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主要ながん 2026.9.8

膀胱がんとは?初期症状・原因・治療法・ステージ別生存率まで詳しく解説

膀胱がんの主なリスクや症状、検査から診断、ステージ別生存率や治療方法の選択について

膀胱がんは、尿をためる膀胱にできるがんです。代表的な症状は血尿で、痛みを伴わず、赤や茶色の尿が出たあとにいったん元の色へ戻ることもあります。「一度だけだったから大丈夫」と思っている間に、検査が遅れてしまうケースも考えられます。

国立がん研究センターの最新統計では、日本で2023年に膀胱がんと診断された人は23,970人、2024年に膀胱がんで亡くなった人は9,725人でした。男性の罹患数は17,901人、女性は6,069人で、男性に多くみられるがんです。

膀胱がんの治療を理解するとき、「ステージはいくつか」だけを見ても十分ではありません。

膀胱の内側にとどまっているのか、壁の筋肉まで入り込んでいるのかによって治療が大きく変わります。筋層まで達していない筋層非浸潤性膀胱がん(NMIBC)でも、再発・進展の危険性が低いものから、BCG膀胱内注入療法や膀胱全摘除術まで検討するものまで幅があります。

治療を考える流れは、大きく次のように整理できます。

膀胱がんの治療を理解する5つのポイント
① 何という組織型のがんなのか
② 筋層まで浸潤しているか
③ 筋層非浸潤性なら、異型度・CIS・リスク分類・2nd TURBT・BCG治療歴はどうか
④ 筋層浸潤性なら、根治手術や膀胱温存が可能か、シスプラチンを使える状態か
⑤ 切除不能・転移性なら、これまで使用した薬やFGFR3などの分子情報はどうか

特に膀胱がんでは「ステージ0だから軽い」「TURBTで腫瘍を取ったから治療終了」「膀胱を残せる治療なら体への負担も小さい」とは限りません。

2024~2026年には薬物療法にも大きな変化があり、筋層非浸潤性、筋層浸潤性、転移性のそれぞれで治療選択肢が増えています。2026年には、2回目のTURBTで腫瘍が残っていなかった一部の高異型度T1膀胱がんについて、BCGを追加せず慎重に経過を見る方法を支持する国内第Ⅲ相試験の結果も公表されました。

この記事では、血尿などの症状から検査、TURBT、深達度、ステージ、BCG治療、膀胱全摘、尿路変向、膀胱温存、薬物療法、遺伝子検査、生存率まで、「自分は今どの治療分岐にいるのか」が分かるように解説します。

参考:国立がん研究センター「膀胱がんについて」国立がん研究センター「がん統計 膀胱」日本泌尿器科学会「膀胱癌診療ガイドライン 2025年アップデート」

目次

膀胱がんとは|尿をためる膀胱の内側から発生する

膀胱は骨盤の中にある袋状の臓器で、腎臓でつくられた尿を一時的にためる働きがあります。

腎臓でできた尿は腎盂→尿管→膀胱→尿道という経路を通り、体の外へ排出されます。この尿の通り道を「尿路」と呼びます。

腎盂・尿管・膀胱から尿道の一部まで、尿路の内側の多くは尿路上皮という粘膜で覆われています。

膀胱がんの90%以上は、この尿路上皮から発生する尿路上皮がんです。

同じ尿路上皮から腎盂・尿管にもがんができる

尿路上皮は膀胱だけにあるわけではありません。腎臓でつくられた尿が集まる腎盂や、腎盂と膀胱をつなぐ尿管も尿路上皮で覆われています。

腎盂や尿管から発生した尿路上皮がんは、一般に腎盂・尿管がんとして扱います。

「尿路上皮がん」という病理診断名が同じでも、発生した場所によって手術方法や治療の組み立ては異なります。

また、尿路の内側が連続した上皮で覆われていることから、膀胱がんの治療後に腎盂・尿管へ尿路上皮がんが発生したり、腎盂・尿管がんの治療後に膀胱内へがんが発生したりすることがあります。

治療後に長期間の経過観察が必要になる理由の1つです。

膀胱の壁には「筋層」がある

膀胱の壁は、内側から大まかに粘膜上皮、上皮下結合組織、筋層という構造になっています。筋層の外側には脂肪組織があります。

膀胱がんでは、この筋層までがんが達しているかどうかが治療の大きな境目になります。

筋層非浸潤性膀胱がん(NMIBC)
がんが筋層まで達していない
筋層浸潤性膀胱がん(MIBC)
がんが筋層まで入り込んでいる

同じ「膀胱がん」でも、この2つでは治療が大きく違います。

NMIBCでは、尿道から内視鏡を入れて腫瘍を切除するTURBTを中心に、再発・進展リスクに応じて膀胱内注入療法などを追加します。

MIBCでは、膀胱全摘除術や周術期薬物療法、条件を満たす場合には膀胱温存を目的とした化学放射線療法などを検討します。

膀胱がんの診断後は、「ステージ」だけでなく「筋層まで入っているか」を確認すると、その後の治療説明が理解しやすくなります。

参考:国立がん研究センター「膀胱がんについて」国立がん研究センター「膀胱がん 治療」

膀胱がんの種類|90%以上は尿路上皮がん

膀胱に発生するがんは1種類ではありません。

どの細胞から発生したかによって、尿路上皮がん、扁平上皮がん、腺がん、小細胞がんなどに分けられます。

主な種類 特徴
尿路上皮がん 膀胱がんの90%以上を占める。膀胱の内側を覆う尿路上皮から発生する
扁平上皮がん 尿路上皮がんとは異なる細胞からなる。慢性的な刺激や炎症などとの関連が問題になることがある
腺がん 腺組織に似た構造を持つ比較的まれな膀胱がん
小細胞がんなど 頻度は低いが、一般的な尿路上皮がんとは性質や治療方法が異なることがある

この記事では、膀胱がんの大部分を占め、現在の標準的な膀胱がん治療の中心となる尿路上皮がんについて主に解説します。

同じ尿路上皮がんでも「異型度」や特殊な組織学的特徴がある

尿路上皮がんと診断されても、すべてが同じ性質ではありません。

病理検査では、がん細胞の形や並び方が正常な細胞からどの程度かけ離れているかを評価し、主に低異型度(Low grade)と高異型度(High grade)に分けます。高異型度のがんは、低異型度に比べて筋層へ進展する危険性などをより強く考える必要があります。

通常とは異なる組織学的な特徴を持つ尿路上皮がんもあり、種類によっては早い段階から膀胱全摘を含む積極的な治療を検討する材料になります。

病理結果では「尿路上皮がんか」「どこまで深く入り込んでいるか」「低異型度か高異型度か」「特殊な組織学的特徴がないか」を合わせて確認する必要があります。

後述する筋層非浸潤性膀胱がんのリスク分類でも、この「異型度」が大きな判断材料になります。

参考:国立がん研究センター「膀胱がんについて」国立がん研究センター「膀胱がん 治療」

膀胱がんの原因・リスク|喫煙との関係が特に強い

膀胱がんになった人のすべてで、「これが原因だった」と1つの理由を特定できるわけではありません。

発症リスクとの関係が最もよく知られているのが喫煙です。

このほか、特定の化学物質への職業性曝露、過去に受けた一部の抗がん剤治療や骨盤への放射線治療などが関係する場合があります。

喫煙した煙がなぜ膀胱がんにつながるのか

たばこと聞くと、肺や喉への影響を最初に思い浮かべる人が多いかもしれません。

喫煙による発がん物質は肺だけにとどまるわけではなく、体内に吸収されて血液中へ入り、腎臓でろ過されます。尿に排出された物質は膀胱にたまり、膀胱の内側を覆う尿路上皮に接触します。

この過程で尿路上皮のDNAが傷つくことが、膀胱がん発生につながると考えられています。

喫煙は膀胱がんの代表的な予防可能なリスク因子です。

国立がん研究センターも膀胱がん予防のため禁煙を勧めており、禁煙してからの期間が長くなるほど、喫煙を続けた場合と比べて発症リスクが低くなることが分かっています。

すでに膀胱がんと診断された人も、「今さら禁煙しても意味がない」と考える必要はありません。禁煙について医師へ相談することができます。

染料・塗料などに関わる一部の化学物質

膀胱がんは、職業上の化学物質への曝露との関係が古くから知られてきたがんでもあります。

特に芳香族アミンと呼ばれる物質が問題となり、染料、顔料、ゴム、塗料、石油製品などに関係する職業で、過去に特定の化学物質へ長期間曝露していた人ではリスクが高くなることが報告されています。

現在は規制されている物質も多く、こうした職業に就いている、または過去に就いていたからといって膀胱がんになるわけではありません。

診察時に職業歴を聞かれた場合には、過去に扱っていた物質や仕事内容を伝えることが診断の参考になる場合があります。

年齢が上がるほど多く、男性に多い

膀胱がんは年齢が上がるにつれて多くなります。日本の2023年罹患統計では、男性17,901例に対して女性6,069例で、男性の方が多く診断されています。

男女差には喫煙や職業性曝露など複数の要因が関係していると考えられており、「男性だから発症する」「女性なら発症しにくい」と個人のリスクを判断できるわけではありません。女性でも血尿などの症状があれば膀胱がんを含めた評価が必要です。

シクロホスファミドなど過去の治療が関係することがある

ほかの病気の治療歴が、将来の膀胱がんリスクに関係することもあります。

抗がん剤などとして使われるシクロホスファミドやイホスファミドへの曝露は、膀胱がんの発症リスク上昇との関連が知られています。

過去に骨盤へ放射線治療を受けた人でも、その後の膀胱がんリスクが高くなることが報告されています。

こうした治療を受けた人の多くが膀胱がんになるという意味ではありません。何年も前に受けた治療であっても、血尿などが出た際には過去の治療歴を医師へ伝えておくとよいでしょう。

慢性的な刺激や炎症は主に特殊な膀胱がんとの関連がある

長期間の尿道カテーテル留置や、海外の一部地域でみられる寄生虫感染など、膀胱に慢性的な炎症や刺激が加わる状態も膀胱がんと関連することがあります。

こうした要因は、一般的な尿路上皮がんより扁平上皮がんなど特定のタイプとの関連が知られています。

通常の膀胱炎を何度か経験しただけで、膀胱がんになると考える必要はありません。

一般の人を対象とした膀胱がん検診は行われていない

現在の日本では、胃がん、肺がん、大腸がん、乳がん、子宮頸がんのように、国の指針として定められた膀胱がん検診はありません。

健康診断で尿潜血を調べる場合はありますが、尿潜血検査は膀胱がん専用の検診ではありません。

血尿は膀胱炎、尿路結石、前立腺の病気、腎臓の病気などでも起こります。反対に、膀胱がんでも検査をした時点で血尿が確認されないことがあります。

「毎年健康診断を受けているから膀胱がんも大丈夫」とは限らないため、目で見て分かる血尿などの症状が出た場合は、次の健診を待たず泌尿器科で相談しましょう。

参考:国立がん研究センター「膀胱がん 予防・検診」米国国立がん研究所(NCI)「Bladder Cancer Causes and Risk Factors」

膀胱がんの初期症状|痛みのない血尿を見逃さない

膀胱がんで最もよく知られている症状が血尿です。特に注意したいのが、排尿時の痛みなどを伴わず、突然尿が赤くなる無症候性肉眼的血尿です。

血尿以外には、頻尿、排尿時の痛み、急に強い尿意を感じる尿意切迫感など、膀胱炎とよく似た症状がみられることもあります。

痛みのない血尿が代表的な症状

膀胱がんによる血尿では、「トイレに行ったら尿が赤かった」「茶色っぽい尿が出た」「血の塊が混ざっていた」といった変化がみられることがあります。

痛みがないことは、膀胱がんを否定する材料にはなりません。むしろ国立がん研究センターは、膀胱がんの血尿では痛みなどを伴わないことが特徴と説明しています。

血尿が見つかったときには、膀胱がんだけでなく、尿路結石、膀胱炎、腎盂・尿管がんなどさまざまな原因を考えて検査します。

一度血尿が消えても「治った」とは限らない

膀胱がんを疑ううえで知っておきたい特徴が、血尿が毎回続くとは限らないことです。一度赤い尿が出ても、次の排尿では普通の黄色に戻り、その後しばらく血尿が出ないことがあります。症状が消えると、「一時的に傷がついただけだろう」「疲れていたせいかもしれない」と受診を見送ってしまうことがあります。

目で確認できる血尿が一度でも出た場合、血尿が止まったことだけを理由に膀胱がんを否定することはできません。特に原因の分からない肉眼的血尿では、泌尿器科で原因を調べることが大切です。

健康診断で「尿潜血」を指摘されて見つかることもある

血尿には、目で見て分かる肉眼的血尿だけでなく、見た目は普通でも検査によって血液が確認される顕微鏡的血尿があります。健康診断などの尿検査で「尿潜血陽性」と指摘され、その後の精密検査につながることもあります。

尿潜血陽性の原因は膀胱がんだけではありません。腎臓の病気、尿路結石、尿路感染症などさまざまな原因があります。年齢、喫煙歴、血尿の程度などを含めて、泌尿器科で追加検査が必要かを判断します。

頻尿・排尿痛など膀胱炎に似た症状が出ることもある

膀胱がんでは、頻尿、排尿時痛、尿が残っている感じ、尿意切迫感などが現れることがあります。これらは膀胱炎でもよく起こる症状なので、症状だけから両者を見分けることはできません。

特に上皮内がん(CIS)では、尿路上皮の表面に平らに病変が広がるため、血尿だけでなく頻尿や排尿痛などの刺激症状がみられることがあります。

「膀胱炎だと思って治療を受けたものの症状がなかなか改善しない」といった場合には、ほかの原因がないか確認する必要があります。

進行すると尿が出にくい・腰や背中が痛むこともある

腫瘍が大きくなったり、尿管から膀胱へ尿が流れ込む部分を塞いだりすると、尿が流れにくくなることがあります。腎臓から膀胱へ尿を送れなくなり水腎症が起こると、脇腹、腰、背中などに痛みを感じる場合があります。

がんの進行によって尿が出にくくなったり、足がむくんだりするケースもあります。これらは膀胱がんだけに起こる症状ではありませんが、原因を確認するための検査が必要です。

