません。

たとえばIDH1変異では、イボシデニブの適応を判断するコンパニオン診断として、複数遺伝子を同時に調べるオンコマインDx Target Testも使用できます。ただし、この検査で別の遺伝子異常が見つかっても、その結果だけでは対応する薬の適応判定に利用できず、別の承認検査やCGPで確認が必要になる場合があります。

そのため「遺伝子検査を受けた」ということだけでは、現在の治療に必要なバイオマーカーがすべて評価されているとは限りません。すでに遺伝子検査を受けている場合にも、どの検査で、どのバイオマーカーまで調べたのか、その結果を薬の適応判断に使えるのかを確認することが、その後の治療選択につながります。

胆管がんではどのバイオマーカーが治療につながるのか

2026年8月の3学会合同手引きでは、胆道がんに対して保険適用薬があるバイオマーカーと治療薬が次のように整理されています。

バイオマーカー 胆管がんでの特徴 治療との関係
FGFR2融合遺伝子 主に肝内胆管がんでみられる ペミガチニブ、フチバチニブ、タスルグラチニブなどのFGFR阻害薬につながる場合がある
IDH1変異 主に肝内胆管がんでみられる イボシデニブが候補になる場合がある
HER2遺伝子増幅 肝外胆管がんなどでもみられる 条件を満たせばトラスツズマブ デルクステカン(T-DXd)が候補になる場合がある
BRAF V600E 一部の胆管がんでみられる ダブラフェニブ+トラメチニブが候補になる場合がある
MSI-High/dMMR 頻度は高くないが、免疫療法の効果予測に関係する ペムブロリズマブが候補になる場合がある
TMB-High がん細胞に生じている遺伝子変異量を示す指標 条件を満たせばペムブロリズマブが候補になる場合がある
NTRK1/2/3融合遺伝子 胆管がんではまれ ラロトレクチニブ、エヌトレクチニブ、レポトレクチニブなどが候補になる場合がある
RET融合遺伝子 胆管がんではまれ セルペルカチニブが候補になる場合がある
ALK融合遺伝子 胆管がんでは非常にまれ 条件を満たせばアレクチニブが候補になる場合がある

FGFR2やIDH1のように胆道がんに対する治療薬として承認されているものだけでなく、BRAF、HER2、MSI-High、TMB-High、NTRK、RET、ALKなど、がんの発生臓器を越えて特定の分子異常を持つ固形がんを対象とした治療も含まれます。そのため、異常が見つかった場合には、その薬の現在の適応条件を個別に確認します。

参考:3学会合同|胆道癌患者におけるバイオマーカー検査の手引き(2026年8月 Ver.1.0)

FGFR2融合遺伝子|肝内胆管がんで特に確認したいバイオマーカー

FGFR2は、細胞の増殖などに関係するFGFRというタンパク質を作る遺伝子です。別の遺伝子と融合するとFGFR2の働きが異常に活性化し、がん細胞の増殖を促すことがあります。

FGFR2融合遺伝子・再構成は、肝門部領域や肝外胆管がんよりも肝内胆管がんに特徴的にみられる分子異常です。3学会合同手引きのC-CATデータでも、組織CGPにおけるFGFR2融合・再構成の検出割合は肝内胆管がんで約4%、肝門部領域・肝外胆管がんでは1%未満でした。ただし、検査法によって検出率が異なるため、この数字を患者個人の確率として考えることはできません。

現在国内ではFGFR2融合遺伝子陽性胆道がんに対して、ペミガチニブ、フチバチニブ、タスルグラチニブという複数のFGFR阻害薬があります。薬剤ごとに承認されたコンパニオン診断が異なるため、どの検査でFGFR2異常が確認されたのかも治療判断に関係します。

これらのFGFR阻害薬は、FGFR2融合遺伝子が見つかれば診断直後から使用する薬というわけではありません。国内では、がん化学療法後に増悪したFGFR2融合遺伝子陽性の治癒切除不能な胆道がんが主な適応であり、一次治療としての有効性・安全性は確立していません。どの治療ラインで使用するかは、それまでの治療歴と各薬剤の承認条件を確認して判断します。

なお、研究やCGP結果では「FGFR2再構成」と記載されることがありますが、再構成と治療薬の適応となる機能的な融合遺伝子が常に同じ意味とは限りません。実際の薬剤適応は、検査結果と承認条件を照合して判断します。

IDH1変異|肝内胆管がんでみられる治療標的

IDH1は細胞内の代謝に関係する酵素を作る遺伝子です。この遺伝子に特定の変異が起こると、通常とは異なる代謝産物がつくられ、がんの発生や増殖に関係すると考えられています。

IDH1変異も、肝門部領域・肝外胆管がんより肝内胆管がんで多くみられる特徴があります。3学会合同手引きに掲載されたC-CATの組織CGPデータでは、肝内胆管がんで15%前後、肝門部領域・肝外胆管がんでは数%以下でした。

