肝内胆管がんは、肝臓の中を走る胆管の細胞から発生するがんで、原発性肝がんの10~20%を占めます。肝細胞がんとは性質も治療法も異なる疾患です。初期にはほとんど症状が出ませんが、進行すると腹痛、体重減少、食欲不振、倦怠感、発熱などが現れ、胆管が詰まると黄疸が出ることもあります。手術で取りきれても再発率が50~60%と高く、難治性のがんとして知られています。
本ページでは、肝内胆管がんの特徴や原因、症状、診断(画像検査・病理検査)、そして治療の選択肢についてわかりやすく解説します。治療を検討されている方やご家族が、いまの状況に合う選択肢を整理し、納得のいく方針を考えるための一助となれば幸いです。
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- 原発性肝がんの10~20%を占め、肝細胞がんとは別の疾患
- 早期には症状が出にくく、発見が遅れやすい
- 手術後の再発率が50~60%と高い難治性のがん
肝内胆管がんとは

肝臓にできるがんは、大きく2つに分けられます。
肝臓の細胞そのものから生じる「肝細胞がん」と、肝臓の中を走る胆管から生じる「肝内胆管がん」です。同じ「原発性の肝臓のがん」でありながら、この2つは性質も治療法も異なります。
胆管は、肝臓で作られた胆汁を十二指腸へ送り届ける管です。この胆管の細胞ががん化したものが胆管がんです。そのうち肝臓の内部にある胆管から発生したものを、肝内胆管がんと呼びます。
肝内胆管がんは、原発性肝がんのなかで肝細胞がんに次いで多く、原発性肝がんの10~20%を占めると報告されています。また、世界的に増加傾向にあることも知られています。
このがんの大きな特徴は、難治性であることです。早期には症状が出にくく発見が遅れがちなうえ、手術で取りきれても再発しやすい性質を持ちます。肝内胆管がんは、手術後の再発率が50~60%と高く、5年生存率は約30%にとどまると報告されており、数ある固形がんの中でも、治療の難しいがんと考えられています。
肝内胆管がんの原因
肝内胆管がんは、胆管の細胞に遺伝子の異常が積み重なって発生します。
代表的な遺伝子変異は、増殖のアクセルを踏み込む「KRAS」の変異、細胞の性質を制御する「IDH1」の変異、増殖の信号を送る「FGFR2」の異常などです。
そして、その中で重要な役割を果たす遺伝子の1つが、がん細胞の暴走を食い止める「ブレーキ役」であるがん抑制遺伝子「p53(TP53)」です。p53はDNAに傷がついた細胞を修復させ、修復できないものは自然死(アポトーシス)へと導きます。p53が壊れると、傷ついた細胞が排除されずに生き残ってしまいます。
肝内胆管がんでは、このp53変異が高い割合で起こります。TP53変異は特にアジア人では38%と、非アジア人(6%)より高頻度であることが報告されています。さらに、KRASとTP53の両方に変異を持つ患者様は、そうでない患者様に比べてがんがかなり増悪しやすいと報告されています。両方とも変異がない患者様は平均で18ヶ月増悪しないのに対して、両方とも変異がある患者様は1.4ヶ月で増悪してしまうと言われています。
つまりがんのアクセルが踏み込まれているだけでなく、ブレーキまで故障してしまう場合があり、それが治療の難しさに繋がっています。
・Comprehensive Molecular Profiling of Intrahepatic and Extrahepatic Cholangiocarcinomas: Potential Targets for Intervention
・Molecular signatures of intrahepatic cholangiocarcinoma: role in targeted therapy selection
肝内胆管がんの診断
「(無)症状」から「確定診断」まで