血尿が出たら泌尿器科へ

目で見て分かる血尿や、尿検査で繰り返し血尿を指摘された場合の専門診療科は泌尿器科です。膀胱だけでなく、腎臓、腎盂、尿管、尿道、男性では前立腺など、尿の通り道全体を調べることができます。

特に、痛みのない赤い尿が出た、血尿が一度出た後に消えた、血の塊が混じった、膀胱炎のような症状が治療しても続く、尿潜血を繰り返し指摘されているといった場合には、自己判断だけで経過を見続けず受診を検討しましょう。

参考:国立がん研究センター「膀胱がんについて」

膀胱がんの検査と診断|TURBTで「がんの深さ」まで調べる

膀胱がんが疑われた場合には、尿検査、超音波検査、膀胱鏡検査などを組み合わせて調べます。膀胱内に腫瘍が確認された後には、尿道から内視鏡を入れて腫瘍を切除するTURBT(経尿道的膀胱腫瘍切除術)を行い、採取した組織を病理検査します。

膀胱がんでは、このTURBTが単なる「腫瘍を取る治療」ではありません。何というがんなのか、筋層まで達しているのか、異型度は高いのかを確認し、その後の治療方針を決める重要な検査でもあります。

尿検査・尿細胞診

最初に行われる検査の1つが尿検査です。尿中に血液が混ざっていないかを調べる尿潜血検査のほか、尿の中にがん細胞が出ていないかを顕微鏡で確認する尿細胞診を行うことがあります。

尿細胞診は、特に高異型度の尿路上皮がんやCISなどを見つける手掛かりになります。ただ、尿細胞診が陰性だから膀胱がんではない、と判断することはできません。がんがあっても尿中に十分ながん細胞が出ていないことがあり、低異型度の腫瘍では尿細胞診で見つかりにくい場合もあります。

尿検査だけで診断を確定せず、膀胱鏡や画像検査などと組み合わせて評価します。

腹部超音波検査

超音波検査では、膀胱の内部に腫瘤がないか、腎臓に水腎症などの変化がないかを確認できます。体の外から検査でき、放射線被ばくもありません。

ある程度の大きさの膀胱腫瘍が見つかることがありますが、小さな腫瘍や平坦なCISなどは超音波だけでは分からない場合があります。

膀胱鏡検査で膀胱の内側を直接見る

膀胱がんの診断で重要な検査が膀胱鏡検査です。尿道から細い内視鏡を膀胱まで入れ、膀胱の内側を直接観察します。腫瘍がある場所、数、大きさ、形などを確認できます。

乳頭状に盛り上がる腫瘍は比較的確認しやすいのに対し、CISは粘膜上に平らに広がるため、通常の観察だけでは分かりにくいことがあります。必要に応じて、通常光では見つけにくい病変を確認しやすくする光力学診断(PDD)などをTURBTの際に併用することがあります。

CT・MRIで周囲への広がりや転移を調べる

CTでは、膀胱周囲への広がり、リンパ節、肺や肝臓などへの転移がないかを調べます。血尿の原因を調べる段階では、膀胱だけでなく腎盂・尿管など上部尿路の異常も確認する目的で画像検査を行うことがあります。

MRIは膀胱壁の構造や周囲組織との関係などを詳しく評価するのに役立ち、筋層浸潤の可能性を判断する材料になります。画像検査で深達度を予測することはできますが、最終的な深さを決めるにはTURBTで採取した組織の病理診断が重要です。

TURBTは「確定診断」と「初回治療」を兼ねる

TURBT(タービー)は、Transurethral Resection of Bladder Tumorの略で、日本語では経尿道的膀胱腫瘍切除術といいます。

全身麻酔または腰椎麻酔を行い、尿道から電気メスなどが付いた内視鏡を膀胱内へ入れて腫瘍を切除します。おなかを切り開いて膀胱へ到達する手術ではありません。

切除した組織を病理検査することで、本当にがんなのか、尿路上皮がんなのか、低異型度か高異型度か、上皮下結合組織まで入り込んでいるか、筋層まで浸潤しているか、特殊な組織学的特徴がないか、などを確認します。

筋層非浸潤性で完全に切除できる病変なら、TURBT自体が治療の大きな部分を担います。筋層まで浸潤していると分かれば、TURBTだけで根治を目指すのではなく、膀胱全摘や周術期薬物療法など次の治療へ進みます。

なぜ2回目のTURBTを行うことがあるのか

初回TURBTで腫瘍を切除しても、病理結果によってはもう一度TURBTを行います。これを2nd TURBT(2回目のTURBT)と呼びます。

特にT1・高異型度の場合などでは、初回手術だけでは腫瘍が残っている可能性や、実際にはより深く筋層まで浸潤している可能性を確認する意味があります。初回の標本に十分な筋層が含まれていなければ、「筋層までがんが入っていない」と正確に判断できないこともあります。

2nd TURBTは「念のためもう一度削るだけ」の手術ではありません。腫瘍が残っているか、より深いがんではないかを確認し、その後にBCGなどの追加治療が必要かを考える材料になります。

2026年には、この2nd TURBTの結果が治療選択にさらに大きな意味を持つことを示す国内臨床試験の結果が公表されています。詳しくは後のTURBTの章で解説します。

参考:国立がん研究センター「膀胱がん 検査」国立がん研究センター「膀胱がん 治療」

膀胱がんの深達度|最も大きな分かれ目は「筋層まで入っているか」

膀胱がんの病理結果では、Ta、Tis、T1、T2といった記号が使われます。これは、がんが膀胱の壁へどのくらい深く入り込んでいるかを示すTカテゴリーです。

一般のがんでは「ステージⅠ・Ⅱ・Ⅲ・Ⅳ」の方がなじみがあるかもしれませんが、膀胱がんの治療を理解するには、先にこのTカテゴリーを知っておくと分かりやすくなります。

Tカテゴリー がんの深さ・広がり 大きな分類
Ta 乳頭状に発育しているが、上皮下へ浸潤していない 筋層非浸潤性膀胱がん(NMIBC)
Tis 上皮内がん(CIS)。粘膜上皮内に平らに広がる
T1 上皮下結合組織まで浸潤しているが、筋層には達していない
T2 筋層まで浸潤している。T2aは筋層の内側、T2bは外側まで及ぶ 筋層浸潤性膀胱がん(MIBC)
T3 筋層を越えて膀胱周囲の脂肪組織まで広がっている
T4a 前立腺間質、精のう、子宮、腟など隣接臓器へ直接広がっている
T4b 骨盤壁または腹壁まで広がっている

Ta|乳頭状に発育しているが深く入り込んでいない

Taは、膀胱の内側に向かって乳頭状に盛り上がるように発育しているものの、上皮下結合組織へ浸潤していない状態です。低異型度で、単発、初発、小さいなどの条件がそろえば低リスクに分類されることがあります。

Taであっても、高異型度、多発、再発などの特徴があれば治療方針は変わります。

Tis|上皮内がん(CIS)

Tisは上皮内がん(Carcinoma in situ:CIS)です。乳頭状に盛り上がるのではなく、膀胱の粘膜表面に平らに広がる高異型度の病変です。

深く浸潤していないのでステージでは0isですが「ステージ0だから危険性の低いがん」という意味ではありません。CISは筋層浸潤へ進展する危険性を考える必要があり、BCG膀胱内注入療法などの対象になります。また、平坦で見つけにくいため、尿細胞診やPDD、必要に応じた生検などが診断に役立ちます。

T1|「浸潤がん」でも筋層非浸潤性に分類される

T1では、がんが粘膜上皮を越えて上皮下結合組織まで浸潤しています。

ここで用語が少し分かりにくくなります。T1は確かに「浸潤しているがん」ですが、膀胱の筋層にはまだ到達していません。そのため、分類上は筋層非浸潤性膀胱がん(NMIBC)に含まれます。

T1=浸潤していないではありません。
T1=筋層までは浸潤していないという意味です。

T1、特に高異型度T1では、筋層へ進展するリスクを考えて2nd TURBTやBCG、症例によっては膀胱全摘を検討します。

T2以降|筋層浸潤性膀胱がん

T2になると、がんが膀胱壁の筋層まで到達しています。ここから筋層浸潤性膀胱がん(MIBC)に分類されます。

T3では筋層を越えて膀胱の外側にある脂肪組織へ、T4aでは隣接臓器へ広がります。T4bはさらに骨盤壁・腹壁まで進展した状態です。

TURBTで目に見える腫瘍を削るだけでは、膀胱壁の深いところに入り込んだがんを十分に治療できません。

転移がないMIBCでは、膀胱全摘除術と周術期薬物療法を中心に治療を考えます。条件を満たす一部の患者さんでは、TURBT・化学療法・放射線治療を組み合わせて膀胱を残す治療も検討できます。

参考:国立がん研究センター「膀胱がん 治療」日本泌尿器科学会「膀胱癌診療ガイドライン 2025年アップデート」

膀胱がんのステージ|ステージ0でも治療が軽いとは限らない

膀胱がんのステージは、原発巣の深さを示すTカテゴリー、リンパ節転移を示すNカテゴリー、遠隔転移を示すMカテゴリーを組み合わせて決まります。

0a、0is、Ⅰ、Ⅱ、ⅢA、ⅢB、ⅣA、ⅣBに分類されます。

ステージ 主な状態
0a Ta。乳頭状に発育するが、上皮下へ浸潤していない
0is Tis。上皮内がん(CIS)
Ⅰ期 T1。上皮下結合組織まで浸潤しているが筋層には達しておらず、リンパ節・遠隔転移がない
Ⅱ期 T2。筋層へ浸潤しているが、リンパ節・遠隔転移がない
Ⅲ期 膀胱周囲脂肪組織・一部の隣接臓器まで広がる場合や、骨盤内などの所属リンパ節へ転移している場合
ⅣA期 骨盤壁・腹壁まで広がっている、または骨盤外のリンパ節へ転移している場合など
ⅣB期 肺、肝臓、骨など、リンパ節以外の遠隔臓器へ転移している

ステージ0a|Taの乳頭状腫瘍

ステージ0aはTaに相当します。膀胱の内側に乳頭状の腫瘍が発育しているものの、上皮下へは浸潤していません。

低異型度で小さく、初発・単発などの条件がそろえば、TURBTを中心とした比較的負担の小さい治療で経過を見ることがあります。

同じ0aでも高異型度や多発、再発などがあれば、追加治療や厳密な経過観察が必要になります。

ステージ0is|CISは「0期だから安全」ではない

ステージ0isは上皮内がん(CIS)です。表面の上皮内にとどまっているため「0期」と分類されますが、CISは高異型度で、筋層浸潤へ進展する危険性を考える必要があります。

膀胱がんでは、ステージの数字が小さいことと、再発・進展リスクが低いことが必ずしも同じではありません。この点が、一般的な「ステージが早ければ治療も軽い」というイメージだけでは膀胱がんを理解しにくい理由です。

ステージⅠ|T1でも高リスクになることがある

ステージⅠは、がんが上皮下結合組織へ浸潤しているものの、筋層には到達していないT1です。リンパ節や遠隔転移はありません。

T1はNMIBCに分類されますが、特に高異型度の場合は筋層浸潤へ進展するリスクが問題になります。2nd TURBT、BCG膀胱内注入療法などを行い、さらにリスクが高いと判断されれば、筋層へ浸潤する前の段階でも膀胱全摘除術を検討することがあります。

「ステージⅠなのになぜ膀胱を全部取る話が出るのか」という疑問は、このリスク分類を理解すると分かりやすくなります。

ステージⅡ|筋層まで浸潤している

ステージⅡはT2で、がんが膀胱壁の筋層まで入り込んだ状態です。遠隔転移やリンパ節転移はありませんが、ここから治療の考え方は大きく変わります。

TURBTと膀胱内注入療法を中心とするNMIBCとは異なり、根治を目指す場合には膀胱全摘除術や周術期薬物療法を検討します。選択された患者さんでは、膀胱を残す化学放射線療法も候補になります。

ステージⅢ|膀胱の外や所属リンパ節へ広がる

Ⅲ期には、がんが膀胱周囲の脂肪組織や一部の隣接臓器まで広がった状態のほか、骨盤内などの所属リンパ節へ転移した状態も含まれます。

つまり、ステージは「膀胱壁のどこまで深く入ったか」だけでは決まりません。Tカテゴリーでは筋層まで達していないT1であっても、所属リンパ節転移があればステージⅠではなくなります。

「NMIBC/MIBC」は主に原発巣の深さを表す分類、「ステージ」はリンパ節や遠隔転移も含めた病気全体の広がりを表す分類と考えると整理しやすいでしょう。

ステージⅣ|骨盤壁・腹壁または遠隔転移

T4bで骨盤壁・腹壁まで広がっている場合や、骨盤外のリンパ節への転移がある場合はⅣA期に分類されます。肺、肝臓、骨などリンパ節以外の遠隔臓器へ転移している場合はⅣB期です。

こうした根治切除が難しい、または転移のある尿路上皮がんでは、全身に作用する薬物療法が治療の中心になります。

現在はエンホルツマブ ベドチン+ペムブロリズマブなどが登場し、数年前とは一次治療の考え方も変化しています。後半の薬物療法の章で詳しく説明します。

参考:国立がん研究センター「膀胱がん 治療」

筋層非浸潤性膀胱がん(NMIBC)のリスク分類|同じ早期でも治療が違う

Ta・Tis・T1の筋層非浸潤性膀胱がんでは、ステージだけを見て治療を決めません。病変の数、大きさ、初発か再発か、Tカテゴリー、異型度、CISの有無などを組み合わせて、低リスク、中リスク、高リスク、超高リスクに分類します。

このリスク分類が、TURBT後に膀胱内へ抗がん剤を入れるのか、BCGを使うのか、2nd TURBTが必要なのか、膀胱全摘まで検討するのかを考える重要な材料になります。

リスク分類 主な条件
低リスク 単発・初発・3cm未満・Ta・低異型度・CISなしをすべて満たす
中リスク 低リスクにも高リスクにも該当しないもの
高リスク T1、高異型度、CIS(併発CISを含む)のいずれかがある
超高リスク 高リスクの中でも、T1高異型度にCIS、多発・再発・3cm以上、特殊な組織学的特徴や脈管侵襲などが加わる場合、またはBCG後も高異型度腫瘍が残存・早期再発する場合など