2026年現在、国内でのイボシデニブの適応は、がん化学療法後に増悪したIDH1遺伝子変異陽性の治癒切除不能な胆道がんです。IDH1変異が見つかったからといって一次治療からイボシデニブを使用するわけではなく、それまでに受けた治療と病状を踏まえて導入時期を判断します。

手引きでは、IDH1変異について治療が必要になった段階で初めて調べるのではなく、適切な治療ラインでイボシデニブを導入できるよう、早い段階から変異の有無を把握しておくことの意義も示されています。

HER2・BRAF・MSI-Highなども治療選択につながることがある

FGFR2やIDH1以外にも、治療につながるバイオマーカーがあります。

3学会合同手引きでは、HER2についてHER2遺伝子増幅とトラスツズマブ デルクステカンの組み合わせが、保険適用薬のあるバイオマーカーとして整理されています。HER2異常は肝内胆管がんだけに偏るものではなく、発生部位によって頻度が異なることも報告されています。

BRAF V600E変異ではダブラフェニブ+トラメチニブ、MSI-High/dMMRやTMB-Highではペムブロリズマブ、NTRK融合遺伝子、RET融合遺伝子、ALK融合遺伝子でも、それぞれ対応する分子標的薬が治療候補になる場合があります。

これらは頻度が低いものもあります。しかし、頻度が低いことと調べる意味がないことは同じではありません。見つかった場合に治療選択が大きく変わる可能性があるため、進行・再発胆管がんでは複数のバイオマーカーをどのように評価するかが治療計画の一部になっています。3学会合同手引きでも、胆道がんは治療薬に直結するバイオマーカーが多いがん種の一つと位置づけられています。

遺伝子検査は「標準治療がすべて終わってから」とは限らない

バイオマーカーに対応する薬の多くは、一次治療後などに使用を検討します。

しかし、薬を使う段階になってから初めて検査を始めればよいとは限りません。

3学会合同手引きでは、国内の実臨床で進行・転移性胆道がん患者が二次治療へ移行できる割合は約44%とするデータを紹介しています。標準治療が終了してからCGPを申し込むと、患者さんの状態によっては検査結果が次の治療選択に間に合わない可能性があります。

一方、日本の保険診療で「CGP目的」のがん遺伝子パネル検査を行う場合には、原則として「標準治療が終了した、または終了が見込まれる」という実施条件があります。そのため、単純に「診断されたら全員すぐCGPを受ける」という仕組みでもありません。

2025年には、がんゲノム医療中核拠点病院等の診療ワーキンググループから、一次治療開始後の適切な時期に標準治療終了の見込みを臨床的に判断し、CGPを実施する必要があるという考え方が示されています。

そのため、進行・再発胆管がんでは、「今すぐ使う薬を決めるための検査」と「将来の治療候補を探すCGP」を区別しながら、次の治療に結果が間に合う時期を考えて検査を計画することが現実的です。

主治医へは「今の段階で調べておいた方がよいバイオマーカーはありますか」「CGPはいつ検討する予定ですか」と確認すると、今後の治療計画を理解しやすくなります。

検体を採取する段階から将来のバイオマーカー検査を考える

胆管がんでは、バイオマーカー検査を行ううえで「検体を十分に確保できるか」が大きな問題になります。

胆管は細い管状の臓器であり、手術を行わない患者さんでは内視鏡下生検や針生検などで得られる小さな組織に頼らざるを得ないことがあります。そのため、採取できた組織の量が少ない、腫瘍細胞の割合が低いなどの理由で、予定した遺伝子解析ができない場合があります。3学会合同手引きでは、こうした問題を避けるため、検体を採取する段階から将来のバイオマーカー検査を想定する必要性が強調されています。

手術標本など十分な組織が保存されている場合には、過去の検体を使えることがあります。一方、利用できる組織がない、または検査に適さない場合には、病状と組織採取のリスクを考えて追加の生検を検討する場合があります。

このため、「以前に採った組織が検査に使えるか」「現在どのくらい検体が残っているか」「追加で組織を採る必要があるか」も、バイオマーカー検査を考える際の確認事項になります。

組織が十分にない場合はリキッドバイオプシーを検討することがある

がん組織を十分に採取できない場合には、血液中に放出されたctDNA(血中循環腫瘍DNA)を調べるリキッドバイオプシー型のがん遺伝子パネル検査を利用できる場合があります。

組織を新たに採取する必要がなく、身体への負担が比較的小さいことや、組織を用いたCGPより結果が早く得られる場合があることが利点です。3学会合同手引きでは、国内C-CAT登録データ上、胆道がん症例のおよそ4分の1でリキッドバイオプシーが選択されているとしています。

ただし、血液検査だから組織検査より優れているという意味ではありません。

血液中へ腫瘍DNAが十分に放出されていない場合には、実際には遺伝子異常があっても検出できない偽陰性が起こる可能性があります。また、FGFR2やNTRKなどの融合遺伝子は、リキッドバイオプシーでは組織検体より検出感度が低下することがあります。手引きでも、FGFR2について組織検体で検査できる場合は組織を優先する考え方が示されています。

