ALK陽性肺がんは、非小細胞肺がんの一種で、がん細胞のALKという遺伝子が他の遺伝子と融合しているタイプの肺がんです。肺腺がんに多くみられ、若年、非喫煙者に多いという特徴があります。初期にはほとんど症状が出ませんが、進行すると咳が続く、血痰、息切れ、胸の痛み、体重減少などが現れます。ALKを狙い撃ちにする分子標的薬(ALK-TKI)がよく効く一方で、いずれ薬が効かなくなる「薬剤耐性」が課題となります。
本ページでは、ALK陽性肺がんの特徴や原因、症状、診断(コンパニオン診断・遺伝子検査)、そして治療の選択肢についてわかりやすく解説します。治療を検討されている方やご家族が、いまの状況に合う選択肢を整理し、納得のいく方針を考えるための一助となれば幸いです。
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- 非小細胞肺がんの一種で、若年・非喫煙者に多い
- ALKを狙い撃ちにする分子標的薬(ALK-TKI)がよく効く
- いずれ薬が効かなくなる薬剤耐性が、治療上の大きな課題
ALK陽性肺がんとは

肺がんは、がん細胞の見た目や性質によっていくつかのタイプに分けられます。
まず大きく「小細胞肺がん」と「非小細胞肺がん」に分かれ、日本人の肺がんの多くは後者です。この非小細胞肺がんのなかにALK陽性肺がんが含まれます。
ALK(未分化リンパ腫キナーゼ)は、細胞の増殖に関わる遺伝子です。ALK単体では悪いことは起こりませんが、他の遺伝子と「融合」すると、増殖のスイッチが入りっぱなしになります。この異常を持つ肺がんが、ALK陽性肺がんです。そして非小細胞肺がんの中でも、肺腺がんに多くみられます。
ALK陽性肺がんは、非小細胞肺がんの約4~5%に認められると報告されています。頻度としては多くありませんが、ALK陽性肺がんは若年者や非喫煙者に多く、主に腺がんで認められることが知られています。45歳以下の若年患者を対象とした研究では、非小細胞肺がん患者の14.2%でALK陽性が認められました。
・Alectinib Approved as an Adjuvant Treatment for Lung Cancer
・The Clinical Characteristics, Treatment, and Prognosis of Lung Cancer in Young Patients in the New Era of Cancer Treatment
ALK陽性肺がんの原因
ALK陽性肺がんは、ALK遺伝子の融合がきっかけで発症しますが、その根本の原因はまだ解明されていません。ただ、融合が起きた結果として何が起こるかは分かっています。本来ばらばらに存在しているALK遺伝子が別の遺伝子(多くはEML4)と結合すると、異常なタンパク質が作られ増殖のシグナルを出し続けるため、細胞が止まらず増えていきます。
ここで、もうひとつ重要な遺伝子があります。がん細胞の暴走を食い止める「ブレーキ役」の、がん抑制遺伝子「p53(TP53)」です。p53はDNAに傷がついた細胞を修復させ、修復できないものは自然死(アポトーシス)へと導きます。p53が壊れると、傷ついた細胞が排除されずに生き残ってしまいます。
ALK陽性肺がんでは、このp53変異率が20~25%と報告されています。また、p53変異が併存した患者様は、併存しない患者様よりも予後が悪いと言われています。
つまりアクセル(ALK)が入りっぱなしであるだけでなく、ブレーキ(p53)まで故障してしまう場合があり、それが治療の難しさにつながっているのです。
・Defining molecular risk in ALK+ NSCLC
・Prognostic value of TP53 concurrent mutations for EGFR-TKIs and ALK-TKIs based targeted therapy in advanced non-small cell lung cancer: a meta-analysis