低リスク|「Taだった」だけでは低リスクにならない

低リスクに分類されるには、単発、初発、3cm未満、Ta、低異型度、CISなしという条件をすべて満たす必要があります。

Taだから自動的に低リスクになるわけではありません。たとえばTa・低異型度でも、複数の腫瘍がある、何度も再発している、大きな腫瘍であるといった場合には、中リスクなど別の分類になります。

低リスクではTURBT後の抗がん剤膀胱内注入などを検討し、その後も膀胱鏡で再発がないか確認していきます。

中リスク|低リスクでも高リスクでもない幅広いグループ

中リスクは、低リスクの条件をすべて満たさないものの、T1、高異型度、CISなど高リスクに該当する特徴もないグループです。かなり幅のある分類なので、病変の数、再発歴などによって治療の強さも変わります。

抗がん剤の膀胱内注入や、一部ではBCG膀胱内注入療法を検討します。

高リスク|T1・高異型度・CISのいずれかがある

高リスクには、T1、高異型度、CISのいずれかを含むものが該当します。ここで「ステージ」と「リスク分類の違い」がよく分かります。

CISはステージ0isですが高リスクです。T1はステージⅠですが高リスクに入ります。

膀胱がんでは「0期・Ⅰ期=治療の軽い早期がん」と一括りにできません。

高リスクNMIBCでは、2nd TURBT、BCG膀胱内注入療法などを組み合わせて、膀胱内再発だけでなく筋層浸潤へ進むことも防ぐ必要があります。

2026年8月には、高リスクNMIBCに対するBCG+デュルバルマブも国内承認されましたが、高リスクなら全員がこの併用療法を受けるという意味ではありません。詳しい対象や従来のBCG療法との関係は治療編で整理します。

超高リスク|筋層へ進む前に膀胱全摘を検討することがある

高リスク群の中でも、さらに進展リスクが高い特徴を持つものが超高リスクです。

代表的には、T1高異型度に、CISを伴う、腫瘍が多発している、再発例である、3cm以上である、通常とは異なる組織学的特徴がある、リンパ管や静脈への侵襲がある、といった条件が加わる場合があります。

BCGを行っても高異型度腫瘍が消えない場合や、BCG治療後早期に高リスクの病変が再発した場合も問題になります。この段階では、まだ筋層非浸潤性であっても根治的膀胱全摘除術を検討することがあります。

「筋層まで達していないのに、なぜ膀胱を全部取るのか」と感じるかもしれません。理由は、筋層浸潤や転移が起こってから手術するより、進展する危険性が非常に高い段階で根治を目指す方が適切と判断される患者さんがいるためです。

全摘の必要性はT1という情報だけでは決まりません。CIS、腫瘍数、大きさ、再発歴、2nd TURBTの結果、組織学的特徴、BCGへの反応などを合わせて判断します。

「再発しやすい」と「筋層まで進みやすい」は同じ意味ではない

膀胱がんでは「再発」という言葉をよく使います。

ここで区別したいのが、膀胱内にもう一度腫瘍ができる再発と、筋層浸潤性へ病気が進む進展です。

膀胱内に低異型度のTa腫瘍が繰り返しできる患者さんもいます。再発を何度も経験していても、すぐ生命に関わる進行がんになるとは限りません。

反対に、高異型度T1やCISなどでは、単に膀胱内へ再発するだけでなく、筋層浸潤や転移へ進む危険性をより強く考える必要があります。

再発リスク
治療した後に膀胱内へ再び腫瘍ができる可能性
進展リスク
筋層浸潤性膀胱がんなど、より深く進行した状態へ移行する可能性

「再発率が高い」という説明だけで病気の危険性を判断せず、自分の場合は再発が問題なのか、それとも筋層浸潤へ進展する危険性も高いのかを担当医に確認すると、BCGや膀胱全摘を勧められる理由が理解しやすくなります。

同じ高異型度T1でも2nd TURBTの結果で治療が変わる可能性がある

高異型度T1は高リスクNMIBCですが、同じ診断名でも全員の状態が同じではありません。

初回TURBT後に2nd TURBTを行った結果、まだ腫瘍が残っているのか、それとも病理学的に腫瘍が認められないT0なのかという違いも、その後の治療判断に関係します。

2026年に公表された国内第Ⅲ相試験JCOG1019では、High-grade T1と診断された後、2nd TURBTで腫瘍が残っていないことが確認された一部の患者さんでは、BCGを追加せず慎重に経過観察する方法がBCG療法に劣らないことが示されました。

これは「高異型度T1ならBCGは不要」という結果ではありません。対象となったのは、2nd TURBTまで行い、病理学的に腫瘍が残っていないことが確認された厳選された患者さんです。この研究によって、2nd TURBTは残存がんを確認するだけでなく、その後の追加治療をどこまで行う必要があるのかを考える情報として、さらに重要になりました。

JCOG1019については、後の「TURBT」の章で対象患者と結果を詳しく解説します。

参考:国立がん研究センター「膀胱がん 治療」国立がん研究センター「完全切除後のT1膀胱がんに対して無治療経過観察が標準治療の一つとなることを証明」

膀胱がん治療の全体像

膀胱がんでは、診断された時点で「手術」「抗がん剤」「放射線治療」のどれか1つを選ぶわけではありません。まずTURBT(経尿道的膀胱腫瘍切除術)で腫瘍を切除し、病理検査によってがんの深さや異型度などを確認したうえで、その後の治療を決めます。

治療方針を大きく分けるのは、がんが膀胱壁の筋層まで達しているかどうかです。

Ta・Tis・T1の筋層非浸潤性膀胱がん(NMIBC)では、できるだけ膀胱を残しながら、膀胱内での再発や筋層浸潤への進展を防ぐ治療を考えます。T2以降の筋層浸潤性膀胱がん(MIBC)では、膀胱全摘除術と薬物療法を組み合わせる治療が中心になり、条件を満たす一部の患者さんでは膀胱温存療法も検討します。遠隔転移がある場合や根治的な手術が難しい場合には、全身に作用する薬物療法が治療の中心です。

病状 治療の主な考え方
低・中リスクNMIBC TURBTを行い、リスクに応じて抗がん剤の膀胱内注入療法などを追加する
高リスクNMIBC 2nd TURBTやBCG膀胱内注入療法などを行い、再発・進展リスクを下げる。2026年からは一部でBCG+デュルバルマブも選択肢となった
超高リスクNMIBC BCGなどを検討する一方、筋層浸潤が起こる前の根治的膀胱全摘除術を検討する場合がある
MIBC 膀胱全摘除術と周術期薬物療法が中心。条件を満たせばTURBT・薬物療法・放射線治療による膀胱温存も検討する
根治切除不能・転移性 全身薬物療法を中心に治療し、これまでの治療歴やFGFR3などの分子情報も踏まえて次の治療を考える

この表は治療の大まかな流れを整理したものです。実際には、同じT1でも低異型度か高異型度か、CISを伴うか、2nd TURBTで腫瘍が残っていたか、過去にBCGを受けているかなどによって治療方針は変わります。

膀胱がんでは、TURBT後に出た病理結果が「治療の終了」を意味するのではなく、その後どの治療経路へ進むかを決める出発点になります。

NMIBCでは膀胱を残せる患者さんが多い反面、膀胱内で再発を繰り返すことがあります。高リスクでは、再発だけでなく筋層浸潤性膀胱がんへ進展する可能性も考えなければなりません。

MIBCでは、膀胱の中に見えている腫瘍をTURBTで切除するだけでは、筋層内に入り込んだがんを十分に治療できません。膀胱全摘除術、手術前後の薬物療法、膀胱温存療法についてあらためて検討します。

根治切除不能・転移性膀胱がんの薬物療法は近年大きく変化しています。以前はシスプラチンを使用できるかどうかが治療選択の大きな分岐でしたが、現在はエンホルツマブ ベドチンとペムブロリズマブの併用なども一次治療に加わり、「シスプラチン適格かどうか」だけでは治療方針を説明できなくなっています。

この後は、まずNMIBCの治療から詳しく見ていきます。

参考:国立がん研究センター「膀胱がん 治療」日本泌尿器科学会「膀胱癌診療ガイドライン 2025年アップデート」

TURBT|尿道から腫瘍を切除し、その後の治療方針を決める

TURBT(経尿道的膀胱腫瘍切除術)は、膀胱がんの診断と初回治療で中心となる内視鏡手術です。

尿道から膀胱内へ内視鏡を入れ、先端についた電気メスなどを使って腫瘍を切除します。通常は全身麻酔または腰椎麻酔を行うため、手術中に強い痛みを感じながら腫瘍を削る治療ではありません。

おなかを切らずに行える手術ですが、TURBTの目的は目に見える腫瘍を取り除くことだけではありません。切除した組織から、尿路上皮がんなのか、異型度は高いのか、上皮下結合組織や筋層まで浸潤しているのかを調べ、その後の治療を決めます。

筋層非浸潤性ならTURBTで腫瘍を取り切れることもある

Taなどの筋層非浸潤性膀胱がんでは、TURBTによって肉眼的な腫瘍をすべて切除できる場合があります。

低リスクであれば、TURBT後に抗がん剤を膀胱内へ注入し、その後は膀胱鏡などで経過を見ることがあります。中リスクでは再発リスクに応じて追加の膀胱内注入療法などを検討します。T1・高異型度など一定の病理所見がある場合には、2nd TURBTを行います。

「TURBTで全部取れた」と説明された場合でも、病理結果を確認するまでは、その手術だけで治療が終了するかは分かりません。高異型度、T1、CISなどが確認されれば、肉眼的に腫瘍がなくなっていても、再発や進展を防ぐ追加治療が必要になることがあります。

筋層まで浸潤していた場合は次の治療へ進む

TURBTで採取した組織からT2以上、つまり筋層浸潤性膀胱がんと診断された場合には、通常、TURBTだけで根治を目指すことはできません。

内視鏡から見える腫瘍を削ることはできても、膀胱壁の筋層内に入り込んだがん細胞や、その外側へ広がっている可能性のある病変まで十分に取り除けないためです。

転移のないMIBCでは、膀胱全摘除術と周術期薬物療法を中心に考えます。患者さんの病状や希望によっては、最大限のTURBTに薬物療法と放射線治療を組み合わせた膀胱温存療法を検討することもあります。

2nd TURBTを行う理由

T1や高異型度の腫瘍などでは、初回TURBTの後にもう一度TURBTを行うことがあります。

2回目を行う理由の1つは、初回の切除部位に腫瘍が残っていないかを確認するためです。初回のTURBTでT1と診断されていても、2nd TURBTでさらに深い部分を調べたところ、実際には筋層まで浸潤していたと分かる場合もあります。初回の病理標本に十分な筋層が含まれていなければ、筋層浸潤の有無そのものを正確に評価できないこともあります。

国立がん研究センターは、T1・高異型度の場合や、Ta・高異型度で初回TURBTに筋層が採取されていない場合には、もう一度TURBTを行うことが推奨されていると説明しています。

2nd TURBTは、単に切り残しを確認するためだけの手術ではありません。その時点で腫瘍が残っているかどうかが、BCGなどの追加治療をどこまで行うかという判断にも関係します。

高異型度T1でも2nd TURBT後T0の一部では経過観察が選択肢になる

2026年に公表されたJCOG1019は、2nd TURBTの意味を考えるうえで重要な国内第Ⅲ相試験です。

対象となったのは、初回TURBTでHigh-grade T1と診断され、2nd TURBTを行った結果、病理学的に腫瘍が残っていないことが確認された患者さんです。試験では、この条件を満たした263人がBCG膀胱内注入療法を受ける群と、追加治療を行わず慎重に経過を見る群に分けられました。

5年時点の無再発生存割合はBCG群81.8%、経過観察群86.5%で、経過観察がBCG療法に対して劣らないことが統計学的に示されました。5年全生存割合もBCG群91.7%、経過観察群92.0%でした。経過観察群では、BCGに伴う血尿、頻尿、尿路痛などの副作用も少ない傾向がみられました。

この結果から、High-grade T1でも、2nd TURBTで腫瘍が残っていないことが確認された一部の患者さんでは、BCGを追加せず慎重に経過観察する方法が標準治療の1つになり得ることが示されました。

対象条件には注意が必要です。

JCOG1019は「T1ならBCGを行わなくてもよい」と示した試験ではありません。初回TURBTでHigh-grade T1と診断され、2nd TURBTでも腫瘍が確認されず、尿細胞診などを含む試験の条件を満たした患者さんについて検証した結果です。

また、2026年に公表された新しいエビデンスであり、日本泌尿器科学会の2025年5月アップデートより後の情報です。既存の高リスクNMIBC治療全体を一律に置き換えるものではなく、2nd TURBT後の状態まで確認して治療を個別化する新たな判断材料として捉える必要があります。

TURBT後の血尿・排尿痛

TURBT後には、切除した部分から出血して血尿が出ることがあります。手術後は尿道カテーテルを留置し、出血が多い場合には膀胱内を洗浄することもあります。

膀胱の深い部分まで切除した際には、まれに膀胱壁に穴が開く膀胱穿孔が起こることがあります。国立がん研究センターでは、多くの場合はカテーテルを一定期間留置することで改善するとしています。

カテーテルを抜いた後に頻尿や排尿時の違和感が出ることもあります。退院後に血尿が急に強くなる、血の塊で尿が出にくい、発熱や強い痛みがあるなど、病院から説明された注意症状がみられた場合には医療機関へ連絡します。

参考:国立がん研究センター「膀胱がん 治療」国立がん研究センター「完全切除後のT1膀胱がんに対して無治療経過観察が標準治療の一つとなることを証明」

膀胱内注入療法|抗がん剤・BCGを膀胱の中へ入れる

筋層非浸潤性膀胱がんでは、TURBT後に薬を膀胱内へ直接入れる膀胱内注入療法を行うことがあります。

全身へ抗がん剤を点滴する治療とは異なり、尿道からカテーテルを入れ、薬剤を膀胱の中へ注入します。TURBTで腫瘍を切除した後に残っている可能性のある微小ながん細胞を治療し、膀胱内再発や筋層浸潤への進展を防ぐことが目的です。