したがって、血液の検査で「遺伝子異常なし」となった場合にも、病状や調べたいバイオマーカーによっては、組織を用いた検査が必要かを検討します。

参考:3学会合同|胆道癌患者におけるバイオマーカー検査の手引き(2026年8月 Ver.1.0)

胆管がんの放射線治療とコンバージョン手術

胆管がんでは、手術と薬物療法が治療の大きな柱です。

放射線治療も使用されることがありますが、切除不能胆管がんのすべての患者さんに一律に行う標準治療として確立しているわけではありません。

2025年版胆道癌診療ガイドラインでは「切除不能胆道がんに放射線治療または化学放射線療法は有用か」という課題がFuture Research Question(将来の研究課題)として残されています。術後放射線療法・術後化学放射線療法についても同様にFRQです。

参考:胆道癌診療ガイドライン 第4版

遠隔転移がない局所進行胆管がんで放射線治療を検討することがある

手術で切除できない理由には、大きく分けて、遠くの臓器へ転移している場合と、遠隔転移はないものの周囲の重要な血管などへ局所的に広がっている場合があります。後者では、病変が一定の範囲に集中しているため、薬物療法に加えて放射線治療や化学放射線療法を検討することがあります。

国立がん研究センターも、手術できない胆道がんで遠隔転移がない場合には、がんの進行を遅らせることや胆道ステントの開存維持などを目的に放射線治療を行う場合があると説明しています。一方、その有効性は十分に確立されておらず、標準治療とはしていません。

したがって、局所進行胆管がんで放射線治療を提案された場合には「根治を目指す治療なのか」「局所の進行を抑えることが目的なのか」「薬物療法とどのように組み合わせるのか」を確認すると、治療の位置づけを理解しやすくなります。

参考:国立がん研究センター|胆道がん 治療

痛みなどの症状を和らげる目的でも放射線治療を行う

放射線治療は、がんを完全に消すことだけを目的にする治療ではありません。たとえば骨へ転移して痛みが生じている場合などには、痛みを軽減して生活しやすくする目的で放射線を照射することがあります。国立がん研究センターも、胆道がんの骨転移で疼痛緩和を目的に放射線治療を行う場合があるとしています。

「緩和目的の放射線治療」と説明されたからといって、ほかのがん治療をすべて終了したという意味ではありません。薬物療法を続けながら、特定の場所の痛みなどを放射線治療で和らげる場合もあります。

薬物療法で縮小した後に手術を再検討する場合がある

最初の診断時には切除不能と判断された胆管がんでも、薬物療法によって腫瘍が縮小したり、一定期間ほかの臓器への新しい転移が現れなかったりすることがあります。

その結果、再度画像を詳しく評価し、手術で完全切除できる可能性が出てきた患者さんに手術を検討する考え方「コンバージョン手術」と呼びます。

ただし、これは「抗がん薬が効けば手術できる」という単純な治療方針ではありません。2025年版胆道癌診療ガイドラインでは、切除不能胆道がんに対するコンバージョン手術はFRQ6、つまり今後さらに検証が必要な臨床課題として位置づけられています。

手術を検討する場合には、腫瘍がどの程度縮小したかだけでなく、遠隔転移の有無、重要な血管との関係、残せる肝臓の量、全身状態、がんを切除断端に残さず取り切るR0切除を目指せるかなどを改めて評価します。

「最初に手術不能だった=その後も永久に手術できない」とは限りませんが、コンバージョン手術はすべての切除不能胆管がんで確立された標準治療でもありません。

薬物療法がよく効いている場合には、「手術の可能性を再評価する場面があるか」を担当医に確認する方法があります。

胆管がん治療の副作用と治療後の生活

胆管がんでは、治療が終わったかどうかだけではなく、食事が取れているか、体重と筋力を保てているか、胆汁が正常に流れているか、予定した薬物療法を続けられる状態かまで確認することが、その後の生活に関係します。

肝内胆管がんで肝切除を受けた患者さんと、遠位胆管がんで膵頭十二指腸切除を受けた患者さんでは、術後に起こりやすい問題も同じではありません。薬物療法でも、S-1、シスプラチン、免疫チェックポイント阻害薬、FGFR阻害薬では注意する副作用が異なります。

参考:国立がん研究センター|胆道がん 療養

肝切除後は肝機能と体力の回復を確認

肝内胆管がんや肝門部領域胆管がんでは、肝臓を大きく切除することがあります。

肝臓には再生する能力がありますが、手術直後から元どおりの機能になるわけではありません。特に大きな肝切除後には、残った肝臓で身体に必要な働きを維持できるかを慎重に確認します。