ALK陽性肺がんの診断
「(無)症状」から「確定診断」まで
肺がんは、初期にはほとんど症状が出ません。ある程度進行してから、咳が続く、血痰、息切れ、胸の痛み、体重減少といった症状が現れます。ただ、これらは風邪でも起こるため、見過ごされがちです。健康診断の胸部X線検査やCT検査で、偶然発見される場合も少なくありません。
異常が疑われた場合、気管支鏡検査やCTガイド下針生検などで組織を採取し、がんかどうかを確定します。脳転移や全身転移の有無を調べるため、脳MRI検査やPET-CT検査も実施されます。
コンパニオン診断という重要なステップ
ALK陽性肺がんの診断で欠かせないのが、遺伝子検査です。採取したがん組織を使い、ALK融合遺伝子があるかどうかを調べます。免疫染色(IHC法)でALKタンパクの発現を見る方法と、FISH法で遺伝子の並びを直接調べる方法があります。この検査は「コンパニオン診断」と呼ばれ、分子標的薬が効くタイプかどうかを見極める役割を担います。また、組織が採れないときは、血液中のがん由来DNAを調べるリキッドバイオプシーを行う場合もあります。
ステージ(病期)の確定
肺がんのステージは、腫瘍の大きさと広がり(T)、リンパ節転移(N)、遠隔転移(M)を組み合わせてⅠ期~Ⅳ期に分類されます。ALK陽性肺がんは、診断時にすでに脳などへ転移した進行した状態で見つかることも多く、病期が予後を大きく左右します。
ALK陽性肺がんの一般的な治療法
早期であれば手術が主な治療法ですが、必要に応じて薬物療法を加えます。一方、診断時にすでに進行・転移している場合や、術後に再発した場合は、薬物療法が治療の中心になります。
ALK陽性肺がんの薬物療法で主役となるのが、分子標的薬の「ALK阻害薬(ALK-TKI)」です。異常なALKのシグナルをピンポイントで遮断する薬で、第一世代のクリゾチニブから、現在の標準治療である第二世代のアレクチニブ、さらに第三世代のロルラチニブまで、複数の世代があります。
ALK-TKIが効きにくくなった場合は、別の世代のALK-TKIへの変更や、抗がん剤(プラチナ製剤ベースの化学療法)が検討されます。
ALK陽性肺がんにおける保険診療の限界
ALK陽性肺がんにはALK-TKIという有効な標的薬があるとはいえ、保険診療にはいくつもの壁があります。
避けられない「耐性」の問題
アレクチニブを投与すれば、半数の方が約35ヶ月もの間腫瘍が増大しないとはいえ、裏を返せば、半数の患者様が3年前後で進行してしまうということです。また、ALK-TKIを使う患者様の最大4分の1は、治療開始から1年以内に進行するという報告もあります。
・Updated overall survival and final progression-free survival data for patients with treatment-naive advanced ALK-positive non-small cell lung cancer in the ALEX study
・Alectinib in combination with bevacizumab as first-line treatment in ALK-rearranged non-small cell lung cancer (ALEK-B)
手術後の高い再発率
早期に発見され、手術で取りきれたとしても、ALK陽性肺がんは再発しうる疾患です。切除後の再発率は病期が進むほど高くなり、根治手術後も一定の割合で再発が生じます。
この再発を抑える目的で、近年は術後にアレクチニブを一定期間服用する補助療法が標準となりました。以前の化学療法に比べ、ステージII~IIIAでの2年間で再発しない患者様が約63%から約94%と治療成績が向上しました。しかし逆に言えばそれでもなお再発する患者様はいらっしゃるということです。