肝内胆管がんは、初期にはほとんど症状が出ません。進行してくると、腹痛、体重減少、食欲不振、倦怠感、発熱などが現れます。胆管が詰まると、皮膚や白目が黄色くなる黄疸、皮膚のかゆみ、白っぽい便などのサインが出ることもあります。ただ、これらの症状が出た時点では、すでに進行していることが少なくありません。
異常が疑われた場合、まず腹部超音波検査やCT検査、MRI検査といった画像検査で腫瘍の位置や広がりを調べます。血液検査では、腫瘍マーカーであるCA19-9やCEAの値も参考にされます。確定診断のためには、針を刺してがん組織の一部を採取する生検を行い、顕微鏡で調べる病理検査でがんの種類を確認します。
肝細胞がんとの見分けが重要になる点も、このがんの診断の特徴です。2つのがんで治療方針がまったく異なるため、画像所見と病理所見を組み合わせて慎重に診断します。
ステージ(病期)の確定
肝内胆管がんのステージは、腫瘍の大きさや数、血管への広がり(T)、リンパ節転移(N)、他の臓器への遠隔転移(M)を組み合わせて、Ⅰ期~Ⅳ期に分類されます。診断時にすでに進行した状態で見つかることも多く、病期が予後を大きく左右します。
肝内胆管がんの一般的な治療法
肝内胆管がんの治療法は、がんを取りきれるかどうかで大きく変わります。
がんが肝臓の一部にとどまり、切除可能と判断された場合は、手術(肝切除)が唯一の根治を目指せる治療です。手術ではがんのある部分を含めて肝臓を切除します。ただし、肝内胆管がんは診断時にすでに進行していることが多く、手術ができるのは全体の一部にとどまります。
手術ができない場合や、再発・転移をきたした場合は、薬物療法が治療の中心になります。
長らくゲムシタビンとシスプラチンという2種類の抗がん剤の組み合わせが標準でしたが、近年はこれに免疫チェックポイント阻害薬であるデュルバルマブを加える治療が標準となりました。また、FGFR2やIDH1といった特定の遺伝子異常を持つ場合には、それを狙う分子標的薬が使えることもあります。放射線療法が、症状の緩和や局所のコントロールを目的として用いられることもあります。
肝内胆管がんにおける保険診療の限界
肝内胆管がんは、治療の選択肢が広がってきたとはいえ、保険診療にはいくつもの壁があります。
手術ができる患者様が限られる
最大の問題は、根治を目指せる手術の対象となる患者様が限られていることです。前述のとおり、早期には症状が出にくいため、診断された時点ですでに進行しており、手術ができないことも少なくありません。
手術後の高い再発率
手術で切除できたとしても、肝内胆管がんは再発しやすい疾患です。根治切除を行っても、再発率は50~60%程度あると報告されています。手術という最大の手立てを尽くしてもなお、半分以上の患者様は再発のリスクが残るということです。
薬物療法の効果が限定的
手術ができない場合の薬物療法も、その効果は十分とはいえません。免疫チェックポイント阻害薬を加えた現在の標準治療をもってしても、進行例では効果が長続きしないことが多いのが実情です。
実際、免疫療法を含む標準治療を受けた進行例でも、無増悪生存期間の中央値は7.8か月にとどまるという報告があります。さらに、TP53変異を持つ患者様では、この免疫療法を含む治療が効果を発揮しにくいことも分かってきています。
化学療法に伴う「きつい」副作用
抗がん剤では、吐き気、強い倦怠感、食欲不振、脱毛、骨髄抑制による感染症リスクなどが起こりえます。肝臓の機能が低下している患者様では、使える薬の量や種類が制限されることもあります。長期にわたる治療のなかで、身体的・精神的な負担から治療の継続が難しくなり、生活の質(QOL)が損なわれるリスクがあります。
肝内胆管がんで重要な新しい治療の考え方
ここまで述べたように、肝内胆管がんは手術ができる患者様が限られ、再発しやすく、薬物療法の効果も限定的という、数々の課題を抱えています。がん中央クリニックグループでは、こうした課題に対して、標準治療とは作用の仕方が異なる治療を選択肢としてご提案しています。
分子レベルの異常にアプローチする「核酸医薬(アプタマー・miR-34a mimic)」