胆道がん手術の合併症としては肝不全、胆汁漏、腹水、胆管炎などがあり、肝不全では黄疸、腹水、意識状態の変化などが起こることがあります。退院後も食欲や体重、疲れ方が徐々に回復しているかをみていきます。

食べられない状態が続く、黄疸が強くなる、お腹が張る、以前より極端に動けなくなったなどの変化があれば、「大きな手術をしたから仕方がない」と決めつけず医療機関へ相談します。

膵頭十二指腸切除後は食事量・体重・消化の変化を見る

遠位胆管がんでは膵頭十二指腸切除を行うことがあります。

この手術では胆管だけでなく、膵頭部や十二指腸などを切除し、残った膵臓や胆管、消化管をつなぎ直します。そのため、手術前と食べ物や消化液が流れる経路が変わります。

退院後しばらくは一度に十分な量を食べにくく、体重が減ることがあります。

国立がん研究センターは胆道がん治療後の一般的な食生活として、一度に無理に多く食べず、少量ずつ回数を分ける方法などを案内しています。また、食欲不振や下痢などがある場合は個別に医療者や管理栄養士へ相談するよう説明しています。

食事量が少ない状態や下痢、体重減少が長く続く場合には、「手術後だから当然」と考えるのではなく、食事内容や消化の状態を含めて評価します。

胆道ドレナージ・ステント留置中は発熱や黄疸の再燃を見る

胆管ステントを入れている患者さんでは、体の外にチューブが出ていないため、普段は胆汁の流れを直接確認できません。しかし、ステントが詰まれば再び胆汁が流れにくくなり、黄疸や胆管炎を起こす可能性があります。

一方、外ろうではチューブが体外へ出ているため、排液量の変化やチューブの抜け・折れ、挿入部の皮膚トラブルなどにも注意します。国立がん研究センターも、胆道ドレナージ後は内ろう・外ろうそれぞれに生活上の注意点があるとしています。

高熱、強い悪寒、黄疸の再発・悪化、強い腹痛などがあれば、がんそのものの進行だけでなく胆管炎やステント閉塞の可能性もあります。特に薬物療法中は白血球が低下している場合もあるため、次回の診察まで待たず治療中の医療機関へ連絡します。

S-1では食事を続けられるかも治療継続に関係する

術後補助化学療法などで使用するS-1では、食欲低下、下痢、口内炎、皮膚症状、涙目、血球減少などが起こることがあります。術後はもともと食事量や体重が減っている患者さんもいます。その状態に口内炎や下痢、食欲不振が加わると、薬の副作用だけでなく脱水や栄養低下が治療継続を難しくすることがあります。

飲み薬だから副作用が軽いとは限りません。下痢が続く、水分も取りにくい、口内炎で食事ができない、強い倦怠感があるといった場合には、予定日まで我慢するのではなく医療機関へ相談します。副作用の程度によって休薬や減量などを行い、治療を安全に続けることを考えます。

ゲムシタビン・シスプラチンでは血球減少や腎機能などを確認

ゲムシタビンやシスプラチンによる治療では、白血球・好中球・血小板などの減少、貧血、食欲低下、吐き気、倦怠感などが起こることがあります。

シスプラチンでは特に腎機能への影響、聴力低下、手足のしびれなどにも注意します。ゲムシタビンでは頻度は高くありませんが間質性肺炎など重い副作用が起こることがあります。

胆管がんでは、胆管炎による発熱と好中球減少時の感染症による発熱を、患者さん自身で区別することは困難です。そのため、薬物療法中に発熱した場合には「胆管炎だろう」「抗がん剤の副作用だろう」と自己判断せず、治療を受けている医療機関へ連絡することが重要です。

免疫チェックポイント阻害薬では普段と違う症状を早めに伝える

デュルバルマブやペムブロリズマブは、がん細胞を直接攻撃する従来の抗がん薬とは異なり、免疫ががんを攻撃する働きを利用する薬です。そのため副作用も、単なる吐き気や血球減少だけではありません。免疫反応が正常な臓器へ及ぶことで、肺、腸、肝臓、甲状腺などさまざまな臓器に炎症が起こることがあります。

新しい咳や息切れ、長く続く下痢、原因の分からない強い倦怠感など、これまでと違う症状が現れた場合には医療機関へ伝えます。

胆管がんではもともと肝機能やビリルビンが変動する患者さんもいるため、「胆管が詰まった変化なのか」「薬による肝障害なのか」「がんの進行なのか」を血液検査や画像検査から判断する必要があります。

FGFR阻害薬では血清リンと眼の症状にも注意

FGFR2融合陽性胆管がんで使用するFGFR阻害薬には、一般的な抗がん薬とは異なる特徴的な副作用があります。

代表的なのが高リン血症です。FGFR阻害によって体内のリンの調節が変化するため、治療中は血液検査で血清リン濃度を確認します。程度によって食事の調整や高リン血症治療薬、FGFR阻害薬の休薬・減量が必要になることがあります。