また、この補助療法で使うALK-TKIは、進行・再発した際の治療でも中心となる薬です。術後の段階で使うことは、いざ再発したときの切り札を先に投じておくことにもなり、その後の選択肢をどう組み立てるかという課題も残ります。
化学療法に伴う「きつい」副作用
ALK-TKIの中で代表的なアレクチニブの副作用は、肝機能障害(41%)、便秘(39%)、倦怠感(36%)、筋肉痛(31%)、むくみ(29%)、皮疹(23%)などが多くみられます。また、まれに間質性肺炎や、筋肉が破壊される副作用が生じることもあります。
さらに、ALK-TKIが効かなくなったあとに用いる抗がん剤では、吐き気、強い倦怠感、食欲不振、脱毛、骨髄抑制による感染症リスクなどが起こりえます。長期にわたる治療や薬の切り替えのなかで、身体的・精神的な負担から治療の継続が難しくなり、生活の質(QOL)が損なわれるリスクがあります。
ALK陽性肺がんで重要な新しい治療の考え方
ここまで述べたように、ALK陽性肺がんは分子標的薬がよく効く一方で、耐性や手術後の再発に対してどう治療戦略をたてるか、副作用のきつさ、などという固有の課題を抱えています。
がん中央クリニックグループでは、こうした課題に対して、標準治療とは作用の仕方が異なる治療を選択肢としてご提案しています。
分子レベルの異常にアプローチする「核酸医薬(アプタマー・miR-34a mimic)」
がんの発生や進行に関わる分子レベルの異常へ直接働きかける「核酸医薬」は、世界的に研究と臨床応用が進んでいます。当グループでは治療選択肢として、「アプタマー」「miR-34a mimic」といった核酸医薬を取り入れた治療を提供しております。
「アプタマー核酸医薬」は、がん細胞に特有の異常なタンパク質にピンポイントで結合し、その働きをブロックすることで、がんの増殖抑制や死滅を狙う治療薬です。一方で「miR-34a mimic核酸医薬」は、がん化によって失われてしまった「体が本来持っているがんを抑制する力」を補い、がんの成長を止め、自然な細胞死(アポトーシス)を促す治療薬です。
ALK陽性肺がんでp53変異が高頻度に併存することは、先に述べたとおりです。miR-34a mimicは、miR-34aと同じ働きをする分子を外部から補充することで、p53というブレーキが壊れた細胞に対しても、その先の経路から直接ブレーキをかけ直すことを狙います。ALKという「アクセル」だけでなく、失われた「ブレーキ」の側から攻めるという発想です。
がん中央クリニックグループでは、がん種ごとに標的となる遺伝子を指定して核酸医薬を設計し、患者様一人ひとりの状態に合わせた治療をご提案しています。複数の核酸医薬を組み合わせて使い分けられる点も、特徴のひとつです。
免疫の「盾」を外す「ハイブリッド免疫療法」
ハイブリッド免疫療法は、がん細胞が免疫の攻撃から逃れるために使う「盾」、すなわち免疫ブロックタンパク質「PD-L1」を標的とする治療です。
ALK陽性肺がんでは、標準の免疫療法が効きにくいですが、PD-L1自体は一定の割合で発現しています。
ALK陽性肺がんでのPD-L1陽性率(TPS≥1%)は50%と報告されています。標準の免疫チェックポイント阻害薬がうまく働きにくいこのタイプにこそ、PD-L1へ別の角度からアプローチする意義があると考えています。
ハイブリッド免疫療法は、このPD-L1を内側と外側の両方から無力化します。まず、がん細胞の表面に出ているPD-L1に結合し、免疫の攻撃を妨げる「盾」を取り払います。さらに、がん細胞の中に入り込んで、これから作られるPD-L1の設計図(mRNA)を分解し、新たな「盾」が生まれるのを防ぎます。攻撃を逃れる術を失ったがん細胞を、患者様ご自身の免疫細胞が敵として認識し、攻撃できるようになるという仕組みです。
関連ページ:HER2をターゲットにした”がんのピンポイント治療薬”|分子標的ワクチン療法
当グループのがん治療をおすすめする患者様
当グループで実施可能な治療法は、ほとんどの患者様にご検討いただけます。以下では、どのような患者様に効果が期待できるのかを解説します。ご自身の状況に照らし合わせてご検討ください。