使用する薬には、細胞障害性抗がん薬とBCGがあります。どちらを使うかは、NMIBCのリスク分類やCISの有無などによって判断します。

低・中リスクでは抗がん剤を膀胱内へ注入することがある

低リスクまたは中リスクの一部では、TURBT後に細胞障害性抗がん薬を膀胱内へ注入します。

薬を膀胱内へ直接投与することで、膀胱粘膜に残っている可能性のあるがん細胞へ作用させ、再発を減らすことを目指します。全身へ薬を投与する化学療法とは投与方法も副作用の出方も異なります。

注入する回数や時期は再発リスクによって変わります。低リスクと中リスクでも治療内容が同じとは限りません。

BCG膀胱内注入療法とは

高リスクNMIBCやCISで重要な治療がBCG膀胱内注入療法です。

BCGは結核予防ワクチンにも使われるウシ型弱毒結核菌です。「膀胱がんなのに、なぜ結核の菌を入れるのか」と疑問を感じるかもしれません。

BCGを膀胱内へ注入すると、膀胱粘膜で免疫反応が起こり、その免疫の働きを利用してがん細胞を攻撃します。一般的な細胞障害性抗がん薬のように、薬そのものが直接がん細胞を傷害する治療とは仕組みが異なります。

国立がん研究センターでは、中リスクの一部、高リスク、超高リスクの一部にBCG膀胱内注入療法を行うことがあると説明しています。CISでもTURBT後にBCGを行います。

BCG導入療法と維持療法

BCG治療には、治療開始時に一定回数投与する導入療法と、その効果を保つ目的でその後も一定期間投与する維持療法があります。

国立がん研究センターでは、標準的にはTURBT後に6~8回行う導入療法と、その後1~3年間継続する維持療法があり、患者さんのリスクなどによって回数や時期を判断するとしています。

高リスクだからといって、すべての患者さんが同じ回数を最後まで受けられるわけではありません。副作用、年齢、体の状態、再発リスクなどを見ながら投与量やスケジュールを調整することがあります。

また、前述したJCOG1019の結果によって、High-grade T1でも2nd TURBT後に腫瘍が残っていない一部の患者さんでは、BCGを追加せず慎重に経過観察するという選択肢も示されています。

BCGでは頻尿・排尿痛・血尿・発熱が起こることがある

BCGは高リスクNMIBCの再発・進展を抑えるために重要な治療ですが、抗がん剤の膀胱内注入より副作用が出やすい治療でもあります。

よくみられるのは頻尿、排尿時の痛み、血尿、発熱などです。治療当日から数日間、膀胱炎に似た症状が出ることがあります。

症状が強ければ、次の注入を延期したり、投与回数や量を調整したりする場合があります。「標準的にはこの回数だから」と無理に予定どおり続けるのではなく、副作用と治療効果のバランスを見ながら判断します。

まれですが、BCG感染や間質性肺炎、膀胱が萎縮してためられる尿量が減るなど、重い副作用が起こることもあります。

国立がん研究センターでは、発熱に加えて咳や呼吸困難がある場合、39℃以上の発熱がある場合、38℃以上の発熱が2日以上続く場合には、すぐ病院へ連絡するよう案内しています。

高リスクNMIBCではBCG+デュルバルマブが2026年に承認

2026年8月24日、免疫チェックポイント阻害薬デュルバルマブ(商品名:イミフィンジ)が、BCGとの併用で「高リスク筋層非浸潤性膀胱癌」に対して国内承認されました。

これまでBCGは膀胱内だけへ投与する治療でしたが、デュルバルマブは点滴で全身へ投与するPD-L1阻害薬です。BCGによって膀胱内で起こす免疫反応に、免疫チェックポイント阻害薬を組み合わせる新しい治療方法になります。

承認の根拠となった国際第Ⅲ相POTOMAC試験では、TURBTを受けたBCG未治療の高リスクNMIBC患者が対象となりました。デュルバルマブ+BCG導入・維持療法とBCG導入・維持療法を比較した結果、デュルバルマブを加えた群では高リスク病変の再発、進行または死亡のリスクが32%低下しました。

国内で承認された用法では、BCGとの併用でデュルバルマブを4週間間隔で最大13回点滴します。

高リスクNMIBCに新しい選択肢が加わりましたが、「高リスクと診断されたら全員がBCG+デュルバルマブになる」という意味ではありません。

POTOMAC試験はBCG未治療の高リスクNMIBCを対象とした試験です。T1でも2nd TURBT後T0となった患者、すでにBCG治療を受けた患者、膀胱全摘を優先して検討すべき超高リスク患者などでは、治療を同じように考えることはできません。

デュルバルマブを加えると、BCGによる膀胱症状だけでなく、免疫チェックポイント阻害薬特有の副作用にも注意する必要があります。免疫の働きが過剰になることで、肺、肝臓、甲状腺、腸、皮膚などさまざまな臓器に炎症が起こることがあるため、治療中に新しい症状が出た場合には担当医へ伝えることが重要です。

2026年に承認されたばかりの治療であるため、従来のBCG単独療法との使い分けについては、患者さんの病理結果、再発・進展リスク、2nd TURBTの結果、全身状態などを踏まえて判断します。

参考:国立がん研究センター「膀胱がん 治療」アストラゼネカ「イミフィンジ、日本初かつ唯一の高リスク筋層非浸潤性膀胱癌における免疫併用療法として承認を取得」PMDA「最適使用推進ガイドライン(医薬品)」

BCG後に残存・再発した高リスクNMIBCの治療

BCG膀胱内注入療法を行っても、CISなどの高異型度病変が消えなかったり、一度消えた後に再発したりすることがあります。

この場合に重要なのは、「もう一度BCGを使えばよいのか」「膀胱全摘を行うべきなのか」「膀胱を残す別の治療を検討できるのか」を見極めることです。

BCG後の再発をすべて同じように扱うわけではありません。BCGをどの程度受けたのか、治療終了からどのくらいの期間で再発したのか、CISなのか乳頭状腫瘍なのか、T1なのか、筋層浸潤が起きていないかなどによって治療方針が変わります。

BCG不応性とは

BCG治療後にも高異型度の病変が残っている、または比較的早い時期に再発した患者さんの中には、BCG-unresponsive(BCG不応性)と呼ばれる状態に該当する人がいます。

これは「BCGを1回受けて効かなかった」という意味ではありません。十分なBCG治療を受けたうえで、高異型度NMIBCが一定の条件・期間内に残存または再発した患者さんを対象とする医学的な定義です。

BCGが効きにくい状態で同じ治療を何度も繰り返すと、その間に筋層浸潤や転移へ進展する機会を与えてしまう可能性があります。

そのため、BCG後の高リスク病変では「膀胱を残せる治療があるか」だけでなく、膀胱を残そうとすることで根治の機会を失わないかまで考える必要があります。

根治的膀胱全摘を検討する理由

BCG不応性の高リスクNMIBCでは、筋層までがんが達していない段階であっても、根治的膀胱全摘除術が重要な治療候補になります。

「まだ筋層非浸潤性なのに膀胱を取るのは早すぎる」と感じる人もいるでしょう。

高異型度T1やCISがBCG治療後も残存・再発する場合には、その後に筋層浸潤性膀胱がんへ進む危険性があります。筋層浸潤や転移が起きてから膀胱全摘を行うより、膀胱内にとどまっている段階で手術を行った方が根治を期待しやすい患者さんがいることが、早期全摘を検討する理由です。

膀胱全摘は大きな手術であり、術後には尿路変向が必要です。年齢や持病などから手術による負担が大きい場合もあり、すべての患者さんが同じ選択をするわけではありません。

この問題は「膀胱を残したいか、残したくないか」だけでは決められず、現在の進展リスクと手術による負担の両方を比較して考えます。

膀胱全摘が難しい・希望しない場合の治療をどう考えるか

BCG後に高リスクNMIBCが残存・再発していても、高齢や持病などから膀胱全摘が難しい場合があります。手術の説明を受けたうえで、本人が膀胱温存を強く希望する場合もあります。

こうした患者さんでは、病変の状態やそれまでの治療歴に応じて膀胱温存を目指す治療を検討します。

2026年には、日本でもBCG治療後の特定のCISを対象としてナドファラゲン フィラデノベクが承認されました。

選択肢が増えたことは重要ですが、膀胱温存治療を選べば膀胱全摘と同じ根治性が保証されるという意味ではありません。治療後も膀胱鏡、尿細胞診、必要に応じた生検などで厳密に病変を確認し、再発・進展した場合には改めて全摘を含む治療を検討する必要があります。

2026年承認のナドファラゲン フィラデノベク

2026年5月8日、ナドファラゲン フィラデノベク(商品名:エドスチラドリン膀胱内注入液)が国内承認されました。

日本で承認された対象は、「BCG膀胱内注入療法後に残存・再発した上皮内癌を有する高リスク筋層非浸潤性膀胱癌」で、BCG膀胱内注入療法の再導入の適応とならない患者です。

この条件は重要です。

「BCGが効かなかったNMIBCなら誰でも使える薬」という適応ではありません。国内承認ではCISを有することが条件に含まれています。

ナドファラゲン フィラデノベクは、遺伝子を運ぶための非増殖型アデノウイルスベクターを利用して、膀胱の細胞にインターフェロンα2bをつくらせ、抗腫瘍効果を引き起こすことを狙う治療です。膀胱内へ直接投与します。

厚生労働省は2026年7月に最適使用推進ガイドラインを公表しており、臨床試験では主にBCG-unresponsiveの定義を満たす患者で使用経験があることから、それ以外の患者へ使用する場合には臨床上の必要性を慎重に検討するよう求めています。

治療中は尿細胞診や膀胱鏡を行い、高異型度病変の再発がないかを確認します。

「遺伝子治療=膀胱全摘より優れた治療」という意味ではない

ナドファラゲン フィラデノベクは、日本のBCG治療後高リスクNMIBCに新しい膀胱温存の可能性を加えた治療です。

「遺伝子治療」という新しい言葉から、従来の膀胱全摘より進んだ治療であり、手術の代わりとして全員が選ぶべきだと受け取るのは適切ではありません。

膀胱全摘は、BCG不応性など進展リスクの高いNMIBCに対して根治を目指す重要な治療です。ナドファラゲン フィラデノベクは、国内承認条件に該当し、BCGの再導入が適切ではない患者さんで膀胱温存を目指す新たな選択肢になります。

どちらが適切かを考える際には、病変がCISだけなのかT1なども伴うのか、BCGをいつどの程度受けたのか、筋層浸潤の兆候がないか、膀胱全摘を安全に受けられるか、膀胱を残すことをどの程度希望するかなどを確認します。

BCG後の治療では「膀胱を残せる薬があるか」だけでなく「今の段階で膀胱を残すことが医学的に許容できるか」を確認することが重要です。

参考:厚生労働省「承認された再生医療等製品について」PMDA「エドスチラドリン膀胱内注入液 承認審査情報」厚生労働省「ナドファラゲン フィラデノベク製剤に係る最適使用推進ガイドライン」

筋層浸潤性膀胱がんの手術|根治的膀胱全摘除術

TURBTの病理検査で、がんが膀胱壁の筋層まで入り込んだ筋層浸潤性膀胱がん(MIBC)と診断された場合、遠隔転移がなければ根治を目指した治療を検討します。その中心となるのが、膀胱そのものを摘出する根治的膀胱全摘除術です。

国立がん研究センターでは、転移のない筋層浸潤性膀胱がんに対する標準治療を膀胱全摘除術としています。現在は手術だけで治療を完結させるとは限らず、再発リスクを下げるために手術前後の薬物療法を組み合わせることも重要になっています。

なぜTURBTだけでは筋層浸潤性膀胱がんを治療できないのか

TURBTでは尿道から内視鏡を入れ、膀胱の内側にある腫瘍を切除します。筋層非浸潤性膀胱がんであれば、TURBTで目に見える腫瘍を取り除いたうえで、再発・進展リスクに応じて膀胱内注入療法や経過観察へ進むことができます。

MIBCでは、がん細胞が膀胱壁の筋肉の中まで入り込んでいます。T3では膀胱周囲の脂肪組織、T4aでは前立腺間質や精のう、子宮、腟など周囲の臓器まで広がっている場合もあり、膀胱の内側から見える腫瘍をTURBTで削るだけでは、こうした病変を十分に切除できません。

「TURBTで腫瘍を取ったのに、なぜ膀胱まで摘出するのか」と疑問に感じる人もいますが、MIBCでは膀胱の内側に見える腫瘍だけではなく、筋層を含めてがんが存在する可能性のある範囲を切除する必要があります。根治的膀胱全摘除術は、そのために行われる手術です。

膀胱とともに骨盤内のリンパ節なども切除する

根治的膀胱全摘除術では、膀胱だけを単独で摘出するのではなく、がんが転移する可能性のある骨盤内リンパ節も切除します。EAU(欧州泌尿器科学会)の2026年ガイドラインでも、所属リンパ節郭清は根治的膀胱全摘除術の一部として行うことが推奨されています。

標準的な手術では、男性は膀胱とともに前立腺、精のう、尿管の一部などを切除し、尿道再発のリスクが高ければ尿道も切除することがあります。女性では従来、膀胱、子宮、腟の一部、尿管の一部、尿道などを含めて切除する手術が行われてきました。

ただし、すべての患者さんで同じ範囲を切除するわけではありません。EAUガイドラインでは、がんが温存する臓器や組織へ及んでいないことを確認したうえで、適切に選択された患者さんでは性機能や生殖機能に関係する臓器・神経を温存する方法も選択肢としています。

性機能・妊孕性への影響は手術前に確認する

膀胱全摘除術では生殖器官を同時に切除することがあるため、排尿方法だけではなく性機能や妊孕性にも影響する可能性があります。

男性では前立腺や精のうを摘出すると、手術前と同じような射精はできなくなります。勃起に関係する神経が影響を受ければ、勃起機能が低下することもあります。がんの位置や広がりなどの条件を満たせば神経などを温存できる場合がありますが、がんを安全に切除できることが前提です。

女性でも、子宮や卵巣、腟などの切除範囲によって妊孕性や性生活への影響が異なります。EAUガイドラインでは、適切に選択された女性では子宮・卵巣・腟などを温存する手術も検討できるとしています。

将来子どもを持つことを希望している場合には、手術だけでなく薬物療法によって妊孕性が低下する可能性もあるため、治療開始前に相談することが重要です。国立がん研究センターも、膀胱がんの治療が妊孕性に影響する可能性があることから、希望がある場合には治療開始前に担当医へ相談するよう案内しています。