がんの発生や進行に関わる分子レベルの異常へ直接働きかける「核酸医薬」は、世界的に研究と臨床応用が進んでいます。当グループでは治療選択肢として、「アプタマー」「miR-34a mimic」といった核酸医薬を取り入れた治療を提供しております。
「アプタマー核酸医薬」は、がん細胞に特有の異常なタンパク質にピンポイントで結合し、その働きをブロックすることで、がんの増殖抑制や死滅を狙う治療薬です。一方で「miR-34a mimic核酸医薬」は、がん化によって失われてしまった「体が本来持っているがんを抑制する力」を補い、がんの成長を止め、自然な細胞死(アポトーシス)を促す治療薬です。
肝内胆管がんでは、p53の変異がアジア人で38%と特に多いです。miR-34a mimicは、miR-34aと同じ働きをする分子を外部から補充することで、p53というブレーキが壊れた細胞に対しても、その先の経路から直接ブレーキをかけ直すことを狙います。故障したブレーキの側から攻めるという発想です。
がん中央クリニックグループでは、がん種ごとに標的となる遺伝子を指定して核酸医薬を設計し、患者様一人ひとりの状態に合わせた治療をご提案しています。複数の核酸医薬を組み合わせて使い分けられる点も、特徴のひとつです。
免疫の「盾」を外す「ハイブリッド免疫療法」
ハイブリッド免疫療法は、がん細胞が免疫の攻撃から逃れるために使う「盾」、すなわち免疫ブロックタンパク質「PD-L1」を標的とする治療です。
肝内胆管がんの治療では、標準治療にて免疫チェックポイント阻害薬(抗PD-L1抗体)が使われています。しかし副作用の問題や患者様の体の状態などにより使用されない場合があります。
当グループのハイブリッド免疫療法は、このPD-L1を内側と外側の両方から無力化する、標準の抗PD-L1抗体とは異なるアプローチをとります。
まず、がん細胞の表面に出ているPD-L1に結合し、免疫の攻撃を妨げる「盾」を取り払います。さらに、がん細胞の中に入り込んで、これから作られるPD-L1の設計図(mRNA)を分解し、新たな「盾」が生まれるのを防ぎます。表面の盾を外すだけでなく、盾そのものがつくられるのを元から抑えることで、攻撃を逃れる術を失ったがん細胞を、患者様ご自身の免疫細胞が敵として認識し、攻撃できるようになるという仕組みです。
光でがんを狙い撃つ「がん光免疫療法」
がん光免疫療法は、光に反応する薬(光感受性物質)を点滴で投与し、そこに特定の波長のレーザー光を当ててがん細胞を破壊する治療です。光線力学的療法(PDT)の一種で、日本でも一部のがんでは1990年代から保険診療として用いられてきました。
仕組みは大きく2つあります。ひとつは「狙い撃ち」です。光感受性物質はがん細胞に集まる性質があり、そこへレーザーを当てると薬が反応してがん細胞を内側から傷つけます。使うレーザーは手をかざしても熱くない弱い光で、重要なのは熱ではなく薬を反応させる「波長」です。薬が集まっていない正常細胞は、光が当たっても反応しません。
もうひとつは「免疫の活性化」です。壊れたがん細胞から出る目印を免疫細胞が取り込むことで、離れた場所にある転移巣への攻撃力も高まると期待されます。
肝内胆管がんでこの治療を検討する際に重要なのが、がんのできた場所です。レーザー光を病巣に届ける必要があるため、光を照射できる位置にあるがんが対象になります。
肝内胆管がんは発生部位に幅があり、体表から光を届けられる場合には、選択肢となり得ます。がんの位置や広がりを踏まえて、適応となるかを個別に判断します。
当グループの診療・治療をおすすめする患者様
当グループで実施可能な治療法は、ほとんどの患者様にご検討いただけます。以下では、どのような患者様に効果が期待できるのかを解説します。ご自身の状況に照らし合わせてご検討ください。
治療方法がない、標準治療では治療困難な患者様へ
肝内胆管がんでは、手術ができない、薬物療法の効果が乏しいなどの理由から、保険診療の選択肢が行き詰まることがあります。特に、標準的な治療を使い切って次の手立てが見つからない患者様は少なくありません。