また、網膜剥離を含む眼の異常も注意すべき副作用で、定期的な眼科検査が必要になる薬があります。ペミガチニブの国内添付文書でも、視力低下、視野の欠け、光が見えるといった症状があれば眼科的評価を行うよう注意されています。見え方が急に変わった場合には次の診察まで様子を見ず、治療施設へ連絡します。

分子標的薬は「遺伝子に合った薬だから副作用が少ない」という意味ではありません。どこを標的とする薬なのかによって、従来の抗がん薬とは違う副作用が現れます。

なお、HER2陽性固形がんでトラスツズマブ デルクステカンを使用する場合には、間質性肺疾患が特に重要な副作用です。国内添付文書でも死亡例があることを含めた警告があり、新しい咳、息切れ、発熱などの早期把握が求められています。

IDH1阻害薬のイボシデニブではQT間隔延長などにも注意し、治療中に心電図や電解質などを確認する場合があります。

参考:PMDA|最適使用推進ガイドライン

緩和ケア・支持療法はがん治療と並行して行う

胆管がんでは、黄疸によるかゆみ、痛み、食欲低下、倦怠感、胆管炎を繰り返す不安、治療による副作用など、病気そのものと治療の両方が日常生活に影響します。

こうした問題を軽減する緩和ケア・支持療法は、抗がん治療をやめた後だけに行うものではありません。

国立がん研究センターも、緩和ケアはがんと診断されたときから始めることができ、がん治療と並行して受けられると説明しています。支持療法は、がんによる症状だけでなく、治療に伴う副作用や合併症、後遺症を軽減するための治療・ケアを含みます。

たとえば、かゆみで眠れない、食欲が戻らず体重が減り続ける、痛みのために動けない、治療への不安で生活に支障が出ているといった問題も相談の対象です。

胆管がん治療では、画像上の腫瘍を小さくすることだけでなく、予定した治療を受けられる体力を保ち、日常生活の負担を減らすことも治療の一部として考えます。

胆管がんのステージ別生存率

胆管がんの予後について調べると、「5年生存率」や「ステージ4の生存率」といった数字を目にすることがあります。

ただし胆管がんでは、これまで説明してきたように、肝内胆管がん、肝門部領域胆管がん、遠位胆管がんで病期分類そのものが異なります。そのため、「胆管がん全体」の一つの生存率を、自分の病状へそのまま当てはめることはできません。

さらに、生存率を見る際には、どの年代に診断された患者さんのデータなのか、どの病期分類が使われているのか、実測生存率なのかネット・サバイバルなのかまで確認する必要があります。

肝内胆管がんのステージ別5年生存率

国立がん研究センターの院内がん登録では、2014~2015年に診断された肝内胆管がんについて、ステージ別の5年ネット・サバイバルが公表されています。本記事では、他の死因の影響を統計的に調整した「ネット・サバイバル」を主に予後の目安として説明します。実測生存率も参考として併記します。

ステージ 5年実測生存率 5年ネット・サバイバル
Ⅰ期 52.7% 58.2%
Ⅱ期 31.8% 34.9%
Ⅲ期 27.4% 29.8%
Ⅳ期 5.5% 6.0%

※国立がん研究センター「院内がん登録2014~2015年5年生存率」に基づく肝内胆管がんの数値です。全体の5年ネット・サバイバルは21.1%でした。生存状況把握割合は98.8%です。

ネット・サバイバルとは、がん以外の病気や事故などによる死亡の影響を統計学的に取り除き、そのがんだけが死亡へ影響すると仮定した場合の生存状況を推定する指標です。国立がん研究センターでは、2014~2015年の5年生存率からネット・サバイバルを採用しています。

参考:国立がん研究センター|肝内胆管がん 2014~2015年診断例・5年生存率

肝外胆管がんは肝門部領域と遠位を分けた最新の公的生存率が示されていない

肝門部領域胆管がんと遠位胆管がんについても生存率を知りたいところですが、2026年8月現在、国立がん研究センターの最新の院内がん登録生存率閲覧システムでは、肝門部領域胆管がん・遠位胆管がんを個別に分けたステージ別5年生存率は公開されていません。

国立がん研究センターの現在の胆道がん患者向けページから案内されている最新の病期別生存率は「肝内胆管がん」と「胆のうがん」であり、肝外胆管がんへの最新の個別リンクは掲載されていません。

過去には院内がん登録の肝外胆管がんデータが掲載されていたことが、国立がん研究センターの更新履歴から確認できます。しかし、古い集計値を現在の肝門部領域・遠位胆管がんの病期表へそのまま組み合わせると、診断年代やTNM分類が異なる可能性があります。

そのため本記事では、信頼できる同一条件の最新データが確認できない肝門部領域胆管がん・遠位胆管がんについて、無理にステージ別生存率を推定して掲載しません。

これはデータが存在しないから予後を判断できないという意味ではなく、主治医は病変の部位、切除可能性、リンパ節転移、病理結果、全身状態など、より個別の情報から治療後の見通しを判断します。