開腹手術とロボット支援手術

膀胱全摘除術には、腹部を切開して行う開腹手術と、腹部に複数の小さな穴を開けて手術支援ロボットを操作するロボット支援膀胱全摘除術があります。

EAUの2026年ガイドラインでは、ロボット支援手術と開腹手術を比較した複数の無作為化試験をまとめた結果、90日以内の合併症、切除断端、一定期間の再発・生存、生活の質には大きな差が示されていません。ロボット支援手術では出血量が少ない傾向がある反面、手術時間は長くなる傾向があります。

ロボット支援手術だから必ず治療成績がよく、開腹手術だから劣るという関係ではありません。EAUガイドラインでも、手術方法そのものだけではなく、執刀医や医療機関の経験が治療結果に関係する重要な要素とされています。

年齢だけで膀胱全摘ができるかを決めるわけではない

膀胱がんは高齢者にも多いため、「80歳だから膀胱全摘はできないのでは」と心配する人もいます。

膀胱全摘除術は尿路変向術も同時に行う大きな手術なので、手術を安全に受けられるか慎重な評価が必要です。ただし、判断基準は年齢だけではありません。

EAUの2026年ガイドラインでは、暦年齢よりもフレイル(加齢などによって心身の予備能力が低下した状態)の方が重要であり、80歳を超えていても膀胱全摘除術が選択肢になるとしています。心臓・肺・腎臓などの機能、持病、栄養状態、日常生活の自立度、認知機能などを含めて、手術に耐えられる状態かを評価します。

高齢でも体の状態が保たれていれば手術を受けられる場合がある一方、年齢が若くても重い持病などによって手術の負担が大きくなる場合があります。手術を検討するときには、「何歳か」だけではなく、現在の全身状態とがんの進行度を合わせて判断します。

参考:国立がん研究センター「膀胱がん 治療」European Association of Urology「EAU Guidelines on Muscle-invasive and Metastatic Bladder Cancer 2026|Disease Management」

尿路変向術|膀胱を摘出した後、尿をどう出すのか

膀胱は尿をつくる臓器ではなく、腎臓でつくられた尿を一時的にためる臓器です。膀胱を摘出した後も腎臓では尿がつくられ続けるため、新しく尿を体外へ出す経路をつくらなければなりません。この手術を尿路変向術といいます。

日本で主に行われている方法には、尿管皮膚ろう、回腸導管、自排尿型新膀胱があります。国立がん研究センターでは、国内で最も多く行われているのは回腸導管としています。

どの方法にも利点と負担があり、医学的に1つの方法がすべての患者さんに最も優れているわけではありません。がんの位置、尿道を残せるか、腎機能や腸の状態、持病、認知機能、生活状況、本人の希望などを踏まえて選択します。

尿路変向 尿の出し方 生活上の主な特徴
尿管皮膚ろう 尿管を腹壁へ直接つなぎ、ストーマから尿を排出する 腸を使わないため手術を比較的簡略化できる。状態によっては尿管ステントなどの管理が必要になる
回腸導管 小腸の一部を尿の通り道として使い、腹部のストーマから採尿袋へ尿を排出する 国内で最も多く行われている。尿は常にストーマへ流れるため、ストーマ装具を使用して管理する
自排尿型新膀胱 腸から尿をためる袋をつくって尿道につなぎ、尿道から排尿する 腹部のストーマを必要としないが、正常な膀胱と同じ排尿機能ではない。排尿訓練や自己導尿が必要になる場合がある

ストーマを造設した場合は排尿管理の方法が変わる

尿管皮膚ろうや回腸導管では、腹部につくった尿の出口である尿路ストーマから尿を排出します。もともとの膀胱のように尿をためてから自分の意思で排尿する仕組みではないため、採尿袋などのストーマ装具を使用します。

手術後には、装具の交換、尿の捨て方、ストーマ周囲の皮膚の観察、入浴時の管理などを練習します。自宅へ戻った後も必要に応じて、皮膚・排泄ケア認定看護師などからストーマ管理について支援を受けることができます。

ストーマがあること自体で外出や日常生活ができなくなるわけではありませんが、手術前とは尿の管理方法が変わります。膀胱全摘を受ける前には、「膀胱を取るかどうか」だけでなく、その後どのような排尿方法になるのかまで説明を受けておくことが大切です。

新膀胱は「元の膀胱と同じ状態に戻す手術」ではない

自排尿型新膀胱では、小腸などの一部を使って尿をためる袋をつくり、尿道につなぎます。腹部に尿路ストーマを造らず、尿道から排尿できることが大きな特徴です。

ただし、腸からつくった新膀胱には、もともとの膀胱と同じように尿がたまったことを感じる機能や、自ら収縮して尿を押し出す機能がありません。腹圧を利用して尿を出す方法を身につけ、一定の時間ごとに排尿する必要があります。

国立がん研究センターでは、新膀胱では4時間おきの排尿を1つの目安としており、水分摂取量や発汗量によって実際の排尿間隔は変わるとしています。特に手術後しばらくは夜間の尿漏れがみられることがあり、自力で十分に尿を出せない場合には、細い管を尿道から入れて尿を排出する自己導尿が必要になることもあります。

尿道にがんがある場合や尿道再発のリスクが問題になる場合には、新膀胱を選択できないことがあります。EAUガイドラインでは、重い腎機能・肝機能障害なども自排尿型新膀胱を含む禁制型尿路変向を選択する際の重要な条件としています。

尿路変向は術後の生活まで考えて選ぶ

尿路変向術では、ストーマがないことだけを理由に新膀胱が優れているとはいえません。新膀胱では尿道から排尿できる反面、排尿訓練、尿漏れへの対応、場合によっては自己導尿などの自己管理が必要になります。

尿管皮膚ろうは腸を使用しないため、手術を簡略化しやすい方法です。EAUガイドラインでは、フレイルのある患者さんなどでは尿管皮膚ろうが選択されることがあるとしています。回腸導管は長く使用されてきた確立した方法で、日本でも最も多く行われていますが、ストーマ装具による管理が必要です。

尿路変向は手術後も長期間付き合っていく排尿方法です。EAUガイドラインでは、尿路変向を選択するときに持病、心肺機能や認知機能、本人の希望、社会的な支援状況などを考慮する必要があるとしています。どの方法なら自分の生活の中で管理を続けやすいかを、手術前に医師や看護師と具体的に確認しておくことが重要です。

参考:国立がん研究センター「膀胱がん 治療」European Association of Urology「EAU Guidelines on Muscle-invasive and Metastatic Bladder Cancer 2026|Disease Management」

筋層浸潤性膀胱がんの周術期薬物療法

転移のない筋層浸潤性膀胱がんでは、膀胱全摘除術の前後に薬物療法を組み合わせることがあります。手術前に行う治療を術前補助療法(ネオアジュバント療法)、手術後に行う治療を術後補助療法(アジュバント療法)と呼びます。

画像検査で遠隔転移が見つかっていなくても、検査では確認できないほど小さながん細胞がすでに膀胱の外へ広がっている可能性があります。周術期薬物療法には、こうした微小ながん細胞まで含めて治療し、手術後の再発リスクを下げる目的があります。

なぜ手術前に薬物療法を行うのか

シスプラチンを含む術前化学療法は、MIBCで長く用いられてきた治療です。EAUの2026年ガイドラインでは、シスプラチンを使用できるT2~T4aなどのMIBCに対して、シスプラチンを含む併用療法を術前に行うことを推奨しています。

術前治療を行う理由の1つは、膀胱の外にすでに存在している可能性のある微小ながん細胞へ、早い段階から全身治療を行えることです。また、膀胱全摘除術後には腎機能が低下する場合があるため、手術前の方がシスプラチンを使用しやすい患者さんもいます。

手術前に薬物療法を行った後は膀胱全摘除術へ進み、摘出した組織を病理検査することで、がんがどの程度治療に反応したかも確認できます。

シスプラチンを使えるかどうかを確認する

MIBCの周術期治療では、シスプラチンを安全に使用できる状態かが重要な判断材料になります。

シスプラチンは腎機能への影響があるため、腎機能が低下している場合には使用が難しくなることがあります。聴力障害、末梢神経障害、全身状態なども考慮して判断します。

「高齢だからシスプラチンを使えない」と年齢だけで決まるわけではありません。現在の腎機能や持病、日常生活をどの程度自立して送れているかなどを確認したうえで治療可能かを判断します。

シスプラチンを使用できない患者さんに対して、シスプラチンを単純にカルボプラチンへ置き換えれば同じ術前治療になるわけでもありません。EAUの2026年ガイドラインでは、シスプラチン不適格のMIBCに対してカルボプラチンを含む併用化学療法を術前治療として使用しないことを推奨しています。

GC療法・dose-dense MVAC療法

シスプラチンを使った代表的な術前化学療法の1つが、ゲムシタビンとシスプラチンを組み合わせるGC療法です。

別の選択肢として、メトトレキサート、ビンブラスチン、ドキソルビシン、シスプラチンを組み合わせ、投与間隔を短縮したdose-dense MVAC療法(dd-MVAC療法)があります。

GC療法とdd-MVAC療法を比較したVESPER試験では、術前治療を受けた患者さんの5年時点の解析で、dd-MVAC群の無増悪生存期間と全生存期間が良好でした。一方、強い倦怠感や消化器症状などはdd-MVACで多くみられています。

どちらを選ぶかは、治療効果だけでなく全身状態や副作用への耐えやすさなども踏まえて判断します。治療名だけを見るのではなく、自分にその治療が選ばれた理由を担当医へ確認することが大切です。

デュルバルマブ+GC療法→膀胱全摘→デュルバルマブ

MIBCの周術期治療には、免疫チェックポイント阻害薬を手術前後に組み込む方法も加わっています。

2025年9月19日、PD-L1阻害薬デュルバルマブ(商品名:イミフィンジ)が「膀胱癌における術前・術後補助療法」として日本で承認されました。

承認の根拠となった国際第Ⅲ相NIAGARA試験では、切除可能なMIBC患者さんを対象に、手術前のGC療法だけを行う治療と、GC療法にデュルバルマブを加え、膀胱全摘後もデュルバルマブを投与する治療が比較されました。

デュルバルマブを組み込んだ群では、病勢進行、再発、膀胱全摘を受けられなかったこと、死亡を合わせたイベントのリスクが32%低下し、死亡リスクも25%低下しました。2年時点の無イベント生存割合はデュルバルマブ群67.8%、対照群59.8%、2年全生存割合は82.2%と75.2%でした。

国内で承認された用法では、術前にGC療法とデュルバルマブを3週間間隔で最大4回投与し、膀胱全摘除術後にはデュルバルマブ単剤を4週間間隔で最大8回投与します。

これによって、シスプラチンを使用できるMIBCでは、従来の「術前化学療法を行ってから手術する」という方法に加え、手術前から免疫チェックポイント阻害薬を組み込み、膀胱全摘後も治療を続ける周術期治療が国内でも承認済みの選択肢になっています。

術後補助ニボルマブを検討する場合

免疫チェックポイント阻害薬では、ニボルマブ(商品名:オプジーボ)も尿路上皮がんの術後補助療法として国内承認されています。

2022年3月に承認されたもので、根治切除後にも再発リスクが高い筋層浸潤性尿路上皮がんの患者さんが対象です。承認の根拠となった国際第Ⅲ相CheckMate 274試験では、術後ニボルマブによる無病生存期間の改善が示されました。

デュルバルマブによる周術期治療とニボルマブによる術後補助療法は、どちらも免疫チェックポイント阻害薬を使用しますが、同じ治療ではありません。デュルバルマブは手術前からGC療法と併用し、膀胱全摘後も継続する治療として承認されています。ニボルマブは、根治切除を受けた後に再発リスクなどを踏まえて検討する術後補助療法です。

デュルバルマブを術前・術後に使用した患者さんが、その後さらに全員ニボルマブを使用するという治療経路ではありません。手術前にどの治療を受けたか、手術後の病理結果、再発リスクなどによって治療方針を判断します。

術前治療と術後治療は全員同じ組み合わせではない

MIBCの周術期治療では、手術前に薬物療法を行い、膀胱全摘後には必ず別の薬を追加するという固定された順番があるわけではありません。

シスプラチンを使用できるか、免疫チェックポイント阻害薬を使用できるか、術前に何を投与したか、膀胱全摘後の病理検査でどの程度のがんが残っていたかなどによって治療計画は変わります。

新しい治療が増えたことで選択肢は広がっていますが、「薬を多く組み合わせるほど治療効果が高い」と単純に考えるものではありません。臨床試験で有効性と安全性が確認された治療の組み合わせと順番に沿って、自分の病状に適した治療を選ぶ必要があります。

EV+ペムブロリズマブの周術期療法は日本で適応追加申請されている

抗体薬物複合体のエンホルツマブ ベドチン(EV、商品名:パドセブ)と、PD-1阻害薬ペムブロリズマブ(商品名:キイトルーダ)を手術前後に使用する治療も開発が進んでいます。

シスプラチン不適格MIBCを対象とした国際第Ⅲ相EV-303/KEYNOTE-905試験では、周術期EV+ペムブロリズマブによって、手術単独と比較して再発・病勢進行・死亡のリスクと死亡リスクが低下しました。EAUの2026年ガイドラインでは、この結果を受け、シスプラチン不適格MIBCに対する周術期EV+ペムブロリズマブを推奨しています。

ただし、海外のガイドライン上の位置づけと日本国内の承認状況は分けて考える必要があります。

日本では、シスプラチン不適格MIBCに対する周術期EV+ペムブロリズマブについて2026年1月30日に適応追加申請が行われました。さらに、シスプラチンを使用できるMIBCについても、EV-304/KEYNOTE-B15試験の結果に基づき2026年5月14日に国内で適応追加申請されています。

2026年9月7日時点では、この記事では国内承認済みの標準治療とは区別し、承認申請された治療として扱います。これは、同日時点までに確認できたアステラス製薬、PMDAなどの国内公表情報に基づく判断です。