治療方法がない、標準治療では治療困難な患者様へ
ALK陽性肺がんでは、ALK-TKIへの耐性や免疫療法が効きにくいといった理由から、保険診療の選択肢が行き詰まることがあります。特に、複数のALK-TKIを使い切ってしまい、次の手立てが見つからない患者様は少なくありません。
そうした場合でも、核酸医薬(アプタマー・miR-34a mimic)とハイブリッド免疫療法なら、標準治療とは異なるアプローチで治療を提供できます。これらは目立った副作用が現れにくく体への負担が少ないため、「体力がないため抗がん剤はできません」などと説明された方にも、1つの治療の選択肢となり得ます。
また、まだ体力があるのに選択肢がなくなり、緩和治療を勧められている方にとっても、新たな選択肢として検討いただけます。
保険診療(標準治療)との併用で相乗効果が期待
核酸医薬とハイブリッド免疫療法は、ALK-TKIや抗がん剤と併用でき、相乗効果が期待できます。化学療法や分子標的薬がすでに存在するタンパク質やシグナルに作用するのに対し、核酸医薬はそれらが作られる前の遺伝子レベルに作用します。
ハイブリッド免疫療法は、PD-L1という別の標的を叩きます。攻撃するポイントが異なるため、組み合わせることでより高い効果が期待できると考えています。
このように、ALK陽性肺がんの完治を目指すには、複数の治療法を組み合わせることが重要と考えています。標準治療を受けている患者様にとっても、これらの併用は選択肢のひとつとして検討可能です。
関連ページ:がん細胞を“内からも外からも”攻撃する次世代の二刀流療法|ハイブリッド免疫療法
再発を抑制・防止するために手術前後の患者様
早期がんで手術を受けた場合でも、ALK陽性肺がんは再発しうる疾患です。手術後にALK-TKIを用いる補助療法で再発リスクは下がりますが、それでも再発する患者様は残ります。またALK-TKIには副作用があり、体力に不安のある患者様には術後の補助療法が難しいこともあります。
こうした背景から、手術前後に核酸医薬(アプタマー・miR-34a mimic)とハイブリッド免疫療法を併用することは、再発リスクを下げ生存率を高めるひとつの選択肢として検討いただけます。
副作用が不安な患者様
核酸医薬(アプタマー・miR-34a mimic)とハイブリッド免疫療法は、目立った副作用が起こりにくい治療です。ALK-TKIや化学療法で起きやすい肝機能障害、便秘、倦怠感、筋肉痛、嘔気、食欲不振、倦怠感、脱毛、貧血、命に関わる副作用などはほとんど起こりません。核酸医薬の副作用としては、一時的な微熱、頭痛、アレルギー反応(0.3%以下)などが挙げられます。ハイブリッド免疫療法では、治療部位の反応などが見られることがあります。
解熱鎮痛剤など薬物を使う場合もありますが、自然と改善する副作用が大半で、治療の継続に支障をきたすことはありません。「体力面や仕事面で副作用の不安がある」「標準治療を続けながら副作用をできるかぎり抑えたい」という方にも受けていただける治療です。
ALK陽性肺がんの完治を目指して、保険診療と患者様に合った治療を組み合わせる
ALK陽性肺がんは、分子標的薬がよく効くタイプである一方、耐性や手術後再発という壁が立ちはだかる疾患です。しかし、適切に治療を行えば完治を目指せる疾患でもあります。
発症要因にALKやp53といった遺伝子異常があるため、保険診療と核酸医薬(アプタマー・miR-34a mimic)、ハイブリッド免疫療法などを組み合わせる集学的治療が有効な選択肢となります。保険診療だけではカバーしきれない場合でも、これらの治療によって腫瘍縮小効果や再発抑制効果が期待できます。
がん中央クリニックグループでは、こうした「アプタマー核酸医薬」や「miR-34a mimic 核酸医薬」をはじめ、患者様1人ひとりに合ったがん治療をご提案いたします。ALK陽性肺がんの患者様は、どのような状況の場合でも是非お気軽にご相談ください。