この生存率表と前章のステージ分類は同じではない

ここで示した院内がん登録2014~2015年診断例の生存率は、UICC TNM分類第7版による総合ステージを用いた集計です。

一方、本記事で解説した「肝内胆管がんのステージⅠ~Ⅳ」では、国立がん研究センターの現行患者向け情報に合わせて、日本肝癌研究会『原発性肝癌取扱い規約 第6版補訂版(2019年)』に基づく病期を説明しています。

両者は病期分類が異なるため、同じ「Ⅰ期」「Ⅱ期」という表記でも完全に同じ病状を意味するわけではありません。

また、この院内がん登録では、術後病理学的ステージが得られている場合には原則としてその病期を、得られていない場合には治療前ステージを使って総合ステージを集計しています。そのため、現在診断された患者さんのcStageと生存率表を一対一に対応させて考えることはできません。

生存率は個人の余命を示す数字ではない

たとえば肝内胆管がんⅣ期の5年ネット・サバイバルが6.0%だからといって「自分が5年後に生きている確率が6%」とそのまま解釈することはできません。

生存率は、同じ時期に同じがんと診断された多数の患者さんを集計した統計です。国立がん研究センターも、生存率は平均的・確率的に推測されるデータであり、すべての患者さんにそのまま当てはまる値ではないと説明しています。

同じステージでも、肝内・肝門部領域・遠位のどこに発生したのか、手術で完全切除できるのか、リンパ節転移がどの程度あるのか、年齢や全身状態、薬物療法への反応などによって病状は異なります。

特に胆管がんでは、「ステージ番号」だけでは手術可能性まで表せないことにも注意が必要です。

2014~2015年の生存率には現在の治療が十分反映されていない

上記の肝内胆管がん生存率は、2014~2015年に診断された患者さんのデータです。

その後、根治切除後にはJCOG1202/ASCOT試験によってS-1術後補助療法が標準治療となり、切除不能胆道がんでは免疫チェックポイント阻害薬を組み合わせた治療が導入されました。

さらに2026年8月の3学会合同手引きでは、FGFR2融合、IDH1変異、BRAF V600E、HER2遺伝子増幅、MSI-High/dMMR、TMB-High、NTRK融合、RET融合、ALK融合など、治療選択につながる複数のバイオマーカーが整理されています。

したがって、過去の生存率を、2026年現在に治療を始める患者さんの将来へそのまま当てはめることはできません。

生存率を見るときには数字の大小だけでなく、「いつ診断された患者さんの統計なのか」「現在、自分にはどの治療選択肢があるのか」を合わせて考えることが必要です。

参考:国立がん研究センター|院内がん登録生存率について

胆管がんの再発・経過観察

胆管がんの治療後は、手術した場所だけを見るのではなく、肝臓、リンパ節、肺、腹膜などに再発していないかを定期的に確認します。

国立がん研究センターでは、胆道がんは周囲のリンパ節、肝臓、肺などへ転移することがあり、治療後には局所再発や腹膜播種として見つかる場合もあると説明しています。

一方、経過観察の方法や検査間隔をすべての胆管がん患者さんに一律に当てはめることはできません。2025年版『胆道癌診療ガイドライン 改訂第4版』でも「胆道癌に対する術後経過観察はどのように行うか」そのものがFRQ(将来の研究課題)として設定されています。

参考:国立がん研究センター|胆道がん 療養

経過観察では血液検査と画像検査などを組み合わせる

治療後の診察では、黄疸、腹痛、食欲、体重などの変化を確認し、血液検査ではビリルビンや肝胆道系の数値などを調べます。

CA19-9やCEAなどの腫瘍マーカーを経過観察に利用する場合もあり、必要に応じて腹部超音波やCTなどの画像検査を行います。国立がん研究センターも、胆道がん治療後の経過観察として問診、血液検査、腫瘍マーカー、必要に応じた超音波・CTを挙げています。

検査間隔は、肝内胆管がんなのか肝外胆管がんなのか、ステージ、手術後の病理結果、術後補助化学療法の有無などによって変わります。そのため、他の患者さんと検査間隔が違っていても、それだけで経過観察が不十分という意味ではありません。

CA19-9だけで再発を判断しない

胆管がんではCA19-9を経過観察に使用することがありますが、CA19-9が上昇しただけで再発と確定することはできません。

胆管が狭くなって胆汁が流れにくい場合や胆管炎などでも数値が上がることがあり、反対に再発があってもCA19-9が大きく上がらない患者さんもいます。国立がん研究センターも、胆道がんの腫瘍マーカーは単独でがんの有無を確定できる検査ではないと説明しています。