なお、切除不能・転移性尿路上皮がんに対するEV+ペムブロリズマブはすでに国内承認されていますが、MIBCの手術前後に使用する周術期治療とは適応が異なります。

参考:European Association of Urology「EAU Guidelines on Muscle-invasive and Metastatic Bladder Cancer 2026|Disease Management」アストラゼネカ「イミフィンジ、日本初の膀胱がんにおける術前・術後補助療法の免疫療法薬として承認取得」PMDA「最適使用推進ガイドライン(医薬品)」小野薬品工業「オプジーボ 尿路上皮癌における術後補助療法 国内承認」アステラス製薬「シスプラチン不適応MIBCに対するパドセブ+キイトルーダ 国内適応追加申請」アステラス製薬「シスプラチン適応MIBCに対するパドセブ+キイトルーダ 国内適応追加申請」

膀胱を残す治療|TURBT+化学放射線療法による膀胱温存

転移のない筋層浸潤性膀胱がんの標準治療は膀胱全摘除術ですが、すべての患者さんが膀胱を摘出するわけではありません。

高齢や持病などによって大きな手術を受けることが難しい場合や、患者さんが膀胱を残すことを希望している場合には、TURBT、薬物療法、放射線治療を組み合わせて根治と膀胱温存を目指す治療を検討することがあります。

代表的なのがTrimodality Therapy(TMT:三者併用療法)です。EAUの2026年ガイドラインでは、適切な患者さんでは根治的膀胱全摘除術とTMTの両方を根治治療の選択肢として説明することを推奨しています。

TMTは「TURBTだけで膀胱を残す治療」ではない

TMTでは、まずTURBTによって目に見える膀胱内の腫瘍をできるだけ切除します。その後、膀胱へ放射線を照射しながら、放射線の効果を高める薬物療法を併用します。

筋層浸潤性膀胱がんに対して内視鏡で腫瘍だけを削り、そのまま膀胱を残して経過を見る治療ではありません。TURBT、放射線治療、薬物療法を組み合わせることで、がんの根治と膀胱機能の温存を目指します。

膀胱を摘出しないという点だけを見ると手術より簡単な治療に感じるかもしれませんが、一定期間に複数の治療を組み合わせ、その後も長期間の経過観察を続ける必要があります。

誰でも膀胱温存を選べるわけではない

TMTで良好な治療成績を得るためには、患者さんと腫瘍の選択が重要です。

EAUの2026年ガイドラインでは、単発のcT2~T3a腫瘍、広範囲または多発するCISがないこと、水腎症がないか片側に限られていること、治療前の膀胱機能が良好であることなどを、TMTに適した患者さんの特徴として挙げています。TURBTで目に見える腫瘍をできるだけ切除できることも重要です。

これらは、1つ条件から外れたら必ずTMTを受けられないという単純な基準ではありません。病期、腫瘍の大きさや数、CISの有無、水腎症、TURBTの結果、膀胱機能、全身状態などを総合的に確認します。

EAUガイドラインでは、MIBCの治療開始前に多職種で検討し、膀胱全摘と膀胱温存の両方が可能な患者さんには、それぞれについて説明して意思決定を行うことを推奨しています。

放射線治療だけでなく薬物療法を組み合わせる

根治を目指すTMTでは、放射線治療だけを行うのではなく、放射線の効果を高める薬物療法を同時に行う化学放射線療法が基本になります。

EAUの2026年ガイドラインでは、シスプラチンのほか、5-FU+マイトマイシンC、ゲムシタビンなどが放射線治療と組み合わせる薬物療法として挙げられています。化学療法を併用した放射線治療は、放射線治療単独よりも膀胱温存治療として有効であることが示されています。

MIBCの周術期薬物療法ではシスプラチンを使用できるかが重要ですが、シスプラチンを使用できないことだけを理由にTMTそのものが不可能になるとは限りません。腎機能などに応じて、5-FU+マイトマイシンCや低用量ゲムシタビンなどを使用できる場合があります。

治療中には頻尿、排尿痛、下痢、疲労感などがみられることがあります。治療終了後にも膀胱容量の低下や排尿機能の変化などが残る場合があるため、膀胱を摘出しないことと、治療による負担が小さいことは同じではありません。

膀胱を残せても経過観察は続く

TMTでは治療後も膀胱そのものが体内に残ります。自分の膀胱から排尿できる可能性を残せる一方、膀胱内に再びがんが発生する可能性も考え続けなければなりません。

EAUの2026年ガイドラインでは、TMT後には膀胱内再発だけでなく、上部尿路、尿道、リンパ節、遠隔臓器への再発や治療による晩期合併症を確認するため、厳密な経過観察が必要としています。

膀胱鏡については、最初の2年間は3カ月ごと、その後5年までは6カ月ごと、それ以降は年1回という専門家コンセンサスが示されています。尿細胞診や胸部・腹部・骨盤部のCTまたはMRIなども組み合わせて経過を確認します。

膀胱を温存できたから治療が完全に終了するわけではなく、長期間にわたって膀胱鏡などの検査を受け続けることがTMTの一部と考える必要があります。

再発した場合には救済膀胱全摘が必要になることがある

TMT後に膀胱内へ再発しても、すべての患者さんが直ちに膀胱全摘となるわけではありません。筋層非浸潤性の病変として再発した場合には、病変の性質に応じてTURBTや膀胱内注入療法などを検討できることがあります。

筋層浸潤性膀胱がんとして再発した場合や、局所のがんを膀胱温存治療で十分に制御できない場合には、救済膀胱全摘除術を検討します。EAUガイドラインでも、TMT後に筋層浸潤性の膀胱内再発がみられた場合には、手術が可能であれば速やかに救済膀胱全摘を検討することが示されています。

膀胱温存療法は、膀胱全摘より負担の軽い治療を選ぶという意味ではありません。TURBT、薬物療法、放射線治療を組み合わせ、治療後にも厳密な経過観察を続けることで膀胱を残しながら根治を目指す治療です。

膀胱全摘とTMTの両方が可能な場合には、がんの治療成績だけでなく、現在の膀胱機能、尿路変向後の生活、化学放射線療法を受けるための通院、治療後の定期的な膀胱鏡検査、再発時に救済膀胱全摘が必要になる可能性なども理解したうえで選択します。こうした治療後の生活や本人が何を優先するかまで含めて意思決定することは、EAUガイドラインでも重視されています。

参考:国立がん研究センター「膀胱がん 治療」European Association of Urology「EAU Guidelines on Muscle-invasive and Metastatic Bladder Cancer 2026|Disease Management」European Association of Urology「EAU Guidelines on Muscle-invasive and Metastatic Bladder Cancer 2026|Follow-up and Surveillance」

転移・根治切除不能尿路上皮がんの薬物療法

膀胱がんが遠隔臓器へ転移している場合や、周囲へ大きく広がって根治的な手術が難しい場合には、全身に作用する薬物療法が治療の中心になります。

この段階の薬物療法では、膀胱に発生したがんだけでなく、腎盂・尿管・尿道などに発生した尿路上皮がんも含めた「根治切除不能な尿路上皮がん」を対象として臨床試験や薬剤承認が行われていることが多く、膀胱原発の尿路上皮がんにも同じ治療体系が用いられます。

以前は、まず「シスプラチンを使えるか」を判断し、使用できればGC療法など、使用できなければカルボプラチンを含む治療などを選ぶ流れが中心でした。現在も腎機能や全身状態を確認してシスプラチンやプラチナ製剤を使用できるか判断することは重要ですが、2024年以降、新しい一次治療が相次いで国内承認されたことで、シスプラチン適格・不適格だけを最初の分岐として治療を決める時代ではなくなっています。

日本泌尿器科学会が2025年5月に更新した治療フローでは、エンホルツマブ ベドチン+ペムブロリズマブ、ニボルマブ+GC療法、プラチナ製剤を含む化学療法+アベルマブ維持療法などが一次治療の選択肢として示されています。

EV+ペムブロリズマブ|現在の一次治療で重要な選択肢

エンホルツマブ ベドチン(EV、商品名:パドセブ)+ペムブロリズマブ(商品名:キイトルーダ)は、根治切除不能な尿路上皮がんに対する一次治療として、2024年9月24日に日本で承認されました。

EVは、尿路上皮がん細胞などに発現するNectin-4(ネクチン4)というタンパク質を標的とする抗体薬物複合体(ADC)です。抗体に細胞障害性薬剤をつなぎ、Nectin-4を目印としてがん細胞へ薬剤を届けます。ペムブロリズマブはPD-1という免疫チェックポイントを阻害し、免疫細胞ががんを攻撃する力を保つ薬です。

承認の根拠となった国際第Ⅲ相EV-302/KEYNOTE-A39試験では、未治療の局所進行・転移性尿路上皮がん患者を対象として、EV+ペムブロリズマブとプラチナ製剤を含む化学療法が比較されました。

全生存期間の中央値はEV+ペムブロリズマブ群31.5カ月、化学療法群16.1カ月で、死亡リスクは53%低下しました。無増悪生存期間の中央値も12.5カ月と6.3カ月で、病勢進行または死亡のリスクが55%低下しています。

この結果によって、進行尿路上皮がんの一次治療は大きく変わりました。日本泌尿器科学会の2025年アップデートでも、シスプラチンを使用できる患者だけでなく、シスプラチンを使用できないもののプラチナ製剤による治療が可能な患者についても、EV+ペムブロリズマブが一次治療の選択肢として示されています。

ニボルマブ+GC療法|シスプラチンを使える場合の選択肢

シスプラチンを使用できる患者さんでは、ニボルマブ(商品名:オプジーボ)+ゲムシタビン+シスプラチン(GC療法)も一次治療の選択肢です。

2024年12月27日、ニボルマブはシスプラチンおよびゲムシタビンとの併用で「根治切除不能な尿路上皮癌」に対する国内承認を取得しました。

承認の根拠となったCheckMate 901試験では、未治療でシスプラチンを使用できる切除不能・転移性尿路上皮がん患者を対象として、ニボルマブ+GC療法とGC療法単独が比較され、全生存期間と無増悪生存期間の改善が示されました。

国内で承認された治療では、ニボルマブとGC療法を一定期間併用した後、ニボルマブ単剤へ移行します。

この治療はシスプラチンを含むため、腎機能、聴力、末梢神経障害、全身状態などを確認し、シスプラチンを安全に使用できるかを判断する必要があります。

プラチナ製剤による化学療法後にアベルマブ維持療法を行う場合

従来から用いられているGC療法や、シスプラチンを使用できない患者さんに対するゲムシタビン+カルボプラチン療法(GCarbo療法)も、現在の治療選択肢として残っています。

この場合、プラチナ製剤を含む一次化学療法を4~6サイクル行い、がんが進行していなければアベルマブ(商品名:バベンチオ)による維持療法へ移行する方法があります。

アベルマブはPD-L1を標的とする免疫チェックポイント阻害薬です。根治切除不能な尿路上皮がんに対する化学療法後の維持療法として2021年に国内承認されています。

ここでいう維持療法は、化学療法が効かなくなったため別の薬へ変更する「二次治療」とは異なります。一次化学療法で病勢進行が認められていない段階で、得られた効果をできるだけ長く維持するために治療を切り替えるという考え方です。

EV+ペムブロリズマブやニボルマブ+GC療法を受けた患者さんが、その後全員アベルマブ維持療法へ進むわけではありません。アベルマブ維持療法は、プラチナ製剤による一次化学療法を受け、病勢が進行していない患者さんを対象とする治療です。

シスプラチンもプラチナ製剤も使いにくい場合

腎機能や全身状態などによってシスプラチンを使用できない場合でも、カルボプラチンを使用できればGCarbo療法などを検討できます。

さらに全身状態が低下しているなどの理由でプラチナ製剤そのものを使用することが難しい場合には、ペムブロリズマブ単独、ゲムシタビン単独、タキサン系薬剤などを検討する場合があります。

日本泌尿器科学会の2025年治療フローでも、プラチナ製剤不適格患者ではこうした選択肢が示されています。

同じ「ステージ4」「転移あり」であっても、腎機能や全身状態、これまで受けた治療によって使える薬は異なります。現在の病状だけではなく、これまで何を使ったかが次の治療を決める重要な情報になります。

病気が進行した後の治療は「これまで何を使ったか」で変わる

一次治療後に病気が進行した場合には、一次治療で使用した薬と同じ系統を単純に繰り返すのではなく、治療歴を確認して別の作用を持つ薬を検討します。

日本泌尿器科学会の2025年治療フローでは、EV+ペムブロリズマブ後にはプラチナ製剤を含む化学療法や、FGFR3遺伝子異常がある場合のエルダフィチニブが選択肢として示されています。ニボルマブ+GC療法後や、プラチナ製剤+アベルマブ維持療法後には、EV単剤やエルダフィチニブなどが候補になります。

治療の順番はすべての患者さんで同じではありません。がんがどの治療に反応したか、副作用がどの程度残っているか、腎機能や全身状態がどう変化したか、FGFR3遺伝子異常があるかなどを確認しながら次の治療を選びます。

参考:国立がん研究センター「膀胱がん 治療」日本泌尿器科学会「膀胱癌診療ガイドライン 2019年版増補版 2025年5月アップデート」アステラス製薬「パドセブ+キイトルーダ 根治切除不能な尿路上皮癌の一次治療として国内承認」小野薬品工業「オプジーボ+シスプラチン+ゲムシタビン 根治切除不能な尿路上皮癌で国内承認」PMDA「バベンチオ点滴静注200mg」

FGFR3などの遺伝子検査|再発・転移時に治療が変わる場合がある

がんの治療では、どの臓器から発生したかだけでなく、がん細胞が持っている遺伝子の特徴によって薬を選べる場合があります。

進行した尿路上皮がんで現在特に重要なのが、FGFR3遺伝子変異・融合遺伝子です。

2024年12月27日、日本でFGFR阻害薬エルダフィチニブ(商品名:バルバーサ)が承認されたことで、FGFR3遺伝子異常の有無が実際の治療選択に直接つながるようになりました。

FGFR3遺伝子異常があるとエルダフィチニブを検討できる場合がある

FGFRは、細胞の増殖や生存などに関係するシグナルを伝えるタンパク質です。尿路上皮がんの一部ではFGFR3遺伝子に変異や融合が起こり、FGFRを介したシグナルががん細胞の増殖に関与しています。