そうした場合でも、核酸医薬(アプタマー・miR-34a mimic)、ハイブリッド免疫療法、がん光免疫療法は、標準治療とは異なるアプローチで治療を提供できます。これらは目立った副作用が起こりにくく体への負担が少ないため、「体力がないため抗がん剤はできません」などと説明された方にも、1つの治療の選択肢となり得ます。
また、まだ体力があるのに選択肢がなくなり、緩和治療を勧められている方にとっても、新たな選択肢として検討いただけます。
なお、がん光免疫療法については、レーザー光を届けられる位置にがんがあるかどうかで適応が変わります。がんのできた場所や広がりを踏まえて、個別に判断いたします。
保険診療(標準治療)との併用で相乗効果が期待
核酸医薬、ハイブリッド免疫療法、がん光免疫療法は、化学療法や標準の免疫療法と併用でき、相乗効果が期待できます。
化学療法や分子標的薬がすでに存在するタンパク質やシグナルに作用するのに対し、核酸医薬はそれらが作られる前の遺伝子レベルに作用します。ハイブリッド免疫療法は、標準の抗PD-L1抗体とは異なる仕組みでPD-L1を攻撃します。がん光免疫療法は、光でがん細胞を局所的に破壊しつつ、免疫の活性化も促します。それぞれ攻撃するポイントや仕組みが異なるため、標準治療と組み合わせることでより高い効果が期待できると考えています。
このように、肝内胆管がんの完治を目指すには、複数の治療法を組み合わせることが重要と考えています。標準治療を受けている患者様にとっても、これらの併用は選択肢のひとつとして検討可能です。
再発を抑制・防止するために手術前後の患者様
前述のとおり、肝内胆管がんは手術で取りきれても半数以上が再発する疾患です。また抗がん剤には副作用があるため、肝機能に不安のある患者様や体力に不安のある高齢の患者様には、術後の抗がん剤治療が難しいこともあります。
こうした背景から、手術前後に核酸医薬(アプタマー・miR-34a mimic)、ハイブリッド免疫療法、がん光免疫療法を併用することは、再発リスクを下げるひとつの選択肢として検討いただけます。
副作用が不安な患者様
核酸医薬(アプタマー・miR-34a mimic)、ハイブリッド免疫療法、がん光免疫療法は、目立った副作用が起こりにくい治療です。化学療法で起きやすい嘔気、食欲不振、倦怠感、脱毛、貧血、命に関わる副作用などはほとんど起こりません。核酸医薬の副作用としては、一時的な微熱、頭痛、アレルギー反応(0.3%以下)などが挙げられます。ハイブリッド免疫療法では治療部位の反応などが、がん光免疫療法では治療後しばらく直射日光を避ける必要がある光線過敏や、照射部位の反応などが見られることがあります。
解熱鎮痛剤など薬物を使う場合もありますが、自然と改善する副作用が大半で、治療の継続に支障をきたすことはありません。「体力面や仕事面で副作用の不安がある」「標準治療を続けながら副作用をできるかぎり抑えたい」という方にも受けていただける治療です。
肝内胆管がんの完治を目指して、保険診療と患者様に合った治療を組み合わせる
肝内胆管がんは、手術ができる患者様が限られ、再発しやすいという壁が立ちはだかる難治性の疾患です。しかし、適切に治療を行えば完治を目指せる疾患でもあります。
発症要因にp53をはじめとする遺伝子異常があるため、保険診療と核酸医薬(アプタマー・miR-34a mimic)、ハイブリッド免疫療法、がん光免疫療法などを組み合わせる集学的治療が有効な選択肢となります。保険診療だけではカバーしきれない場合でも、これらの治療によって腫瘍縮小効果や再発抑制効果が期待できます。
がん中央クリニックグループでは、こうした「アプタマー核酸医薬」「miR-34a mimic 核酸医薬」や「がん光免疫療法」をはじめ、患者様1人ひとりに合ったがん治療をご提案いたします。肝内胆管がんの患者様は、どのような状況の場合でも是非お気軽にご相談ください。