そのため、再発の可能性は以下を合わせて判断します。

腫瘍マーカーの変化
+症状
+肝胆道系の血液検査
+CTなどの画像検査

「CA19-9が上がった=再発した」と数字だけを見て結論づけず、黄疸や胆管炎などほかの原因がないかも確認します。

胆管炎やステント閉塞と再発を区別することも必要

特に胆管ステントを留置している患者さんでは、黄疸や発熱が再び現れたときに、がんの進行だけでなくステント閉塞や胆管炎も考える必要があります。

国立がん研究センターでは、胆道ドレナージを行った患者さんには内ろう・外ろうそれぞれに生活上の注意点があり、経過観察でも黄疸や腹痛などの症状を確認するとしています。

したがって「黄疸が戻ったから再発した」「発熱したから抗がん薬が効かなくなった」と自己判断することはできません。反対に、ステントが入っているから発熱は仕方がないと考えて様子を見ることも避けます。胆管炎は急速に悪化する場合があるため、高熱や悪寒、黄疸の急な悪化などがあれば治療施設へ連絡します。

再発した場合は最初のステージではなく「現在の病状」を評価

手術前にⅠ期やⅡ期だった患者さんでも、治療後に再発すれば、治療方針は最初のステージ番号だけでは決まりません。

再発した場所が一か所なのか複数なのか、肝臓、リンパ節、肺、腹膜などのどこにあるのか、以前どの治療を受けたのか、現在の全身状態はどうかを改めて評価します。胆道がんの再発では、多くの場合、全身薬物療法が中心になります。

したがって、手術後に再発した患者さんが「自分は以前ステージⅡだったからステージⅡの治療を受ける」と考えるのではなく、再発時点の病変の広がりと治療歴から新しく治療計画を立てると理解した方が実際の診療に近くなります。

再発時にはバイオマーカー検査の結果も次の治療に関係する

再発した胆管がんでは、以前の治療歴に加えて、FGFR2融合やIDH1変異など治療につながるバイオマーカーが分かっているかも確認します。

2026年8月の3学会合同手引きでは、胆道がんは治療薬に直結するバイオマーカーが多いがん種の一つとされ、FGFR2、IDH1、HER2、BRAF、MSI-High/dMMR、TMB-High、NTRK、RETなどが体系的に整理されています。すでに十分な検査が行われていれば、その結果を次の治療選択に利用できる場合があります。一方、過去の検査で必要な遺伝子まで調べていない場合や、検体が不足していた場合には追加検査を検討することがあります。

また、同手引きでは、胆道がんでは組織検体を十分に得られない場合があり、組織での検査が困難な場合には血液を利用するリキッドバイオプシーが選択肢となる一方、偽陰性や融合遺伝子の検出感度低下などの限界も示されています。

そのため再発した際には「以前どのバイオマーカーを調べたのか」「今ある検体で追加検査ができるのか」も主治医へ確認しておくと、その後の治療選択を理解しやすくなります。

参考:2026年バイオマーカー検査の手引き

新しい症状があれば次の定期検査まで待たない

定期的にCTや血液検査を受けていても、検査と検査の間に病状が変化することがあります。

黄疸が新しく現れた、腹痛が続く、発熱や悪寒がある、食欲が急に落ちた、原因の分からない体重減少が続くなどの変化がある場合には、次の予約日まで待たず医療機関へ相談します。

こうした症状は再発だけでなく、胆管炎、胆道閉塞、治療の副作用などでも起こります。経過観察は「予定された検査を受けること」だけではなく、定期検査の間に生じた変化を医療者へ伝えることも含めて考えるとよいでしょう。国立がん研究センターも、経過観察では黄疸、腹痛、食欲などの変化を確認し、気になる症状は担当医へ伝えるよう案内しています。

胆管がんの治療を選ぶときに確認したいこと

胆管がんでは、同じ「胆管がん」という診断でも、肝臓の中に発生する肝内胆管がんと、肝門部領域胆管がん、遠位胆管がんでは、ステージの決め方も手術方法も異なります。

さらに、胆管がんの治療では、ステージ番号だけでなく「手術で完全に取り切れるか」が大きな分岐になります。2025年版『胆道癌診療ガイドライン 改訂第4版』の診療アルゴリズムも、最初に外科切除の可否を置き、切除可能・切除不能で治療を分けています。

治療方針の説明を受ける際には、次のような点を確認すると、自分に提案されている治療の意味を整理しやすくなります。

確認したいこと 治療選択に関係する理由
肝内・肝門部領域・遠位のどこにあるか ステージの決め方と手術方法が大きく異なるため
どの分類・何版でcStageが評価されているか 胆管がんでは病型ごとに病期分類が異なり、使用する分類の版によっても表記が変わる場合があるため
手術で完全切除できる可能性があるか 根治を目指す手術が可能かどうかが治療方針の大きな分岐になるため
「手術できない」と判断された理由は何か 遠隔転移、血管への広がり、残肝不足など、理由によって意味やその後の治療が異なるため
肝切除後にどのくらい肝臓を残せるか 特に肝門部領域胆管がんでは、がんを取り切るだけでなく手術後の肝機能を保てるかが安全性に関係するため
黄疸・胆管炎への処置が必要か 胆道ドレナージや感染治療を手術・薬物療法より先に行う場合があるため
手術後にS-1が勧められるか 根治切除後の再発リスクを減らす術後補助化学療法を検討するため
バイオマーカー検査をいつ行うか FGFR2、IDH1などの結果が進行・再発時の治療選択につながる場合があり、検体や検査時間も考えて計画する必要があるため
現在の肝機能・腎機能・体力でどの治療が可能か 大きな手術やシスプラチンを含む薬物療法などを安全に行えるかに関係するため
薬物療法後に手術を再評価する可能性があるか 一部の切除不能例では治療効果を見ながらコンバージョン手術を検討する場合があるため