エルダフィチニブはFGFRを阻害する内服薬です。

日本で承認されている効能・効果は、「がん化学療法後に増悪したFGFR3遺伝子変異又は融合遺伝子を有する根治切除不能な尿路上皮癌」です。

2024年12月27日に承認され、2025年7月16日に薬価収載・発売されました。日本で尿路上皮がんに対して承認された初めてのFGFR阻害薬です。

承認の根拠となった国際第Ⅲ相THOR試験では、FGFR遺伝子異常があり、PD-1/PD-L1阻害薬を含む治療後に病勢が進行した患者さんにおいて、エルダフィチニブは化学療法と比較して死亡リスクを36%低下させました。

重要なのは、FGFR3遺伝子異常が見つかったからといって、診断直後からエルダフィチニブを使用するわけではないことです。国内承認では、がん化学療法後に増悪した根治切除不能な尿路上皮がんが対象となっています。

エルダフィチニブを使うにはFGFR3遺伝子を調べる

エルダフィチニブは、FGFR3遺伝子異常がある患者さんだけを対象とする治療です。そのため、治療前にがん細胞のFGFR3遺伝子変異または融合遺伝子を調べます。

エルダフィチニブの適応判定には、therascreen FGFR遺伝子変異・融合遺伝子検出キット RGQ「キアゲン」がコンパニオン診断薬として用いられます。この検査では、尿路上皮がんの組織からFGFR3遺伝子の特定の変異や融合遺伝子を調べます。

コンパニオン診断薬とは、その薬の効果が期待できる患者さんを選ぶために、薬の使用と組み合わせて用いられる検査です。

進行尿路上皮がんでは、治療を何段階も進めた後にFGFR3検査を初めて考えるのではなく、今後エルダフィチニブが候補になる可能性も踏まえ、どの段階で検査しておくかを担当医と確認しておくとよいでしょう。

Nectin-4を標的とするEVでもNectin-4検査は必須ではない

エンホルツマブ ベドチン(EV)は、Nectin-4を標的とする抗体薬物複合体です。

この説明を聞くと、「HER2治療のように、Nectin-4陽性かどうかを検査してから使うのでは」と考えるかもしれません。

しかし、尿路上皮がんにEVを使用する際、Nectin-4の発現陽性を確認することは国内承認上の必須条件ではありません。

国内のパドセブの効能・効果には、Nectin-4発現による患者選択は設定されていません。FGFR3遺伝子異常を確認して使用するエルダフィチニブとは、この点が異なります。

「標的となる分子がある薬」と「その分子を検査して陽性患者だけに使用する薬」は、必ずしも同じではありません。

がん遺伝子パネル検査を検討する場合

FGFR3のように特定の薬の適応を判断するために特定の遺伝子を調べる検査とは別に、多数の遺伝子を一度に調べるがん遺伝子パネル検査(がんゲノムプロファイリング検査)があります。

保険診療でがん遺伝子パネル検査を受けるには条件があり、標準治療がない、または標準治療の終了が見込まれる固形がんなどが対象となります。実際に検査できるかは、病状や全身状態などを踏まえて判断されます。

検査によって治療につながる可能性のある遺伝子異常や、参加できる治験・臨床試験が見つかる場合があります。一方、遺伝子異常が見つかっても、その異常に対して国内で使用できる薬が存在するとは限りません。

国立がん研究センターのがんゲノム情報管理センターでは、がん遺伝子パネル検査の結果に基づいて新たな治療選択肢が提示される人はおよそ半数で、提示された治療が比較的早期に実施された人は10%程度と説明しています。

そのため、「がん遺伝子パネル検査を受ければ自分専用の薬が必ず見つかる」と考えるのではなく、標準治療との関係や検査を行うタイミングを確認したうえで検討します。

参考:ジョンソン・エンド・ジョンソン「尿路上皮がん治療薬 バルバーサ発売のお知らせ」キアゲン「therascreen FGFR RGQ RT-PCR Kit」アステラス製薬「パドセブ 根治切除不能な尿路上皮癌に対する一次治療の国内承認」国立がん研究センター がんゲノム情報管理センター「検査を受けたいときは」国立がん研究センター がんゲノム情報管理センター「がん遺伝子パネル検査とは」

膀胱がん治療の副作用と治療後の生活

膀胱がんでは、TURBT、BCG膀胱内注入療法、膀胱全摘除術、放射線治療、細胞障害性抗がん薬、抗体薬物複合体、免疫チェックポイント阻害薬、FGFR阻害薬など、病状によって異なる治療を使用します。

副作用も治療によって大きく異なります。治療開始前には「どんな副作用があるか」だけではなく、いつ起こりやすいのか、どの症状が出たら病院へ連絡するのか、仕事や食事などの日常生活をどう調整するのかまで確認しておくことが重要です。

プラチナ製剤を含む化学療法では体調の波を考えて生活を調整する

GC療法などの細胞障害性抗がん薬では、吐き気、食欲低下、倦怠感、骨髄抑制による白血球・血小板・赤血球の減少などが起こることがあります。シスプラチンでは腎機能障害、聴力障害、末梢神経障害などにも注意します。

副作用の出方には個人差がありますが、投与後の一定期間に体調が落ち、その後次の治療までに回復するという周期がみられることがあります。

仕事を続ける場合には、治療日だけ休めばよいとは限りません。自分の場合に投与後何日目ごろが最もつらくなりやすいのかが分かってきたら、その時期に重要な仕事や長時間の外出を減らすなど、治療周期に合わせて予定を調整する方法があります。

食事が十分に取れない、嘔吐が続く、水分が取れない、発熱があるといった場合には、次の診察日まで我慢せず医療機関へ連絡します。

参考:国立がん研究センター「薬物療法」国立がん研究センター「免疫療法 もっと詳しく」

EVでは皮膚症状・しびれ・高血糖などに注意する

エンホルツマブ ベドチン(EV)では、皮膚障害、末梢神経障害、高血糖、血球減少、下痢などが起こることがあります。間質性肺疾患などの重い副作用にも注意が必要です。

末梢神経障害では、手足のしびれや感覚の低下が少しずつ強くなることがあります。箸やボタンを扱いにくくなる、物を落としやすくなる、歩くときに足元が分かりにくいといった変化は、日常生活や仕事にも影響します。

症状が強くなってから伝えるのではなく、軽い段階から担当医へ伝えることが重要です。副作用の程度によって、休薬や減量などを検討する場合があります。

皮疹も軽いものだけとは限りません。急速に広がる皮疹、水ぶくれ、皮膚の痛み、口や目など粘膜の異常を伴う場合には、早めの対応が必要です。

参考:PMDA「パドセブ 一般の方向け医薬品情報」

免疫チェックポイント阻害薬の副作用は治療中だけとは限らない

ペムブロリズマブ、ニボルマブ、デュルバルマブ、アベルマブなどの免疫チェックポイント阻害薬は、免疫ががんを攻撃する力を保つことで治療効果を発揮します。

免疫が正常な臓器まで攻撃すると、肺炎、大腸炎、肝機能障害、甲状腺機能障害、副腎機能障害、腎炎、皮膚障害など、さまざまな免疫関連有害事象が起こることがあります。

国立がん研究センターでは、免疫チェックポイント阻害薬の副作用について、起こる時期や場所を予測することが難しいと説明しています。治療を終了した後に症状が現れることもあるため、治療中だけ注意すればよいわけではありません。

新しく咳や息切れが出た、下痢が続く、極端にだるい、食欲がない、動悸がする、急に体重が変化したなど、治療前にはなかった症状があれば、薬と関係がないと自己判断せず治療を受けている医療機関へ相談します。

参考:PMDA「キイトルーダ 一般の方向け医薬品情報」

エルダフィチニブでは目の症状と血清リン値を確認する

エルダフィチニブでは、高リン血症、目の障害、口内炎、下痢、爪や皮膚の変化、味覚異常などが起こることがあります。

PMDAの患者向医薬品ガイドでは、網膜剥離などの眼障害が起こる可能性があるため、治療中に定期的な眼科検査を行うこと、高リン血症を確認するため定期的に血液中のリン濃度を測定することが示されています。

見えにくい、物がゆがんで見える、視野に異常があるなどの症状を感じた場合には、次回受診まで様子を見るのではなく速やかに相談します。

口内炎や味覚の変化は、重症でなくても食事量の低下につながることがあります。体重減少や栄養状態の悪化が治療継続に影響することもあるため、食べにくさについても医療者へ伝えることが大切です。

参考:PMDA「バルバーサ錠3mg/4mg/5mg」

副作用が出たからといって必ず治療を中止するわけではない

薬物療法では、副作用が出た場合に投与を一時的に休む、薬の量を減らす、治療間隔を延ばす、副作用に対する治療を行うなどの方法があります。

治療計画どおりの量を一度も変更せず続けること自体が目的ではありません。治療効果を維持しながら安全に継続するために、体調に応じて治療を調整することがあります。

反対に、「副作用が怖いから」と自分で薬を中止したり、処方された量を減らしたりすることも避けます。症状が生活や仕事にどの程度影響しているかを医師や看護師、薬剤師に伝え、治療を続けるための方法を一緒に考えます。

緩和ケア・支持療法はがん治療と並行して受けられる

膀胱がんの治療では、がんそのものや治療によって生じるつらさを和らげる緩和ケア・支持療法も利用できます。緩和ケアは、治療の選択肢がなくなった後や終末期だけに受けるものではありません。がんと診断されたときから、手術や薬物療法、放射線治療などと並行して受けることができます。

対象になるのは痛みだけではありません。吐き気、食欲低下、倦怠感、息苦しさなどの身体的な症状に加えて、治療や将来への不安、仕事や家族に関する悩みなども相談できます。つらさの内容に応じて、担当医や看護師、薬剤師、緩和ケアチームなどが対応します。

また、進行した膀胱がんでは、膀胱からの出血や骨転移による痛みなどを和らげる目的で放射線治療を行うこともあります。これは根治を目指す膀胱温存療法の放射線治療とは目的が異なり、症状を軽くして日常生活を送りやすくするための治療です。

緩和ケアや支持療法を受けることは、がんに対する治療をやめるという意味ではありません。治療中だけでなく治療後も、痛みや体調の変化、生活上の困りごとがあれば、次の診察まで我慢せず医療者へ相談できます。

参考:国立がん研究センター「膀胱がん 治療」国立がん研究センター「緩和ケア」

膀胱がんの再発と経過観察

膀胱がんでは、治療によって腫瘍が見えなくなった後も定期的な経過観察が重要です。

特に筋層非浸潤性膀胱がんは、治療後に膀胱内へ新たな腫瘍が現れることが比較的多く、最初の治療が終了した後も膀胱鏡などで再発を確認します。

一方、筋層浸潤性膀胱がんでは、膀胱全摘後に骨盤内、リンパ節、肺、肝臓、骨などへ再発する場合があります。残っている尿路上皮から、腎盂・尿管・尿道などに新たながんが見つかることもあります。

NMIBCでは再発リスクに応じて膀胱鏡の間隔が変わる

筋層非浸潤性膀胱がんでは、TURBT後に膀胱鏡検査を行って膀胱内に新しい腫瘍ができていないか確認します。高リスクでは尿細胞診や上部尿路の画像検査なども組み合わせます。

日本泌尿器科学会のガイドラインでは、低・中・高リスクのいずれでも、まずTURBT後3カ月前後に膀胱鏡で確認することが基本になっています。その後の検査間隔はリスク分類によって異なります。

EAUの現行ガイドラインでは、低リスクで3カ月後の膀胱鏡が陰性なら、その9カ月後、その後は年1回で5年間を目安としています。中リスクでは3カ月後、その後2年間は6カ月ごと、その後年1回で10年間が目安です。

高リスク・超高リスクでは、最初の2年間は3カ月ごと、その後5年までは6カ月ごと、それ以降は年1回の膀胱鏡・尿細胞診を行い、長期にわたる経過観察が推奨されています。

検査間隔は病理結果や過去の再発歴、BCG治療歴などによって調整されるため、全員が同じスケジュールになるわけではありません。

「5年再発しなかったら必ず検査終了」とは限らない

がんの経過観察では「5年」という期間をよく聞きますが、膀胱がんではリスクによって意味が異なります。

低リスクNMIBCでは、長期間再発がなければ膀胱鏡を終了したり、検査方法を変更したりすることを検討できる場合があります。

高リスク・超高リスクNMIBCでは、10年以上経過してから再発することもあります。EAUガイドラインでは、高リスク・超高リスクでは長期、原則として生涯にわたる膀胱鏡などの経過観察を推奨しています。

したがって、「ステージが早かったから数年間再発しなければもう膀胱がんは気にしなくてよい」と一律には考えられません。ステージだけではなく、異型度、CIS、再発歴などを含めたリスク分類によって経過観察の長さも変わります。

膀胱内に再発した場合は、もう一度病理結果から治療を考える

NMIBCが膀胱内に再発した場合には、再びTURBTを行い、腫瘍の深達度や異型度などを確認します。

以前と同じ低リスクの腫瘍として再発する場合もあれば、高異型度になっている、T1へ進んでいる、CISがみられるなど、以前とは異なる状態で見つかることもあります。

再発したという事実だけで同じ治療を繰り返すのではなく、今回の腫瘍がどのリスクに分類されるのかを改めて判断します。

BCGを受けたことがある場合には、BCG終了から再発までの期間や、それまでにどの程度BCGを受けたかも重要です。BCG後の高リスク再発では、前述したように膀胱全摘やナドファラゲン フィラデノベクなどを検討する場合があります。

膀胱全摘後は膀胱以外の再発や尿路変向の状態も確認する

膀胱全摘後には膀胱がないため、NMIBCのように膀胱鏡で膀胱内再発を確認する経過観察とは内容が異なります。

国立がん研究センターでは、膀胱全摘除術後には血液検査、CT、尿細胞診、超音波検査などを行い、病状や病理結果、手術前後の薬物療法などに応じて検査間隔を判断するとしています。

再発だけでなく、腎機能、尿管と腸管をつないだ部分の狭窄、尿路感染、尿路結石など、尿路変向に伴う長期的な問題についても確認が必要です。

回腸導管や新膀胱では腸を尿路として使用するため、時間が経過してから起こる代謝上の変化やビタミンB12不足などにも注意が必要になる場合があります。

定期検査まで待たず相談した方がよい症状もある

経過観察の予定が決まっていても、症状が出た場合に次の予約日まで待つ必要はありません。

NMIBC治療後に再び肉眼的血尿が出た場合や、膀胱温存治療後に排尿症状が急に変化した場合には、再発の有無を確認する必要があります。

膀胱全摘後や進行がん治療後でも、持続する痛み、息切れ、原因の分からない体重減少、強い倦怠感など、新しい症状が続く場合には担当医へ相談します。

これらの症状があれば必ず再発しているという意味ではありません。治療後には再発以外の原因でもさまざまな症状が起こりますが、自己判断だけで経過を見るのではなく、必要に応じて検査を受けることが大切です。

参考:国立がん研究センター「膀胱がん 療養」国立がん研究センター「膀胱がん 治療」日本泌尿器科学会「膀胱癌診療ガイドライン2019年版 増補版」European Association of Urology「EAU Guidelines on Non-muscle-invasive Bladder Cancer|Follow-up」European Association of Urology「EAU Guidelines on Muscle-invasive and Metastatic Bladder Cancer|Follow-up and Surveillance」

膀胱がんの生存率・予後

膀胱がんの予後は、ステージだけではなく、がんが筋層まで浸潤しているか、異型度、CISの有無、リンパ節や遠隔臓器への転移、治療への反応などによって大きく異なります。

国立がん研究センターの最新統計では、2018年に膀胱がんと診断された人の5年相対生存率は男女計66.6%です。男性は70.4%、女性は55.6%となっています。

相対生存率とは、がん以外の死因による影響をできるだけ除いて、がんと診断された人が一般人口と比べてどの程度生存しているかを示す指標です。個々の患者さんが「あと何年生きられるか」を予測する数字ではありません。

国立がん研究センターの統計では、2023年に国内で新たに膀胱がんと診断された人は23,970人、2024年の死亡数は9,725人です。生存率については2026年7月22日にデータが更新され、全国がん登録による2018年診断例が最新値として公表されています。

参考:国立がん研究センター「がん種別統計情報 膀胱」

ステージ別の5年生存率

国立がん研究センターの「院内がん登録生存率集計結果閲覧システム」では、膀胱がんのステージ別5年ネット・サバイバルが公表されています。

ネット・サバイバルとは、がん以外の原因による死亡の影響を統計的に取り除き、「がんのみが死因となる状況」を仮定して計算した生存率です。

ステージ 5年ネット・サバイバル
Ⅰ期 82.0%
Ⅱ期 53.9%
Ⅲ期 40.2%
Ⅳ期 18.3%

この病期別データは2014~2015年に診断された患者さんを対象としたもので、Ⅰ期9,102人、Ⅱ期2,823人、Ⅲ期1,268人、Ⅳ期1,115人が集計されています。

注意したいのは、先ほど示した66.6%という数字と、この表の数字では集計対象、診断年、生存率の計算方法が異なることです。66.6%は全国がん登録の2018年診断例による5年相対生存率で、表はがん診療連携拠点病院などの2014~2015年診断例による5年ネット・サバイバルです。同じ条件で算出された数字ではないため、直接比較するものではありません。

また、院内がん登録の病期別生存率集計は上皮内がんを対象としていないため、ステージ0aや0is(CIS)はこの表には含まれていません。

参考:国立がん研究センター「院内がん登録生存率集計結果閲覧システム 膀胱がん」国立がん研究センター「膀胱がん 患者数(がん統計)」

ステージが進むほど生存率が低下する理由

ステージⅠでは、がんは上皮下結合組織まで浸潤していても筋層には達していません。TURBTやBCG膀胱内注入療法などによって膀胱内の病変を治療できる患者さんが多く、必要に応じて早期の膀胱全摘も検討できます。

ステージⅡでは筋層までがんが浸潤しており、TURBTだけでは十分な根治治療になりません。膀胱全摘除術や周術期薬物療法、適切な患者さんでは化学放射線療法による膀胱温存治療が必要になります。

ステージⅢでは膀胱周囲の組織や周辺臓器、所属リンパ節などへ広がっているため、局所の治療だけでなく、体内に存在する可能性のある微小ながん細胞を考えた全身治療の重要性が高まります。

ステージⅣでは遠隔リンパ節や肺、肝臓、骨などへの転移を伴う場合があり、薬物療法が治療の中心になります。すべてのがんを手術などで取り除くことが難しくなるため、早いステージと比べると生存率は低くなります。

参考:国立がん研究センター「膀胱がん 治療」

古い生存率が現在の治療成績をそのまま表すとは限らない

病期別の5年生存率を見るときには、診断された年代にも注意が必要です。

国立がん研究センターの院内がん登録生存率集計でも、表示される生存率は過去に診断された患者さんの結果であり、治療の進歩によって、現在治療を受ける患者さんにはそのまま当てはまらない可能性があると説明されています。

膀胱がんでは、病期別5年生存率の対象となった2014~2015年以降に治療体系が大きく変化しています。特に進行尿路上皮がんでは、ペムブロリズマブなどの免疫チェックポイント阻害薬、エンホルツマブ ベドチン、アベルマブ維持療法、EV+ペムブロリズマブ、ニボルマブ+GC療法、FGFR3遺伝子異常を対象とするエルダフィチニブなどが導入されました。

そのため、過去のステージⅣの数字だけを見て、現在治療を受ける患者さんの経過を決めつけることはできません。

参考:国立がん研究センター「院内がん登録生存率集計結果閲覧システム」日本泌尿器科学会「膀胱癌診療ガイドライン2019年版 2025年アップデート内容」

NMIBCでは生存率だけでなく再発・進展を見る

筋層非浸潤性膀胱がん(NMIBC)では、生命予後だけを見て病気の負担を判断しないことが大切です。

NMIBCでは膀胱を残したまま治療できる患者さんが多い一方、膀胱内に新しい腫瘍ができる再発を繰り返すことがあります。再発するたびに膀胱鏡やTURBTが必要になったり、高リスクではBCG膀胱内注入療法を受けたりするため、生存率が高くても長期間にわたって検査や治療を続ける患者さんがいます。

さらに高異型度T1やCISなどでは、再発だけではなく、筋層浸潤性膀胱がんへ進む進展が問題になります。そのためNMIBCの治療では、「何年生存する人が多いか」だけではなく、「膀胱内で再発しやすいか」「筋層浸潤へ進みやすいか」を別々に評価します。

2026年に公表されたJCOG1019でも、High-grade T1であっても2nd TURBTで腫瘍が残っていないことが確認された厳選された患者さんでは、BCGを追加せず経過観察する方法が標準治療の1つとなり得ることが示されました。反対に、2nd TURBTで腫瘍が残っている場合や、CIS、BCG後の高リスク再発などでは、追加治療や膀胱全摘を検討する必要があります。

「早期だから安心」「5年生存率が高いから治療は軽い」と単純に考えず、再発と進展のリスクまで確認することが膀胱がんでは重要です。

参考:日本泌尿器科学会「膀胱癌診療ガイドライン2019年版 2025年アップデート内容」国立がん研究センター「完全切除後のT1膀胱がんに対して無治療経過観察が標準治療の一つとなることを証明」

膀胱がんの治療を選ぶときに確認したいこと

膀胱がんでは、「ステージはいくつか」だけを聞いても治療方針を十分に理解できないことがあります。

特にNMIBCでは、同じステージ0やⅠでも異型度、CIS、再発リスク、2nd TURBTの結果、BCG治療歴によって治療が変わります。MIBCでは、膀胱全摘を安全に受けられるか、膀胱温存療法の対象になり得るか、シスプラチンを使用できるかが重要です。根治切除不能・転移性になれば、これまで使用した薬とFGFR3遺伝子異常の有無も次の治療に関係します。

治療方針の説明を受ける際には、次の点を確認すると、自分が現在どの治療分岐にいるのかを整理しやすくなります。

確認事項 確認する意味
組織型 尿路上皮がんか、扁平上皮がん・腺がん・小細胞神経内分泌がんなど別の組織型かによって治療方針が変わる場合がある
筋層まで浸潤しているか NMIBCとMIBCを分ける最も大きな治療分岐になる。T1は浸潤がんだが筋層には達していない
異型度・CIS・NMIBCのリスク分類 TURBT後の経過観察、膀胱内注入療法、BCG、膀胱全摘などを考える材料になる。ステージ0のCISでも高リスクになることがある
2nd TURBTの結果 腫瘍が残っているか、T0になっているかによって追加治療の考え方が変わる。High-grade T1でも2nd TURBT後T0の一部では慎重な経過観察が選択肢になる
BCGを受けたことがあるか BCG後の残存・再発では、治療回数や再発までの期間によってBCG再投与、膀胱全摘、ナドファラゲン フィラデノベクなどの適応判断が変わる
膀胱全摘が可能か MIBCや超高リスクNMIBCなどで根治を目指す治療選択に関係する。年齢だけでなく全身状態やフレイルなどを確認する
膀胱温存療法の対象になり得るか MIBCでも腫瘍の数・広がり、CIS、水腎症、膀胱機能などの条件によってTMTを検討できる場合がある
シスプラチンを使用できるか MIBCの周術期治療や進行尿路上皮がんの薬物療法を考える際の重要な条件になる。腎機能、聴力、末梢神経障害、全身状態などを評価する
これまで使用した薬 転移・根治切除不能尿路上皮がんでは、EV+ペムブロリズマブ、プラチナ製剤、免疫チェックポイント阻害薬などの治療歴によって次の治療候補が変わる
FGFR3遺伝子異常があるか がん化学療法後に増悪した根治切除不能尿路上皮がんでは、FGFR3遺伝子変異・融合遺伝子があればエルダフィチニブを検討できる場合がある
治療後の生活で何を優先したいか 膀胱全摘後の尿路変向や膀胱温存療法では、排尿管理、通院、仕事、自己管理など治療後の生活も異なるため、医学的に可能な選択肢の中で本人の希望を確認する

この表は、日本泌尿器科学会の診療ガイドライン、国立がん研究センターの患者向け情報、JCOG1019など、本記事で参照した情報をもとに、患者さんが治療方針を理解する際の確認事項として編集上整理したものです。公式ガイドラインにこのままのチェックリストが掲載されているわけではありません。

「ステージだけ聞いて終わり」にしない

膀胱がんでは、「ステージⅠだから早期」「ステージⅣだから薬物療法」という大きな理解だけでは、実際の治療選択を十分に説明できない場合があります。

たとえばステージⅠにあたるT1は筋層非浸潤性膀胱がんですが、高異型度やCISなどを伴えば進展リスクが高く、BCGや膀胱全摘まで検討する場合があります。反対にHigh-grade T1であっても、JCOG1019で検証された条件を満たし、2nd TURBTでT0となった一部の患者さんでは、BCGを追加せず慎重に経過観察する方法も選択肢になります。

MIBCでも、膀胱全摘が標準治療だからといって、すべての患者さんに同じ治療が行われるわけではありません。シスプラチンを使用できるか、デュルバルマブを含む周術期治療を行うか、TMTによる膀胱温存が可能かなどを検討します。

転移性尿路上皮がんでは治療選択肢がさらに増えており、現在は一次治療だけを見てもEV+ペムブロリズマブ、ニボルマブ+GC療法、プラチナ製剤による化学療法からアベルマブ維持療法へ進む方法などがあります。治療が進んだ後は、それまでの治療歴とFGFR3などの分子情報も重要になります。

自分の治療について説明を受けるときには、治療名だけでなく、「自分の病理結果のどの部分を根拠に、この治療が選ばれているのか」を確認すると、治療の目的と他の選択肢との違いを理解しやすくなります。

参考:国立がん研究センター「膀胱がん 治療」日本泌尿器科学会「膀胱癌診療ガイドライン2019年版 2025年アップデート内容」国立がん研究センター「完全切除後のT1膀胱がんに対して無治療経過観察が標準治療の一つとなることを証明」European Association of Urology「EAU Guidelines on Muscle-invasive and Metastatic Bladder Cancer 2026|Disease Management」

まとめ|「ステージ」だけでなく筋層浸潤・異型度・再発リスクを見る

膀胱がんは、膀胱の内側を覆う尿路上皮から発生することが多いがんです。初期には痛みを伴わない血尿がみられることがあり、一度だけ血尿が出てその後消えた場合でも膀胱がんを否定することはできません。肉眼で分かる血尿が出た場合には、症状がなくなった後も泌尿器科で原因を確認することが大切です。

診断後の治療を大きく分けるのは、がんが膀胱壁の筋層まで入り込んでいるかどうかです。筋層非浸潤性膀胱がんではTURBTを中心に、異型度、CIS、再発・進展リスク、2nd TURBTの結果、BCG治療歴を踏まえて追加治療を考えます。ステージ0のCISでも高リスクになることがあり、反対にHigh-grade T1でも2nd TURBT後に腫瘍が残っていない一部の患者さんでは、追加BCGを行わず慎重に経過を見る選択肢が示されています。

筋層浸潤性膀胱がんでは膀胱全摘除術と周術期薬物療法が治療の中心ですが、適切な条件を満たせばTURBT、薬物療法、放射線治療を組み合わせた膀胱温存療法を検討できます。膀胱を摘出する場合には尿路変向が必要になり、回腸導管、新膀胱、尿管皮膚ろうでは術後の排尿管理や生活が異なります。

根治切除不能・転移性尿路上皮がんでも薬物療法は大きく進歩しています。EV+ペムブロリズマブなどが一次治療に加わり、病気が進行した後も治療歴やFGFR3遺伝子異常に応じて次の治療を選べる場合があります。新しい治療が増えているからこそ、「ステージはいくつか」だけでなく、自分のがんの組織型、深達度、異型度、治療歴、遺伝子情報まで確認することが重要です。

膀胱がんは、早期であっても再発を繰り返して長期間の経過観察が必要になることがあり、進行していても複数の治療選択肢を検討できるようになっています。治療を決めるときには、現在の病状で根治を目指せる治療は何か、膀胱を残せる可能性はあるか、治療によって生活がどう変わるかまで含めて担当医と確認していきましょう。

参考:国立がん研究センター「膀胱がんについて」国立がん研究センター「膀胱がん 検査」国立がん研究センター「膀胱がん 治療」国立がん研究センター「がん種別統計情報 膀胱」日本泌尿器科学会「膀胱癌診療ガイドライン2019年版 2025年アップデート内容」

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