根治手術が可能な患者さんでも、「どの臓器をどの程度切除するのか」によって治療後の生活は変わります。肝門部領域胆管がんでは大きな肝切除、遠位胆管がんでは膵頭十二指腸切除が必要になる場合があり、手術の目的だけでなく、その後の肝機能、食事、体重、回復期間まで聞いておくと治療を具体的にイメージしやすくなります。国立がん研究センターも、胆管がんの部位ごとに異なる手術方法を示しています。

また、手術不能と説明された場合には「ステージが進んでいるから」とだけ理解して終わらせない方がよいでしょう。

遠隔転移があるのか、門脈・肝動脈への広がりが問題なのか、十分な肝臓を残せないのかでは、手術できない理由が異なります。2025年版ガイドラインでは、borderline resectable胆道がんの定義、コンバージョン手術、肝門部領域胆管がんへの肝移植なども今後の研究課題として個別に扱われています。

そのため、特に大きな肝切除や血管合併切除が必要と言われた場合、あるいは切除できるかどうかの判断が難しい場合には、肝胆膵外科を専門とする施設でセカンドオピニオンを受けることも選択肢になります。

一方、薬物療法では、薬の名前だけを確認するのではなく、なぜこの一次治療が選ばれたのか、病状が進行した場合に次の候補があるのか、バイオマーカー検査はどこまで終わっているのかまで確認することが、現在の胆管がん治療では以前より重要になっています。3学会合同手引きも、バイオマーカー検査の実施時期、検体の取り扱い、結果を治療へどう反映するかを一連の治療戦略として考える必要性を示しています。

参考:日本肝胆膵外科学会「胆道癌診療ガイドライン 改訂第4版」国立がん研究センター「胆道がん 治療」肝癌研究会・日本肝胆膵外科学会・日本胆道学会「胆道癌患者におけるバイオマーカー検査の手引き」

胆管がんは「どこにあるか」と「手術で取り切れるか」から治療を考える

胆管がんは一つの病気のように呼ばれますが、肝内胆管がん、肝門部領域胆管がん、遠位胆管がんでは、症状の出方からステージ分類、手術方法まで大きく異なります。国立がん研究センターも、胆管がんをこれらの部位に分けて診断・治療を説明しています。

肝内胆管がんでは肝臓の中に腫瘍ができるため、肝切除が治療の中心になります。肝門部領域胆管がんでは、胆管だけでなく肝臓や場合によっては血管まで含めた大きな手術が必要になることがあります。遠位胆管がんでは、胆管が膵頭部を通っているため膵頭十二指腸切除が行われることがあります。

そのため、診断後に最初に確認したいのは「胆管がんのステージはいくつか」だけではありません。

「肝内・肝門部領域・遠位のどこにあるのか」「どこまで広がっているのか」「手術で完全に取り切れる可能性があるのか」を知ることで、自分に提案された治療の理由が見えてきます。2025年版胆道癌診療ガイドラインも、外科切除の可否を診療アルゴリズムの大きな分岐として位置づけています。

また、黄疸がある患者さんでは、がんそのものへの治療だけでなく、胆汁を流す胆道ドレナージが治療計画の一部になることがあります。手術で取り切れた場合には術後補助化学療法を検討し、切除できない場合や再発した場合には薬物療法が中心になります。

さらに現在は、進行・再発胆管がんで「どの抗がん薬を使うか」だけではなく、がんがどのような分子異常を持っているかも治療選択に関係します。

2026年8月に公開された3学会合同手引きでは、FGFR2融合、IDH1変異、BRAF V600E、HER2遺伝子増幅、MSI-High/dMMR、TMB-High、NTRK融合、RET融合、ALK融合など、治療につながり得るバイオマーカーと検査方法が整理されています。

胆管がんでは、一つの数字や一つの治療名だけで病状を理解することは難しい病気です。自分の胆管がんが「どこにあり、なぜその治療が勧められ、次にどのような選択肢が残っているのか」まで確認することで、治療方針をより具体的に理解できます。

治療について迷ったときには、手術の可否、胆道ドレナージ、薬物療法、バイオマーカー検査をそれぞれ別々の問題として考えるのではなく、これらが自分の治療計画の中でどのようにつながっているのかを主治医と一緒に整理してみてください。